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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<176>チームの解散・結成など活性化するストーブリーグ 2016-17移籍市場をチェック

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 今年最後のグランツール、ブエルタ・ア・エスパーニャが終了し、2016年シーズンは終盤戦へと差し掛かっている。今季は8月にリオデジャネイロ五輪が行われたことや、例年この時期に迎えるUCI(国際自転車競技連合)ロード世界選手権が、今年は10月上旬に行われることもあり、いつもとは違ったレースカレンダーとなっている。その影響からか、トップシーンにおけるストーブリーグがここへ来て活性化。今回は、次々と明らかになる各チームの移籍情報をまとめていく。

今年のブエルタ・ア・エスパーニャで競演した日本人選手2人。新城幸也(左)は来季バーレーン・メリダへ、別府史之はトレック・セガフレードと2年の契約延長に合意している =ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第10ステージ、2016年8月29日 Photo: Yuzuru SUNADA今年のブエルタ・ア・エスパーニャで競演した日本人選手2人。新城幸也(左)は来季バーレーン・メリダへ、別府史之はトレック・セガフレードと2年の契約延長に合意している =ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第10ステージ、2016年8月29日 Photo: Yuzuru SUNADA

イアム、ティンコフ組が早々に移籍先を決定

 グランツールの総合争いにおける主役の1人、ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ プロチーム)のバーレーン・メリダアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)のトレック・セガフレード移籍は既報の通り。また、このほどわれらが新城幸也(ランプレ・メリダ)のバーレーン・メリダ行きも正式発表された。

新チーム「バーレーン・メリダ」を率いるヴィンチェンツォ・ニバリ Photo: Yuzuru SUNADA新チーム「バーレーン・メリダ」を率いるヴィンチェンツォ・ニバリ Photo: Yuzuru SUNADA

 UCIの規定により、チーム移籍をする際の正式契約・発表は8月1日以降と決められている。もっとも、お目当ての選手獲得を目指すチームが早くからオファーを出していたり、水面下で交渉を進めたりするケースが多く、中には口頭での約束や仮契約を8月までに結んでいるケースもあるとされる。それでも、各チーム・選手はUCI規定に基づき8月に入ってから正式なアナウンスを行う。今年も、解禁から1カ月半を過ぎ、UCIワールドチームや同プロコンチネンタルチームが次々と新たなメンバーの加入を喜ぶリリースを配信している。

 まずは、UCIワールドチームの移籍加入決定状況からお届けしたい。今シーズン限りでのスポンサー撤退によるチーム解体が決定している、イアム サイクリングとティンコフの2チームは、主力級が早々に新天地を確保しているのが特徴的だ。なお、チームごとの戦力分析などは、陣容が固まり次第チーム展望として今後まとめていく予定だ。

■アージェードゥーゼール ラモンディアル

 イアム サイクリングから、クライマーのマティアス・フランク(スイス)やスプリンターのソンドレ・ホルストエンゲル(ノルウェー)ら4人の加入が決定。特にフランクには、今後グランツール制覇を目指すロマン・バルデ(フランス)のアシストとしての期待がかかる。北のクラシック強化として、スティーン・ヴァンデンベルフ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)も獲得。

■アスタナ プロチーム

 こちらはティンコフからの移籍組が3選手加入。オスカル・ガット(イタリア)、イェスパー・ハンセン、ミケル・ヴァルグレンアナスン(ともにデンマーク)は、クラシック強化の一翼を担う。また、キャノンデール・ドラパック プロサイクリングチームからは、モレーノ・モゼール(イタリア)が加わる。

■BMCレーシングチーム

 現時点で発表されているのは、ニコラ・ロッシュ(アイルランド、チーム スカイ)の移籍加入のみ。ティージェイ・ヴァンガードレン(アメリカ)やかつてのチームメートであるリッチー・ポート(オーストラリア)を強力にアシストする心積もりだ。

■キャノンデール・ドラパック プロサイクリングチーム

石畳のスペシャリスト、セップ・ヴァンマルクはキャノンデール・ドラパックに“復帰” =パリ~ルーベ2016、2016年4月10日 Photo: Yuzuru SUNADA石畳のスペシャリスト、セップ・ヴァンマルクはキャノンデール・ドラパックに“復帰” =パリ~ルーベ2016、2016年4月10日 Photo: Yuzuru SUNADA

 4年前まで2シーズン所属した(当時はチーム ガーミン・シャープ)、セップ・ヴァンマルク(ベルギー、チーム ロットNL・ユンボ)の復帰が大きなトピック。北のクラシックの頂点を目指す。また、気鋭のイギリス人オールラウンダー、ヒュー・カーシー(カハルラル・セグロスRGA)も加わる。

■ディメンションデータ

 ここまで移籍加入選手の発表は行っていない。

■エティックス・クイックステップ

たびたび加入が噂されてきたフィリップ・ジルベールが、ついにエティックス・クイックステップ入りする =ブエルタア・ア・エスパーニャ2016第13ステージ、2016年9月2日 Photo: Yuzuru SUNADAたびたび加入が噂されてきたフィリップ・ジルベールが、ついにエティックス・クイックステップ入りする =ブエルタア・ア・エスパーニャ2016第13ステージ、2016年9月2日 Photo: Yuzuru SUNADA

 これまで何度も加入が噂されてきたフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)が、ついに自国を代表するチームへの移籍を決めた。もちろん、クラシック班の強化が狙いだ。そのほか、クライマーのエロス・カペッキ(イタリア、アスタナ プロチーム)や、TTスペシャリストのジャック・バウアー(ニュージーランド、キャノンデール・ドラパック プロサイクリングチーム)も加わる。

■エフデジ

 注目は、8月下旬に行われた若手の登竜門「ツール・ド・ラヴニール」を総合優勝したダヴィド・ゴデュ(フランス)。10月に20歳となる若きオールラウンダーには、チームのエースであるティボ・ピノー(フランス)2世との声も挙がっている。

■ロット・ソウダル

 エティックス・クイックステップから、ニコラス・マース(ベルギー)の移籍が決定。北のクラシックでのアシストや、ステージレースでの逃げで魅せるはずだ。

■モビスター チーム

モビスター チームに加入するダニエーレ・ベンナーティ。堅実なアシストぶりが今後も見られるはずだ =アブダビ・ツアー2015、2015年10月10日 Photo: Yuzuru SUNADAモビスター チームに加入するダニエーレ・ベンナーティ。堅実なアシストぶりが今後も見られるはずだ =アブダビ・ツアー2015、2015年10月10日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ブエルタのチャンピオンチームには、ティンコフからダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)が移籍。36歳のベテランには、トレイン統率とここ一番でのスピードでチームへの貢献が期待される。

■オリカ・バイクエクスチェンジ

 こちらもティンコフから、ロマン・クロイツィゲル(チェコ)が加わる。クラシックでは自身の勝利を狙うと同時にサイモン・ゲランス(オーストラリア)を、グランツールではヨアンエステバン・チャベス(コロンビア)や、アダムとサイモンのイェーツ兄弟(イギリス)を支えることとなる。そのほか、イアム サイクリングからロジャー・クルーゲ(ドイツ)も移籍が決定。

■チーム カチューシャ

トニー・マルティンはチーム カチューシャ入りが決定 =リオデジャネイロ五輪・個人タイムトライアル、2016年8月9日 Photo: Yuzuru SUNADAトニー・マルティンはチーム カチューシャ入りが決定 =リオデジャネイロ五輪・個人タイムトライアル、2016年8月9日 Photo: Yuzuru SUNADA

 来季からスイス登録となるチームには、すでに8人の加入が決まっている。なかでも、トニー・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)の存在が際立つ。個人タイムトライアル(TT)での頂点返り咲きと、チームTT強化がポイントだ。

■チーム ロットNL・ユンボ

 クラシックハンターのラルス・ボーム(オランダ、アスタナ プロチーム)が3シーズンぶりに復帰。今シーズンは苦しんでいるが、古巣での返り咲きを目指す。グランツール強化を目指し、ユルヘン・ヴァンデンブロック(ベルギー)の獲得に成功。ロベルト・ヘーシンクやスティーフェン・クルイシュウィック(ともにオランダ)の上位進出を支える。

■チーム スカイ

 リオ五輪トラック・チームパシュート金メダリストのオワイン・ドウル(チーム ウィギンス)、タオ・ゲオゲガンハート(アクセオン・ヘーゲンスベルマン)のイギリス人選手、ウーカシュ・ヴィシニオウスキ(ポーランド、エティックス・クイックステップ)の3人の加入が明らかになっている。また今後、有力選手が加わる可能性もあるとされ、発表が待たれる。

■チーム サンウェブ・ジャイアント(現チーム ジャイアント・アルペシン)

名称変更となるチーム サンウェブ・ジャイアントには、マイケル・マシューズが加入 =ツール・ド・フランス2016第10ステージ、2016年7月12日 Photo: Yuzuru SUNADA名称変更となるチーム サンウェブ・ジャイアントには、マイケル・マシューズが加入 =ツール・ド・フランス2016第10ステージ、2016年7月12日 Photo: Yuzuru SUNADA

 新スポンサーを迎え、チーム名も変更となる。マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ)、ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、チーム ロットNL・ユンボ)の加入は、チーム力を大きく高めることだろう。

■TJスポーツ・ランプレ(現ランプレ・メリダ)

 来季からは中国ベースのチームへと生まれ変わるが、現有戦力に加えてホンダルウィン・アタプマ(コロンビア、BMCレーシングチーム)、ベン・スイフト(イギリス、チーム スカイ)といった実績豊富な選手が加わる。とはいえ、マルコ・マルカート(イタリア、ワンティ・グループゴベール)の加入など、イタリア人選手が中心の布陣に変化はなさそうだ。

■トレック・セガフレード

かねてから噂されていたトレック・セガフレード入りを発表したアルベルト・コンタドール =ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第21ステージ、2016年9月11日 Photo: Yuzuru SUNADAかねてから噂されていたトレック・セガフレード入りを発表したアルベルト・コンタドール =ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第21ステージ、2016年9月11日 Photo: Yuzuru SUNADA

 別府史之が2年の契約更新にサインし、日本からの注目も集まるチームには、多くのタレントが集結。すでに報じられた、コンタドールやジョン・デゲンコルプ(ドイツ、チーム ジャイアント・アルペシン)のほかにも、マティアス・ブランドレ(オーストリア、イアム サイクリング)、ハルリンソン・パンタノ(コロンビア、イアム サイクリング)といった実力者が加わる。11月に22歳になるグレゴリー・ダニエル(アクセオン・ヘーゲンスベルマン)は、5月のアメリカ選手権ロードレースを制し関係者を驚かせた選手。

トップカテゴリーを争う2チーム

 UCIが2017年シーズンのUCIワールドチーム(第1カテゴリー)を17チームで方針を定めたことで、どのチームが新たに“昇格”するのかが焦点となっている。イアム サイクリングとティンコフの撤退により、既存の16チームがそのまま来シーズンもトップカテゴリーで走るとなると、加わるのは1チームのみとなる。その座を争うのが、ボーラ・ハンスグローエ(ドイツ、現ボーラ・アルゴン18)と、新たに発足するバーレーン・メリダだ。どちらも即戦力を多くそろえ、グランツールやクラシックで戦えるだけの力は十分にある。そして、その戦力強化が昇格のキーポイントになってきそうだ。

■ボーラ・ハンスグローエ

移籍市場解禁日の8月1日にボーラ・ハンスグローエ入りを発表したペテル・サガン Photo: Yuzuru SUNADA移籍市場解禁日の8月1日にボーラ・ハンスグローエ入りを発表したペテル・サガン Photo: Yuzuru SUNADA

 8月1日、どのチームよりも早く加入選手を発表。そこにあった名は、現・世界王者のペテル・サガン(スロバキア、ティンコフ)だった。アシストや友人を引き連れての移籍により、ティンコフからは自身を含め7人が加わる。さらには、マルクス・ブールクハート(ドイツ、BMCレーシングチーム)がアシストを務める強力布陣。さらには、グランツール強化として、ラファウ・マイカ(ポーランド、ティンコフ)とレオポルド・ケニッグ(チェコ、チーム スカイ)の移籍も正式に決まった。

■バーレーン・メリダ

イタリア人選手が多くそろうバーレーン・メリダ。エンリーコ・ガスパロットも合流する =アムステル・ゴールドレース2016、2016年4月17日 Photo: Yuzuru SUNADAイタリア人選手が多くそろうバーレーン・メリダ。エンリーコ・ガスパロットも合流する =アムステル・ゴールドレース2016、2016年4月17日 Photo: Yuzuru SUNADA

 このストーブリーグの話題を総なめにしているといってもよいほど、充実した戦力をそろえている。その筆頭となるニバリは、昨年の段階でチーム結成を目指し動いていたバーレーン王国のナセル王子と相思相愛の関係にあった。現在契約を結んだ15人のうち約半数の7人がイタリア人選手というのも特徴的だ。そして何より、新城の移籍決定も大きなトピック。ランプレ・メリダから移るスタッフも多いとあり、勝手知ったる人たちが身近に控えているのも心強い。そのほかには、エンリーコ・ガスパロット(イタリア、ワンティ・グループゴベール)、ハインリッヒ・ハウスラー(オーストラリア、イアム サイクリング)といった面々が新チームの立ち上げに参加する。

 仮に、どちらかのチームがトップカテゴリー入りを逃したとしても、所属選手やチーム力的にビッグレースへの主催者推薦は得られる可能性が高い。それでも、主要なレースすべてへの出場が確約される立場であるに越したことはない。今後、どのような過程を経て、来シーズンのUCIワールドチームが固まるのか、両チームの選手加入状況をと併せて押さえておきたい。

今週の爆走ライダー-ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、チーム ロットNL・ユンボ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 シーズン序盤から勝ち星を積み重ね、加入1年目ながら一躍チームのエーススプリンターとなった。その勢いは衰えず、6月にはオランダ選手権で初優勝。ツール・ド・フランスでは、ステージ優勝争いに思うように絡むことはできなかったが、初出場で完走は果たした。昨シーズンは終盤に勝ち星を積み重ねて、それが現チーム入りに結びついたことを思うと、今年の躍進は大きなモチベーションとなっている。

シーズン序盤から勝ち星を重ねたディラン・フルーネウェーヘン。ツールにはオランダチャンピオンジャージで出場した =ツール・ド・フランス2016第1ステージ、2016年7月2日 Photo: Yuzuru SUNADAシーズン序盤から勝ち星を重ねたディラン・フルーネウェーヘン。ツールにはオランダチャンピオンジャージで出場した =ツール・ド・フランス2016第1ステージ、2016年7月2日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ツール後は地元で開催されるUCIワールドツアー、エネコ・ツアーに向けて調整を積んだ。9月19日に開幕した大会では、幕開けとなる第1ステージで見事に優勝。サガンやナセル・ブアニ(フランス、コフィディス ソリュシオンクレディ)といった強豪を寄せ付けず、トップでフィニッシュラインを通過した。今大会は、個人・チームそれぞれTTがあるため、自ら総合優勝を狙うことは難しいが、数ステージでのスプリント勝利は可能だともくろむ。

 そうなると、ロード世界選手権での彼の走りにも期待が高まる。カタールで開催される今年は、スプリンター向けといわれる。どの国もスプリンターを配するなか、フルーネウェーヘンはオランダ代表のエーススプリンターに名乗りをあげた。

 世界一を決める舞台で、実際に勝利を狙える立場となるかは今後の走り次第だが、現在のプロトンにおいて最も勢いのあるスプリンターであることは確か。いま見せる走りから、世界への階段を駆け上がる姿をわれわれは眼に焼き付けておいた方がよいだろう。

活躍が目覚しいディラン・フルーネウェーヘン。このところの走りで世界選手権でもオランダ代表のエーススプリンター候補に名乗りを上げている =ツール・ド・フランス2016第13ステージ、2016年7月15日 Photo: Yuzuru SUNADA活躍が目覚しいディラン・フルーネウェーヘン。このところの走りで世界選手権でもオランダ代表のエーススプリンター候補に名乗りを上げている =ツール・ド・フランス2016第13ステージ、2016年7月15日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。

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