上級者から小学生まで大満足のコース1年に1度“ぶっつけ本番”の上り坂 おもてなしも充実の「嬬恋キャベツヒルクライム」

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 自転車が通行できるのは1年に1度だけという群馬県嬬恋村の「万座ハイウェー」を、サイクリストたちが3年ぶりに駆け上った。9月11日に開かれた「嬬恋キャベツヒルクライム2016」には最速タイムを競うヒルクライマーから、一緒に走る喜びを味わう親子まで607人が集まった。開放的で走りやすいコースも、参加賞のキャベツなど名産をふんだんに使ったおもてなしも“キャベヒル”の魅力だ。

長い直線の道を上っていく「嬬恋キャベツヒルクライム」の参加者たち Photo: Naoi HIRASAWA長い直線の道を上っていく「嬬恋キャベツヒルクライム」の参加者たち Photo: Naoi HIRASAWA

下り区間はいいアクセント

申請タイムの上位選手で行われたエキスパート男子のスタート Photo: Kenta SAWANO申請タイムの上位選手で行われたエキスパート男子のスタート Photo: Kenta SAWANO

 自動車専用の有料道路が舞台となるキャベヒルは、大会前に試走することができないため、誰もがぶっつけ本番で臨む。JR万座・鹿沢口駅の近くにスタート地点が設けられ、万座ハイウェーの入り口に向けて上っていくところから始まる。少しずつ離れていく街を眺めると「これからヒルクライムが始まるんだ」とワクワクさせられる。料金所を自転車で勢いよく通過するなんて、めったに経験できるものではない。

万座ハイウェーの料金所を通過するNIPPO・ヴィーニファンティーニの(左から)小石祐馬選手と山本元喜選手 Photo: Naoi HIRASAWA万座ハイウェーの料金所を通過するNIPPO・ヴィーニファンティーニの(左から)小石祐馬選手と山本元喜選手 Photo: Naoi HIRASAWA

 全長19.8km、標高差1012mのコースは平均勾配約5%ながら、ところどころに下っている区間もあるため、上り坂だけなら走り応えは数字以上だ。とはいえ、その下りもいいアクセントになっていて、ひたすら上り続けるヒルクライムコースとはひと味違った趣がある。荒れた箇所の見当たらない路面は走りやすく、2車線の道路を規制したコースは広々として解放的だ。

「最高の景色だね」と絶景を楽しみながら走る参加者 Photo: Kenta SAWANO「最高の景色だね」と絶景を楽しみながら走る参加者 Photo: Kenta SAWANO
上りながらも余裕な様子で、笑顔を見せる女性参加者 Photo: Naoi HIRASAWA上りながらも余裕な様子で、笑顔を見せる女性参加者 Photo: Naoi HIRASAWA

姉弟そろって初優勝

総合男子、女子で優勝を決めた狩野綾さん(右)、敦さん姉弟 Photo: Kenta SAWANO総合男子、女子で優勝を決めた狩野綾さん(右)、敦さん姉弟 Photo: Kenta SAWANO

 一般の部女子と一般の部総合を初制覇したのは上毛レーシングに所属する狩野綾さん(28)、敦さん(26)姉弟だった。綾さんは漫画「弱虫ペダル」が大好きだった友人の影響でロードバイクに乗り始めた。競技歴1年半で、2位に約5分30分差をつける1時間5分39秒35の好タイムを叩き出した。学童保育の指導員として午後からの勤務のため、午前中に毎日のように練習を重ねた。弟の敦さんは高崎市の重田自転車店に勤務し、競技歴も長いだけに「姉には毎日ローラー台に乗るように言ってます」。兄弟で協力して初優勝を勝ち取った。

一般総合の部で優勝した狩野亮さん(先頭) Photo: Naoi HIRASAWA一般総合の部で優勝した狩野亮さん(先頭) Photo: Naoi HIRASAWA
35歳以下女子の部 Photo: Kenta SAWANO35歳以下女子の部 Photo: Kenta SAWANO
ファンライド親子の部で優勝した佐竹智恵子さん(右)、清亮くん親子。左は父の学さん Photo: Kenta SAWANOファンライド親子の部で優勝した佐竹智恵子さん(右)、清亮くん親子。左は父の学さん Photo: Kenta SAWANO

 ショートコースの6.2kmで行われたファンライド親子の部では、佐竹智恵子さん、清亮くん親子(千葉県浦安市)が優勝。清亮くんは普段マウンテンバイクのレースに出場しており、ヒルクライム大会は初参加。応援していた父の学さんは「なかなか小学校低学年が参加できるヒルクライム大会が少ないので貴重な経験ができました。安全で景色が良いのが何よりです」と家族で喜んだ。

初挑戦で思い思いの楽しみ方

初めてのヒルクライムを完走した松永雪さん(左)、飯田桃子さん Photo: Naoi HIRASAWA初めてのヒルクライムを完走した松永雪さん(左)、飯田桃子さん Photo: Naoi HIRASAWA

 優勝者以外の参加者も、思い思いに大会を堪能した。東京から参加した飯田桃子さんと松永雪さんは初めてのヒルクライムを「楽しかった」と笑顔で振り返った。トライアスロンのため自転車に挑戦し始めて約5カ月という飯田さんは「遅いので、がんばらずにいかにラクをして上るか、そして景色を楽しむかに徹しました」と余裕の表情。上りが得意ではないと話す松永さんは「フラットになる区間が気持ちよかった」と、上りだけではないキャベヒルのコースで爽快感を味わった。

コースの終盤に向かって平坦な区間を走る参加者たち Photo: Naoi HIRASAWAコースの終盤に向かって平坦な区間を走る参加者たち Photo: Naoi HIRASAWA
給水所ではボランティアが水やスポーツドリンクを手渡した Photo: Naoi HIRASAWA給水所ではボランティアが水やスポーツドリンクを手渡した Photo: Naoi HIRASAWA
完走した達成感を味わっていた宮城妥明さん(左)と富澤祐紀さん Photo: Naoi HIRASAWA完走した達成感を味わっていた宮城妥明さん(左)と富澤祐紀さん Photo: Naoi HIRASAWA

 大学時代からの友人という宮城妥明(やすあき)さんと富澤祐紀さんはともに群馬県内から参加した。初体験のヒルクライム挑戦で不安を抱えてのスタートだったが、ほとんど同じペースで完走した。宮城さんは「上って来られてよかった。大満足です」と語り、富澤さんは「達成感がありますね。一度も足を着かずに上れました」と充実した表情を見せた。

「ドカーンと広い」万座ハイウェー

ゴールし笑顔でガッツポーズする団長安田さん Photo: Kenta SAWANOゴールし笑顔でガッツポーズする団長安田さん Photo: Kenta SAWANO

 ゲスト参加したお笑いトリオ「安田大サーカス」の団長安田さんは、ファンライドの部と一緒に最後尾からスタート。一般の部の参加者たちを次々と追い越しながら声援を送った。最後は力を振り絞ってダンシング。右手でガッツポーズしながらゴールした。

 しばらくゴール付近で完走者にねぎらいの言葉をかけると「ちょっと応援してくるわ」とコースを逆走し、最後の急坂まで戻って「もうすぐゴールですから、この上りはサボって、下りで踏んで勢いをつけてください!」と声を枯らしていた。

ゴール後、コースに戻り参加者を応援する団長安田さん Photo: Kenta SAWANOゴール後、コースに戻り参加者を応援する団長安田さん Photo: Kenta SAWANO

 久々に走った万座ハイウェーについて団長安田さんは「(自身が)よく言う『苦し楽し大好き』ができる最高のコース。平坦や緩やかな上り、下りもあって、晴れれば景色もいい。つづら折りで前が見えないような峠もあるけど、道幅がドカーンと広くて見通しがいい感じはここならでは」と絶賛した。

走りながら参加者たちに声援を送った団長安田さん Photo: Naoi HIRASAWA走りながら参加者たちに声援を送った団長安田さん Photo: Naoi HIRASAWA
Cyclist記者もカメラを背負って1年に1度のヒルクライム Photo: Kenta SAWANOCyclist記者もカメラを背負って1年に1度のヒルクライム Photo: Kenta SAWANO

 さらに、スタート地点がメイン会場近くに設けられていることも高く評価した。誰もいない山奥からスタートするヒルクライム大会もあるなか、「パレード走行じゃなくて、街中からレースが始まるのはなかなかないですよ。プロのレースみたいでよかった」とコース設定を歓迎した。名産のトウモロコシが入ったコーンスープも気に入ったようで、「ゴール後のコーンスープっていいんですね」と新たな発見に目を輝かせていた。

ゴール後のおもてなし、笹まんじゅうをゲットした団長安田さん Photo: Naoi HIRASAWAゴール後のおもてなし、笹まんじゅうをゲットした団長安田さん Photo: Naoi HIRASAWA
最後まで残った子供たちにボトルのプレゼントをする団長安田さん Photo: Kenta SAWANO最後まで残った子供たちにボトルのプレゼントをする団長安田さん Photo: Kenta SAWANO

手厚いおもてなし「来年も来てね」

参加賞の嬬恋キャベツプレゼントコーナーも大盛況だった Photo: Kenta SAWANO参加賞の嬬恋キャベツプレゼントコーナーも大盛況だった Photo: Kenta SAWANO

 レース後のメイン会場では、嬬恋村の食材を使った料理を提供する「おもてなしテント」が大盛況だった。けんちん汁、朝採れのキャベツのザク切り、ゆでたトウモロコシ、カボチャのカリントウ、カボチャのケーキなどが勢ぞろいした。ゲストの山本元喜選手(NIPPO・ヴィーニファンティーニ)も一般参加者と一緒にけんちん汁を試食。「本当においしいし、こういう地元の方のおもてなしは本当にありがたいですね」と舌鼓を打った。

 ほかにも、参加者には大会名の由来でもある「嬬恋高原キャベツ」が1人1個ずつ贈られた。レースを終えた参加者は続々とテントに集まり、大きな参加賞に満面の笑みだった。

NIPPO・ヴィーニファンティーニの小石祐馬選手(中央)と山本元喜選手 Photo: Kenta SAWANONIPPO・ヴィーニファンティーニの小石祐馬選手(中央)と山本元喜選手 Photo: Kenta SAWANO
朝採れのトウモロコシも大人気だった Photo: Kenta SAWANO朝採れのトウモロコシも大人気だった Photo: Kenta SAWANO
表彰式で入賞者に一人ずつ「来年も来てね」と声をかけた嬬恋村の熊川栄村長(左) Photo: Kenta SAWANO表彰式で入賞者に一人ずつ「来年も来てね」と声をかけた嬬恋村の熊川栄村長(左) Photo: Kenta SAWANO

 嬬恋村の熊川栄村長は表彰式でプレゼンターを務め、入賞者一人ひとりに「来年も来てね」と声をかけた。次回はさらに充実した大会に成長させる意気込みで、「参加者からはコースがいいという評価をいただいた。周囲には乗鞍や赤城山、榛名山などがあるが、嬬恋には嬬恋なりの特色があるので一歩一歩前進していきたい」と決意表明。「今後もホスピタリティに努めていきたい」と、さらなるおもてなしを約束した。

早朝から参加者のためにけんちん汁を作ってくれた地元の皆さん Photo: Kenta SAWANO早朝から参加者のためにけんちん汁を作ってくれた地元の皆さん Photo: Kenta SAWANO
下山時には、有志の参加者が先導役を務めた Photo: Naoi HIRASAWA下山時には、有志の参加者が先導役を務めた Photo: Naoi HIRASAWA

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