ツール・ド・東北 2016<2>「逆境に負けない」 3764人が駆け抜けた雨の「ツール・ド・東北 2016」

by 後藤恭子 / Kyoko GOTO
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 東日本大震災の復興支援を目的とした「ツール・ド・東北2016」が9月17・18日の2日間にわたって開催され、全国から集まった延べ3764人のサイクリストが被災した宮城県沿岸部に設けられた各コースを自転車で駆け抜けた。宮城県の村井嘉浩知事やキャロライン・ケネディ駐日米国大使をはじめ多くの著名人も出場し、他の参加者や震災被災者らと交流しながら完走した。あいにくの雨模様だったが、参加者からは「逆境に負けない」といった声が聞かれるなど、それぞれの思いが込もったライドが繰り広げられた。

雨の中スタートした「ツール・ド・東北 2016」 Photo:Kyoko GOTO雨の中スタートした「ツール・ド・東北 2016」 Photo:Kyoko GOTO

大会初の2日間開催

スタートラインに並ぶ出走者 Photo:Kyoko GOTOスタートラインに並ぶ出走者 Photo:Kyoko GOTO

 2011年に発生した東日本大震災の復興支援と震災の記憶を未来に残していくことを目的として発足した「ツール・ド・東北」は、今回で4回目の開催を迎えた。

 コースは211kmの「気仙沼フォンド」、170kmの「南三陸フォンド」、100kmの「北上フォンド」、95kmの「気仙沼ワンウェイフォンド」、60kmの「女川・雄勝フォンド」─の5つで構成され、それぞれの走力に応じたコースを選べるのが特徴だ。今年はさらに前日の17日に「牡鹿半島チャレンジグループライド」が新設され、175人が参加。本大会に出場する3589人と合わせ、2日間で3764人ものサイクリストが南三陸の地に集まった。

 気仙沼ワンウェイフォンド以外のスタート・ゴール会場となる石巻専修大学には、雨天の中、出走を断念することなく集まった参加者たちがそれぞれの士気を高め合うように声をかけあう姿が見られた。笑顔で交わす会話に、「『またか』って感じの逆境だけど、負けない」といった参加者の言葉が印象的だった。

スタートラインに並んだ縁で声を掛け合う姿も Photo:Kyoko GOTOスタートラインに並んだ縁で声を掛け合う姿も Photo:Kyoko GOTO
友達同士で参加していた女性二人組 Photo:Kyoko GOTO友達同士で参加していた女性二人組 Photo:Kyoko GOTO
外国人参加者の姿も Photo:Kyoko GOTO外国人参加者の姿も Photo:Kyoko GOTO
出走前の記念撮影に向かってこの表情 Photo:Kyoko GOTO出走前の記念撮影に向かってこの表情 Photo:Kyoko GOTO
60kmチームには「東北応援大使」に就任したパラリンピック選手の谷真海さんや大会公式ソングを手掛けた藤巻亮太さんらが出走 Photo:Kyoko GOTO60kmチームには「東北応援大使」に就任したパラリンピック選手の谷真海さんや大会公式ソングを手掛けた藤巻亮太さんらが出走 Photo:Kyoko GOTO

 スタートは午前5時半、最長距離を走る気仙沼フォンド参加者から順次コースに漕ぎ出した。各コースのスタート直前には参加者全員が震災犠牲者に黙とうを捧げ、復興への思いを胸に力強く出発していった。各コースには「ツール・ド・東北 フレンズ」と呼ばれるゲストがそれぞれ出走し、参加者たちを先導した。

雨をものともせず、笑顔でスタート Photo:Kyoko GOTO雨をものともせず、笑顔でスタート Photo:Kyoko GOTO
沿道からはかわいい声援も Photo:Kyoko GOTO沿道からはかわいい声援も Photo:Kyoko GOTO

ケネディ駐日大使、大川小で献花

 3年連続で参加し、昨年に続き95kmの気仙沼ワンウェイフォンドを走ったキャロライン・ケネディ駐日米国大使は、児童78人が津波の犠牲となった大川小学校に立ち寄った。

 献花台に花を手向け、遺族の話に耳を傾けながら、校舎を約40分間にわたって静かに見て歩いた。息子を亡くし、当時の状況を説明した紫桃隆洋さんによると、ケネディ駐日米国大使は「あなたがたができることは、津波を未来に伝えること。大変なことですが、続けてください」と話したという。

気仙沼湾に沿って地元の声援に手を振って走るキャロライン・ケネディー駐日米国大使 Photo: Kenta SAWANO気仙沼湾に沿って地元の声援に手を振って走るキャロライン・ケネディー駐日米国大使 Photo: Kenta SAWANO
大川小学校で遺族の説明に耳を傾けるキャロライン・ケネディ駐日米国大使 Photo: Kenta SAWANO 大川小学校で遺族の説明に耳を傾けるキャロライン・ケネディ駐日米国大使 Photo: Kenta SAWANO
大川小学校で献花を行い黙とうするキャロライン・ケネディ駐日米国大使 Photo: Kenta SAWANO大川小学校で献花を行い黙とうするキャロライン・ケネディ駐日米国大使 Photo: Kenta SAWANO

村井知事「より多くのサイクリストが訪れてほしい」

 雨は正午ごろには次第に止み始め、サイクリストたちは疲労や達成感、安堵の入り混じった表情でゴールに飛び込んできた。

ゴール時には雨もあがり、参加者の達成感もひとしお Photo:Kyoko GOTOゴール時には雨もあがり、参加者の達成感もひとしお Photo:Kyoko GOTO
北上フォンド(100km)を走り終えた道端カレンさん Photo: Kyoko GOTO北上フォンド(100km)を走り終えた道端カレンさん Photo: Kyoko GOTO

 17日の牡鹿半島でのライドに続き、100kmを完走した「広報大使」の道端カレンさんは、「途中、雨がけっこう強くなってめげそうになったけれど、エイドステーションの温かい食べ物ともてなしに救われた。全てのエイドですべてのフードを食べました!」と完走、完食ともに大満足の様子。「雨はちょっときついけれど、それでも楽しいイベント。おもしろそうと思った人はぜひ来年参加してみて」と呼びかけた。

笑顔でゴールした村井知事 Photo: Kyoko GOTO笑顔でゴールした村井知事 Photo: Kyoko GOTO

 また、今回初出場で60kmを完走した村井知事は『Cyclist』の取材に対し、「参加していただいた皆さんには感謝している。このイベントを機に、より多くのサイクリストにこのエリアを知ってもらい、訪れるようになってほしい」と願いを込めた。

 第1回大会以来、3年ぶりの参加となった別府史之(トレック・セガフレード)も雨の中を力走。「いろんな人とたくさん走りたかったから」と予告していた170kmよりも長い210kmを走った。「第1回大会よりも随分、道が良くなりましたね。普通の道より良いところもあった。窓から乗り出して応援してくれる人もいて東北の人の暖かさを感じました」と変化の印象を語った。

完走を果たし、この表情 Photo:Kyoko GOTO完走を果たし、この表情 Photo:Kyoko GOTO
仲間の出迎えに応える Photo:Kyoko GOTO仲間の出迎えに応える Photo:Kyoko GOTO

 北上フォンドに2年連続で出走したという「ポタガール」の「さおりん」こと後口沙織さんは、「昨年、路上で応援してくれていたおばあちゃんが今年も同じ場所で応援してくれていて嬉しい再会があった」という。さらに今年は、地元の方が自宅を宿として提供する「民泊」を利用し、「とても素敵なご家族に出会うことができて、新しい田舎ができたという感覚。雨できつかったけれど参加できてよかった」と感想を語った。

「ポタガール」のまさみん(左)さおりんも北上フォンド(100km)を完走し、仲良くゴール Photo:Kyoko GOTO「ポタガール」のまさみん(左)さおりんも北上フォンド(100km)を完走し、仲良くゴール Photo:Kyoko GOTO
サイクリストたちを温かく迎える沿道の人々 Photo:Kyoko GOTOサイクリストたちを温かく迎える沿道の人々 Photo:Kyoko GOTO

ご当地グルメを心ゆくまで堪能

 「ツール・ド・東北」のもう1つの名物となっているのが、各エイドステーションで提供される数々の美味しい地元グルメだ。コース上に設けられた10カ所のエイドステーションでは、名物の女川汁やホタテの炊き込みご飯、フカヒレスープ、シーフードカレーやスイーツなどが用意され、その充実ぶりはファンも存在するほど。リピーターの間では、「ツール・ド・東北の茶わん蒸し」といえばどのエイドか分かる、といったおなじみのメニューも存在する。

北上ASで茹でたホヤを食べていた別府史之選手 Photo: Kenta SAWANO北上ASで茹でたホヤを食べていた別府史之選手 Photo: Kenta SAWANO

 ご当地グルメの充実ぶりはエイドステーションだけでなく、大会会場でも盛り上がりを見せていた。

美味しくて、ボリュームたっぷりな食べ物がサイクリストの疲れを癒す Photo:Kyoko GOTO美味しくて、ボリュームたっぷりな食べ物がサイクリストの疲れを癒す Photo:Kyoko GOTO
中央大学と法政大学のトライアスロン部の皆さん。211kmと170kmを走破。「エイドステーションのフードが最高」と言いながら、ゴール後も食欲旺盛! Photo: Kyoko GOTO中央大学と法政大学のトライアスロン部の皆さん。211kmと170kmを走破。「エイドステーションのフードが最高」と言いながら、ゴール後も食欲旺盛! Photo: Kyoko GOTO

 飲食ブースでは地元の飲食店が自慢の料理をふるまい、また「ツール‟丼”東北」というコンテスト企画のもと、各店が考案したオリジナル丼ぶりを提供。ホタテやホヤなど海産物を使ったユニークな丼ぶりや、シーフードをふんだんに使ったパエリヤなどが並ぶ中から、サイクリストを含む来場者の人気投票によって後日「グランプリ」が決まる。

地元で獲れた地元の海産物が並ぶ Photo:Kyoko GOTO地元で獲れた地元の海産物が並ぶ Photo:Kyoko GOTO
地元の珍味、ほや  Photo:Kyoko GOTO地元の珍味、ほや  Photo:Kyoko GOTO
「漁師のほやビビンバ丼 Photo:Kyoko GOTO「漁師のほやビビンバ丼 Photo:Kyoko GOTO
三陸パエリア Photo:Kyoko GOTO三陸パエリア Photo:Kyoko GOTO
牡蠣天丼 Photo:Kyoko GOTO牡蠣天丼 Photo:Kyoko GOTO

 また、大会の後半には、大会公式テーマソング『LIFE』を手掛け、自ら「女川・雄勝フォンド」を走った「レミオロメン」(活動休止中)ボーカル、藤巻亮太さんによるミニライブも開催され、参加者は藤巻さんの柔らかい歌声に聞き入っていた。

大会公式テーマソング『LIFE』を歌う藤巻亮太さん Photo:Kyoko GOTO大会公式テーマソング『LIFE』を歌う藤巻亮太さん Photo:Kyoko GOTO
藤巻亮太さんによるミニライブに、参加者のみならず地元のファンも訪れていた Photo:Kyoko GOTO藤巻亮太さんによるミニライブに、参加者のみならず地元のファンも訪れていた Photo:Kyoko GOTO

ケネディ駐日大使 来年参加に意欲

 イベントの最後には、主催者であるヤフージャパンの宮坂学・代表取締役社長からケネディ駐日大使へ「完走賞」が贈られた。

完走賞を受け取るケネディ駐日大使とヤフージャパンの宮坂代表取締役社長 Photo:Kyoko GOTO完走賞を受け取るケネディ駐日大使とヤフージャパンの宮坂代表取締役社長 Photo:Kyoko GOTO

 ケネディ駐日大使は、「毎年沿道で応援してくださる地域社会の皆さまの雰囲気と暖かさに勇気づけられている。私はみなさんとこの経験から本当に多くのものを学びました」と述べ、さらに「おそらくみなさんは今回が私の最後の参加になると思っていると思いますが、あまりにも楽しかったので何とかまた参加する方法を考えるかもしれません」と来年の参加に向けて意欲を示し、会場から拍手が送られた。

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