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はらぺこサイクルキッチン<66>マスターサイクリストの星 83歳で100マイル山岳に挑んだ、シュミッド選手の食生活とは

by 池田清子 / Sayako IKEDA
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 「生涯現役、いつまでも自転車を愛し、トレイルを駆け抜けていたい―」これは夫・池田祐樹(トピーク・エルゴン・レーシングチームUSA)のモットーですが、それを実現されている素晴らしい選手と出会いました。

 彼の名はフレッド・シュミッド選手、御歳83歳。アメリカ・テキサス州、在住。大手ニュートリションカンパニー「HUMMER」(ハマー)がサポートする選手でもある、現役アスリートです。まさにマスターサイクリストの星ともいえる存在。

レース前日、フレッド・シュミッド選手と奥様のスーザン・シュミッドさんにインタビューをさせていただきました。お二人からたくさんの刺激を受けました Photo:  Sayako IKEDAレース前日、フレッド・シュミッド選手と奥様のスーザン・シュミッドさんにインタビューをさせていただきました。お二人からたくさんの刺激を受けました Photo: Sayako IKEDA

 今夏、シュミッド選手は、池田祐樹が「世界レベルで見ても超過酷な長距離レース」と評する、アメリカはコロラド州テルユラドで開催されたマウンテンバイク100マイルレース・テルユライド100に83歳という年齢で、初挑戦することになったのです。レース前夜、ミーティングが開始されるのを待つ間、インタビューさせていただく機会に恵まれました。

51歳からマウンテンバイク競技開始

 シュミッド選手が自転車と出会ったのは、なんと51歳の時。マウンテンバイクを奥様であるスーザンさんからプレゼントされたことがきっかけでした。MTBのトレーニングのためにロードバイクにも乗り始め、MTBとロード両方のレースに出場するようになりました。以降、現在までにマスターとエイジクラスでナショナルチャンピオンに19度、そして世界チャンピオンに2度も輝いている、誰もが認める現役スーパーアスリートです。

Telluride100前日、テルユライドの地元紙にフレッド・シュミッド選手のインタビュー記事が掲載されていました Photo: Sayako IKEDATelluride100前日、テルユライドの地元紙にフレッド・シュミッド選手のインタビュー記事が掲載されていました Photo: Sayako IKEDA
フレッド・シュミッド選手と幾つかのレースで一緒に参加したことのあるテキサス在住の友人、ロビー・ロビネット選手 Photo:  Tobin Behlingフレッド・シュミッド選手と幾つかのレースで一緒に参加したことのあるテキサス在住の友人、ロビー・ロビネット選手 Photo: Tobin Behling

 レース前日に発行されたテルユライドのデイリープラネット(地元紙)にも取り上げられていたシュミッド選手。記事には「最初はトレーニングがきつかったから、もし自分でバイクを買っていたらとっくに返品していたよ」と当時を振り返っていましたが、スーザンさんは「フレッドは、自分より前に誰かが走っているのが許せないの」とコメント。なんともすごい83歳です。

 食事に関してインタビューをさせて欲しいと申し出た私に、シュミッド選手は「食事のことは、妻のスーザンに聞いてください。遠征に帯同し、食事は全て彼女が作っています」と答えました。我が家と同じだ、と内心思いました。奥様のスーザンさんは「食事に関するインタビューは初めてだわ!」と快諾してくれました。83歳現役スーパーアスリート、フレッド・シュミッド選手の食生活がここに、世界初公開です。

◇         ◇

糖分は野菜とフルーツから

以下、インタビュー形式でお届けします。

スーザン:私たちはベジタリアンではないけれど、毎食野菜とフルーツをたくさん食べているの。そして、食物繊維を多く摂る為に、ブレッド(パン)よりもクラッカーを選ぶことにしているわ。精製されたシュガーは、なるべく摂らない。出来るだけ野菜とフルーツから良質な糖分を摂るように心がけているの。

 フレッド選手が素晴らしい結果を残しながら83歳でも現役で走っていられるのは、フルーツと野菜をたくさん召し上がっていることも関係がありそうです。実際に、リカバリーに速い効果をもたらすのがフルーツと野菜の栄養素です。

Telluride100前夜の食事を撮影していただきました(恐らく世界初公開)!メニューはターキーの胸肉、ブロッコリーと人参を蒸したもの、インゲンとトマト、レタスのサラダ、ワケギを混ぜたご飯、そして飲み物は豆乳。素材を生かした調理法と味付け。普段から野菜とフルーツが大好きな、シュミッド選手のパワーの源!  Photo: Frederic SchmidTelluride100前夜の食事を撮影していただきました(恐らく世界初公開)!メニューはターキーの胸肉、ブロッコリーと人参を蒸したもの、インゲンとトマト、レタスのサラダ、ワケギを混ぜたご飯、そして飲み物は豆乳。素材を生かした調理法と味付け。普段から野菜とフルーツが大好きな、シュミッド選手のパワーの源! Photo: Frederic Schmid

清子:食に関するアドバイザーはいるのですか?

スーザン:トレーニングコーチのCTS(クリスカーマイケル・トレーニング・システム)に所属する管理栄養士が、食事の管理についてもアドバイスしてくれているわ。けれどレースの日は、基本的になんでも食べていいことになっているの。レース以外の普段の食事に気をつけているから。管理栄養士が「年をとっても高いフィットネスレベルをキープするには、プロテインをより意識して摂取しなければいけない」と言ったの。私はコレステロールや動物性脂肪を気にして卵の白身だけを口にするけれど、フレッドはハードに体を使うからホールエッグ(全卵)を食べてプロテインを強化しているわ。

清子:レース中は何を摂取していますか?

スーザン:レース中は消化器官に負担をかけないために、100マイルレースであっても摂取するのは液体だけ。ジェルとドリンクね。長いレースはレース中にもプロテインが必要と言われて、8-12オンスのホールミルク(牛乳)を常温で飲んでいるわ。私がフィードゾーンで小さな牛乳パックを持って待っているの。短いレース中に摂取するのは、糖質だけよ。

清子:テキサスからテルユライドへはキッチン付きのキャンピングカーで移動し、そちらで寝泊まりしていると伺いました。基本的に自炊ですか?

スーザン:そう、特にレース前夜は外食しないように決めているわ。以前レース前夜に外食してお腹を下した経験があるから。それに外食だと食事が運ばれてくるまで長い時間待ったり騒がしかったりするから、コンディションを整えるためにもそう決めているわ。今夜のメニューはターキーの胸肉、ブロッコリーと人参を蒸したもの、インゲンとトマト、レタスのサラダ、ワケギを混ぜたご飯、そして飲み物は豆乳よ。

清子:美味しそうですね。レース当日朝食は、何を召し上がりますか?

スーザン:オートミールの中にアーモンド、ココナッツチップス、レーズンを入れて。レースによっては更にエッグとトーストを食べています。

清子:これは食べない、など制限している食べ物はありますか?

レースミーティングでも参加者やスタッフに紹介されたフレッド・シュミッド選手。ミーティング終えて、参加者からの写真撮影や質問に応じるフレッド・シュミッド選手 Photo: Sayako IKEDAレースミーティングでも参加者やスタッフに紹介されたフレッド・シュミッド選手。ミーティング終えて、参加者からの写真撮影や質問に応じるフレッド・シュミッド選手 Photo: Sayako IKEDA

シュミッド:食事に関しては、制限はしていない。なぜなら、グリーシーな脂っこい食事、ジャンクフードは子供の頃から好きではないからね。2歳の時のことで、今でもよく覚えているんだけれど、祖父がほうれん草をよく食べていたんだ。自分もあんな風になりたい、と食べ始めた。それ以降、フルーツと野菜の食事が好きなんだ。

清子:オーガニック食材を選んだりもしていますか?

スーザン:特にオーガニックにこだわったりせず、新鮮でいい野菜を優先しています。そしてタバコも吸わないし、アルコール飲料も飲みません。

 2歳の頃から野菜とフルーツを好んで食べていたなんて!長い間続けてこられた、加工食品ではなく素材のまま食べる食事スタイルが今のフレッドさんの体を作っているのだと納得しました。しかも、好きで食べているということも大事な点。ストレスも少ないですね。

祐樹:明日の目標を聞かせていただけますか?

シュミッド:とにかく、フィニッシュすること。コース試走を一部試走しただけで、これはもうとんでもなくきついレースだとわかったから。

ギザギザに見えているのが、テルユラドの街のシンボルであり、スタート直後からブラックベア峠まで続く長い上り坂の、スイッチバック。向かって右奥が、ブラックベアの峠。標高は3,913m Photo:  Telluride100ギザギザに見えているのが、テルユラドの街のシンボルであり、スタート直後からブラックベア峠まで続く長い上り坂の、スイッチバック。向かって右奥が、ブラックベアの峠。標高は3,913m Photo: Telluride100

 アメリカで最も有名なMTB100マイルレースのレッドビル100でも近年4回完走しているシュミッド選手ですが、このコースの過酷さには少し「参った」という表情で首をすくめていました。

清子さん:多くの方が、いつまでも健康でできれば好きなスポーツも長く続けたいと思っています。それを実現されているフレッドさんから、ぜひ日本のサイクリスト、特にマスターズの選手へ向けてメッセージをお願いします

9時間半をかけてループ1を走りきり、主催者の一人であるジェニファー・ベリングとハグをするフレッド・シュミッド選手 Photo Tobin Behling9時間半をかけてループ1を走りきり、主催者の一人であるジェニファー・ベリングとハグをするフレッド・シュミッド選手 Photo Tobin Behling

シュミッド:自分自身でもここまで続けられていることに驚いているのですが、その秘訣は、そこに楽しみを見つけること、終わりはないということ。楽しんでいれば、いずれ自分をびっくり驚かせることができるのです。最初は年老いた男性が自転車に乗ってと笑われることがあるかもしれないけれど、次第に多くの人がその姿勢にリスペクトしてくれるでしょう。私がそうだったようにね。

 シュミッド選手が51歳でマウンテンバイクに乗り始めた時には、すでに経験のある同年齢のライダーはベテランの域でした。最初の頃はエイジグループで勝てませんでしたが、来る日も来る日もトレーニングをコツコツと続けたことで、次第に勝てるようになっていったそうです。そしてそれは、周りにも影響を与えることに。地元テキサスではライダーのコミュニティーができ、自分に続いて若い子から70代までもが加入。中には強い選手も出てきて「今では自分よりも若い人たちを引き連れてライドをしている」そうです。

テルユライドのシンボル的存在でもあるスイッチバックから見たテルユラドの街。ここもブラックベア峠へと続くループ1のレースコース上で、まだまだ登ります。足元は滝の水で障害物も多々。選手はゆっくり景色を眺める余裕はないかもしれませんね Photo: Sayako IKEDAテルユライドのシンボル的存在でもあるスイッチバックから見たテルユラドの街。ここもブラックベア峠へと続くループ1のレースコース上で、まだまだ登ります。足元は滝の水で障害物も多々。選手はゆっくり景色を眺める余裕はないかもしれませんね Photo: Sayako IKEDA

 夫は「常に自分にチャレンジしている姿に感銘を受けた。一度きりの人生の中で自身がどこまでできるか知りたいという気持ちがすごい。このレースは世界の中でも特にきついレースだから、自分が83歳だったらできるかなと考えた。まだまだできるという信念とモチベーション。私も見習っていきたい。一番大事なのは気持ちなんだね」と多くの刺激を受けていました。

 私はシュミッド選手を支えるスーザンさんにも心が動かされました。自分たちで運転するキャンピングカーで全米を周り、夢を追いかけ、チャンピオンにも輝いて…。そんな刺激のある毎日を送っているお二人を見て、50年後の自分たちはどうなっているだろう、と未来に思いを馳せました。

ループ1のフィニッシュゲートを越えるフレッド・シュミッド選手。ここまで9時間半。若者でも乗車するには長い時間を、闘い抜きました Photo: Tobin Behlingループ1のフィニッシュゲートを越えるフレッド・シュミッド選手。ここまで9時間半。若者でも乗車するには長い時間を、闘い抜きました Photo: Tobin Behling
コースマーキングを手伝わせてもらい、フィードでは回らないループ1を車で走行しました。ジープでも恐怖を感じる様なあまりの激坂に、改めて「とんでもないレースコース」だと実感。写真は標高3,913mのブラックベア峠にて。もちろんフレッド・シュミッド選手も越えた峠。ただただ、すごい!  Photo: Sayako IKEDAコースマーキングを手伝わせてもらい、フィードでは回らないループ1を車で走行しました。ジープでも恐怖を感じる様なあまりの激坂に、改めて「とんでもないレースコース」だと実感。写真は標高3,913mのブラックベア峠にて。もちろんフレッド・シュミッド選手も越えた峠。ただただ、すごい!  Photo: Sayako IKEDA
レースミーティングを終え、手を繋いで会場を後にするフレッド・シュミッド選手と奥様のスーザン。お互いの信頼関係と愛が伝わってくる様な、何とも素敵なシーンでした Photo: Sayako IKEDAレースミーティングを終え、手を繋いで会場を後にするフレッド・シュミッド選手と奥様のスーザン。お互いの信頼関係と愛が伝わってくる様な、何とも素敵なシーンでした Photo: Sayako IKEDA

 シュミッド選手のテルユライド100レースの結果は、2ループあるうちの1ループ目を終えたところで時間がかかり過ぎてしまったため棄権されましたが、それでも大きな峠を二つ越えるビッグループを走られたことは、とんでもない偉業を成し遂げた、素晴らしい功績です(1ループの概要・スタート地点標高:約2800m、最高標高地点:3913m、走行距離:約66km、獲得標高:2378m)。「いつから始めても遅くない」と自分を信じて挑戦し続けるお姿は、ただただ格好良いです。

 食事に関してだけでなく「人生をどう楽しむか」ということも、学ばせてもらいました。出会えてよかった、人生の大先輩。快くインタビューを受けてくださったフレッド・シュミッド選手、スーザン・シュミッド夫人、貴重なお話をありがとうございました。

 今回テルユライド100に3連覇を懸けて臨んだ池田祐樹は、8時間近い激闘の末、2位でした。優勝は逃したものの、パンクトラブルがあっての1位と5分21秒差の準優勝。次につながる良いレースだったと思います。

池田清子池田清子(いけだ・さやこ)

アスリートフード研究家。モデル事務所でのマネジャー経験を生かして2013年夏よりトピーク・エルゴンレーシングチームUSA所属ライダー、池田祐樹選手のマネージメントを始め、同年秋に結婚。並行して「アスリートフードマイスター」の資格を取得。アスリートのパフォーマンス向上や減量など、目的に合わせたメニューを日々研究している。ブログ「Sayako’s kitchen」でも情報を発信中。

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