産経ニュース【経済インサイド】より中国が「自転車は環境物品」と関税撤廃を求め欧州が猛反発 混迷する交渉の舞台裏

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北京市内のスーパーの自転車売り場。電動タイプも含め、環境に優しい自転車の人気が高まっている =2012年4月8日(長谷川周人撮影)北京市内のスーパーの自転車売り場。電動タイプも含め、環境に優しい自転車の人気が高まっている =2012年4月8日(長谷川周人撮影)

 自転車は排ガスもなくエネルギーを使わないエコな乗り物。当然、環境物品として扱うべきだ-。

 太陽光パネルなど環境関連製品の貿易自由化に向けた世界貿易機関(WTO)の「環境物品協定(EGA)」交渉における“ある国”の驚くべき主張である。自転車大国とされるその国は、EGAの関税撤廃対象品目に自転車を加えようと画策。国内の自転車市場が飽和の危機にあり、輸出拡大に活路を見いだそうと躍起なのだ。南シナ海への海洋進出同様、その強引な手法で交渉を進める中国のことである。(産経新聞東京経済本部・西村利也)

譲歩姿勢の裏で狙うのは

 7月10日に中国上海市で開かれていた日米欧や中国などの閣僚級によるEGAの非公式会合は、9月上旬のG20サミットまでにEGAの大枠を決めることや、幅広い範囲で関税撤廃に向けて交渉を進めることなどで合意。その上で、今年中に閣僚級会合を開いて妥結を目指すことで一致した。

 中国は当初、直前まで同会合に出席するかが懸念されていた。自国企業を保護したい中国は、ガスタービンやバッテリーなどの環境物品が無関税で輸入されるのを避けたく、関税撤廃でなく関税引き下げならば交渉に応じるというスタンスだったからだ。

 ところが、EGAと同時に開催された20カ国・地域(G20)の貿易相会合の共同声明には、EGAに関して幅広い範囲で“関税を撤廃する”協定の締結を果たす、と明記された。

 実はこの声明文をつくるにあたり、中国は議長国の立場でEGAに関する文言を外すよう主張していた。事実、「EGAについて声明文に盛り込みたい日本や欧米が連携して中国を説得するのに時間がかかり」(交渉筋)、声明文書の採択時間は予定の午前11時半から約2時間遅れた。

 結局、日欧米の提案として、当初予定していた9月のG20首脳会議でのEGAの大筋合意ではなく、G20首脳会議で着地点を探り、年末の担当閣僚級会合で大筋合意を目指すという「合意までの2段階案」を中国は受け入れた。これにより中国は議長国としての面目を保ちながら、交渉進展に向け態度を軟化、各国に譲歩したというイメージを植え付けた。

自転車関税撤廃はEUが猛反発

 だが、この見せかけの譲歩と引き換えに中国が狙うのは冒頭の「自転車」の関税撤廃だ。中国の自転車業界は、全体として順調に推移しているとはいえ、成長の不均衡も表れ始めている。特に電動自転車の生産台数は2桁増を維持していたが、2013年は1桁となり、14年は初めてマイナスに転じるなど苦戦。中国が自転車関税の撤廃にこだわるのは、こうした国内事情も強く反映されている。

 一方で、自転車関税の撤廃に猛反発しているのが、ビアンキやキャニオンなど世界的な有名自転車を多数抱える欧州連合(EU)だ。そもそもEUは11年に中国製自転車への反ダンピング(不当廉売)課税(税率48.5%)を5年間延長し、期限を16年までにすることを決定するなど、中国自転車の域内流入に対して特に厳しいハードルを設けている。実際、EU加盟28カ国中22カ国が関税撤廃に反対を表明しており、10日のG20貿易相会合終了後、マルムストローム欧州委員(貿易担当)は北京に向かい、中国の貿易担当幹部と直接交渉をしたとも伝えられる。

 14年に始まったEGA交渉は、アジア太平洋経済協力(APEC)が12年に合意した54品目をベースに関税撤廃し、さらに撤廃対象品目を拡大する方向で協議を進めている。54品目は、バイオマスボイラー発電機などの部品や大型発電用ガスタービン、風力発電機やその部品、太陽光パネル、環境計測機器などだ。こうした対象品目をベースに考えた場合、「自転車を環境物品と認めるのは、あまりにも強引なこじつけ論」というのがEU側の主張だ。

実は日本も…

 これだけEGAに慎重な中国だが、「太陽光パネルやボイラー部品など多くの環境物品を輸出しており、EGA参加のメリットはあるはず。本音は参加を目指している」というのが交渉筋の見方だ。

 通商交渉には本音と建前が必要となる。条件闘争の際、失っても影響を受けないものを影響があると見せかけ、その引き換えに相手国から譲歩を引き出す戦略がある。中国の交渉戦略はその典型である。さらに、「米国はオバマ政権中の年内までにEGA交渉を妥結させたい強い思いがある。中国は米国の足元を見て、焦りを生ませ、譲歩を引き出す交渉戦略を進めるとみられる」(交渉筋)。

 そんな米中の争いを横目に、日本は高い要求をせずに、EGA交渉が速やかに妥結することを望んでいる。実は自転車の関税が引き下げられれば、日本にも恩恵が大きいのだ。自転車部品大手のシマノや電動アシスト自転車大手のパナソニックやヤマハ発動機など日本企業の自転車関連商品は海外でも人気で輸出を伸ばしており、「日本は一概に中国を批判できない立場」(経産省関係者)でもある。

 EGA交渉がどう決着をみるのか。中国の尻馬に乗りかねない日本もジレンマを抱えながら交渉を見守ることになりそうだ。

産経ニュースより)

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