タイヤは太く、ディスクブレーキを採用ロードバイクは次なる快適性へ キャニオンのエンジニアが語った「エンデュレース CF SLX」<前編>

  • 一覧

 ドイツのバイクブランド「Canyon」(キャニオン)は、機能美を追求した「アルティメット CF SLX」に代表されるロードバイクのラインナップが特徴的だ。マットブラックをはじめとする落ち着いたトーンの車体に加えてエアロダイナミクスに優れた形状は、速く美しく走るサラブレッドをも髣髴とさせる。そんなイメージとは一線を画す「エンデュレース CF SLX」が、今年6月に発表された。28mm幅のタイヤにディスクブレーキを装備。これまでのキャニオン製ロードバイクの技術がどのように引き継がれ、どのようなコンセプトにもとづき開発されたのか、ドイツ・コブレンツにあるキャニオン本社を訪れ、その作り手に聞いた。

28mm幅のタイヤにディスクブレーキを装備した「エンデュレース CF SLX」 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA28mm幅のタイヤにディスクブレーキを装備した「エンデュレース CF SLX」 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

9割の顧客に勧めたいエンデュランス系

エンデュレース CF SLXは開発段階で「まず太いタイヤの採用が決まった」と話すミヒャエル・アドマイト氏 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWAエンデュレース CF SLXは開発段階で「まず太いタイヤの採用が決まった」と話すミヒャエル・アドマイト氏 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 エンデュレース CF SLXは、舗装路を快適かつ安全に走行するために設計されたエンデュランス系(長距離向け)ロードバイク。風の抵抗を受ける部分を極力そぎ落とし、1gでも軽く1秒でも速くと作られるプロロードレーサー向けの機材とは異なる。特設ページでは、「同じ道は二度とない、同じライダーは誰一人いない」としてエンデュレース CF SLXを乗りこなす動画が収められ、アマチュアライダーがどんな状況でも快適に走行できることを目指したバイクであることを感じさせる。

 バイクの開発にあたってまず初めに決まったのは、「ロードバイクに主流の23mm幅よりも太いタイヤを採用するということだった」と、シニア・プロダクトエンジニアのミヒャエル・アドマイト氏は話す。これまで5年以上、キャニオンの数々の製品開発に携わってきた。アドマイト氏は、「快適・安全に乗れるバイクの開発には、太いタイヤの採用が欠かせなかった。またタイヤが決まった時点で、それを制御するブレーキはディスクブレーキであることは議論するまでもなく明確だった」と振り返った。

「エンデュアランス系はキャニオンの90%の顧客にベスト」と話すセバスティアン・ヤチャック氏 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA「エンデュアランス系はキャニオンの90%の顧客にベスト」と話すセバスティアン・ヤチャック氏 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 エンデュレース CF SLXの開発を2年半の歳月をかけ進める上で、同社の全ロードバイクラインナップの売上のうちエンデュアランス系バイクの売上がその半数を占めるといった傾向も、見逃せない要素のひとつだったという。ロードバイク開発部門のディレクター、セバスティアン・ヤチャック氏は、「エンデュランス系ロードバイクはキャニオンの90%の顧客にとってベストなバイクだと考えている」と述べ、自信をのぞかせた。

ロードバイクにおける快適性は速く走るための要素

品質管理部門ディレクターのゴードン・ケーネン氏。同部門には全部で45種類の品質チェック機器があるという Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA品質管理部門ディレクターのゴードン・ケーネン氏。同部門には全部で45種類の品質チェック機器があるという Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 これまでのロードバイクの歴史として、「軽量であることと剛性、エアロダイナミクスにこだわってきた。例えばエンデュレース CF SLXにも、もちろんエアロダイナミクスが生かされている」と話すアドマイト氏。実際にバイクの性能を示す指標として、世界の各媒体はほとんどの場合“軽量”“剛性”をキーワードとして用いてきた。バイクブランド側もそれに合わせて剛性を計るシステムを積極的に取り入れ、キャニオンでも45種類のクオリティーチェック機器の内、ボトムブラケットやリアディレイラーハンガー、ヘッドチューブなどの剛性を計る機器が稼働していた。

 ただしキャニオンでは、剛性を計る機器の他に快適性を計る機器も並ぶ。シートポストの路面からの振動吸収性を計る機器など3種類は、地域の大学と共同開発したオリジナルだ。アドマイト氏は、「“快適性”はこれからのバイクとして重要なキーワードなんだ」と力を込めた。

路上でのシートポストの快適性を計る機器は、大学と共同開発した機器のひとつ Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA路上でのシートポストの快適性を計る機器は、大学と共同開発した機器のひとつ Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
耐久性のチェックを行う機器の操作パネル部分 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA耐久性のチェックを行う機器の操作パネル部分 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
品質管理部門は機械だらけだ Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA品質管理部門は機械だらけだ Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
キャニオンでは品質管理に工業用CTスキャンが用いられている Photo: Aki SCHULTE-KARASAWAキャニオンでは品質管理に工業用CTスキャンが用いられている Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
全てのコンポーネントはスキャンをクリアしてから市場に出るという Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA全てのコンポーネントはスキャンをクリアしてから市場に出るという Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
2016年2月に設置されたばかりの巨大なプロトタイプ製作機器 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA2016年2月に設置されたばかりの巨大なプロトタイプ製作機器 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 「快適であることは、なにもソファーに座ってゆったりくつろぐことではない。ロードバイクにおける快適性は、速く、遠くまで走るための一つの要素に過ぎない。エンデュレース CF SLXでは、はいつくばるような前傾姿勢にならなくとも乗れるし、(28mmタイヤや振動吸収性のおかげで)段差もこなしやすい。路面のグリップ面が広く、また(制動性に長けた)ディスクブレーキ採用のため雨でも晴れでも快適に乗れる」

シマノのロードバイク向けディスクブレーキ「フラットマウント」を採用 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWAシマノのロードバイク向けディスクブレーキ「フラットマウント」を採用 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
パッと見ただけでも太さが分かるエンデュレース CF SLXの28mm幅タイヤ Photo: Aki SCHULTE-KARASAWAパッと見ただけでも太さが分かるエンデュレース CF SLXの28mm幅タイヤ Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 アドマイト氏は、「エンデュレース CF SLXはあくまでもロードバイク。これをグラベル(未舗装路)で使えるとは思っていないし、快適であったとしてもシティーバイクではない」とカテゴリー分けを強調。その上で、「ここで採用した快適性の要素は、今後プロ向けのバイクへも反映していくことになるだろう」とジャンルを超えた快適性の追求に意欲を見せた。

各バイクのいいとこ取り

エンデュレース CF SLXへの想いを語ったミヒャエル・アドマイト氏(手前)とセバスティアン・ヤチャック氏 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWAエンデュレース CF SLXへの想いを語ったミヒャエル・アドマイト氏(手前)とセバスティアン・ヤチャック氏 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 エンデュレース CF SLXは、ミッドレンジラインの「アルティメット」やエアロダイナミクス(空力性能)に優れた「エアロード」の要素を多分に受け継いだバイクだ。例えばフレーム形状やシートポスト一体型といった特徴はアルティメットから踏襲されているし、エアロードが搭載するステム一体型ハンドルバーなどはひと目でそれと見て取れる。

 エンデュレース CF SLXのために補完された点は、垂直方向の振動吸収性やグリップしやすいといったエルゴノミクスデザインの追求だ。早く言えば、各バイクの「いいとこ取り」をし、さらに快適に乗れるバイクということになる。そうなると、キャニオンのスタンダードとして位置づけられてきたアルティメットの座を脅かす“競合”にならないだろうか? 筆者の頭に浮かんできたその疑問を、アドマイト氏へぶつけてみた。

 アドマイト氏は、「走る目的が異なるので競合にはならないだろう」とコメント。そして「もし競合になったとしても、それが顧客の求めている製品だという証拠」と笑顔で続けた。またヤチャック氏は、エンデュレース CF SLXがアルティメットの人気を凌ぐようになったとしたら、「“最適なバイクを最適なコストパフォーマンスで”と謳うキャニオンのブランドコンセプトどおり」とクールな物言いながら確固たる信念を秘めて語った。

<後編>では、ネット通販のキャニオンから届く「エンデュレース CF SLX」の開梱作業を体験します。

ドイツ・コブレンツのキャニオン新工場で出荷を待つバイク Photo: Canyonドイツ・コブレンツのキャニオン新工場で出荷を待つバイク Photo: Canyon
シュルテ柄沢亜希シュルテ柄沢 亜希(しゅるて・からさわ・あき)

1982年生まれ、ドイツ在住。東京を拠点に4年間記者生活を送った後、フリーランスへ。書くこと、レポートすることが生きがい。執筆ジャンルは自転車・アウトドアアクティビティ、スポーツ、旅、食、アート、ライフスタイルなど文化全般。幼少期の5年間をドイツ・ハンブルクで過ごしたことがアイデンティティのベースにある。ブログ「ドイツのにほんじん」ほか、多媒体にて執筆中。

この記事のタグ

キャニオン(Canyon)のロードバイク

キャニオン ロードバイク

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

サイクリストTV

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載