リオデジャネイロ五輪 個人タイムトライアル(男女)カンチェッラーラが涙の金メダル 女子は42歳のアームストロングが圧巻の3連覇

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 リオデジャネイロ五輪・自転車競技ロード種目の最後を飾る、個人タイムトライアルが現地時間8月10日に実施された。男子ではファビアン・カンチェッラーラ(スイス、トレック・セガフレード)が、2008年北京大会以来の金メダル獲得。今シーズン限りでの現役引退を表明しており、まさに“有終の美”となった。女子では、一度引退し2015年に競技復帰した42歳のクリスティン・アームストロング(アメリカ、トゥエンティ16・ライドバイカー)が、北京大会と2012年ロンドン大会に続き優勝し、五輪3連覇を達成した。

リオデジャネイロ五輪・男子個人タイムトライアル、金メダルを獲得し満面の笑みを浮かべるファビアン・カンチェッラーラ Photo: Yuzuru SUNADAリオデジャネイロ五輪・男子個人タイムトライアル、金メダルを獲得し満面の笑みを浮かべるファビアン・カンチェッラーラ Photo: Yuzuru SUNADA

強い風雨をものともしなかったアームストロング

 個人タイムトライアルは、6日の男子ロードレース、7日の女子ロードレースでも使われたグルマリの周回コースが舞台。ポイントとなるのが2カ所の上り。1つ目のグルマリが登坂距離1.3km・平均勾配9.4%・最大勾配24.1%。2つ目のグロタ・フンダの上りが登坂距離が2.13kmで、平均勾配6.8%・最大勾配10.3%。それぞれ上り終えた後には、テクニカルな下りが待ち受ける。

 さらに、リオデジャネイロ市内は早朝から雨が降り、コースのある海沿いは風も強かったことから、それらコンディションがレースにどのような影響を及ぼすのかも注目されるところとなった。

 19カ国から25人が出場した女子は、グルマリを1周回の29.9kmで争われた。現地時間午前8時30分に第1走者がスタート。1分30秒おきに次々と選手たちがコースへと繰り出した。

優勝争いを制し、五輪3連覇を果たしたクリスティン・アームストロング Photo: Yuzuru SUNADA優勝争いを制し、五輪3連覇を果たしたクリスティン・アームストロング Photo: Yuzuru SUNADA

 そんな中、金メダル争いを繰り広げたのは、最終走者のアームストロングと、前回のロンドン大会でこの種目銅メダルのオルガ・ザベリンスカヤ(ロシア、ビーピンク)の2人。グルマリの頂上に設けられた第1計測ポイント(10km地点)でアームストロングがトップタイムをマークすると、下りと中盤の平坦区間を経て迎えたグロタ・フンダの頂上に設定された第2計測ポイント(19.7km地点)ではザベリンスカヤがトップに立った。

 雨脚が強く、ウェットな路面状況に慎重な走りが求められる中、攻めの姿勢を貫いた両者。テクニカルな下りを終えて、フィニッシュまでの約7kmに及ぶ平坦区間で強さを見せたのはアームストロングだった。先にフィニッシュし、暫定で首位に立っていたザベリンスカヤのタイムを5秒あまり更新。1位であることを確認すると、バイクとともにアスファルト上に倒れこんだ。

 1973年生まれのアームストロングは、長く個人タイムトライアル(TT)スペシャリストとして君臨。五輪では2008年の北京大会で初優勝。出産を経て臨んだ2012年のロンドン大会でも金メダルを獲得。これを機に一度現役を退いたが、2015年に競技復帰を果たし、この五輪3連覇へとつなげた。沖縄県の在日米軍海兵隊施設「キャンプ・フォスター」内に設けられているクバサキ高校出身で、わずかながら日本ともゆかりのある選手だ。

リオ五輪、女子個人タイムトライアルの上位3選手。左から銀メダルのオルガ・ザベリンスカヤ、金メダルのクリスティン・アームストロング、銅メダルのアンナ・ファンデルブレッヘン Photo: Yuzuru SUNADAリオ五輪、女子個人タイムトライアルの上位3選手。左から銀メダルのオルガ・ザベリンスカヤ、金メダルのクリスティン・アームストロング、銅メダルのアンナ・ファンデルブレッヘン Photo: Yuzuru SUNADA

與那嶺恵理は15位

 男女を通じて日本勢唯一の個人タイムトライアル出場となった與那嶺恵理(ハーゲンスベルマン・スーパーミント サイクリングチーム)は、アームストロングから2分17秒差の15位。

 全体の4番目で出走し、一時は2つの中間計測、そしてフィニッシュタイムとトップにも立った。レース後、「力は出し切れたと思う。雨で下りが滑りやすいので安全にいった。世界の中で自分の順位がどれくらいかというのが分かったので、次に向けて大きなモチベーションになった」とコメント。17位となったロードレースとあわせ、初めてとなる五輪の戦いを終えた。

15位で終えた與那嶺恵理。「力は出し切れた」とコメント Photo: Yuzuru SUNADA15位で終えた與那嶺恵理。「力は出し切れた」とコメント Photo: Yuzuru SUNADA

カンチェッラーラが“復権”の金メダル

 女子に続き、男子は現地時間午前10時に第1走者がスタート。グルマリを2周回する54.6kmで争われた。選手たちは1分30秒おきにコースへと繰り出すが、周回コース内での走者のバッティングを防ぐため、2つのグループに分けられた。UCI(国際自転車競技連合)ポイント獲得状況や、個人TTでの実績などが加味され、おおむね第2ウェーブに実力者が集められた。

 また、出場枠を獲得しながら辞退した国・選手が出たことによる繰り上げでの出場決定など、出走選手が確定したのがレース前日。最終的に、29カ国から35人がレースに臨んだ。

 まず、第1ウェーブではレオポルド・ケニッグ(チェコ、チーム スカイ)が、1時間15分23秒で暫定トップに立つ。だが、第2ウェーブの選手たちが登場すると、中間計測から次々とタイムが更新されていった。

 雨が降ったり止んだりと一定せず、路面コンディションも場所によって異なる、選手たちにとっては難しい戦いを強いられる格好。そうした中で、前半で好調さを示したのがローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)。10km地点の第1計測ポイント、19.7km地点の第2計測ポイント、そして34.6km地点の第3計測ポイントでもトップタイムをマークする。

 しかし、後半に入りデニスのバイクに異変が起きた。一度立ち止まりバイクを交換。これによって、幾分勢いが失われてしまった。

 代わって、後半にタイムを伸ばしてきたのがヨナタン・カストロビエホ(スペイン、モビスター チーム)。フィニッシュでは、それまでのトップタイムを大幅に更新する1時間13分21秒を記録する。

 カストロビエホのタイムはしばらくトップをキープしたが、ラスト5人がスタートすると形勢に変化が起きた。

序盤から好ペースを刻んだファビアン・カンチェッラーラ。金メダル獲得につなげた Photo: Yuzuru SUNADA序盤から好ペースを刻んだファビアン・カンチェッラーラ。金メダル獲得につなげた Photo: Yuzuru SUNADA

 最後から5人目でコースへと飛び出したカンチェッラーラは、序盤から好ペースを刻む。第1計測ポイントでトップに立ち、その後の下りを慎重に走ったこともあり第2計測ポイントでは少し遅れたものの、その後盛り返す。

 第3計測ポイントも1位となり、続く44.4km地点の第4計測ポイントではトップタイムを53秒更新。大きくタイムを稼ぎ、フィニッシュタイムが楽しみになる。

 力強いペダリングでフィニッシュへとやってきたカンチェッラーラ。最後まで脚を緩めることなく走りきり、1時間12分15秒と圧倒的なタイムを叩きだし、残る選手たちを待つこととなった。

安定したペースで走ったトム・デュムランだったが、カンチェッラーラのタイムには及ばなかった Photo: Yuzuru SUNADA安定したペースで走ったトム・デュムランだったが、カンチェッラーラのタイムには及ばなかった Photo: Yuzuru SUNADA

 優勝候補筆頭に挙げられたトム・デュムラン(オランダ、チーム ジャイアント・アルペシン)は最後から2人目、7月のツール・ド・フランスを制したクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)は最終走者と、両者の走りに注目が集まった。

 デュムランは前半から安定したペースで走り、中間計測でも上位に位置。しかし、カンチェッラーラのタイムには届かず、フィニッシュで47秒差の2位にとどめるのがやっと。フルームも中盤以降、徐々にトップとのタイム差が広がっていき、終盤は失速気味に。それでも3位となり、銅メダルは確保した。

 カンチェッラーラはフルームのフィニッシュを見届けると、チームスタッフと飛び跳ねて大喜び。2008年北京大会以来、8年ぶりの五輪の金メダルだ。

最終レースになるかとの問いには答えず

勝ち名乗りを受けて表彰台で飛び跳ねるファビアン・カンチェッラーラ。大きな体も喜びで軽やかだ Photo: Yuzuru SUNADA勝ち名乗りを受けて表彰台で飛び跳ねるファビアン・カンチェッラーラ。大きな体も喜びで軽やかだ Photo: Yuzuru SUNADA

 優勝が決まり、感情を抑えられず涙を流したカンチェッラーラ。これまでのプロキャリアでは、石畳系の「北のクラシック」や個人タイムトライアルで隆盛を極めた。

 そして、かねてから2016年限りでの引退を表明し、現役最終シーズンの最中での栄冠となった。

 自転車競技は、ロード種目が終了。11日からはトラック種目が行われる。

 表彰式を終えてからの記者会見では、あらゆる質問が飛んだ。なかでも、引退に関するものが多く、カンチェッラーラ本人も改めて今シーズンが最後になることを強調した。一方で、このレースがキャリア最後になるのかとの問いについては、「今は聞かないでほしい。まずは喜びに浸りたい。シーズン終了に向けては、チームやスポンサーと協議をしていくことになるだろう」とし、明言は避けた。

リオ五輪、男子個人タイムトライアルの上位3選手。左から銀メダルのトム・デュムラン、金メダルのファビアン・カンチェッラーラ、銅メダルのクリストファー・フルーム Photo: Yuzuru SUNADAリオ五輪、男子個人タイムトライアルの上位3選手。左から銀メダルのトム・デュムラン、金メダルのファビアン・カンチェッラーラ、銅メダルのクリストファー・フルーム Photo: Yuzuru SUNADA

リオデジャネイロ五輪・男子個人タイムトライアル(54.6km)結果
1 ファビアン・カンチェッラーラ(スイス、トレック・セガフレード) 1時間12分15秒
2 トム・デュムラン(オランダ、チーム ジャイアント・アルペシン) +47秒
3 クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ) +1分2秒
4 ヨナタン・カストロビエホ(スペイン、モビスター チーム) +1分6秒
5 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) +1分10秒
6 マチェイ・ボドナル(ポーランド、ティンコフ) +1分50秒
7 ネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル、モビスター チーム) +2分0秒
8 ヨン・イサギレ(スペイン、モビスター チーム) +2分6秒
9 ゲラント・トーマス(イギリス、チーム スカイ) +2分37秒
10 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、チーム ロットNL・ユンボ) +2分40秒
(出走35人)

リオデジャネイロ五輪・女子個人タイムトライアル(29.9km)結果
1 クリスティン・アームストロング(アメリカ、トゥエンティ16・ライドバイカー) 44分26秒
2 オルガ・ザベリンスカヤ(ロシア、ビーピンク) +6秒
3 アンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ、ラボ・リヴ ウィメンズサイクリングチーム) +11秒
4 エレン・ファンダイク(オランダ、ボエルス・ドルマンス サイクリングチーム) +22秒
5 エリサ・ロンゴボルギーニ(イタリア、ウィグル・ハイファイブ) +26秒
6 リンダ・ヴィルムッセン(ニュージーランド、ユナイテッドヘルスケア プロフェッショナルサイクリングチーム) +28秒
7 タラ・ウィッテン(カナダ、ザ サイクルリー・オプス) +35秒
8 リサ・ブレナウアー(ドイツ、キャニオン・スラムレーシング) +56秒
9 カトリン・ガーフット(オーストラリア、オリカ・AIS) +1分9秒
10 エヴェリン・スティーヴンス(アメリカ、ボエルス・ドルマンス サイクリングチーム) +1分34秒
15 與那嶺恵理(ハーゲンスベルマン・スーパーミント サイクリングチーム) +2分17秒
(出走25人)

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