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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<172>動き出すマイヨロホ争い ブエルタ・ア・エスパーニャ今後の勝負の行方は?

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 8月20日に開幕したブエルタ・ア・エスパーニャは、ここまで4ステージを消化。戦いはまだ始まったばかりだが、そこは「山岳のブエルタ」。早くも急峻な上りが立ちはだかり、歴戦の猛者たちといえど決して楽はさせてもらえない。そこで、大会序盤のステージを振り返り、今後を展望していきたい。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第3ステージ、上位でフィニッシュするクリストファー・フルーム(中央) =2016年8月22日 Photo: Yuzuru SUNADAブエルタ・ア・エスパーニャ2016第3ステージ、上位でフィニッシュするクリストファー・フルーム(中央) =2016年8月22日 Photo: Yuzuru SUNADA

大会序盤は測りにくい有力選手の好不調

 近年のブエルタでは、大会序盤に中級山岳ステージが組み込まれるケースが多く、それにともなって早い段階から総合首位の証・マイヨロホ争いが絞り込まれる傾向にある。3週間を戦い抜き、総合優勝をするためには、開幕を迎えた時点でトップフォームにあることを有力選手たちは求められる。

ブエルタ・ア・エスパーニャ第4ステージ、有力選手たちの集団先頭でフィニッシュするアレハンドロ・バルベルデ =2016年8月23日 Photo: Yuzuru SUNADAブエルタ・ア・エスパーニャ第4ステージ、有力選手たちの集団先頭でフィニッシュするアレハンドロ・バルベルデ =2016年8月23日 Photo: Yuzuru SUNADA

 その見立て通り、総合優勝候補たちが第3ステージ以降しっかりと力を見せ始めている。今大会最初の中級山岳ステージとなった第3ステージは、3級山岳ながらフィニッシュまで急坂が続くミラドール・デ・エサロで有力選手たちが早くも激突した。

 ステージ優勝こそレース前半からの逃げメンバーに譲ったが、クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)、ナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)、ヨアンエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・バイクエクスチェンジ)、サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシングチーム)らがしっかりと前方でフィニッシュしている。そして、総合でも上位を占め、今後の戦いへとつなげている。

ナイロアレクサンデル・キンタナも総合上位をキープ =ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第3ステージ、2016年8月22日 Photo: Yuzuru SUNADAナイロアレクサンデル・キンタナも総合上位をキープ =ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第3ステージ、2016年8月22日 Photo: Yuzuru SUNADA

 このステージでは、バルベルデ、キンタナ、そしてこのステージでマイヨロホを手に入れたルーベン・フェルナンデス(スペイン)と、モビスター勢はチームで勝負どころをコントロール。これに食らいついたチャベス、一時は後方に取り残されながらも最終局面で追い込んだフルームと、それぞれに内容の充実した走りを見せた。これらを見る限り、今後の戦いでも中心に立つ可能性は高いと見られる。

 一方で、誰が好調で、誰が不調であるか、序盤では判断しにくいのがブエルタの特徴でもある。なぜなら、シーズン後半のグランツールであり、ここまでに多くのビッグレースをこなしてきた選手たちが多いからである。彼らにとっては、ブエルタは疲労との戦いともなるのだ。特に今年は、ツール・ド・フランス、リオデジャネイロ五輪、そしてブエルタとタイトなスケジュールで、実際に連戦になっている選手も数多い。そうした状況下で、コンディションを維持し、ハイパフォーマンスを見せることは決して容易ではない。

 ツールやリオ五輪の流れによる“貯金”で好走を見せていた選手が、突如調子を落としてしまい、戦線から後退してしまうこともありうる。ブエルタにおいて重要なカギとなるのは、暑さや難易度の高いコース設定と並んで、コンディションを保つことにもあるはずだ。

 4ステージを終えた時点で、有力選手たちの好不調を測ることは難しい。もう少し、戦いの行方を見守っていく必要があるだろう。

数少ないスプリントステージ

 前回お届けしたブエルタ直前展望では、スプリントステージについて触れることができなかったので、遅ればせながらいま一度スプリント勝負が繰り広げられると見られるステージと、有力選手を押さえておきたい。

 すでに第2ステージはスプリントで勝敗が決しているが、次は第5ステージとなりそう。第7ステージも展開次第ではスプリントでステージ優勝者が決まることも考えられる。これらを逃すと、その後は第2週最終日の第16ステージまで待たなくてはならない。スプリント力に自信のある選手たちは、数少ないチャンスをなんとしてもものにしたい。

今年もマドリード市街地サーキットでのスプリントでブエルタが閉幕する =ブエルタ・ア・エスパーニャ2015第21ステージ、2015年9月13日 Photo: Yuzuru SUNADA今年もマドリード市街地サーキットでのスプリントでブエルタが閉幕する =ブエルタ・ア・エスパーニャ2015第21ステージ、2015年9月13日 Photo: Yuzuru SUNADA

 大会終盤には、第18ステージと最終の第21ステージでスプリントチャンスがある。第21ステージは恒例の、マドリード市街地の周回コースとあって、大会の最後を飾るべく自身のキャリアに花を添えたい選手たちが熱い走りを見せてくれるはずだ。

 今大会に臨む有力スプリンターは、多くが登坂力も備わる選手で、ピュアスプリンターの参戦はほとんどないのが実情。やはり山岳が厳しいステージ構成とあって、ブエルタを回避し同時期の別のレースにスポットをあてる傾向にある。

今大会最初のスプリントステージはジャンニ・メールスマンが制している、ブエルタ・ア・エスパーニャ2016、2016年8月21日 Photo: Yuzuru SUNADA今大会最初のスプリントステージはジャンニ・メールスマンが制している、ブエルタ・ア・エスパーニャ2016、2016年8月21日 Photo: Yuzuru SUNADA

 そんな中で注目したいのは、第2ステージを制したジャンニ・メールスマン(ベルギー、エティックス・クイックステップ)、同3位のマウヌス・コー・ニールセン(デンマーク、オリカ・バイクエクスチェンジ)、ヨナス・ヴァンフネヒテン(ベルギー、イアム サイクリング)、クリスティアン・スバラーリ(イタリア、ディメンションデータ)、ニッコロ・ボニファジオ(イタリア、トレック・セガフレード)といったところ。

 そのほか、ジャンピエール・ドリュケール(ルクセンブルク、BMCレーシングチーム)は、ブエルタ前哨戦といわれるブエルタ・ア・ブルゴス(スペイン、UCI2.HC)で3度のステージ2位。ロレンゾ・マンザン(エフデジ)はフランス期待の若手スプリンターだ。

ブエルタ第5~10ステージの見どころ

●8月24日(水) 第5ステージ ビベイロ~ルーゴ 171.3km

ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第5ステージコースプロフィール © Unipbulicブエルタ・ア・エスパーニャ2016第5ステージコースプロフィール © Unipbulic

 開幕以降、ガリシア州を走り続けるが、その道のりはもう少し続くこととなる。中盤に3級山岳の上りが待つ以外はおおむね平坦。ラスト5kmはわずかな上り基調ではあるが、主役の座を争うのはスプリンターたちとなりそうだ。

●8月25日(木) 第6ステージ モンフォルテ・デ・レモス~ルイントラ.リベラ・サクラ 163.2km

ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第6ステージコースプロフィール © Unipbulicブエルタ・ア・エスパーニャ2016第6ステージコースプロフィール © Unipbulic

 オウレンセを出発し、時計回りにめぐってきたガリシア州もこの日が最後。中盤の2級山岳のほかにも、山岳にカテゴライズされない上りが多く、レース展開にどのように影響されるかが見もの。総合争いに関係しない選手の逃げが容認される可能性もある。

●8月26日(金) 第7ステージ マセダ~プエブラ・デ・サナブリア 158.5km

ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第7ステージコースプロフィール © Unipbulicブエルタ・ア・エスパーニャ2016第7ステージコースプロフィール © Unipbulic

 3つの3級山岳を中心に、スタートから終盤まで上り基調で推移するコース。展開次第では消耗戦になっても不思議ではないだろう。一方で、最後の3級山岳を越えると、フィニッシュに向かっての下りとあって、上れるスプリンターたちが粘りを見せるとおもしろい勝負が見られるかもしれない。

●8月27日(土) 第8ステージ ビジャルパンド~ラ・カンペローナ.バジェ・デ・サベコ 181.5km

ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第8ステージコースプロフィール © Unipbulicブエルタ・ア・エスパーニャ2016第8ステージコースプロフィール © Unipbulic

 主催者が平坦ステージにカテゴライズしながらも、最後は1級山岳の頂上フィニッシュという、インパクト大のステージ。カンタブリア山脈に位置する1級山岳ラ・カンペローナは、ラスト8.5kmで平均勾配7.4%、最大勾配25%の激坂区間。残り2kmから20~22%の勾配が続き、ここで確実に総合有力選手たちの脚色が見えてくるはずだ。

●8月28日(日) 第9ステージ システィエルナ~オビエド.アルト・デル・ナランコ 164.5km

ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第9ステージコースプロフィール © Unipbulicブエルタ・ア・エスパーニャ2016第9ステージコースプロフィール © Unipbulic

 フィニッシュは2級山岳アルト・デル・ナランコの頂上に設けられるが、それ以外にも2級1つ、3級3つと控え、簡単には前へと進ませてはくれない。翌日に控える今大会最初の超級山岳に向けて、大きな消耗は避けたいところだ。

●8月29日(月) 第10ステージ ルゴネス~ラゴス・デ・コバドンガ 188.7km

ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第10ステージコースプロフィール © Unipbulicブエルタ・ア・エスパーニャ2016第10ステージコースプロフィール © Unipbulic

 第1週の最終日は、超級山岳ラゴス・デ・コバドンガの頂上を目指す。コバドンガの上りはフィニッシュ前に最大勾配となる17.5%の激坂区間が登場。そこまでにも10%前後の勾配が幾度となく出てくることから、距離を追うごとに集団の人数は絞り込まれるはずだ。また、コバドンガ直前に通過する1級山岳ミラドール・デル・フィートも最大勾配11.5%と侮れない。このステージで快走した選手がマイヨロホに袖を通し、その後の戦いを優位にできるかもしれない。

今週の爆走ライダー-マウヌス・コー・ニールセン(デンマーク、オリカ・バイクエクスチェンジ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 プロ2年目となり、満を持して迎えたグランツールデビュー戦のブエルタ。第1ステージのチームタイムトライアルでは、3位に食い込んだチームに貢献し、続く第2ステージでも3位。自らのスプリントで上位を押さえた。

パリ~ルーベ2016に出場した際のマウヌス・コー・ニールセン。短い上りとスプリントを得意とする =2016年4月10日 Photo: Yuzuru SUNADAパリ~ルーベ2016に出場した際のマウヌス・コー・ニールセン。短い上りとスプリントを得意とする =2016年4月10日 Photo: Yuzuru SUNADA

 近年、ジュニア世代からの強化が進む北欧勢。デンマークも例に漏れず、なかでもニールセンは育成の最高傑作との呼び声も高い。プロ入り前の2014年にはシーズン11勝の活躍。特に前半戦で10勝を挙げた驚異的スピードに多くの関係者の注目が集まり、春には現チームとの契約をまとめた。

 当時から自らの脚質について、「短い上りとスプリントを得意としている」と説明し、クラシックレースで活躍の場を求めたいとしていた。プロ入り後はチーム方針もあり、無理のないレーススケジュールが組まれてきたが、今年7月のツアー・オブ・デンマーク(UCI2.HC)でステージ1勝を含む総合2位と活躍。地元凱旋でよいところを見せ、このブエルタにつなげている。

ブエルタ第2ステージではスプリントに絡み3位。好ダッシュで上位入りした(左から4人目) =2016年8月21日 Photo: Yuzuru SUNADAブエルタ第2ステージではスプリントに絡み3位。好ダッシュで上位入りした(左から4人目) =2016年8月21日 Photo: Yuzuru SUNADA

 初のグランツール、まずは経験との側面が大きいが、チームにはチャベスとサイモン・イェーツ(イギリス)、2人の絶対的エースが控える。それだけに、要所ではアシストとしての役割も求められることだろう。ここでの働きによって、自身の将来的な活躍が約束されるかもしれない。ただ完走して終わるのではなく、ビッグチームの一員としての走りを成功させることによって、未来が切り拓かれることこそ、彼にとっては大きな意義のあることに違いない。

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。

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