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山口和幸の「ツールに乾杯! 2016」<7>ツールは最後の山場アルプスへ 見られるか、起死回生のアタック

by 山口和幸 / Kazuyuki YAMAGUCHI
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 世界遺産モン・サン・ミシェルで開幕した第103回ツール・ド・フランスは“左回り”となるので、前半の勝負どころがピレネー山脈で、後半がアルプス山脈となる。アルプスと言えばラルプデュエズやガリビエ峠などが日本のファンにもよく知られるが、今回はスイスに訪問していわゆるヨーロッパの屋根を横目に見ながらの本格的山岳ルートとなった。

ツール・ド・フランスのコースではない峠にもサイクリストの姿が多かった Photo: Kazuyuki YAMAGUCHIツール・ド・フランスのコースではない峠にもサイクリストの姿が多かった Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI

ベルンを南下しアルプスへ

スイスのベルンを南下するとアイガーやユングフラウが望める Photo: Kazuyuki YAMAGUCHIスイスのベルンを南下するとアイガーやユングフラウが望める Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI

 一概にアルプスといってもフランスのみならずスイスやイタリアにもかかり、エリアはとても広範囲だ。ツール・ド・フランスでは当然、フランス国土のアルプスをよく訪問する。例えばラルプ・デュエズがあるのはサボワ県で、もちろんアルプス観光の中心地だ。産業としては斜面を利用した酪農業が盛んで、特産物はチーズ。そのためサボワ料理といえばフォンデュだ。フォンデュ・ブルギニョンヌは角切りにした肉を油で揚げて薬味をつけて食べる。フォンデュ・サボワイヤルドは電熱線で溶かしたチーズをパンなどの上につけて食べるもの。

 今年のツール・ド・フランスは一部でわずかにサボワ県に入るが、ほとんどのステージはオートサボワ県で行われる。「オート」というのは「高い」という意味だが、地名においては「内陸の」となる。スイス国境に近く、最寄りの大都市はジュネーブ。レマン湖南岸のエビアンやトノンといったミネラルウォーターで有名なところもオートサボワに属する。また地名に「レバン」とつくところが多いが、「温泉」という意味だ。

第17ステージのコースを走る。このあたりはまだスイスだ Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI第17ステージのコースを走る。このあたりはまだスイスだ Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI

スイスの横断歩道には要注意

 今年のツール・ド・フランスに登場する峠はサボワ県に比べるとそれほど高くないが、2006年に薬物使用したフロイド・ランディスが掟破りの逃げをみせたジュープラーヌなどの急峻な峠も多い。有名なモンブランもイタリア国境との境にあって、独特の美しい景観を見せつけてくれる。町の作りもスイス的だが、交通ルールもスイス的で、横断歩道で歩行者は車が止まるものと思って渡ってくるので要注意。

 ツール・ド・フランス史上の最高峰、標高2802mのボネット峠はオートアルプス県にある。イタリア国境に近く、イタリアの熱狂的ファンが大挙して詰めかけるのが例年の傾向だ。今年はファビオ・アールが調子悪く、しかもジロ・デ・イタリアの王者ビンチェンツォ・ニバリがリオ五輪を狙うとはいってもイタリア人の熱狂的ファンからしたら許せないような走りで、イタリアからの観客はとても少なかったように見える。

国境を越えてフランスへ。モンブランに向かう山岳鉄道の駅近くにあったカフェ Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI国境を越えてフランスへ。モンブランに向かう山岳鉄道の駅近くにあったカフェ Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI
スイスからフランスに入国し、モンブランを目指すルート Photo: Kazuyuki YAMAGUCHIスイスからフランスに入国し、モンブランを目指すルート Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI

いよいよツールは最後の山場へ

ツール・ド・フランス1997第15ステージは、今年の第20ステージと同じ、最後ジュープラーヌを越えてモルジーヌに至るコース。パンターニが上りで鋭いアタックを決めてステージ優勝した =1997年7月21日 Photo: Yuzuru SUNADAツール・ド・フランス1997第15ステージは、今年の第20ステージと同じ、最後ジュープラーヌを越えてモルジーヌに至るコース。パンターニが上りで鋭いアタックを決めてステージ優勝した =1997年7月21日 Photo: Yuzuru SUNADA

 第20ステージは名だたる峠をいくつも越え、最後は急傾斜のジュープラーヌで雌雄を決する。1997年のツール・ド・フランスではマイヨジョーヌのヤン・ウルリッヒに対してマルコ・パンターニが起死回生の逆襲を仕掛けたところだ。結果的にパンターニの意地は若きウルリッヒにかなわなかったのだが、その執念は翌年に持ち越されて悲願の初優勝を遂げている。

 さあ、クリストファー・フルームがマイヨジョーヌを確実にしていくなか、最後のジュープラーヌで意地を見せてくれるのはだれだろう? ツール・ド・フランスの慣例として、ジュープラーヌをダウンヒルしてモルジーヌにゴールし、そこでマイヨジョーヌを着用した者が総合優勝者となる。ゴールのプレスセンターで勝利者インタビューが行われるので、それをもって各国のベテラン取材記者は総括原稿を書き始める。最終日がタイムトライアルとなった年は別にして、ツール・ド・フランスの最終日は凱旋パレードなのである。

山口和幸山口和幸(やまぐち・かずゆき)

ツール・ド・フランスをはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い続け、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、ナンバー、ターザン、YAHOO!などで執筆。国内で行われる自転車の国際大会では広報を担当。著書に「ツール・ド・フランス」(講談社現代新書)、「もっと知りたいツール・ド・フランス」(八重洲出版)など。

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