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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<171>ビッグネームが出場表明、新城幸也、別府史之も ブエルタ・ア・エスパーニャ直前展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 2016年シーズン3つ目となるグランツール、ブエルタ・ア・エスパーニャが8月20日に開幕する。ジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランス、リオデジャネイロ五輪と、短期間でビッグレースが続いているが、その波に乗ってブエルタにも大物が多く参戦を表明している。そこで今回は、情熱の国・スペインを舞台に駆ける3週間の戦いを展望。序盤ステージの見どころや、有力選手の動向に触れていきたい。

開幕迫るブエルタ・ア・エスパーニャ2016。2年ぶりに、クリストファー・フルーム(左)とアルベルト・コンタドールが顔をそろえる =ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第12ステージ、2014年9月4日 Photo: Yuzuru SUNADA開幕迫るブエルタ・ア・エスパーニャ2016。2年ぶりに、クリストファー・フルーム(左)とアルベルト・コンタドールが顔をそろえる =ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第12ステージ、2014年9月4日 Photo: Yuzuru SUNADA

ブエルタ2016の概要

ブエルタ・ア・エスパーニャ2016コースマップ © Unipublicブエルタ・ア・エスパーニャ2016コースマップ © Unipublic

 今大会の開幕地は、スペイン北西部・ガリシア州の都市、オウレンセ。ガリシア州は2013年大会でも開幕から数ステージを走り、2014年大会では同州の都市、サンティアゴ・デ・コンポステーラが最終ステージに選ばれるなど、ブエルタとは縁が深い。まずは、オウレンセでのチームタイムトライアルで脚試しを行う。

 第6ステージまで、ガリシア州内を時計回りで1周するイメージ。その間、中級山岳が半数の3ステージ。開幕早々、選手たちを苦しめる。

 第1週最大の山場は、1回目の休息日直前の第10ステージ。2年ぶりに登場のラゴス・デ・コバドンガは、フィニッシュ前が17.5%の激坂。

 第2週の前半は、ピレネー山脈に向かってスペイン北部を東に向かって走行。バスク自治州に入る第12ステージは、過去何度も名場面が生まれたビルバオの周回コースへ。ピレネー山脈を走る第14ステージでは、フランス領内を走行。ツールでもおなじみの超級山岳オービスク峠の頂上フィニッシュは、今大会のクイーンステージとの見方もある。続く第15ステージの1級山岳サジェント・デ・ガジェゴの頂上フィニッシュとあわせ、この2日間で総合争いが大きく動きそうだ。

 第3週は、地中海に面したスペイン東部での戦い。第17ステージ、アルト・マス・デラ・コスタの1級山岳頂上フィニッシュは、登坂距離3.8kmで平均勾配12.5%、最大勾配にして21%の激坂。第19ステージは、今大会唯一の個人タイムトライアル。37kmの長距離TTで、総合上位陣のシャッフルが起きる可能性がある。

 総合リーダージャージ、マイヨロホを賭けた最後の戦いは、第20ステージ。超級山岳アルト・デ・アイタナでの約21kmの上りで勝負が決する。そして、ブエルタ恒例のマドリード市街地サーキットでのスプリントで、3週間の戦いが幕を閉じる。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2016

総走行距離 3314.7km
平坦ステージ 7(うち上りフィニッシュ 2)
山岳ステージ 12
個人タイムトライアルステージ 1
チームタイムトライアルステージ 1

ビッグネームが多数参戦 別府・新城も出場予定

 ブエルタ2016には22チームが出場。18のUCI(国際自転車競技連合)ワールドチームを筆頭に、UCIプロコンチネンタルチームからはディレクトエネルジー、ボーラ・アルゴン18、コフィディス ソリュシオンクレディ、カハルラル・セグロスRGAの4チームが招待された。

 すでに約半数のチームがロースター(出場選手)を発表している。未発表のチームでも、エースクラスの数選手が個人的に出場意思を示している。

 注目される顔ぶれだが、“山岳のブエルタ”らしく、熾烈な総合争いを予感させるメンバーが大挙集結する。

ツールを制し、リオ五輪でも個人TTで銅メダルを獲得したクリストファー・フルーム。連戦となるブエルタではどんな走りを見せるか =リオデジャネイロ五輪・男子個人タイムトライアル、2016年8月9日 Photo: Yuzuru SUNADAツールを制し、リオ五輪でも個人TTで銅メダルを獲得したクリストファー・フルーム。連戦となるブエルタではどんな走りを見せるか =リオデジャネイロ五輪・男子個人タイムトライアル、2016年8月9日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ツールを制したクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)は、今回も強力アシストを引き連れてスペインへと乗り込む。個人TTで銅メダルを獲得したリオ五輪までの疲労が心配されるが、レオポルド・ケニッグ(チェコ)やミケル・ランダ(スペイン)といった「Bプラン」も控える。まずは、いけるところまでフルーム中心に戦いを進める。

モビスター チームは、ツールに続きナイロアレクサンデル・キンタナ(左)とアレハンドロ・バルベルデのダブルエース体制 =ツール・ド・フランス2016第6ステージ、2016年7月7日 Photo: Yuzuru SUNADAモビスター チームは、ツールに続きナイロアレクサンデル・キンタナ(左)とアレハンドロ・バルベルデのダブルエース体制 =ツール・ド・フランス2016第6ステージ、2016年7月7日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ツールではアレルギーと見られる症状に苦しみながらも、総合3位とまとめたナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)。意気込み十分だったリオ五輪を回避してまで、ブエルタのために体調回復に努めてきた。スペインチームとして、この大会を重視するだけあって、キンタナも早くから出場する意向を固めていた。そして、ベテランのアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)も参戦が決定。今年はグランツールすべてでスタートラインに立つことになる。もちろん、これまで同様にキンタナとのダブルエース体制を敷いてくるだろう。チームは、アシストにも実力者がそろう魅力的布陣だ。

ツールのリベンジに燃えるアルベルト・コンタドール。2年ぶりの総合優勝でチームは有終の美を飾ることができるか =ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第21ステージ、2014年9月14日 Photo: Yuzuru SUNADAツールのリベンジに燃えるアルベルト・コンタドール。2年ぶりの総合優勝でチームは有終の美を飾ることができるか =ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第21ステージ、2014年9月14日 Photo: Yuzuru SUNADA

 度重なる落車の影響で、ツールを無念のリタイアとなったアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)は、このブエルタにリベンジをかける。こちらも、出場予定だったリオ五輪を回避して、ブエルタに照準を定めてきた。禁止薬物使用による出場停止が明けて臨んだ2012年、ツールでの負傷リタイアを経て出場した2014年と、ブエルタにはしっかりと調子を合わせてきた。ツールを途中で切り上げ、早々に今大会への調整をスタートさせたあたり、ライバルたちよりよいコンディションで開幕を迎える可能性もある。また、2年周期でブエルタを制するというユニークなデータを作り出すこともありうる。チームとしても、今シーズン限りでのスポンサー撤退が決まっており、有終の美を飾りたい。

今年のジロに続く快走をもくろむヨアンエステバン・チャベス =ジロ・デ・イタリア2016第14ステージ、2016年5月21日 Photo: Yuzuru SUNADA今年のジロに続く快走をもくろむヨアンエステバン・チャベス =ジロ・デ・イタリア2016第14ステージ、2016年5月21日 Photo: Yuzuru SUNADA

 今年のジロで総合2位と大躍進をとげたヨアンエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・バイクエクスチェンジ)は、さらなる好成績をブエルタで狙う。ジロ以降は、リオ五輪とブエルタにターゲットを絞っており、しっかりと仕上げて臨むはずだ。昨年のブエルタでは、ステージ2勝を挙げて総合5位と、この大会の戦い方を知り尽くしているあたりが心強い。

今年のツール・ド・スイスを制したミゲルアンヘル・ロペスはブエルタでグランツール初挑戦 =ツール・ド・スイス2016第9ステージ、2016年6月19日 Photo: Yuzuru SUNADA今年のツール・ド・スイスを制したミゲルアンヘル・ロペスはブエルタでグランツール初挑戦 =ツール・ド・スイス2016第9ステージ、2016年6月19日 Photo: Yuzuru SUNADA

 キンタナ、チャベスに続くコロンビア勢として、ミゲルアンヘル・ロペス(アスタナ プロチーム)にも注目が集まる。プロ2年目の22歳、キャリア初のグランツールとなるが、すでに今年のツール・ド・スイスを制するなど、急峻な山々をめぐるステージレースで結果を残している。ミケーレ・スカルポーニ(イタリア)やルイスレオン・サンチェス(スペイン)といった、経験豊富なアシスト陣が脇を固め、若きエースを守り立てる。

 BMCレーシングチームはティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ)、チーム ジャイアント・アルペシンはワレン・バルギル(フランス)が、ツールに続いて総合エースを担う。また、ツール総合8位、リオ五輪ロード7位と着実に結果を残しているルイ・メインティス(南アフリカ、ランプレ・メリダ)も、ブエルタ出場への意欲を示している。

初のブエルタに臨む別府史之 =ラ・フレーシュ・ワロンヌ2016、2016年4月20日 Photo: Yuzuru SUNADA初のブエルタに臨む別府史之 =ラ・フレーシュ・ワロンヌ2016、2016年4月20日 Photo: Yuzuru SUNADA

 今大会には、日本人選手出場という楽しみも待っている。別府史之(トレック・セガフレード)は、当初の予定通り初のブエルタ出場が決定。ベテランのアイマル・スベルディア(スペイン)やスプリンターのニッコロ・ボニファジオ(イタリア)といった、力のある選手がそろうだけに、別府の経験が生かされる場面が多々見られることだろう。

ツール、リオ五輪を経てブエルタに臨む新城幸也 =リオデジャネイロ五輪・男子ロードレース、2016年8月6日 Photo: Yuzuru SUNADAツール、リオ五輪を経てブエルタに臨む新城幸也 =リオデジャネイロ五輪・男子ロードレース、2016年8月6日 Photo: Yuzuru SUNADA

 初出場初完走を果たした昨年から、2年連続出場が予定される新城幸也(ランプレ・メリダ)。ツール第1ステージでの落車で痛めた左手親指が、リオ五輪後に骨折と判明するなど、回復具合が心配されるが、ブエルタのスタートラインに着くにあたっては問題ないようだ。このほど、チームからの正式発表があり、出場が確定した。

ブエルタ序盤ステージの見どころ

●8月20日(土) 第1ステージ オウレンセ,ライアス・ヘルスリゾート~カストロ・デ・ミーニョ ナウティカルパーク 27.8km

ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第1ステージコースプロフィール © Unipbulicブエルタ・ア・エスパーニャ2016第1ステージコースプロフィール © Unipbulic

 2016年のブエルタの幕開けを告げる、27.8kmのチームタイムトライアル。おおむね平坦で、スピードに富んだ戦いとなるだろう。チーム力の差がはっきりと出るだけに、総合争いを視野に入れる選手たちにとっては、アシストとの連携が問われることとなる。

●8月21日(日) 第2ステージ オウレンセ・サーマルキャピタル~バイヨーナ 160.8km

ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第2ステージコースプロフィール © Unipublicブエルタ・ア・エスパーニャ2016第2ステージコースプロフィール © Unipublic

 中盤に3級山岳が控えるが、それ以外はレースを大きく揺るがす要素が少ないこともあり、スプリントでのフィニッシュが予想される。大会が始まったばかりとあって、有力選手たちはまだまだ脚を残しておきたいところ。予期せぬクラッシュやトラブルには注意したい。

●8月22日(月) 第3ステージ マリン~ドゥンブリーア,エサロ・ビューポイント 176.4km

ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第3ステージコースプロフィール © Unipublicブエルタ・ア・エスパーニャ2016第3ステージコースプロフィール © Unipublic

 後半に3級、2級とカテゴリー山岳をこなし、最後は3級山岳ミラドール・デ・エサロを上る。登坂距離1.8kmで、平均勾配13.8%。最大勾配は29%にも達し、有力選手同士でも数秒のタイム差がつくことが考えられる。同地がフィニッシュとなった2012年の第12ステージは、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、チーム カチューシャ)が、コンタドールやバルベルデを振り切って勝利している。

●8月23日(火) 第4ステージ ベタンソス~サン・アンドレス・デ・テイシド 163.5km

ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第4ステージコースプロフィール © Unipublicブエルタ・ア・エスパーニャ2016第4ステージコースプロフィール © Unipublic

 前日に続いて、頂上フィニッシュを迎える。最後の2級山岳は、登坂距離11.2km、平均勾配4.8%。途中で一度下って、再度フィニッシュに向かって上る。先々の総合争いを見据える選手にとっては、攻撃を仕掛けずとも大きく遅れることは許されない。

今週の爆走ライダー-ジャンニ・モズコン(イタリア、チーム スカイ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 8月11~14日にノルウェーで開催されたアークティックレース・オブ・ノルウェー(UCI2.HC)。大会創設4年目と歴史が浅いながらも、ツールと同じくA.S.O.が主催するレースとして年々人気が高まっている。スプリントと山岳とのバランスがよいステージ構成であることも魅力だ。

プロ1年目からパリ~ルーベに出場したジャンニ・モズコン。アークティックレース・オブ・ノルウェーでは総合優勝を果たした =パリ~ルーベ2016、2016年4月10日 Photo: Yuzuru SUNADAプロ1年目からパリ~ルーベに出場したジャンニ・モズコン。アークティックレース・オブ・ノルウェーでは総合優勝を果たした =パリ~ルーベ2016、2016年4月10日 Photo: Yuzuru SUNADA

 そんな大会にあって、今年総合優勝を果たしたのがプロ1年目、22歳のモズコン。唯一の山岳ステージであった第3ステージを制し、最後までリーダージャージを守った。昨年までアンダー23(23歳未満)カテゴリーで活躍してきたが、今シーズン満を持してプロ入り。シーズン前半からステージレースを中心に走ってきたが、ここへきて快走を見せて一躍注目を集めている。

 プロ入りにあたっては、いくつものオファーを受けながらも、あえて選手層の厚い現チームを選択。憧れのライダーにフルームやゲラント・トーマス(イギリス)を挙げるだけあって、「一番好きなチームを選んだんだ」と述べる。チームにもフィットし、その組織化されたスタンスに「若いライダーにとって、このチームは最高の環境だと思う」とも。

アンダー23時代から、年代別のトップを走ってきた。今後の成長に期待がかかる =UCIロード世界選手権・男子アンダー23ロードレース、2015年9月25日 Photo: Yuzuru SUNADAアンダー23時代から、年代別のトップを走ってきた。今後の成長に期待がかかる =UCIロード世界選手権・男子アンダー23ロードレース、2015年9月25日 Photo: Yuzuru SUNADA

 グランツールライダーがひしめくチームにあって、将来を担う新星の登場は首脳陣も手ごたえをつかんでいる。「クライマーとしても強く、スプリントも得意としている。さらには、タイムトライアルでもよい走りを見せる。将来的にどのような路線を歩むかは、もう少し吟味が必要だ」とは、クットアスル・アルヴェセン監督。当面はクラシックで経験を積み、いずれステージレースへとの育成計画もあるようだ。

 生まれ育ったイタリア北部の街・リーヴォは、フランチェスコ・モゼールやマウリツィオ・フォンドリエストといった世界チャンピオンを輩出した地域。自転車熱が高く、モズコン自身も「6歳か7歳のときに自転車に乗り始めた」という。

 「ノルウェーでの勝利がこれからのキャリアをどう変えるかは分からないが、重要なステップであることは間違いない」と冷静に自らを見つめる。故郷の偉大な先輩に続く道しるべは、この勝利から通じているのかもしれない。

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。

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