リオデジャネイロ五輪 男子ロードレースフレッヒ・ヴァンアーヴルマートが3人のスプリントを制し金メダル 新城幸也は27位

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 8月5日に開幕したリオデジャネイロ五輪は、翌6日から自転車競技が開始。その幕開けとなった男子ロードレースは、フィニッシュ前1.4kmでトップに追いついたフレッヒ・ヴァンアーヴルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)が優勝し、金メダルを獲得。最後は3人のスプリント勝負を制した。参加144人のうち実に半数以上がリタイアするという過酷なレース。2人が出場した日本勢は、新城幸也(ランプレ・メリダ)が27位で完走した。

3人での勝負を制し、金メダルを獲得したフレッヒ・ヴァンアーヴルマート  Photo: Yuzuru SUNADA3人での勝負を制し、金メダルを獲得したフレッヒ・ヴァンアーヴルマート  Photo: Yuzuru SUNADA

強力メンバーがレースを先行

 この種目へは、2015年シーズンのUCI(国際自転車競技連合)ワールドツアー国別ランキングや、コンチネンタル(大陸)ランキング、各大陸選手権などの結果を元に出場国や参加人数を決定。レース本番には、144人がスタートラインについた。UCIワールドツアー国別ランキングの上位国にあたる、ベルギー、コロンビア、イギリス、イタリア、スペインには、最大出場枠である5人の参加が認められた。

長丁場の戦いに挑んだ選手たち Photo: Yuzuru SUNADA長丁場の戦いに挑んだ選手たち Photo: Yuzuru SUNADA

 レースは237.5kmで争われた。リオデジャネイロ市南東部のリゾート海岸・コパカバーナを出発し、海沿いを走った後、グルマリのアップダウンを4周回、後半にかけてはヴィスタ・チネサの山岳を3周回し、コパカバーナへと戻る。グルマリには10%を超えようかという2カ所の急坂と2kmに及ぶ石畳が、ヴィスタ・チネサは平均勾配6.2%の上りと6kmのダウンヒルが控える。

 現地時間午前9時30分にスタートし、5kmほど進んでアクチュアル(正式)スタートが切られた。逃げ狙いのアタックが続いたが、15km地点を過ぎたあたりで6人が先行を許された。

 逃げメンバーは、ハルリンソン・パンタノ(コロンビア、イアム サイクリング)、ミヒャエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・バイクエクスチェンジ)、パヴェル・コチェトコフ(ロシア、チーム カチューシャ)、シモン・ゲシュケ(ドイツ、チーム ジャイアント・アルペシン)、スヴェンエーリク・ビストラム(ノルウェー、チーム カチューシャ)、ミハウ・クフィアトコフスキー(ポーランド、チーム スカイ)。いずれも普段はUCIワールドチームで走る選手たちだ。

 強力な面々がレースを先行したこともあり、タイム差が約8分にまで広がったところで、人数をそろえるスペインとイタリアが中心となってメイン集団のペースコントロールを開始した。また、逃げが決まる直前には、7月のツール・ド・フランスでの負傷から復帰したばかりのトム・デュムラン(オランダ、チーム ジャイアント・アルペシン)が早々にリタイア。10日に臨む個人タイムトライアルへと照準を定めた。

トラブル続出、有力選手も足止め

グルマリの周回コースを集団内で走る内間康平(左から3人目) Photo: Yuzuru SUNADAグルマリの周回コースを集団内で走る内間康平(左から3人目) Photo: Yuzuru SUNADA

 グルマリの周回に入ると、淡々とペースを刻む逃げグループの一方で、メイン集団では石畳区間でトラブルが多発。落車やパンク、メカトラブルで足止めを強いられる選手が次々と現れる。金メダル候補に挙げられていたリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシングチーム)は2度にわたってストップし、日本代表の内間康平(チーム ブリヂストンアンカー)も止まってバイクチェックしている場面が中継映像に映し出された。

コース脇で自転車を掲げ、トラブルをアピールする内間康平(共同)コース脇で自転車を掲げ、トラブルをアピールする内間康平(共同)

 ほかにも、バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)が2回バイクを交換し、ファビオ・アール(イタリア、アスタナ プロチーム)も周回途中で前輪をチェンジしている。

 グルマリ最終周回の4周目には、石畳区間でチェコ勢がペースアップ。メイン集団がいくつかに割れ、この動きをきっかけに約15人が一時先行。その後メイン集団が追いついたものの、距離を追うごとにレースが活性化していった。そんな中、注目のクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)が下りで落車。ゲラント・トーマス(チーム スカイ)のアシストで集団へと復帰できたものの、レース全体のペースが上がっていたこともあり、戦線へと戻るのに時間を要した。残り73km地点では内間が落車に巻き込まれ、戦列復帰が難しくなってしまった。

高速ダウンヒルで落車相次ぐ

 レース後半の周回、ヴィスタ・チネサへ入る頃には、逃げとメイン集団との差は2分を切り、射程圏内に捕らえていた。レースが動いたのは、ヴィスタ・チネサの1周目。メイン集団からダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシングチーム)がアタックすると、ヴァンアーヴルマート、トーマスがチェック。さらに、レイン・タラマエ(エストニア、チーム カチューシャ)、セルジオルイス・エナオ(コロンビア、チーム スカイ)が合流。追走グループを形成する。メイン集団は、これらのアタックへの対応が遅れたスペインを中心にペースアップ。1分以内に逃げと追走を押さえ、次なる展開へと備える。

 実力者をそろえた逃げグループだったが、長丁場の先行に1人、また1人と脱落。最後まで粘ったのはクフィアトコフスキーだった。残り45kmで追走グループが合流。この頃には、アンドレイ・ツェイツ(カザフスタン、アスタナ プロチーム)もメイン集団からのブリッジに成功し、先頭グループに加わった。

グルマリの周回コースを走るアダム・イェーツ。レース後半に入り果敢に攻めた Photo: Yuzuru SUNADAグルマリの周回コースを走るアダム・イェーツ。レース後半に入り果敢に攻めた Photo: Yuzuru SUNADA

 2周目の下りでは、ヴィンチェンツォ・ニバリとファビオ・アール(ともにアスタナ プロチーム)のイタリアコンビが飛び出し、先頭グループに加わった。ニバリたちの仕掛けには、ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ プロチーム)やラファウ・マイカ(ポーランド、ティンコフ)、アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)が同調。カルーゾの牽引もあり、イタリア勢を中心に前を急いだ。

 片や、メイン集団はスペインのアシストが後ろへ下がったこともあってか、なかなかペースアップにつながらない。下りでは落車が相次ぎ、ネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル、モビスター チーム)やポートがコースアウト。ともにそのままリタイアとなった。

3人がアタックに成功、しかし・・・

グルマリの周回コースを走るルイ・メインティス。レース終盤に優勝争いに加わった Photo: Yuzuru SUNADAグルマリの周回コースを走るルイ・メインティス。レース終盤に優勝争いに加わった Photo: Yuzuru SUNADA

 勝負のヴィスタ・チネサ3周目。メイン集団から抜け出したホアキン・ロドリゲス(スペイン、チーム カチューシャ)と、ルイ・メインティス(南アフリカ、ランプレ・メリダ)のクライマー2人が先頭グループに追いつき、メダル争いに向けて有力国のエースクラスがそろった。

 上りに入ると、まずアールがアタック。これに合わせたツェイツがカウンターアタックを繰り出すと、イェーツが脱落。さらにニバリがペースを上げると、これに対応できたのはマイカとエナオ、トーマス。この4人が先行開始した直後に、再度ニバリがアタックするが、これもほかの3人がチェックした。

 4人がそのまま行くかと思われたが、牽制状態となり一度は遅れた選手たちが戻ってきた。これを見てニバリが再びアタック。続けてエナオがカウンターアタックに出たことで、2人が抜け出すことに成功。その後マイカが追いつき、3人が先頭に立った。その後もニバリが再三仕掛けるが、いずれも失敗に終わった。

 メイン集団では、フルームがアタックしたもののやがて失速。追ってきたジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)や、ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)にかわされ、先頭に追いつくのは難しい状況だ。

 後続とのタイム差を広げた先頭3人は、最後のダウンヒルへ。快調に下りを攻めていたかに思われた矢先、まさかの事態が起こった。なんと、ニバリとエナオがクラッシュしてしまったのだ。これにより、先頭はマイカ1人に。地面に叩きつけられた2人はそのままリタイアを余儀なくされ、ニバリにいたっては鎖骨骨折との診断がくだっている。

金メダルをかけた戦いは劇的なフィナーレに

 クラッシュを間一髪で避けたマイカは、下りを終えてフィニッシュまでの平坦区間を必死に逃げた。残り8kmで後続とは20秒、残り6kmではその差が25秒に広がり、金メダルへとグッと近づいた。

 ヴィスタ・チネサでの上りでニバリらの攻撃に苦しんだ選手たちだったが、誰一人として諦めることなく、懸命にマイカを追走した。特に、ニバリとエナオのクラッシュによって、メダルのチャンスが再燃したこともあり、牽制気味になったタイミングではロドリゲスが盛んに先頭交代のローテーションを促した。

 フィニッシュまで残り5km。追走グループからフルサングがアタック。これにヴァンアーヴルマートが即座に反応。この一瞬の動きが決め手となり、ライバルを振り落とすことに成功。2人は協調体制を組んでマイカに迫る。残り2.5kmでその差は9秒。そして、ラスト1.4kmでマイカを捕らえた。

ラスト200mでスプリントを開始したフレッヒ・ヴァンアーヴルマートが、そのままトップでフィニッシュラインを通過した Photo: Yuzuru SUNADAラスト200mでスプリントを開始したフレッヒ・ヴァンアーヴルマートが、そのままトップでフィニッシュラインを通過した Photo: Yuzuru SUNADA

 後続との差は十分。優勝争いは完全に3人に絞られた。残すはメダルの色だけとなった。フルサングが先頭を引き、ヴァンアーヴルマート、マイカと続く。長い戦いに終止符が打たれたのは、ラスト200m。満を持してスプリントを開始したヴァンアーヴルマートが、持ち前のスピードを生かしてグングン加速する。フルサングも負けじと追ったが、ヴァンアーヴルマートとの差は開く一方。フィニッシュライン手前で勝利を確信し両手を広げたヴァンアーヴルマートが、ロードレース王国ベルギーに金メダルをもたらした。

大活躍のシーズンにさらなる勲章

 ヴァンアーヴルマートは、1985年生まれの31歳。祖父や父親をはじめ、親族に競技経験者が多数そろう自転車一家で育った。2007年にプロとなり、翌年のブエルタ・ア・エスパーニャでポイント賞を獲得。その後はワンデーレースを主戦場とし、石畳系の「北のクラシック」から、丘陵地が舞台の「アルデンヌクラシック」まで幅広く結果を残してきた。

 今シーズンは序盤から大活躍。2月に行われた石畳系のレース、オムループ・ヘット・ニュースブラッド(ベルギー、UCI1.HC)で優勝すると、3月のティレーノ~アドリアティコでも悪天候での戦いを制して総合優勝。7月のツールでは第4ステージ優勝を皮切りに、総合首位のマイヨジョーヌを3日間着用した。そんな大躍進のシーズンで、さらに大きな勲章を手に入れた。

 銀メダルのフルサングも同じく31歳。山岳や個人タイムトライアルを得意とし、ステージレースを中心に総合エースからアシストまで務める万能選手。銅メダルのマイカは、近年グランツールで大活躍する1人。ツールでは2014年と今年の2回、山岳賞に輝いている。

 レース後にコパカバーナをバックに行った表彰式で、3選手にメダルが授与された。いずれも晴れやかな表情で、メダル獲得の喜びに浸った。

表彰台で晴れやかな表情を見せるメダリスト3選手。左から、3位ラファウ・マイカ、1位フレッヒ・ヴァンアーヴルマート、2位ヤコブ・フルサング Photo: Yuzuru SUNADA表彰台で晴れやかな表情を見せるメダリスト3選手。左から、3位ラファウ・マイカ、1位フレッヒ・ヴァンアーヴルマート、2位ヤコブ・フルサング Photo: Yuzuru SUNADA

新城27位、内間はリタイア

9分38秒差の27位でフィニッシュした新城幸也 Photo: Yuzuru SUNADA9分38秒差の27位でフィニッシュした新城幸也 Photo: Yuzuru SUNADA

 2人出走の日本勢は新城がトップから9分38秒差の27位、内間がリタイアとの結果だった。

 新城はヴィスタ・チネサ3周目までメイン集団を走行。優勝争いに加わることこそできなかったが、完走を果たしたツールでの好調を持続させ、確かな足跡を残した。

◇         ◇

 自転車競技は現地時間7日、女子ロードレースが行われる。136.9kmで争われ、男子同様にグルマリやヴィスタ・チネサの周回コースが舞台となる。日本からは、與那嶺恵理(ハーゲンスベルマン・スーパーミント サイクリングチーム)が出場。スタート時間は、現地時間7日午後0時15分(日本時間8月8日午前0時15分)にスタートする。

リオデジャネイロ五輪・男子ロードレース(237.5km)結果
1 フレッヒ・ヴァンアーヴルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム) 6時間10分5秒
2 ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ プロチーム) +0秒
3 ラファウ・マイカ(ポーランド、ティンコフ) +5秒
4 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ) +22秒
5 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、チーム カチューシャ) +22秒
6 ファビオ・アール(イタリア、アスタナ プロチーム) +22秒
7 ルイ・メインティス(南アフリカ、ランプレ・メリダ) +22秒
8 アンドレイ・ツェイツ(カザフスタン、アスタナ プロチーム) +25秒
9 タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ プロチーム) +1分47秒
10 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ) +2分29秒
27 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ) +9分38秒
DNF 内間康平(日本、チーム ブリヂストンアンカー)
完走63人

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