戦略も重要な2区間制のヒルクライム大会西日本最高峰を望む愛媛の「石鎚山ヒルクライム」 雨の中600人が熱い走り

by 米山一輝 / Ikki YONEYAMA
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 西日本最高峰・1982mの石鎚山(いしづちさん)にチャレンジするヒルクライムレース「石鎚山ヒルクライム」が9月4日、愛媛県の久万高原町で行われた。あいにくの雨模様となったものの、県内外から集まった600人余りの参加者が元気に、全国でも珍しい2区間制のヒルクライムに挑んだ。

雨と霧が煙る幻想的な景色のなか、第6回となる「石鎚山ヒルクライム」が開催された (石鎚ヒルクライム実行委員会提供)雨と霧が煙る幻想的な景色のなか、第6回となる「石鎚山ヒルクライム」が開催された (石鎚ヒルクライム実行委員会提供)

愛媛の自転車新文化を牽引する人気大会

トークショーに立つ門田基志選手(チームジャイアント)。地元愛媛在住のプロライダーとして、レースだけでなくサイクルイベントや自転車新文化の仕掛人としても活躍する Photo: Ikki YONEYAMAトークショーに立つ門田基志選手(チームジャイアント)。地元愛媛在住のプロライダーとして、レースだけでなくサイクルイベントや自転車新文化の仕掛人としても活躍する Photo: Ikki YONEYAMA

 今回で第6回を数えた石鎚山ヒルクライムは、「サイクリングパラダイス」をスローガンに掲げる愛媛県内で、次々生まれているサイクルイベントのさきがけとして始まった大会。四国地域の人気大会としてすっかり定着し、瀬戸内海をはさんだ中国地方からも多数の参加者が訪れる。700人の定員のうち県内枠の約500人は、今年は募集から10分で定員に達したという。

 コースは紅葉で知られる面河渓(おもごけい)の「おもごふるさとの駅」から、標高1492mの土小屋までの22.1kmを走る。途中に3.7kmの下りが挟まるため、上り区間のみを前後2区間に分け、それぞれでタイムを計測し、合計タイムで順位を競う。タイム計測区間(合計18.4km)の標高差は1100mで、平均勾配は6.0%となる。

前日イベントでは法螺貝の体験コーナーも開かれた Photo: Ikki YONEYAMA前日イベントでは法螺貝の体験コーナーも開かれた Photo: Ikki YONEYAMA
審判長の元競輪選手、菊池仁志さんが初心者が陥りがちな悩みの対策をレクチャー Photo: Ikki YONEYAMA審判長の元競輪選手、菊池仁志さんが初心者が陥りがちな悩みの対策をレクチャー Photo: Ikki YONEYAMA

 第1区間と第2区間の間はリエゾン(移動)となり、途中には給水所も設けられる。2区間のペース配分やリエゾン区間の使い方など、好タイムを狙うには戦略面も重要になる。

 大会前日にはスタート地点の「おもごふるさとの駅」で、前日受付とともに「ヒルクライムフェスティバルin石鎚」として、マウンテンバイクプロライダーの門田基志選手のトークショーや、審判長のお悩み相談室、法螺貝やアロマオイルトリートメントの実演、抽選会やじゃんけん大会などが行われた。

スポーツアロマ・コンディショニングの軽部修子代表がアロマオイルのケアを実演 Photo: Ikki YONEYAMAスポーツアロマ・コンディショニングの軽部修子代表がアロマオイルのケアを実演 Photo: Ikki YONEYAMA
「愛媛マルゴト自転車道」のブースでは、今年春から配布の各コースの写真入りコースマップをアピール Photo: Ikki YONEYAMA「愛媛マルゴト自転車道」のブースでは、今年春から配布の各コースの写真入りコースマップをアピール Photo: Ikki YONEYAMA

霧深い頂上を目指して

 九州・四国地域に向けて進んだ台風12号により開催が危ぶまれた今大会だが、幸い直撃をまぬがれ無事開催された。大会当日は雨天にもかかわらず、早朝からスタート地点に多くの参加者が集まり号砲の時間を待った。午前9時から上級者向けの「四国のてっぺんクラス」を先頭に、年齢・性別・車種で分かれた各クラスの選手が5分ごとにスタートを切った。

愛媛県内外から多くの参加者が集う人気の大会とあって数百台の自転車がずらり Photo: Ikki YONEYAMA愛媛県内外から多くの参加者が集う人気の大会とあって数百台の自転車がずらり Photo: Ikki YONEYAMA
サイクルジャージであいさつに立った髙野宗城・久万高原町長。上甲俊史・愛媛県副知事(左)とともにヒルクライムに参加し見事完走 Photo: Ikki YONEYAMAサイクルジャージであいさつに立った髙野宗城・久万高原町長。上甲俊史・愛媛県副知事(左)とともにヒルクライムに参加し見事完走 Photo: Ikki YONEYAMA
カペルミュールはコンパクトに折りたためるレインジャケットも販売。この日は雨とあって「売れてます」 Photo: Ikki YONEYAMAカペルミュールはコンパクトに折りたためるレインジャケットも販売。この日は雨とあって「売れてます」 Photo: Ikki YONEYAMA
「スポーツアロマ・コンディショニング」のレース前ケアを受けて準備万端! Photo: Ikki YONEYAMA「スポーツアロマ・コンディショニング」のレース前ケアを受けて準備万端! Photo: Ikki YONEYAMA
応援に来る人も個性的。地元テレビ愛媛も実走取材 Photo: Ikki YONEYAMA応援に来る人も個性的。地元・テレビ愛媛も実走取材 Photo: Ikki YONEYAMA
「四国のてっぺんクラス」がスタート! Photo: Ikki YONEYAMA「四国のてっぺんクラス」がスタート! Photo: Ikki YONEYAMA

 前半の第1区間は11.0kmで、面河川沿いの序盤4kmはほぼ平坦基調だが、石鎚スカイラインに入って以降は急峻に立ち上がる石鎚山系の斜面を見下ろしながら、第1区間ゴールまで平均斜度8%弱の厳しい上りが5km以上続く。霧が深まるなか第1区間を終えると、リエゾン区間の給水所で息を整えて、第2区間に挑む。後半は7.4kmは平均勾配こそ7%弱と若干緩むものの、標高が上がって厳しさを増す風雨と、距離を重ねての疲労がライダーを苦しめた。

第1区間のゴール Photo: Ikki YONEYAMA第1区間のゴール Photo: Ikki YONEYAMA
リエゾン区間に設けられた給水所 Photo: Ikki YONEYAMAリエゾン区間に設けられた給水所 Photo: Ikki YONEYAMA
第2区間のスタート。すぐに急勾配が始まる Photo: Ikki YONEYAMA第2区間のスタート。すぐに急勾配が始まる Photo: Ikki YONEYAMA
雨のなか独走でゴールに飛び込む真嶋伸一郎選手 (石鎚ヒルクライム実行委員会提供)雨のなか独走でゴールに飛び込む真嶋伸一郎選手 (石鎚ヒルクライム実行委員会提供)

 ゴールまで2kmを切ると、遠くにゴール地点で鳴らされる法螺貝の音がこだまする。残り200mでついにゴールゲートが視界に入り、大きなレッドブルのゲートをくぐりゴール。「四国のてっぺんクラス」では広島県から参加の真嶋伸一郎選手(ガルバ興業 in チーム ケンズ)が、香川県の川田直輝選手(FUNNY RIDE)と合計49分台の争いを制して優勝した。

ゴール前では勇壮な法螺貝の音が響く (石鎚ヒルクライム実行委員会提供)ゴール前では勇壮な法螺貝の音が響く (石鎚ヒルクライム実行委員会提供)
トレック・ジャパンの田村芳隆社長もレースに参加。「今年は練習していなくてキツかった」と言いつつも記者は2回抜かれました… Photo: Ikki YONEYAMAトレック・ジャパンの田村芳隆社長もレースに参加。「今年は練習していなくてキツかった」と言いつつも記者は2回抜かれました… Photo: Ikki YONEYAMA
ゴール後の下りは協力ライダーが先導してグループで安全にダウンヒル (石鎚ヒルクライム実行委員会提供)ゴール後の下りは協力ライダーが先導してグループで安全にダウンヒル (石鎚ヒルクライム実行委員会提供)

「四国のてっぺん」巡り熱戦

「四国のてっぺんクラス」表彰。(左から)男子2位の川田直輝選手、女子1位の栗原春湖選手、男子1位の真嶋伸一郎選手、男子3位の宮内渉選手 Photo: Ikki YONEYAMA「四国のてっぺんクラス」表彰。(左から)男子2位の川田直輝選手、女子1位の栗原春湖選手、男子1位の真嶋伸一郎選手、男子3位の宮内渉選手 Photo: Ikki YONEYAMA

 「作戦通りに走れた」と話すのは、てっぺんクラス優勝の真嶋選手。多くのヒルクライム大会で優勝している猛者だ。石鎚の大会は初挑戦だったが、事前に試走して準備は万全だったという。作戦通り第1区間でまずトップを取り、余裕を持つ形で第2区間をスタート。「(2位の)川田選手をマークして、弱ったところでアタックして独走に持ち込みました」とレース展開を語る。珍しい2区間制のレースには「ヒルクライムとしては距離が長くて面白かった」と好印象だ。来年に向けても「また“てっぺん”取ります」と意気込みをみせた。一方2位の川田選手は「力の差を見せつけられて、かなわなかった」と勝者をたたえつつも、「四国のレースなので」と悔しそう。「来年は自分が“てっぺん”取ります」と力強く宣言した。

レース後はトマト、バナナ、ぶどう、プリンなどがふるまわれた Photo: Ikki YONEYAMAレース後はトマト、バナナ、ぶどう、プリンなどがふるまわれた Photo: Ikki YONEYAMA
リザルト表で自分のタイムと順位をチェック Photo: Ikki YONEYAMAリザルト表で自分のタイムと順位をチェック Photo: Ikki YONEYAMA
美味しいあゆとあまごの塩焼き Photo: Ikki YONEYAMA美味しいあゆとあまごの塩焼き Photo: Ikki YONEYAMA
会場に出店した久万高原町のカフェ「プティ・クリフ」のおすすめはメロン大福 Photo: Ikki YONEYAMA会場に出店した久万高原町のカフェ「プティ・クリフ」のおすすめはメロン大福 Photo: Ikki YONEYAMA
焼きとうきびも美味しい Photo: Ikki YONEYAMA焼きとうきびも美味しい Photo: Ikki YONEYAMA
トレックはカンチェッラーラ特別カラー「スパルタクス」のバイクを展示 Photo: Ikki YONEYAMAトレックはカンチェッラーラ特別カラー「スパルタクス」のバイクを展示 Photo: Ikki YONEYAMA
髙野町長がみずから表彰 Photo: Ikki YONEYAMA髙野町長がみずから表彰 Photo: Ikki YONEYAMA

 表彰式ではレース中に降り続いた雨も上がり、文字通り晴れやかな雰囲気のなか各クラスの上位3位まで表彰された。このほかほか特別賞として、「最重量賞」や「遠方賞」「最高齢賞」といった表彰も行われた。74歳の髙野宗城・久万高原町長も合計2時間26分で完走を果たし、表彰式では各クラスの入賞者に「ものすごいタイムですね!」と実感を込めて語りかけていた。

 表彰式に続いて抽選会が行われ、協賛自転車メーカーの製品や、地元のお米、ホテル宿泊券など豪華賞品が当選者に贈られた。最後に登場したのはANAの松山~那覇往復航空券に「ツール・ド・おきなわ」出場権が付くというもの。見事地元愛媛県内からの参加者が引き当て、会場は大いに盛り上がった。

愛媛県のイメージアップキャラクター「みきゃん」は、2017年に行われる愛媛国体をPR Photo: Ikki YONEYAMA愛媛県のイメージアップキャラクター「みきゃん」は、2017年に行われる愛媛国体をPR Photo: Ikki YONEYAMA
ANAの沖縄往復航空券&ツール・ド・おきなわ参加権も抽選に Photo: Ikki YONEYAMAANAの沖縄往復航空券&ツール・ド・おきなわ参加権も抽選に Photo: Ikki YONEYAMA

記者もレースを体験

今回はGIANTのDEFY ADVANCEDを借りてヒルクライムにチャレンジした。上りの軽快さだけでなく、雨の下りではディスクブレーキの安心感が絶大だった Photo: Ikki YONEYAMA今回はGIANTのDEFY ADVANCEDを借りてヒルクライムにチャレンジした。上りの軽快さだけでなく、雨の下りではディスクブレーキの安心感が絶大だった Photo: Ikki YONEYAMA

 大会当日は記者もレースに出走、“四国のてっぺん”を目指すコースを体感した。スタート直後の平坦区間はトップが見える位置で快走し、「これはなかなか行けるかも?」と思ったが、まったくの気のせいだった。本格的な上りに入ると体重が両脚に重くのしかかる。霧に煙る谷を見下ろしつつ、心臓が口から飛び出そうな苦しさにあえぎながら、ものすごい勢いで後ろから来た選手たちに抜かれてしまう。何とかギリギリ耐えられる強度に保って第1区間を終えた。

 途中の給水ポイントで一旦休憩している選手が多かったが、時間が気になるのと体を冷やしたくないのとで、すぐに第2区間へと向かった。雨が大分強くなってくるが、ヒルクライムで体が温まっていると寒さは感じない。終盤は筋肉の疲労からか、あまり心拍も上がらなくなったが、何とか耐えてゴールを切った。

あまりにツラくて、頂上に着いた後で自分の写真を撮るのを忘れてしまった。お世話になったレッドブルガールのお姉さんの写真も手が震えてご覧の状態 Photo: Ikki YONEYAMAあまりにツラくて、頂上に着いた後で自分の写真を撮るのを忘れてしまった。お世話になったレッドブルガールのお姉さんの写真も手が震えてご覧の状態 Photo: Ikki YONEYAMA

 感想としては、とにかくツラかったのだが、コースはギアを軽くすれば遅いなりにも苦しみすぎず上りきれる、ちょうど良い勾配のコースだった。そして西日本最高峰を上ったという達成感。ゴール後の長い下りは少々寒かったが、逆走するとリエゾン区間が逆に少しの上りとなって、身体を温め直すことができた。下りきった後は参加賞の温かいうどんや、地元の味覚をたっぷり味わい、消費カロリー分はすぐに取り戻してしまったかも知れない。

 タイムはなかなか残念な結果で、門田選手に話したら「それは来年リベンジしないと!」と言われてしまった。確かにその通りだ。目の前の誰かと競うだけでなく、前の年の自分を目標に挑むことができる。ヒルクライムレースの面白いポイントだと感じた。

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