即日満員の人気ライドイベント原風景を走り、自慢のグルメを食べ尽くす 1100人を魅了した「美山サイクルグリーンツアー」

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 日本の原風景を残す、京都府南丹市美山町が舞台のロングライドイベント「美山サイクルグリーンツアー」が7月30、31日に開催された。今年で5回目を迎え、ウェブでの応募開始から1日もたたず定員に達するほどの人気イベントに成長。観光地である京都市内から離れた田舎で、約1100人もの参加者を魅了したイベントをレポートする。 (中尾亮弘)

「美山サイクルグリーンツアー」のスタート Photo: Akihiro NAKAO「美山サイクルグリーンツアー」のスタート Photo: Akihiro NAKAO

田舎暮らし体験や地元との交流

 美山町は京都市内から、日本海へ向かって車で走れば約1時間ほどで着く。ここは茅葺屋根の民家が点在する「日本の原風景」がそのまま残る、人口4000人ほどの田舎だ。1000人を超えるサイクリストが夏を楽しむために全国からやってくる美山サイクルグリーンツアーは、子供向け自転車教室「ウィーラースクール」を主宰するブラッキー中島さんが地域おこしの起爆剤としてプロデュースするイベントだ。

山に囲まれた地域に、川が流れ田んぼが広がる Photo: Akihiro NAKAO山に囲まれた地域に、川が流れ田んぼが広がる Photo: Akihiro NAKAO

 近年では自転車イベントが全国で行われ、各自治体も自転車の聖地に名乗りを上げている。美山町にも京都国体を発祥とする、公道で行われる「美山ロード」が31年間にわたって開催されている。レースで使われるコースということから、京都や関西圏からもサイクリストが走りに来るなど、自転車の聖地として長年親しまれている。

 しかし、美山町は都市部から離れているため若者の人口が流出し、高齢者が増え過疎の町となりつつある。こうした現状の美山町をもっと知ってもらいたいとの願いから、サイクルグリーンツアーではさまざまなイベントが行われる。

美山の清流で川遊びをした皆さん Photo: Akihiro NAKAO美山の清流で川遊びをした皆さん Photo: Akihiro NAKAO
家族での田舎暮らし体験で飯盒炊爨(はんごうすいさん) Photo: Akihiro NAKAO家族での田舎暮らし体験で飯盒炊爨(はんごうすいさん) Photo: Akihiro NAKAO

 ロングライド前日の土曜日は、子供連れの家族15組、約70人が家族で田舎暮らしを体験。生きた鶏を目の前でさばき、飯ごう炊さんで米を炊いたりと田舎の食事を実践し、あとはみんなで川遊びをして過ごす、そんな夏休みを体験することができた。

 サイクル女子会は20人の女子限定で、美山のケーキ屋さんで美味しいケーキを食べて、ガールズトークを楽しんだ。最後は美山の鶏をスモークした丸焼きが登場。参加者にとっては、地域と交流し美山をより知ることができる機会となった。ちなみに、夜の星々は都会では見られないほどの美しさで、美山の澄んだ空気も体験できるだろう。

サイクル女子会に参加した女性たち Photo: Akihiro NAKAOサイクル女子会に参加した女性たち Photo: Akihiro NAKAO
美味しいケーキが運ばれてきました Photo: Akihiro NAKAO美味しいケーキが運ばれてきました Photo: Akihiro NAKAO

 また、バルセロナオリンピックのシンクロナイズドスイミング銅メダリスト奥野史子さんが地元の子供20人を対象にしたシンクロ教室と、北京オリンピックのバレーボール代表の山本隆弘さんによる地元小中高生のバレーボール部員40人に対してのバレーボール教室も行われた。

シンクロ教室で指導する奥野史子さん Photo: Akihiro NAKAOシンクロ教室で指導する奥野史子さん Photo: Akihiro NAKAO
地元バレーボール部を指導する山本隆弘さん Photo: Akihiro NAKAO地元バレーボール部を指導する山本隆弘さん Photo: Akihiro NAKAO

 シンクロ教室は2回目、バレーボール教室は3回目となり、オリンピック出場者から直接指導を受けられるということで、参加した子供たちは熱心に動きをマスターしようと練習に励んだ。山本さんの練習に参加した小学生のバレーボール部は、この教室がきっかけでできたそうだ。

125km走破からグルメ巡りまで

参加者には安全宣言スローガンのゼッケンが配られる Photo: Akihiro NAKAO参加者には安全宣言スローガンのゼッケンが配られる Photo: Akihiro NAKAO

 朝もやが漂う早朝、北は北海道、南は四国から参加した1159人とゲストの山本雅道さんと益子直美さん、奥野史子さん、山本隆弘さんがメインイベントのロングライドチャレンジのため集まった。

 美山町の中心にある南丹市美山支所から放射状に点在する11のチェックポイントを全て回ると約125kmとなり、美山の隅々まで走ることができる。ただしルート選びは参加者の自由で、それぞれの脚力に合わせた走り方で楽しめる。

大会を主宰するブラッキー中島さん(左)と、MC新田シンジさん Photo: Akihiro NAKAO大会を主宰するブラッキー中島さん(左)と、MC新田シンジさん Photo: Akihiro NAKAO
参加者に料理を振る舞う地元の方々。ゲストの皆さんと記念撮影 Photo: Akihiro NAKAO参加者に料理を振る舞う地元の方々。ゲストの皆さんと記念撮影 Photo: Akihiro NAKAO

 そのうち5カ所のエイドステーションは地元の食材をふんだんに使い、全てを食べて回ることは不可能に思えるほど。川で獲れる鮎は「清流めぐり利き鮎会」で準グランプリを通算4度獲得した名産品で、てんぷらや炊き込みご飯で独特の香りを楽しめる。山で捕獲される鹿の肉を使ったコロッケやそぼろ丼、フランクフルトは、あまり馴染みのない食材ながら癖のない味で食べやすい。

暑いなかで地鶏のバーベキューを焼く地元の皆さん Photo: Akihiro NAKAO暑いなかで地鶏のバーベキューを焼く地元の皆さん Photo: Akihiro NAKAO

 さらにスタッフの皆さんが暑いなか焼いた地鶏のバーベキューは、暑さを吹き飛ばすうまさ。色とりどりのトマトやキュウリといった夏野菜、美山米を使ったおにぎり、地卵プリンや冷たいカキ氷にケーキといった甘味までも、これでもかと出てくるため参加者からは「もう食べれない…」といった声も多く聞かれるほど。チェックポイントを回らずにエイドステーションだけを回る人たちも多いとか。

自家製漬物で美山米を食べる Photo: Akihiro NAKAO自家製漬物で美山米を食べる Photo: Akihiro NAKAO
限定で振る舞われる鮎のてんぷら Photo: Akihiro NAKAO限定で振る舞われる鮎のてんぷら Photo: Akihiro NAKAO

 もちろん全てのチェックポイントを回る健脚派もいて、美山の美しい風景を堪能して走り、腕につけたリストバンドの数を競う。人気スポットはやはり美山を象徴するかやぶきの里や、きれいな水の流れに魚の泳ぐ姿を見つけられる由良川に沿った大野ダム方面。今回はゆずの里である向山地区もチェックポイントに加わった。

ゆずの里、向山に架かる向山橋を渡る Photo: Akihiro NAKAOゆずの里、向山に架かる向山橋を渡る Photo: Akihiro NAKAO
かやぶきの里で記念撮影 Photo: Akihiro NAKAOかやぶきの里で記念撮影 Photo: Akihiro NAKAO
11カ所を全て回った参加者たち Photo: Akihiro NAKAO11カ所を全て回った参加者たち Photo: Akihiro NAKAO

 他のコースも小さな川の支流を眺めることで、水の存在を感じられ、川の水や湧き水で火照った身体を冷やすと、自然の豊かさを実感できるはず。ロングライドチャレンジと並行して、72人の子供を対象に行われたウィーラースクールでは、自転車の練習をしてから川まで乗って遊びにいく。

色々なところで湧く水で頭を冷やす Photo: Akihiro NAKAO色々なところで湧く水で頭を冷やす Photo: Akihiro NAKAO
京都府下ではタンデム車も走れる Photo: Akihiro NAKAO京都府下ではタンデム車も走れる Photo: Akihiro NAKAO

 そのため参加者を眺めていて気づくのは、小・中学生の少年少女たちが親に付き添われるだけではなく単独でも走る姿だ。子供たちはウィーラースクールで走り方を学び、自立してコースマップを見てルートを辿る。美山は観光地なのでクルマやバイクの往来が多い場所もあり、決して気を抜いて走れるわけではないが、走りきった姿はサイクリストとして立派に成長した印象を受けた。

 上は77歳から下は3歳の子供まで、美山に集まり自転車に乗って休日を過ごす風景は、地域再生の可能性を示唆している。

チェックポイントで獲得したリストバンドを誇らしげに掲げる Photo: Akihiro NAKAOチェックポイントで獲得したリストバンドを誇らしげに掲げる Photo: Akihiro NAKAO
子供たちは自転車教室「ウィーラースクール」に参加した Photo: Akihiro NAKAO子供たちは自転車教室「ウィーラースクール」に参加した Photo: Akihiro NAKAO

美山全体をリデザインする

 都心部から美山町に引っ越したブラッキー中島さんは、ウィーラースクールで子供たちへの自転車教育を考案し、ロードレースやグリーンツアーで田舎の人々を奮い立たせる。美山を自転車の聖地にするという「言葉だけ」ではない実践的な行動は、形になって現れていると言えるだろう。

かやぶきの里を眺めながら走る Photo: Akihiro NAKAOかやぶきの里を眺めながら走る Photo: Akihiro NAKAO

 また都心部と山村部との交流は時代が進むにつれ希薄化し、田舎は人口減少とともに衰退する。美山だけではなく中小都市も同じような環境だ。田舎暮らしというものが古びた生活ではなく、今でも根付く大切なものであるということがここに来ればわかるはず。美山でいまだかやぶき屋根の家が残るように、先人の歴史を思いながらここに訪れて走るのもいいだろう。

 そしてここ美山から日本の新しい自転車文化が生まれ、走る環境と住む環境を求めて移り住む人が現れるかもしれない。目で見て身体で覚え、体験できるのがウィーラースクールや美山サイクルグリーンツアーだ。今回参加できなかった人たちも、自分の脚を使い自転車に乗って自分の美山を見つけることができるはず。自転車という道具は、そのためにあるのだから。

参加者たちの集合写真。また来年美山でお会いしましょう Photo: Akihiro NAKAO参加者たちの集合写真。また来年美山でお会いしましょう Photo: Akihiro NAKAO

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