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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<169>フルーム、バルベルデ、ニバリに注目 リオ五輪開幕直前のロードレース種目総展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 8月5日に開幕するリオデジャネイロ五輪(一部競技は3日に開始)。サイクルロードレース界でも、この4年に1度の祭典に照準を定めているトップライダーは少なくない。特に、7月24日に閉幕したツール・ド・フランスでの勢いそのままに南米・ブラジルへと乗り込んでいる選手が多く、熱いレースとなることは必至だ。今回は、自転車競技の中でトップを切って実施されるロード種目を展望。ロードレース、個人タイムトライアルそれぞれのコースと有力選手を確認していきたい。

ツール・ド・フランスで雌雄を決した選手たちが、リオ五輪では国の威信をかけて戦う。右から、コロンビア代表セルジオルイス・エナオ、イギリス代表クリストファー・フルーム、スペイン代表アレハンドロ・バルベルデ =ツール・ド・フランス2016第8ステージ、2016年7月9日 Photo: Yuzuru SUNADAツール・ド・フランスで雌雄を決した選手たちが、リオ五輪では国の威信をかけて戦う。右から、コロンビア代表セルジオルイス・エナオ、イギリス代表クリストファー・フルーム、スペイン代表アレハンドロ・バルベルデ =ツール・ド・フランス2016第8ステージ、2016年7月9日 Photo: Yuzuru SUNADA

8月6日 男子ロードレース

 リオ五輪の自転車競技の幕開けを告げるのが、男子ロードレース。リオデジャネイロ市南東部のリゾート海岸・コパカバーナを発着点とする237.5kmのレースだ。

リオ五輪・男子ロードレースコース図 © UCIリオ五輪・男子ロードレースコース図 © UCI

 海を臨む風光明媚なコースだが、決して一筋縄ではいかないルートセッティングとなっている。おおむね2つのセクションに分けられていると見ることができ、前半はグルマリのアップダウンを4周回、後半はヴィスタ・チネサの山岳を3周回するイメージだ。

 グルマリの周回では、1つ目の上りであるグルマリが登板距離1.3km・平均勾配9.4%・最大勾配24.1%。道幅が狭いのが特徴だ。続くグロタ・フンダの上りは平均勾配6.8%・最大勾配10.3%で、登板距離が2.13km。このセクション内には、2kmに及ぶ石畳区間が控える。

高低図。上からグルマリ、グロタ・フンダ、ヴィスタ・チネサ © UCI高低図。上からグルマリ、グロタ・フンダ、ヴィスタ・チネサ © UCI

 ヴィスタ・チネサの周回は、海抜数メートルのポイントから高度にして約400mを一気に駆け上る。その後いったん下り、もう一度高度にして約200mを上る。これら距離にして8.9kmで、平均勾配6.2%・最大勾配19.9%。頂上通過後、海へ向かって約6kmのダウンヒルが待ち受ける。

 フィニッシュへ向けてはほぼフラットで、最終コーナーをクリアすると、最後は白い砂浜を右手に見ながらの500mの直線だ。

 レース展開としては、優勝争いに関係しない選手の逃げを容認しながら、有力国がメイン集団をコントロールすると予想される。グルマリでは石畳があることも踏まえ、トラブル回避のため無難にクリアし、ヴィスタ・チネサでレースを動かそうと考えるチームが多いと見られる。チーム2番手、3番手の選手が早めに動いて、ライバル国の出方を伺う場面もありそうだ。最終周回はフィニッシュまで残り23.6km。ここからは金メダル候補たちの出番となるだろう。

 ヴィスタ・チネサの上り、または下りで抜け出した選手が独走、数人の逃げ切り、決定打がないまま最終局面まで残った選手たちによる小集団スプリントなど、レース展開はさまざま考えられる。いずれにせよ、レイアウトから見てクライマーやアタックを得意とする選手向けのコースだといえる。

 一方で、1カ国あたりの出場人数が最大でも5人と、普段のレースのような1チーム8~9人のときとは勝手が違うことも押さえておきたい。前回のロンドン五輪では、地元イギリス勢の圧倒的有利と見られながら、早い段階でメイン集団から抜け出した、有力選手を多数含む先頭グループの逃げ切りを許してしまった例もあり、都度訪れる動きを各国・選手たちがどう読むかもポイントとなる。

 各国の出場枠は、2015年のUCI(国際自転車競技連合)ワールドツアー国別ランキングやコンチネンタル(大陸)ランキング、各大陸選手権などの結果を元に決定。最大出場人数の5人をそろえられたのは、ベルギー、コロンビア、イギリス、イタリア、スペイン。この5カ国を中心にレースが進むと考えられる。

5人出場のイタリアは、ヴィンチェンツォ・ニバリを軸に戦う =ツール・ド・フランス2016第18ステージ、2016年7月21日 Photo: Yuzuru SUNADA5人出場のイタリアは、ヴィンチェンツォ・ニバリを軸に戦う =ツール・ド・フランス2016第18ステージ、2016年7月21日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ツール王者のクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)、同6位のアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)、ジロ・デ・イタリア王者のヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ プロチーム)にとっては、もってこいのコースだ。コロンビアは、ヨアンエステバン・チャべス(オリカ・バイクエクスチェンジ)が調子を整えている。この中だと、バルベルデのスプリント力が際立つ。フルームやニバリは、独走に持ち込みたいところ。チャベスもうまく人数を絞り込んでの勝負にしたい。

ツール総合2位のロマン・バルデも金メダル候補 =ツール・ド・フランス2016第19ステージ、2016年7月22日 Photo: Yuzuru SUNADAツール総合2位のロマン・バルデも金メダル候補 =ツール・ド・フランス2016第19ステージ、2016年7月22日 Photo: Yuzuru SUNADA

 フランスは出走4人だが、昨年8月に同地で行われたプレ五輪レースでベストメンバーを送り込み、上位を独占した強みを持つ。このときに優勝したアレクシス・ヴュイエルモーズ、3位のロマン・バルデ(ともにアージェードゥーゼール ラモンディアル)、8位のワレン・バルギル(チーム ジャイアント・アルペシン)がメンバー入り。そして、今シーズン絶好調のジュリアン・アラフィリップ(エティックス・クイックステップ)が加わる強力布陣。

 オランダは、7月30日のクラシカ・サン・セバスティアン(スペイン、UCIワールドツアー)で圧勝したバウケ・モレマ(トレック・セガフレード)。ポーランドは、ミハウ・クフィアトコフスキー(チーム スカイ)とラファウ・マイカ(ティンコフ)が参戦。スイスはファビアン・カンチェッラーラ(トレック・セガフレード)、オーストラリアはリッチー・ポート(BMCレーシングチーム)が順当にエントリー。これらの国は、いずれも出走4人だ。

 出走人数が少ない国の中では、2名の南アフリカから、先のツールで山岳逃げで活躍したスピードマンのダリル・インピー(オリカ・バイクエクスチェンジ)と、総合8位のルイ・メインティス(ランプレ・メリダ)が出場。ダニエル・マーティン(エティックス・クイックステップ)とニコラ・ロッシュ(チーム スカイ)のいとこで代表入りのアイルランドも、出走2人ながら注目したい。

 そして、われらが日本代表は、新城幸也(ランプレ・メリダ)と内間康平(チーム ブリヂストンアンカー)がリオのコースに挑む。こちらも出走2人と数的には厳しいが、内間がアシストし、ここぞの場面で新城を前方へと送り込みたいところ。新城はツールでインパクト十分の走りを見せ、好調さに手ごたえをつかんでいる。内間も地元の沖縄で充実したトレーニングを行い、あとは本番を迎えるのみとなっている。

日本が誇る代表2人。左から新城幸也と内間康平。ともに沖縄出身という共通点もある。 Photo: Shusaku MATSUO日本が誇る代表2人。左から新城幸也と内間康平。ともに沖縄出身という共通点もある。 Photo: Shusaku MATSUO

 レースは、8月6日午前9時30分(日本時間午後9時30分)にスタートする。

8月7日 女子ロードレース

リオ五輪・女子ロードレースコース図 © UCIリオ五輪・女子ロードレースコース図 © UCI

 男子に続き、女子ロードレースが8月7日に同じコースで行われる。こちらは、グルマリを2周回、ヴィスタ・チネサを1周回走り、コパカバーナへとフィニッシュする136.9km。コース設定を見ても、ヴィスタ・チネサでレースが動く可能性が高い。

 出場国・選手は、今年5月31日までの国別ランキング、個人ランキング、各大陸選手権の結果などを元に決定。

4年前のロンドン五輪を制したマリアンヌ・フォスがけがから戦線復帰。2連覇を目指す =UCIロード世界選手権2013、2013年9月28日 Photo: Yuzuru SUNADA4年前のロンドン五輪を制したマリアンヌ・フォスがけがから戦線復帰。2連覇を目指す =UCIロード世界選手権2013、2013年9月28日 Photo: Yuzuru SUNADA

 優勝候補には、前回のロンドン五輪覇者で、けがから復活したマリアンヌ・フォス(オランダ、ラボ・リヴ ウィメンサイクリングチーム)、現・世界女王のエリザベス・アーミステッド(イギリス、ボエルス・ドルマンス サイクリングチーム)、今シーズンのUCIウィメンズ・ワールドツアーでトップを行くミーガン・ガーニアー、現・女子アワーレコードホルダーのエヴェリン・スティーヴンス(ともにアメリカ、ボエルス・ドルマンス サイクリングチーム)、アシュリー・ムールマン(南アフリカ、サーヴェロ・ビグラ プロサイクリングチーム)が挙がる。小集団スプリントとなれば、エマ・ヨハンソン(スウェーデン、ウィグル・ハイファイブ)にも勝機が訪れる。

 全日本選手権を制し、1つの出場枠を勝ち取った與那嶺恵理(ハーゲンスベルマン・スーパーミント サイクリングチーム)は今シーズン、アメリカチーム入りし多くの実績を得ている。上りへの強さも見せており、リオのコースに適応できれば上位進出の可能性が広がる。やはり、勝負どころのヴィスタ・チネサをしっかりとクリアすることがポイントとなりそうだ。

全日本選手権を制して五輪出場を決めた與那嶺恵理。ロード、個人TTの2種目に出場する =ロード全日本選手権2016、2016年6月25日 Photo: Syunsuke FUKUMITSU全日本選手権を制して五輪出場を決めた與那嶺恵理。ロード、個人TTの2種目に出場する =ロード全日本選手権2016、2016年6月25日 Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 女子ロードレースは、8月7日午後0時15分(日本時間8月8日午前0時15分)にスタートする。

8月10日 男女個人タイムトライアル

 個人タイムトライアルは、男女同日に開催される。男子はグルマリを2周回する54.6km、女子はグルマリ1周回の29.9kmで争われる。

 独走力はもとより、登板力も試される長距離個人TT。オールラウンドに力を発揮できる選手がメダルを手にすることだろう。この種目へは、競技参加選手の増加を防ぐため、ロードレースの出場選手から選出することが義務付けられている。個人TTのみの出場は認められない。

今シーズン好調のトム・デュムラン。ツールで負った骨折の経過が良好で、五輪出場の目処が立った =ツール・ド・フランス2016第13ステージ、2016年7月15日 Photo: Yuzuru SUNADA今シーズン好調のトム・デュムラン。ツールで負った骨折の経過が良好で、五輪出場の目処が立った =ツール・ド・フランス2016第13ステージ、2016年7月15日 Photo: Yuzuru SUNADA

 男子の優勝候補筆頭は、トム・デュムラン(オランダ、チーム ジャイアント・アルペシン)。ツールでは、落車で左前腕部を骨折しリタイアしたが、早々にトレーニングを再開。レース出場の目処が立った。フルームやトニー・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)、現・世界王者のヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チーム スカイ)もチャンスがある。

 女子では、世界女王のリンダ・ヴィルムッセン(ニュージーランド、ユナイテッドヘルスケア プロフェッショナルサイクリングチーム)を筆頭に、リサ・ブレナウアー(ドイツ、キャニオン・スラムレーシング)、クリスティン・アームストロング(アメリカ、トゥエンティ16・ライドバイカー)、スティーヴンスらが追う。また、與那嶺が男女を通じて唯一、個人TTにも臨む。

リオ五輪・個人タイムトライアルコース図 © UCIリオ五輪・個人タイムトライアルコース図 © UCI
リオ五輪・個人タイムトライアル高低図。上が男子、下が女子 © UCIリオ五輪・個人タイムトライアル高低図。上が男子、下が女子 © UCI

 スタートは、女子が8月10日午前8時30分(日本時間午後8時30分)。男子の第1ウェーブが同日午前10時(同午後10時)、第2ウェーブが午前11時19分(同午後11時19分)を予定している。

今週の爆走ライダー-カルロス・ベロナ(スペイン、オリカ・バイクエクスチェンジ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 8月1日に解禁された移籍市場。早くもビッグネームの移籍が発表されるなど、2017年シーズンに向けたストーブリーグが活性化しているが、その一方で異例の事態も起こっている。

8月1日付でオリカ・バイクエクスチェンジへ移籍したカルロス・ベロナ =ツアー・ダウンアンダー2016第6ステージ、2016年1月24日 Photo: Yuzuru SUNADA8月1日付でオリカ・バイクエクスチェンジへ移籍したカルロス・ベロナ =ツアー・ダウンアンダー2016第6ステージ、2016年1月24日 Photo: Yuzuru SUNADA

 エティックス・クイックステップで4シーズン目を迎えていたベロナが、シーズン途中にオリカ・バイクエクスチェンジへの移籍。クライマーとして早くから将来を嘱望されていた選手だが、思うようにチームにフィットしていなかったという。

 前チームのゼネラルマネージャーである、パトリック・ルフェヴェル氏は、「がっかりさせられることが多かったんだ。レースへ起用しようとするたび、けがに見舞われ、いつもわれわれが我慢させられていた。満足できる結果を何ひとつ残せていなかった」と厳しいコメント。チーム残留を望んでいたベロナだったが、代理人とともに移籍先探しを余儀なくされてしまった。

即戦力として期待されるカルロス・ベロナ。ブエルタ出場の期待も高まる =ツアー・ダウンアンダー2016チームプレゼンテーション、2016年1月26日 Photo: Yuzuru SUNADA即戦力として期待されるカルロス・ベロナ。ブエルタ出場の期待も高まる =ツアー・ダウンアンダー2016チームプレゼンテーション、2016年1月26日 Photo: Yuzuru SUNADA

 そこで手を挙げたのが、バランスに富んだチームづくりを進める現チーム。チャべス、アダム・イェーツ(イギリス)といったグランツールライダーを支える山岳アシストとして、即戦力として採用することを決めた。ベロナ本人、そして両チームの合意がなされ、UCIでの事務処理も無事終了。早速、8月2日からのブエルタ・ア・ブルゴス(スペイン、UCI2.HC)に参戦する。

 前チームでは、ジロ以降戦力外扱いとなっていたが、環境を変えたことでブエルタ・ア・エスパーニャへの出場の可能性が高まっている。ミッションは、総合優勝を狙うチャベスのアシスト。プロ入り以降、うまくいかなかった3年半を払拭する働きを見せられるだろうか。よくも悪くも自分次第だ。きっと、二度と同じ失敗は繰り返さないことを誓っていることだろう。

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。

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