リオデジャネイロ五輪 女子ロードレースオランダのファンデルブレッヘンがラスト200mで逆転金メダル 與那嶺恵理は17位

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 リオデジャネイロ五輪は大会3日目となる現地時間8月7日、自転車競技・女子ロードレースを実施。アタックの応酬となったレースは、ラスト200mでトップに追いついたアンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ、ラボ・リヴ ウィメンズサイクリングチーム)が優勝。金メダルを獲得した。日本から唯一の出場となった與那嶺恵理(ハーゲンスベルマン・スーパーミント サイクリングチーム)は17位でフィニッシュ。このレースへは39カ国から68選手が出走し、50選手が完走を果たしている。

リオデジャネイロ五輪・女子ロードレース、フィニッシュ前200mで逆転し金メダルを獲得したアンナ・ファンデルブレッヘン Photo: Yuzuru SUNADAリオデジャネイロ五輪・女子ロードレース、フィニッシュ前200mで逆転し金メダルを獲得したアンナ・ファンデルブレッヘン Photo: Yuzuru SUNADA

グルマリの周回でレースが活性化

 リオ五輪の自転車競技は、前日6日の男子ロードに続き、女子ロードレースが行われた。男子同様に、リオデジャネイロ市南東部のリゾート海岸・コパカバーナを出発し、海沿いを走った後、グルマリのアップダウンを2周回(男子は4周回)、後半はヴィスタ・チネサの山岳ルートを1周回(男子は3周回)し、コパカバーナへと戻る。おおむね男子ロードのコースを短縮した格好で、136.9kmで争われた。

日本勢唯一の女子ロード出場となった與那嶺恵理。石畳区間を走る Photo: Yuzuru SUNADA日本勢唯一の女子ロード出場となった與那嶺恵理。石畳区間を走る Photo: Yuzuru SUNADA

 この種目への出場は、今年5月31日までの国別ランキング、個人ランキング、各大陸選手権の結果などを元に決定。それにより、オランダ、アメリカ、イタリア、オーストラリア、ドイツに最大となる4人の出場枠が与えられた。また、日本には1枠が設けられ、6月の全日本選手権でロード、個人タイムトライアル2冠に輝いた與那嶺が今大会に臨むこととなった。

レース前半、単独で先頭を走ったロッテ・コペツキー Photo: Yuzuru SUNADAレース前半、単独で先頭を走ったロッテ・コペツキー Photo: Yuzuru SUNADA

 レースはスタート後しばし一団となって進んだが、20kmを過ぎたあたりでロッテ・コペツキー(ベルギー、ロット・ソウダル レディース)が単独アタック。メイン集団は海沿いの道で風を利用してペースアップを図る場面があったものの、この時点ではレース展開に大きな変化は起こらず、コペツキーとの差は2分から3分で推移した。

 30km地点を前にして、ロミー・カスパー(ドイツ、ボエルス・ドルマンス サイクリングチーム)が追走を開始。これも単独での動きとあって、メイン集団は容認する。

 レースが動きを見せたのは、グルマリの周回に入ったタイミング。1周目の下りを利用でエレン・ファンダイク(オランダ、ボエルス・ドルマンス サイクリングチーム)がペースアップ。これにジョルジャ・ブロンツィーニ(イタリア、ウィグル・ハイファイブ)、アンナ・プリクタ(ポーランド、BTCシティリュブリャナ)が反応。前を走っていたカスパーをパスし、そのまま追走グループを形成する。さらに、トリクシー・ウォラック(ドイツ、キャニオン・スラムレーシング)、クリスティン・アームストロング(アメリカ、トゥエンティ16・ライドバイカー)が合流。有力国から追走メンバーがそろったこともあり、メイン集団は実力者をそろえるイギリスがコントロールをはじめる。

 グルマリ2周目に入ったところで、逃げていたコペツキーと追走グループはいずれもメイン集団に吸収される。この間に集団のペースが上がったこともあり、一時的に23人が先行。與那嶺や優勝候補のマリアンヌ・フォス(オランダ、ラボ・リヴ ウィメンズサイクリングチーム)などが後方グループに位置したが、ここは問題なく前へと復帰している。同時に数人がアタックするが、これらはいずれも決まらず、そのままヴィスタ・チネサを目指す平坦区間を迎えた。

勝負どころを前に有力選手がアタック

 ヴィスタ・チネサへと向かうレース中盤の平坦区間では、まずオードリー・コルドン(フランス、ウィグル・ハイファイブ)が単独アタック。しばらくしてエレナ・チェッキーニ(イタリア、キャニオン・スラムレーシング)のペースアップをきっかけに7人が追走グループを形成。この追走の動きはメイン集団のチェックを受けるが、やがてコルドンも吸収され、レースはふりだしへと戻る。

中盤の平坦区間で逃げグループを形成したポーリン・フェランプレヴォら Photo: Yuzuru SUNADA中盤の平坦区間で逃げグループを形成したポーリン・フェランプレヴォら Photo: Yuzuru SUNADA

 大きな局面を迎えたのは、残り40km地点。ウォラックのアタックを6人が追いかけ、そのまま逃げグループを形成した。7人の中には、フォスやポーリン・フェランプレヴォ(フランス、ラボ・リヴ ウィメンズサイクリングチーム)といった優勝候補が含まれる、強力な逃げとなった。メイン集団との差はあっという間に広がり、残り30kmでは1分のリード。この頃から、アメリカ勢が集団を率い始め、7人の逃げを許さない姿勢を見せ始める。その甲斐あって、ヴィスタ・チネサを目前に先行メンバーすべてキャッチすることに成功した。

またしても下りで悲劇

勝負どころのヴィスタ・チネサに入ると、マーラ・アボット(左)が主導権を握った Photo: Yuzuru SUNADA勝負どころのヴィスタ・チネサに入ると、マーラ・アボット(左)が主導権を握った Photo: Yuzuru SUNADA

 ヴィスタ・チネサの上りで力を見せたのは、女子プロトン屈指のクライマーであるマーラ・アボット(アメリカ、ウィグル・ハイファイブ)。上り始めてすぐに集団の先頭に立つと、1人、また1人とこのペースに着いていけなくなった。フォスやフェランプレヴォも遅れ、残り20kmで先頭は4人に絞られる。

 残り18kmでアンネミーク・ファンフレウテン(オランダ、オリカ・AIS)がアタックすると、4人の先頭集団が崩壊。これに対応できたのはアボットのみ。いよいよ勝負は一騎打ちの様相を呈した。

 再び前を引くアボットと、ペースを合わせるファンフレウテン。後方では、先頭集団から遅れたファンデルブレッヘンとエリサ・ロンゴボルギーニ(イタリア、ウィグル・ハイファイブ)に、エマ・ヨハンソン(スウェーデン、ウィグル・ハイファイブ)が追いついた。先頭2人と追走3人とのタイム差は広がる一方で、上りを終える頃には約40秒となた。

 海岸線へと戻るダウンヒルでは、前日の男子ロードで多くの落車が発生したが、この女子ロードでも悲劇が起きてしまった。下り始めてすぐにファンフレウテンがリードを開始。アボットとのダウンヒルスキルの違いを見せていた。しかし、スピードを乗せてその差を広げようというところ、右コーナーでバランスを崩し、顔から地面に叩きつけられてしまった。そのままコース外へと飛ばされ、レース復帰は不可能な状況となった。下りに入るのとタイミングを同じくして、雨が降り始め、ウェットになりつつあった路面コンディションも関係したのかもしれない。

 一時は差をつけられたアボットだったが、何度か下りきり終盤の平坦区間へ。残すはフィニッシュまでの約8km。金メダルへのカウントダウンが始まった。

懸命の逃げと追走 ラスト200mで決着

終盤の平坦区間で懸命に逃げるマーラ・アボット Photo: Yuzuru SUNADA終盤の平坦区間で懸命に逃げるマーラ・アボット Photo: Yuzuru SUNADA

 独走となったアボットは、フィニッシュへと続く平坦区間もしっかりとしたペダリングだ。チームカーからもゲキが飛ぶ。一方、追走では一時トップを走っていたファンフレウテンをアシストとするため、ロンゴボルギーニとヨハンソンのチェックに回っていたファンデルブレッヘンも、下りでのアクシデントを受けて先頭交代のローテーションに加わった。これによりペースが上がり、少しずつではあるがアボットとのタイム差が縮まりつつあった。さらには、優勝候補とも目されたエリザベス・アーミステッド(イギリス、ボエルス・ドルマンス サイクリングチーム)を含む第2追走も後方から迫る。

 何とか逃げ切りたいアボットだったが、残り5kmを切ってからその脚に陰りが見えてきた。フィニッシュまで2.5kmで追走3人との差は20秒、ラスト1kmで10秒とみるみるうちに後続選手の姿が大きくなってきた。

ラスト200mでアボットを捕まえた3人がスプリント。アンナ・ファンデルブレッヘンに軍配が上がった Photo: Yuzuru SUNADAラスト200mでアボットを捕まえた3人がスプリント。アンナ・ファンデルブレッヘンに軍配が上がった Photo: Yuzuru SUNADA

 アボットを視界に捉えた追走グループは、ロンゴボルギーニが懸命のペースアップ。ラスト500mに設けられた最終コーナーを過ぎると、勢いの違いが如実に現れた。フィニッシュ前200m、ついにアボットを捕まえた。

 このタイミングを待っていたかのように、ファンデルブレッヘンがスプリントを開始。一瞬対応が遅れたヨハンソンは必死に追うが、あと一歩及ばず。ロンゴボルギーニにはスプリントをする脚が残っておらず、アボットも精根尽きた様子。ファンデルブレッヘンが4人によるメダル争いを制した。

ファンフレウテンは意識に異常なし

 ファンデルブレッヘンは1990年生まれの26歳。ジュニア時代から年代別のオランダ代表として走り、プロ入り後はオールラウンダーとして活躍。昨年のUCI(国際自転車競技連合)ロード世界選手権では、ロード・個人TTともに銀メダルを獲得。「女性版ジロ」といわれるジロ・ローザでは、昨年総合優勝、2014年と今年は総合3位となっている。レース前半に集団をコントロールしたファンダイク、後半にレースを動かしたフォス、アクシデントこそあったものの金メダルに近い位置を走ったファンフレウテン、そしてファンデルブレッヘンと、オランダ勢の層の厚さを示すレースとなった。

 2位のヨハンソンは、2008年の北京大会以来となる五輪銀メダル。3位のロンゴボルギーニは、初の五輪で銅メダルを獲得した。

リオデジャネイロ五輪・女子ロードレースのメダリスト。左から2位エマ・ヨハンソン、1位アンナ・ファンデルブレッヘン、3位エリサ・ロンゴボルギーニ Photo: Yuzuru SUNADAリオデジャネイロ五輪・女子ロードレースのメダリスト。左から2位エマ・ヨハンソン、1位アンナ・ファンデルブレッヘン、3位エリサ・ロンゴボルギーニ Photo: Yuzuru SUNADA

 また、下りで激しい落車に見舞われたファンフレウテンは、その後救急搬送され、適切な処置を受けている。意識ははっきりとしており、周囲の問いかけにもしっかりと応じていることをオランダメディアが報じている。

與那嶺は日本勢過去最高の17位

五輪女子ロードレースにおける日本人最高位の17位でフィニッシュする與那嶺恵理。次は個人タイムトライアルが控える Photo: Yuzuru SUNADA五輪女子ロードレースにおける日本人最高位の17位でフィニッシュする與那嶺恵理。次は個人タイムトライアルが控える Photo: Yuzuru SUNADA

 今シーズンから海外チームに所属し、ハイレベルのレースを戦ってきた與那嶺。満を持して迎えた五輪の舞台は、トップから4分56秒差の17位という結果になった。

 スタート以降、メイン集団の中盤や後方に位置し、リラックスしてレースを進めている姿が国際映像にも映し出された。ヴィスタ・チネサで集団のペースアップに対応できず、途中でメカトラブルに見舞われるなど、結果的に単独でフィニッシュを目指す形となったが、2004年アテネ五輪での沖美穂の20位を上回る、五輪女子ロードにおける日本選手最高順位を記録。選手としてのキャリアに、新たな1ページを刻んだ。

◇         ◇

 リオ五輪自転車競技・ロードレース種目は、10日に男女の個人タイムトライアルが行われる。日本勢は、男女を通じてただ1人、與那嶺がエントリー。スタートは、女子が午前8時30分(日本時間午後8時30分)。男子の第1ウェーブが午前10時(同午後10時)、第2ウェーブが午前11時19分(同午後11時19分)を予定している。

リオデジャネイロ五輪・女子ロードレース(136.9km)結果
1 アンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ、ラボ・リヴ ウィメンズサイクリングチーム) 3時間51分27秒
2 エマ・ヨハンソン(スウェーデン、ウィグル・ハイファイブ) +0秒
3 エリサ・ロンゴボルギーニ(イタリア、ウィグル・ハイファイブ) +0秒
4 マーラ・アボット(アメリカ、ウィグル・ハイファイブ) +4秒
5 エリザベス・アーミステッド(イギリス、ボエルス・ドルマンス サイクリングチーム) +20秒
6 カタリーナ・ニエフィアドマ(ポーランド、ラボ・リヴ ウィメンズサイクリングチーム) +20秒
7 フラヴィア・オリヴェイラ(ブラジル、BTCシティリュブリャナ) +20秒
8 ヨランダ・ネフ(スイス、セルベット・フートン) +20秒
9 マリアンヌ・フォス(オランダ、ラボ・リヴ ウィメンズサイクリングチーム) +1分14秒
10 アシュリー・ムールマン(南アフリカ、サーヴェロ・ビグラ プロサイクリングチーム) +1分14秒
17 與那嶺恵理(ハーゲンスベルマン・スーパーミント サイクリングチーム) +4分56秒
出走68人、完走50人

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