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私の落車<カルテ8>ミニベロで地面に放り出され顔面着地 唇の傷が痛み、スープばかりで1カ月生活

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【落車カルテ8】

Yさん(28歳 男性)
自転車歴: 中学生の頃からクロスバイクに乗っていて、ロードバイク歴は2年くらい

<事故発生状況とその後>
・2011年4月の15時ごろ
・20インチ折りたたみ自転車で何か(たぶん縁石)を前輪で踏んで、前のめりに転倒
・顔から着地し、顔面から流血。かばった右手も痛める(骨折は免れる)
・1カ月間、ガーゼを顔に貼っていたので、食事もろくに取れない生活に苦しむ
・現在もかすかに顔に傷跡がのこっている

いまだに落車原因がハッキリしない

 事故をしたのは2011年の4月末です。東日本大震災後、大学院の授業の開始が1カ月間遅れた時期でした。大学に向かう途中に事故に遭いました。大学院はかなりへんぴな場所にありまして、車道も歩道もほとんど交通量がありません。車道を走ることもできましたが、その日は歩道を走っていました。

当時乗っていたダホンのミニベロ(提供写真)当時乗っていたダホンのミニベロ(提供写真)

 田舎の歩道ということもあって道幅は広く、歩行者もめったにいません。さらに見通しも良いのでけっこうなスピードで走っていたと思います。乗っていたのはダホンの20インチのミニベロ。通学にちょうどいい自転車でしたが、ロードバイクやクロスバイクよりもややバランスが悪いんですよね。しかも悪いことに、ちょっと下り坂だったので、ふつうに漕いでいてもスピードが出る条件がそろっていました。

 そのときはヘルメットをかぶっておらず、グローブもアイウェアもしていない、普段着でリュックだけ背負ったいわゆるフツーの大学生の通学スタイルでした。いまだに落車原因がハッキリしないんですが、前輪が何かにぶつかるか、ハマるかして急停車して、前転するように放り出されたんです。

気が動転して「落車した」とツイート

 歩道って、車道との接続のためにちょっとだけ車道になって、またすぐに歩道に戻る瞬間がありますよね。おそらく、歩道に戻る瞬間に、角度が甘かったのか縁石をうまくタイヤが乗り越えられず、急停車してしまったのだと思います。

車道から歩道に上がる箇所の縁石の段差は、小さいながらもあなどれない(イメージ写真) Photo: Junji NAKAYAMA車道から歩道に上がる箇所の縁石の段差は、小さいながらもあなどれない(イメージ写真) Photo: Junji NAKAYAMA

 思い切り前転して吹っ飛びました。前触れもなかったので受け身もほぼ取れず、顔を地面にぶつけました。顔から流血していることはすぐにわかりました。落車の瞬間の記憶はないけれど、眉間、鼻、口にかけて擦り傷ができたので、たぶんもろにアスファルトに顔をぶつけたはずです。メガネをしていなかったのは不幸中の幸いでした。もしあのときメガネだったら…打ちどころが悪かったら失明もあり得ました。

 右手と手首にも強い痛みがありましたが、事故直後はケガの深刻度が判断できず、まず骨折を疑いました。痛みで身動きが取れず、5分ほどその場にうずくまっていたら、通りすがりの人がティッシュを差し出してくれましたね。事故現場からアパートまでは徒歩10分の距離なので、なんとか自力で自転車を押して歩いて帰宅しました。前転での落車だったので、下半身は無傷でした。

 鏡で顔を見て、思っていたよりも激しく流血していたのにショックを受け、気が動転しました。何をどうすればいいのかわからなかったので、とりあえず「自転車から顔から落下して家に戻ってきた。顔面にかなりヤバいケガをしてるんだけどどうすればいいのかわからない。とりあえず止血した」とツイートしてみたら、フォロワーが一斉に「病院いけ!」、「救急車を呼べ!」と反応してくれたので、「そうか、救急車か」と気付かされて119番しました。

顔面に巨大ガーゼ、キーボード操作に苦労

 田舎で病院までは遠いので、自力で行ける気がしませんでした。電話口で状況を説明したら、部屋まで隊員さんが来てくれ、なんとか徒歩で救急車まで歩き、救急病院に運ばれました。レントゲンで顔にも右手にも骨折はないことを確認してひと安心したまではよかったんですが、顔の傷痕がけっこうひどく、鼻から口にかけて大きなガーゼを貼ることに。

日常生活に支障をきたしまくった顔面を覆うガーゼ(提供写真)日常生活に支障をきたしまくった顔面を覆うガーゼ(提供写真)

 唇の傷のせいで噛むことが難しく、1カ月間はスープばかりの生活でしたね…。病院からはバスで帰宅し、惣菜の餃子とサラダを買って、インスタントの味噌汁を作りました。ところが餃子は前歯が痛くて噛み切れず、皿の上で箸で切って食べなくてはならなかったし、みそ汁は唇に熱い汁が触れるだけで激痛が走りました。

 仕方がないので「味噌汁に大量のお麩を浮かべ、箸で口の奥のほうに置きにいく」みたいな食べ方をすることで凌ぎました。顔に大きなガーゼをして生活したので、当然周囲からは「どうした、何があった?」と質問攻めにされますし、電車に乗るとジロジロと見られるのでむちゃくちゃ恥ずかしかったです。苦し紛れに帽子をかぶって誤魔化しました(笑)。

 それと、右手に骨折はなかったとはいえ、かなり痛みが続きました。重い荷物は持てないし、日常生活にも支障はあって、なによりパソコンのキーボード操作で苦労しました。今はIT業界のエンジニア職なので、キーボード操作ができないと仕事になりません。ピアニストではないですが、エンジニアにとって手首って大事なんですよ。

路面状況を観察するクセがついた

 事故後に気をつけていることですか? まずヘルメットとグローブは欠かしませんし、アイウェアもするようになりました。あと、 路面状況をよく観察するようになりました。路面に落ちている砂利等の異物とか、段差やクラック、グレーチング…ですね。タイヤをとられる原因になり得るものを敏感に察知するクセがつきました。

 車道を走るときは、端っこを走らないとも決めています。道路の端はゴミや異物が集まりやすい場所なんですよ。そういうときはクルマには申し訳ないけど、やや車道側に少し寄せて避けるようにします。いよいよ車道の路面全体がひどくなり過ぎてきたら、車道は諦めて歩道に逃げるか、いっそルートそのものを変更します。無理な走行で落車するより、遠回りになってもいいから安全な道を選びますね。

 事故時のミニベロはすでに手放してまして、今持っている自転車はロードバイクのみ。ミニベロよりバランスはいいのかもしれませんが、その代わりにスピードが出てしまう乗り物なので、なおさら安全運転を心がけています。

 たとえば自分より速い人とツーリングにでかけてダウンヒルをする状況では、「付いていけそうにない」と感じたらおとなしく減速して自分のペースで下ります。

どうしようもないときは救急車を呼ぼう

 もうひとつ習慣化していることを紹介させてください。知らない街にツーリングにでかけるときは、事前に他のサイクリストの書いたブログを読んで情報収集するんです。さすがに細かな道路状況まで直接的に描写するブロガーさんはめったにいないですが、参考になる情報は多いです。

病院から戻ったときに撮った一枚(提供写真)病院から戻ったときに撮った一枚(提供写真)

 気持ちよく走れる道路なのか、交通量はどうか、補給ポイントや自販機はあるのか、斜度のキツさはいかほどか、所要時間はどれくらいか、そもそも自転車で走れる場所か…ということは文章から読み取れます。これ、オススメですよ。

 あと、声を大にして伝えたいのは、「救急車は利用していい」ってこと。救急車をタクシー代わりに使う不届き者もいるそうだけど、自力でどうしようもないときは利用させてもらいましょう! 僕の場合、歩いて病院にたどり着けないというより、対処方法がわからなかったので来てもらいました。歩けるかどうかを聞かれるのはストレッチャーを出す必要があるかとか、事態の緊急度の判断のためのようです。

 救急車って馴染みの薄い乗り物なので、その発想が浮かんでこないんですよ。僕も気が動転しすぎてて、救急車を呼ぶ発想が出てこず、一人で「どうしよう、どうしよう」とオロオロしていたくらいですから。フォロワーさんらの助言がなかったら、いったいどうしていたことか…。自力で対処する方法が見つからなければ、119番して助けを請いましょう。

 補足ですが、急な病気やケガをした場合に、「救急車を呼んだほうがいいのかな?」、「今すぐ病院に行ったほうがいいのかな?」って迷ったときの相談窓口として、「東京消防庁救急相談センター」があります。24時間年中無休で対応してくれるので、困ったら#7119に救急相談するといいですよ。

<今回の教訓>
『落車して 自力でなんとも ならぬなら 救急車を呼び 助け乞うべし』

(取材・編集 中山順司)

中山 順司中山 順司(なかやま・じゅんじ)

ロードバイクをこよなく愛するアラフォーブロガー。ブログ「サイクルガジェット」を運営。”徹底的&圧倒的なユーザー目線で情熱的に情報発信する”ことがモットー。ローディの方はもちろん、これからロードバイクを始めようかとお考えの方が、「こんなコンテンツを読みたかった!」とヒザを打って喜ぶ記事をつくります。勤務先はfreee

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