宍道湖の自然を堪能し、帰路は「レール&サイクル」ジャイアントストア松江と一畑電車がつなげる出雲大社までの"縁結びサイクリング"

by 澤野健太 / Kenta SAWANO
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 平成の大遷宮を終えた出雲大社は日本屈指のパワースポットとして、女性を中心に訪れる人が後を絶たない。そんな人気スポットを巡るサイクリングがさらに楽しくなる新たな拠点が生まれた。8月25日にオープンした「ジャイアントストア松江」は“駅直結”という利便性をいかし、宍道湖の壮大な風景を眺めながらの出雲大社までのライドの起点として注目される。オープンを記念して行われた片道約50km、帰路は電車にバイクをそのまま乗せて戻るサイクリングに同行した。

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宍道湖沿いの国道431号線を一列で進む Photo: Rokuro INOUE宍道湖沿いの国道431号線を一列で進む Photo: Rokuro INOUE

やまなみ街道サイクリングロードの起点

サイクリングを前に気合を入れる関係者。左から一畑電鉄の今岡和志社長、大谷厚郎会長、ジャイアントジャパンの中村晃社長、溝口善兵衛島根県知事、松江商工会議所の古瀬誠会頭、能海広明・松江市副市長 、後藤清作さん Photo: Rokuro INOUEサイクリングを前に気合を入れる関係者。左から一畑電鉄の今岡和志社長、大谷厚郎会長、ジャイアントジャパンの中村晃社長、溝口善兵衛島根県知事、松江商工会議所の古瀬誠会頭、能海広明・松江市副市長 、後藤清作さん Photo: Rokuro INOUE

 山陰地方初のジャイアントストアとなる同店は島根県松江市の一畑電車「松江しんじ湖温泉駅」にある。自転車をそのまま持ち込める一畑電鉄とタッグを組み、店から直結で電車に乗れるほか、乗車券をセットにしたレンタルバイクプランも計画する。

 午前11時、賑やかなオープニングを終えた溝口善兵衛島根県知事、能海広明・松江市副市長、ジャイアントジャパンの中村晃社長や地元サイクリストと一緒に駅をスタートした。同駅は広島県尾道市まで続く「やまなみ街道サイクリングロード」(全長約187km、獲得標高1900m)の起点でもあり、同店はその起点として大きな役割を担う。

 天気は快晴、気温は30度を超えていたが、宍道湖からのそよ風が心地よい。約4kmを国道431号線沿いにゆっくり走る。一畑電車北松江線と並走し、ときおり様々な種類の電車が見られるのも面白い。市街地に近いこの地域は交通量が多く、車道を走る時には注意が必要だ。

一畑電車と並走する国道431号沿いに走る関係者 Photo: Kenta SAWANO一畑電車と並走する国道431号沿いに走る関係者 Photo: Kenta SAWANO
沿道の歓声に手を振って応える 能海広明・松江市副市長(中央)、古瀬誠さん Photo: Kenta SAWANO沿道の歓声に手を振って応える能海広明・松江市副市長(中央)、古瀬誠さん Photo: Kenta SAWANO

松江イングリッシュガーデン駅で電車を待つ島根県の松江善兵衛知事ら  Photo: Kenta SAWANO松江イングリッシュガーデン駅で電車を待つ島根県の松江善兵衛知事ら  Photo: Kenta SAWANO

 溝口県知事をはじめ多くの自治体関係者は松江イングリッシュガーデン駅で一畑電車に自転車ごと乗ってUターン。普段から一畑電車をよく使うという地元サイクリストの山田幸子さんは「出雲大社まで自転車で向かっていて、途中で心が折れた時にバタデン(一畑電車の愛称)があるというのは心強いんです」と話した。

ランチは宍道湖産の天然ウナギ

昼食は「福吉」で宍道湖産の天然ウナギのうな重を食べてエネルギー補給 Photo: Rokuro INOUE昼食は「福吉」で宍道湖産の天然ウナギのうな重を食べてエネルギー補給 Photo: Rokuro INOUE

 知事一行を見送ると、地元サイクリスト、プレスツアーだけのサイクリングとなった。先頭を引く後藤清作さんは、松江市出身でマウンテンバイクの2000年ジャパンシリーズチャンピオン。松江市内のカフェ「Blanc」のオーナーで、その後藤さんが「ここはおいしい」と太鼓判を押す秋鹿町駅近くのうなぎの名店「福吉」でランチ休憩を取った。宍道湖産の天然ウナギのうな重は柔らかくあっという間にお腹の中へ。エネルギー充分で残り40kmに挑む。

 一畑電車北松江線の一畑口駅近くから出雲路サイクリングコースが始まり、約3kmは宍道湖を左に見ながら進む。ラムサール条約にも登録される宍道湖だが、特にこの辺りはコンクリートの護岸も少なくアシの植生も豊富で、のんびりハクチョウやカモなどが餌を探す姿を見ることができた。時間があれば体験型水族館「宍道湖自然館ゴビウス」で約200種類の生き物を観察するのも楽しい。

出雲路サイクリングコースは宍道湖や山々を眺めながらのんびり進むことができる Photo: Rokuro INOUE出雲路サイクリングコースは宍道湖や山々を眺めながらのんびり進むことができる Photo: Rokuro INOUE
出雲市内の長田染工場に立ち寄り、藍染の歴史を聞いた Photo: Rokuro INOUE出雲市内の長田染工場に立ち寄り、藍染の歴史を聞いた Photo: Rokuro INOUE

 宍道湖西岸を進み斐伊川に当たると、堤防沿いに約10kmを出雲市に向かう。出雲路サイクリングコースも広くなり、右側には出雲大社まで続く山々を眺めながら西に向かうと、出雲市街地に入っていく。ここからは用水路の高瀬川沿いに歴史のある町並みの中を進む。自転車道はいくらか細くなる分、町の中を地元住民になった気分で進むことができた。途中、素敵な店構えに吸い寄せられ「長田染工場」を訪問。4代目の長田茂伸さんから藍染の歴史について話を聞くことができた。

午後5時過ぎ、日本海に到着。夕日を浴びながらラストスパート Photo: Rokuro INOUE午後5時過ぎ、日本海に到着。夕日を浴びながらラストスパート Photo: Rokuro INOUE
稲佐の浜に到着。シンボルの弁天島をバックに記念撮影 Photo: Rokuro INOUE稲佐の浜に到着。シンボルの弁天島をバックに記念撮影 Photo: Rokuro INOUE

 歴史ある出雲の町に後ろ髪を引かれながら、出雲大社に向けラストスパート。西日を浴びながら河口に進むと、松林を抜けて海が広がった。「日本海だ~!」と誰からともなく歓声が上がる。海沿いに約2km走ると、出雲路自転車道の終着点、稲佐の浜に到着。古事記にも登場する砂浜とシンボルの弁天島にお参りし、そこから1kmの出雲大社までゆっくり坂を上った。午後6時前に、出雲大社の「勢溜の大鳥居」に到着。1日をともにした仲間と記念撮影し、名物「ぜんざい餅」を味わう。

出雲の名物のひとつ「ぜんざい餅」 Photo: Rokuro INOUE出雲の名物のひとつ「ぜんざい餅」 Photo: Rokuro INOUE
1930年に作られた出雲大社駅の前を歩く Photo: Rokuro INOUE1930年に作られた出雲大社駅の前を歩く Photo: Rokuro INOUE
出雲大社の鳥居の前で記念撮影。充実したサイクリングに笑顔がこぼれた Photo: Rokuro INOUE Photo: Rokuro INOUE出雲大社の鳥居の前で記念撮影。充実したサイクリングに笑顔がこぼれた Photo: Rokuro INOUE Photo: Rokuro INOUE
一畑電車ではそのまま自転車を持ちこむことができる Photo: Rokuro INOUE一畑電車ではそのまま自転車を持ちこむことができる Photo: Rokuro INOUE

 出雲大社で行程は終了と思っていたが、実はまだ大きなお楽しみが残っていた。一畑電車に自転車をそのまま持ち込めるサービス「レール&サイクル」(1台につき310円、乗車券は別)だ。これを利用し、1930年(昭和5年)に作られたモダンな出雲大社前駅から出発地点の松江しんじ湖温泉駅に戻る。鉄道ファンはもちろん、サイクリストにとって夢のような電車だ。自転車ごと始発電車に乗り込み、ホイールも外さず、そのままの姿のロードバイクを横にたてかけシートに座る。筆者を含め初めて体験するサイクリストからは「なんて自由なんだ! 自由過ぎる」と喜びの声が上がった。

空いている区間ではロードバイクを横に置いてゆったりシートに座ることができた Photo: Rokuro INOUE空いている区間ではロードバイクを横に置いてゆったりシートに座ることができた Photo: Rokuro INOUE

 途中、川跡駅で乗り換えると、無垢の木を使った豪華なボックスシートばかりの電車だった。元京王電鉄の車両で、2014年に島根県産材を使って改造したという。そのほかにも、一畑電車は東急電鉄や南海電鉄の旧車両を譲り受けており、「乗り鉄」でなくても様々な電車にワクワクしたり、旧車両を懐かしんだりできること請け合いだ。途中からは帰宅途中の学生が増えたため、最前方のスペースに数台のバイクをまとめてゴムで電車に固定した。

帰宅途中の学生とヘルメットをかぶったサイクリストが車内で普通に並ぶ非日常な空間 Photo: Kenta SAWANO帰宅途中の学生とヘルメットをかぶったサイクリストが車内で普通に並ぶ非日常な空間 Photo: Kenta SAWANO
どんな車両が来るかな? ホームでバイクに乗ったまま次の電車を待つのも楽しい Photo: Kenta SAWANOどんな車両が来るかな? ホームでバイクに乗ったまま次の電車を待つのも楽しい Photo: Kenta SAWANO
京王電鉄や南海電鉄で使われていた懐かしい車両を、自転車をもったまま乗り継ぐ  Photo: Rokuro INOUE京王電鉄や南海電鉄で使われていた懐かしい車両を、自転車をもったまま乗り継ぐ Photo: Rokuro INOUE

バイクラック完備のホテル一畑

 午後8時過ぎ、松江しんじ湖温泉駅に帰着。自転車のまま改札を抜け、宿泊先のホテル一畑にチェックインする。こちらにはフロントから見える位置にバイクラックが完備していて、チェーンロックも借りられる。一畑電鉄を運営する一畑グループは他にも、自転車をそのまま後ろに積めるタクシーの運用を開始するなど、グループ一丸でサイクリストを迎え入れる。安心して自転車を預け、出雲大社ライドの疲れを温泉で癒やした。

ホテル一畑の1階ロビーにはバイクラックが完備されている Photo: Kenta SAWANOホテル一畑の1階ロビーにはバイクラックが完備されている Photo: Kenta SAWANO
松江一畑交通のタクシーでは自転車ラックをつけたタクシーも用意 Photo: Rokuro INOUE松江一畑交通のタクシーでは自転車ラックをつけたタクシーも用意 Photo: Rokuro INOUE

 翌朝は、正午過ぎの帰京の飛行機まで松江市周辺を散策することにした。朝6時に起き、松江城の周りの堀川や、武家屋敷など江戸時代から残る古い町並みをサイクリング。まだ人の少ない市内をポタリングするとタイムスリップしたような感覚に陥った。その後、さらに市内を散策。縁結び神社として有名な、八重垣神社の「鏡の池」で縁占い。和紙に硬貨を乗せて3分以内に沈めば近いうちに幸せが来るという。筆者はわずか40秒で沈んだので、自転車を通じて新しい縁が来ることを楽しみにした。

翌日は朝から八重垣神社にお参りした Photo: Kenta SAWANO翌日は朝から八重垣神社にお参りした Photo: Kenta SAWANO
八重垣神社の鏡の池では占い用の和紙に100円硬貨を乗せて沈む速さで占った Photo: Kenta SAWANO八重垣神社の鏡の池では占い用の和紙に100円硬貨を乗せて沈む速さで占った Photo: Kenta SAWANO
ボテッキア・サイクルカフェでは明るい空間で自慢のワッフルを堪能した Photo: Rokuro INOUEボテッキア・サイクルカフェでは明るい空間で自慢のワッフルを堪能した Photo: Rokuro INOUE

 縁結びサイクリングの締めとして、昨年3月にできた、地元サイクリストに人気の「ボテッキア・サイクルカフェ」に立ち寄る。昔のスチールバイクから最新ロードバイクまで、オーナーのバイクが綺麗に飾られた明るい空間で特製のワッフルとこだわりのエスプレッソを味わった。

 ツール・ド・フランスのライブビューイングも開催したり、ロードバイクのシュミレーターも完備。「やまなみ街道サイクリングロード」の立ち寄りポイントとして注目のお店だ。

松江市の中心で落ち着いた佇まいを見せる松江城 Photo: Rokuro INOUE松江市の中心で落ち着いた佇まいを見せる松江城 Photo: Rokuro INOUE
城下町の雰囲気がいまだに残る武家屋敷 Photo: Kenta SAWANO城下町の雰囲気がいまだに残る武家屋敷 Photo: Kenta SAWANO

 松江しんじ湖温泉駅とジャイアントストア松江を拠点にしたサイクリングは、宍道湖や、山や川、海という景観はもちろん、松江市、出雲市の歴史のある町並み、縁結びポイントが自転車道や鉄道で結ばれている盛りだくさんのルートだった。

 ジャイアント・ジャパンの中村晃社長も「一畑電車を絡めた参道サイクリングとして、どんどんいろんなプランを考えていきます。まずは国内のサイクリストに是非来て欲しい。そしてしまなみ海道、琵琶湖サイクリングのように日本から世界に発信できるような自転車文化を作っていきたい」と意欲を見せた。

ジャイアントストア松江 店舗概要

住所:〒690-0874 島根県松江市中原町31番地4
電話番号:0852-61-3196
アクセス:一畑電車 松江しんじ湖温泉駅 徒歩1分
営業時間:9:00~20:00
定休日:火曜日
店舗面積:約49坪
駐車場:店舗前に5台
ウェブサイト:http://giant-store.jp/matsue/

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