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全国から集まった160人のサイクリスト宮澤崇史さんと阿蘇を走った、見た、学んだ熊本地震復興応援ライド「La CORSA Kyusyu」

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 4月に起きた熊本大地震から4カ月。元プロロードレーサーの宮澤崇史さんと一緒に熊本・阿蘇周辺をサイクリングする熊本復興支援プロジェクト「La CORSA Kyusyu」(ラ・コルサ九州)が8月20、21日、開催された。20日夜には宮澤さんのセミナーも開催され、2日間で合計160人のサイクリストが九州のみならず全国から集まった。福岡県在住で今回のイベントでライドリーダーを務めたグループ「MOZU COFFEE」の一員として走った岩永隼士さんのレポートでお届けします。

阿蘇市内には地震による大きな断層がまだ残っている Photo: Atsushi TANNO阿蘇市内には地震による大きな断層がまだ残っている Photo: Atsushi TANNO

サイクリストの聖地・阿蘇

 我々九州在住のサイクリストにとって、阿蘇とは特別な場所である。もちろん、他にも九州には素晴らしい場所がとても多い。しかし、それでもやはり阿蘇はスペシャルなのである。県外からの来客には胸を張って阿蘇サイクリングを勧める。「こんなところ、他になかなかないでしょ?」と。

阿蘇大橋近くの国道57号線は崩落した土砂で通行止めのままだった Photo: Atsushi TANNO阿蘇大橋近くの国道57号線は崩落した土砂で通行止めのままだった Photo: Atsushi TANNO

 皆さんは「阿蘇」と聞いて何をイメージするだろうか。雄大な自然。火山・温泉。おいしい食事……。筆者ならばそのあたりを挙げるだろう。もっと挙げたいくらいだが。今年2016年、イメージされるものに「地震」が加わった。九州全域を襲った熊本地震。聖地・阿蘇もまた、大きな被害にあった。

 ショックだった。報道写真で見る風景。今までと違う。かの有名なラピュタの道や、阿蘇の玄関であった赤橋こと阿蘇大橋も崩れてしまった。熊本市内と繋がる主要な道が分断されたことにより、陸の孤島となった阿蘇。我々の仲間も被災した。

〝コルナゴ部長〟こと中尾公一さんが撮影した4月14日、震災当日早朝のラピュタ Photo: Koichi NAKAO〝コルナゴ部長〟こと中尾公一さんが撮影した4月14日、震災当日早朝のラピュタ Photo: Koichi NAKAO
震災3日後の4月17日、所々が崩落したラピュタ。路面にも亀裂が入っている Photo: Koichi NAKAO震災3日後の4月17日、所々が崩落したラピュタ。路面にも亀裂が入っている Photo: Koichi NAKAO

正屋・岩崎さんと「継続的に」動く

 始まりは1本の電話から。4月、熊本地震から少し経ったある日、福岡県・福岡市のプロショップ「正屋」の岩崎正史さんの元へ1本の電話が入った。「熊本のために何かしたい。できることはないか。1回だけではなく、継続的に」。元プロロードレーサー・宮澤崇史さんからだった。熊本にはなにかと縁のあった宮澤さん。毎年訪問しており、熱心なファンも多い。そんな熊本で起きた地震。すぐに体が動いたそうだ。 

震災直後から熊本のサポートに動いてきた「正屋」の岩崎正史さん Photo: Atsushi TANNO震災直後から熊本のサポートに動いてきた「正屋」の岩崎正史さん Photo: Atsushi TANNO
毎年、熊本を訪れる縁でイベントを企画した宮澤崇史さん Photo: Atsushi TANNO毎年、熊本を訪れる縁でイベントを企画した宮澤崇史さん Photo: Atsushi TANNO

 その当時、すでに熊本入りしていた岩崎さん。早速宮澤さんと計画を始めることに。正屋併設の「5cafe」で何度も打ち合わせを行い、熊本地震復興応援イベント「La CORSA Kyusyu」の開催が決まった。熊本のサイクリストが再び走り出せるきっかけとなれば。県外の人には、阿蘇を楽しみながら知ってもらう旅になれば。素晴らしい景色や、食事を楽しんでもらう。それが観光地・阿蘇復興の一助になれば。その想いに共感してスタッフも集まった。

宮澤崇史さんを先頭に、九州や日本中から集まったサイクリストが続いた Photo: Atsushi TANNO宮澤崇史さんを先頭に、九州や日本中から集まったサイクリストが続いた Photo: Atsushi TANNO

地元・熊本のサイクリストも参加

 8月20日、21日。阿蘇の晴天のもと、地元・熊本からの参加者をはじめ160人のサイクリストたちが集まった。被害の大小はあれ、生活が大きく変わってしまった熊本のサイクリスト。自転車に乗る機会が減ってしまった方も多い。そんな中、大勢集まったのはやはり宮澤さんのパワーだろう。

 宮澤さんが来る!もうこれだけで嬉しいのだ。TVで見たヒーロー、世界を相手に戦ったブラーヴォタカシ。一緒に走るだけで元気になれる。

夏の阿蘇を最高の笑顔で走る宮澤崇史さん Photo: Atsushi TANNO夏の阿蘇を最高の笑顔で走る宮澤崇史さん Photo: Atsushi TANNO

 初日は地震の影響が比較的少ない外輪山を走る。阿蘇の草原をのんびりとしたペースで駆け抜けてゆく。そこには参加者一人一人に声をかけ、気持ちをほぐしていく宮澤さんの姿があった。若干緊張の面持ちだった参加者たちに笑顔が広がっていく。「やっぱりカッコいい。」「思ってた以上に気さくな人だった!」

 幸運なことに、筆者は宮澤さんの番手について走る機会を得たのだが、引退してもなお力強い走りを目の当たりにすることとなった。引退後は月間250kmくらいしか走っていないと聞いていたのだけれど……。プロというものはこうもキレイにカッコよく走るものかと驚いた。

1日目を走り切ったサイクリストを仲間が前輪アーチで迎える Photo: Atsushi TANNO1日目を走り切ったサイクリストを仲間が前輪アーチで迎える Photo: Atsushi TANNO

〝本気で遊ぶ〟大人たち

仲間が作った前輪アーチを笑顔でくぐる女性ライダー Photo: Atsushi TANNO仲間が作った前輪アーチを笑顔でくぐる女性ライダー Photo: Atsushi TANNO

 宮澤さんは楽しむことに関してもプロだった。写真をご覧いただくとわかると思うのだが、「本気で遊ぶ」ということを思い出させてくれた。大人になってしまった我々。たまに本気で遊ぶのは大事なことなのだと再確認。宮澤さんはこう語る。「楽しく、カッコよくがいい」。自らが率先して楽しみ、皆を巻き込んでいくスタイルだ。

 帰ってきた参加者を待つのは「前輪アーチ」これも宮澤さんの発案だ。サイクリストの結婚式でよく見かけるらしい。先に辿り着いた人からアーチに参加していく。アーチはどんどんと長くなり、最後の組がゴールした時には約20mほどに。皆のアーチを抜けた先では宮澤さんとハイタッチ!

1日目の夜には、蘇山郷で世界を知る宮澤崇史さんの丁寧なセミナーが開催された Photo: Atsushi TANNO1日目の夜には、蘇山郷で世界を知る宮澤崇史さんの丁寧なセミナーが開催された Photo: Atsushi TANNO
懇親会では豪華賞品の当たるじゃんけん大会で大盛り上がり Photo: Atsushi TANNO懇親会では豪華賞品の当たるじゃんけん大会で大盛り上がり Photo: Atsushi TANNO

 夜のサイクルセミナーでは「自転車を上手く走らせる」ということをテーマに解説が進む。パワーはもちろん大事だが、そのパワーをいかに無駄なく前に進むことに使うか。参加者からの質問も飛び交い、活気あるセミナーとなった。あの力強いダンシングの秘訣を少し知ることができたのではないだろうか。

 懇親会での一コマ。じゃんけん大会では宮澤さん秘蔵の品をプレゼント。全てのアイテムが世界レベルの貴重品だった。

地震の爪痕を巡る

阿蘇大橋の崩落個所。突然道がなくなっている Photo: Atsushi TANNO阿蘇大橋の崩落個所。突然道がなくなっている Photo: Atsushi TANNO

 2日目は地震の爪痕が多く残る地域を巡るライドとなった。コースアテンドを行ったのは、宿泊・セミナー会場としても利用させて頂いた「阿蘇内牧温泉・蘇山郷」にお勤めの中尾公一さん。「コルナゴ部長」としても知られる中尾さん。ハンドルネーム通りにコルナゴを駆る素敵なサイクリストだ。

 地元・阿蘇の道を知り尽くしており、地震被害の残る地域を案内してくれた。「震災の直後は崩落跡などを直視できなかった。宿の周囲を自転車で巡り、少しずつ心がほぐれていった」職場の蘇山郷も被災し、愛したホームコースも崩落等で変わってしまった。中尾さんのショックは計り知れない。それでも、今の阿蘇を知ってほしいと被災状況の案内を行っている。

地震により陥没した道路を見つめる Photo: Atsushi TANNO地震により陥没した道路を見つめる Photo: Atsushi TANNO

 コースでは断層や崩落、そして倒壊した家々を目の当たりにした。自然の力を前に参加者一同、言葉に詰まる。「こんなに崩れていたなんて……」途中、家屋の片づけをしている女性に出会った。笑顔が印象的な彼女は我々を歓迎してくれた。

家屋の片づけをしている女性が、笑顔で宮澤さんたちを歓迎してくれた Photo:  Junji IWANAGA家屋の片づけをしている女性が、笑顔で宮澤さんたちを歓迎してくれた Photo: Junji IWANAGA

 筆者は思わず「大丈夫ですか?」とたずねてしまった。「大丈夫じゃないです!」と元気よく返ってくる。しまった…!それはそうだ。と思った矢先、「でも、来てくれてありがたい」との言葉が。続けて彼女は言う。見にきてくれる人も少なく、このままだと冬がきて、また孤立してしまうのではないか。忘れられていくのが心配だ、と。

「だから今の阿蘇を伝えてくださいね。そしてまた来てくださいね。」この言葉を忘れず、また阿蘇に来ようと誓った。

休憩地点の小川では大人の水遊び Photo: Atsushi TANNO休憩地点の小川では大人の水遊び Photo: Atsushi TANNO
阿蘇やくいん原湧水群では子供に返ったように水を掛け合う Photo: Atsushi TANNO阿蘇やくいん原湧水群では子供に返ったように水を掛け合う Photo: Atsushi TANNO

 阿蘇の魅力は色あせない阿蘇神社の参道へ並ぶ店舗。立ち寄る前に岩崎さんから「なるべくお買い物してみてくださいね。」と言われたものの……なるべくではすまない!美味しそうなお菓子や飲み物が多い!!シュークリームに桃のお菓子、レモネード、サイダーなどなど。地下水が美味しいからか、それを使ったものもやっぱり美味しい。ライドで消費したカロリー以上に摂取したような気がしつつ、帰路につく。

1日目のゴール後は全員でボトルの水を掛け合った Photo: Atsushi TANNO1日目のゴール後は全員でボトルの水を掛け合った Photo: Atsushi TANNO
いつでもサイクリストを迎える雄大な阿蘇の山々 Photo: Atsushi TANNOいつでもサイクリストを迎える雄大な阿蘇の山々 Photo: Atsushi TANNO

 ライドの終わり際にまたしても水源発見!宮澤さんの目が光る。みんなが集合するのを待って……写真をご覧ください。阿蘇にはこのような水源が点在している。冷たさが気持ちいい地下水。ライド中の水分補給として最適!僕たちは、阿蘇が好きだ。地震後も変わらずに言える。「こんないいところ、他にないでしょ?走りに来てよ!」

 「La CORSA Kyusyu」は今後も開催予定。次回は、噂に名高い宮澤さん&奥様の花菜子さんコンビによる料理の腕前を拝見できたら、なんて思ったり……。

阿蘇の美しい山々、そしてそこへ続く道は、いつでもサイクリストを待っている Photo: Atsushi TANNO阿蘇の美しい山々、そしてそこへ続く道は、いつでもサイクリストを待っている Photo: Atsushi TANNO

◇         ◇
La CORSA Kyusyuは、以下の九州に縁のあるサイクリストの協力で行われ、その模様はinstagram#lacorsa9thで振り返ることができる。

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