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ツール・ド・フランス2016 第20ステージ雨中のダウンヒルを攻めたヨン・イサギレが勝利 フルームは総合優勝を濃厚に

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ツール・ド・フランス第20ステージは7月23日、ムジェーヴからモルジーヌまでの146.5kmで争われ、雨の中で下りを攻め続けたヨン・イサギレ(スペイン、モビスター チーム)がツール初勝利となるステージ優勝を挙げた。総合争いは、クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)がライバルとのタイム差を守り抜き、2年連続3度目のツール制覇を濃厚とした。新城幸也(ランプレ・メリダ)は30分8秒差のグルペットで114位フィニッシュ。こちらも6度目の完走が見えるところまでやってきている。

初の区間優勝に両手を広げてゴールするヨン・イサギレ Photo: Yuzuru SUNADA初の区間優勝に両手を広げてゴールするヨン・イサギレ Photo: Yuzuru SUNADA

事実上の最終決戦

 アルプス山脈での4連戦がハイライトのツール第3週。その最終日にあたる第20ステージは、2級、1級、1級、超級と連続する難関コース。上りはもとより、テクニカルなダウンヒルも特徴だ。今大会最後の超級山岳であるジュ・プラヌ峠を越えると、モルジーヌに設けられたフィニッシュまで9kmの下り。翌日の最終・第21ステージがパレード走行がメインとなるため、ツール王者の証であるマイヨジョーヌの行方は、このステージが実質最後の勝負となる。レースが終わり、栄光のジャージに袖を通した選手が、総合優勝をほぼ手中に収めることを意味する。

 運命の1日は、スタート直後から逃げ狙いのアタックの応酬で幕開け。5人の飛び出しをきっかけに、メイン集団から次々とアタックがかかり、この日最初のカテゴリー山岳である2級の上りに入るまで前方は慌しい状態が続いた。

 続く1級山岳に入ると、力のある8人に逃げグループが絞られる。なかでも、総合12位につけるロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ)は、順位のジャンプアップをかけて積極的に逃げを牽引する。ポイント賞のマイヨヴェールを着用するペテル・サガン(スロバキア)が乗ったこともあり、クロイツィゲルをアシストすべく先頭に立ってペースアップを図るシーンも見られる。サガンは、レースが後半に差し掛かって迎えたこの日3つ目のカテゴリー山岳である、1級の上り途中までクロイツィゲルをアシスト。メイン集団とは約6分のタイム差を得て、前を急ぎ続けた。

最後の上りでのジュリアン・アラフィリップとハルリンソン・パンタノ Photo: Yuzuru SUNADA最後の上りでのジュリアン・アラフィリップとハルリンソン・パンタノ Photo: Yuzuru SUNADA

アラフィリップとパンタノ抜け出す

 7人となった先頭グループだが、その後方では14人の第2グループが淡々と合流を狙って追い続けていた。残り60kmを切ったあたりで先頭に合流。一時は逃げメンバーが増えたが、トマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)が頂上を目指して飛び出したのをきっかけに、ピエール・ローラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)とルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)も果敢に前を目指した。やがてこの3人が捕まってしまうが、その後下りを利用して、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)とハルリンソン・パンタノ(コロンビア、イアム サイクリング)が抜け出すことに成功。最後の超級山岳に挑んだ。

 フルームを含むメイン集団は、中盤以降アージェードゥーゼール ラモンディアルやアスタナ プロチームがペースアップを図り、人数を徐々に減らしながら進んだ。その集団に異変が発生したのは、超級山岳に入った直後。ここへきて調子を上げていたファビオ・アール(イタリア、アスタナ プロチーム)が遅れ始める。アシストたちに囲まれ、なかにはジェルタイプの補給食を差し出す選手の姿も見られる。どうやらハンガーノックに陥ったようだ。その走りからは集団復帰が見込めず、結果的に総合順位を大きく落とすこととなった。

アール遅れ、ニバリがアタック

 それを受けて、レース序盤から逃げや追走のグループで走っていたチームメートのヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)が第2グループからアタック。完全に自らのステージ勝利にターゲットを絞り、前を行くアラフィリップとパンタノを目指した。先頭を走るアラフィリップとパンタノは、互いにアタックを繰り出し独走に持ち込もうとするが、いずれも失敗に終わる。さらには、ニバリが2人に合流直後に数回のアタックで独走に持ち込むなど、ステージ優勝をかけた争いは熾烈を極める。

 ニバリがそのまま独走態勢に入ったかに思われたが、後方からイサギレがペースを上げて順位を上げてきた。一度は遅れたパンタノがイサギレとともに追い上げ、頂上を前についにニバリに追いついた。イサギレ、パンタノ、ニバリによるステージ優勝争いは、ラスト9kmの下りに委ねられることとなった。

最後の上りで攻撃を仕掛けるバウケ・モレマ Photo: Yuzuru SUNADA最後の上りで攻撃を仕掛けるバウケ・モレマ Photo: Yuzuru SUNADA

 メイン集団は、総合上位陣が最後の力を振り絞る。残り20kmを切ったところでバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)がアタック。続いて、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、チーム カチューシャ)も飛び出す。ロドリゲスには、追走グループで走っていたイルヌール・ザカリン(ロシア)が前待ちからのアシスト。マイヨジョーヌのフルームはアシスト陣のペースコントロールを受けながら、上りをこなした。

ダウンヒラーによる勝負はイサギレに軍配

 レース前半に降り出した雨は、終盤にかけて雨脚が強まり、選手たちを苦しめた。特に、モルジーヌに設けられたフィニッシュを目指す最後の下りは、落車しようものなら勝負に大きく影響する。

 ステージ優勝を争う3人は、いずれも下りのテクニックに定評のある選手。なかでも、このステージではイサギレのダウンヒルが光った。コーナーでバランスを崩すことのあったパンタノや、慎重な姿勢を見せるニバリに対して、攻めの姿勢を崩さなかったのがイサギレ。それが結果的に順位に現れた格好だ。

 下り終えるとイサギレが単独でフィニッシュ前へとやってきた。最後は両手を大きく広げて笑顔でフィニッシュラインを通過。ツールは初勝利、グランツールではエウスカルテル・エウスカディ時代の2012年ジロ・デ・イタリア第16ステージ以来の勝利となった。2位でフィニッシュへやってきたパンタノは19秒差、3位のニバリは42秒差だった。

 勝ったイサギレは、「今日は逃げグループ内に強い選手が多数そろっていた。彼らに勝てたことにとても満足している。ニバリのダウンヒルはいつも巧みで、パンタノも同様に上手い選手だ。彼らに勝てたことも大きな満足感となっている」と喜びを語った。

フルームが3度目のツール制覇に王手

 メイン集団は、総合上位陣が下りでの落車リスクを回避し、一団となってフィニッシュへと戻ってきた。特に、チーム スカイは4人がエースのフルームを守る鉄壁のアシスト。最後はライバルたちがスプリントを仕掛けるのをよそに、アシスト陣とともに笑顔でフィニッシュラインを通過した。

ステージ最初の上りで力走する新城幸也 Photo: Yuzuru SUNADAステージ最初の上りで力走する新城幸也 Photo: Yuzuru SUNADA

 これにより、フルームは第8ステージで手にしたマイヨジョーヌを守り抜き、2年連続3度目のツール制覇が濃厚に。あとは、最終ステージを無事に走りきり、パリ・シャンゼリゼのフィニッシュに到達するだけとなった。

 そのほか総合上位では、ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアル)がフルームから4分5秒差で総合2位、ナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)が4分21秒差の3位。4分42秒差の4位につけるアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)は、新人賞のマイヨブランをほぼ手中に収めている。

新城を応援する現地のファン Photo: Yuzuru SUNADA新城を応援する現地のファン Photo: Yuzuru SUNADA

 ツール最終日の7月24日は、このところヨーロッパ各地で起きているテロ事件からレースを守るため、パリ市内各所で開催予定だったイベントの多くをキャンセルし、その分の警備体制をすべてツールに注ぐことをパリ市が決定。厳重警戒態勢の中、第21ステージが行われる。パリ・シャンゼリゼ通りでは、ツールの帰還に先だって、女子レース「ラ・クルス・バイ・ル・ツール・ド・フランス」も実施される。

第20ステージ結果
1 ヨン・イサギレ(スペイン、モビスター チーム) 4時間6分45秒
2 ハルリンソン・パンタノ(コロンビア、イアム サイクリング) +19秒
3 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ プロチーム) +42秒
4 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ) +49秒
5 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ) +1分43秒
6 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ) +1分44秒
7 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、チーム ロットNL・ユンボ) +49秒
8 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、チーム カチューシャ) +3分24秒
9 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ) +4分12秒
10 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアル) +4分12秒
114 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ) +30分8秒

個人総合(マイヨジョーヌ)
1 クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ) 86時間21分40秒
2 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアル) +4分5秒
3 ナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム) +4分21秒
4 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ) +4分42秒
5 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシングチーム) +5分17秒
6 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) +6分16秒
7 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、チーム カチューシャ) +6分58秒
8 ルイ・メインティス(南アフリカ、ランプレ・メリダ) +6分58秒
9 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ) +7分4秒
10 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ) +7分11秒
117 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ) +3時間57分6秒

ポイント賞(マイヨヴェール)
1 ペテル・サガン(スロバキア、ティンコフ) 440pts
2 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) 228pts
3 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ) 183pts

山岳賞(マイヨアポワ)
1 ラファウ・マイカ(ポーランド、ティンコフ) 209pts
2 トマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)130pts
3 ハルリンソン・パンタノ(コロンビア、イアム サイクリング) 121pts

新人賞(マイヨブラン)
1 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ) 86時間26分22秒
2 ルイ・メインティス(南アフリカ、ランプレ・メリダ) +2分16秒
3 エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・アルゴン18) +42分58秒

チーム総合
1 モビスター チーム 259時間11分21秒
2 チーム スカイ +8分14秒
3 BMCレーシングチーム +48分11秒

敢闘賞
ハルリンソン・パンタノ(コロンビア、イアム サイクリング)

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