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まさみんのゆるゆる自転車女子旅<19>女子でも友達になれる? ポタガールが聞いた、知っておきたい工具の話

by 龍野雅美 / Masami TATSUNO
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 今回は、連載「工具はともだち」でもおなじみのKTC(京都機械工具株式会社)の重田和麻さんに「ぜひ女子でもわかる工具の話を聞かせてください!」とお願いして、ポタガールのメンバーと埼玉県にある東日本KTCものづくり技術館にお邪魔してきました。自分でタイヤの空気を入れられるようになるまで3年・・・、いまだにパンク修理しかできない、まさみん。それでも「なるほど!」とうなずいてしまうお話ばかりでした。

←工具はともだち<97>にも「ポタガールが学んだ工具の基礎知識」

左からポタガールいくみん、さおりん、まさみん、坂本さん!興味津々に聞いていた坂本さんは「教えてもらいながら実際にトルクレンチを使ってみる体験は楽しかった。今後メンテナンスするときはボルトを熱く見つめてしまいそう Photo: Masami TATSUNO左からポタガールいくみん、さおりん、まさみん、坂本さん!興味津々に聞いていた坂本さんは「教えてもらいながら実際にトルクレンチを使ってみる体験は楽しかった。今後メンテナンスするときはボルトを熱く見つめてしまいそう Photo: Masami TATSUNO

「正しい工具の使い方」なんてない!?

KTCの重田さん。いろんな場面でお話しされることが多いということで、とてもわかりやすく、楽しいセミナーでした! Photo: Masami TATSUNOKTCの重田さん。いろんな場面でお話しされることが多いということで、とてもわかりやすく、楽しいセミナーでした! Photo: Masami TATSUNO

 「今日は工具の使い方についてお話しするということなんですが、でも実は正しい使い方なんてないんですよ。」と驚きの一言から始まった今回のセミナー。えー!?重田さん!?じゃあ一体今日は何のお話を?
「今回お伝えしたいのは正しい使い方ではなく、正しくない使い方、やってはいけない使い方のお話です」

 KTCがコンセプトとしているのが「安全」「快適」「能率・効率」。この3つを満たしていることが重要で、どんなに能率・効率がよくても安全が確保されていない商品は販売できないとおっしゃっていました。安全とは、工具を使う人の安全と私たちの安全です。

これが自転車やバイクのメンテナンスなどに使われる工具。見たことがないものがたくさんありました Photo: Masami TATSUNOこれが自転車やバイクのメンテナンスなどに使われる工具。見たことがないものがたくさんありました Photo: Masami TATSUNO
工具の中の構造を知ることで、自転車にどんなふうに力が加わっているかイメージすることができました Photo: Masami TATSUNO工具の中の構造を知ることで、自転車にどんなふうに力が加わっているかイメージすることができました Photo: Masami TATSUNO

 やってはいけない使い方をすると、メンテナンスの最中に工具が壊れてケガをしたり、間違った工具の使い方を続けた結果、自転車にゆがみが生じ、乗る人のケガにつながりかねないとのことでした。

ボルトのシメ足りないのもシメすぎるのも「良くはない」とわかっていてもモヤッとわからない状態だったのがやっとスッキリしました(いくみん) Photo: Masami TATSUNOボルトのシメ足りないのもシメすぎるのも「良くはない」とわかっていてもモヤッとわからない状態だったのがやっとスッキリしました(いくみん) Photo: Masami TATSUNO

 重田さんが教えてくれた「やってはいけない使い方」とは、とてもシンプルなことでした。原則引き方向で使うということ。押す力は制御しにくく、ケガにつながりやすいためだそうです。そしてレンチを使うときのポイントとして①浅掛け・斜め掛けしない。②異物を取り除く。③正しいサイズで(大きいほうから試してみる)など。これなら、すぐに実践できます!

 「私たちはどこから壊れる?どんなふうに壊れる?と、壊れ方を設計します。どんな工具も経年劣化や想定以上の力が加わると壊れることがあるので、どこから壊れていくかも考えて設計することが安全につながります」とお話しされていたのが印象的でした。

画面を隠して、適正な圧でボルトを締められるかチャレンジ!恐る恐る圧をかけていきます Photo: Masami TATSUNO画面を隠して、適正な圧でボルトを締められるかチャレンジ!恐る恐る圧をかけていきます Photo: Masami TATSUNO
普段のよう思い切り締めてみると、あっという間に適正値を大幅に振りきれてしましました… Photo: Masami TATSUNO普段のよう思い切り締めてみると、あっという間に適正値を大幅に振りきれてしましました… Photo: Masami TATSUNO

ポタガールからの質問

①一つの工具を作るのにどのくらいの時間をかけて設計されるんですか?
→単純にサイズアップするだけでも、試作品で検証してみると仮説とは全く違う結果がでることがあります。そうなると、仮説→検証→仮説→検証の繰り返しです。一概に「これだけの時間がかかる」とは言えないところが開発の難しいところです。

表面の加工の仕方も、それぞれメリット・デメリットがある。両方を理解して工具を選択するのもユーザーの大切な責任ですね Photo: Masami TATSUNO表面の加工の仕方も、それぞれメリット・デメリットがある。両方を理解して工具を選択するのもユーザーの大切な責任ですね Photo: Masami TATSUNO

②いろんな検証を経て設計されていますが、それでも世に出てからわかることもある?
→あります。予想もしなかった使い方をする人がいるからです。でも、ユーザーさんにとってはそれが正しい使い方だと思っていることが多いので、用途や構造を知ってもらうことはとても大切だと感じています。

参加したポタガールが持参した「普段使っている工具」。カラフルというだけで女子っぽいアイテムになりますね Photo: Masami TATSUNO参加したポタガールが持参した「普段使っている工具」。カラフルというだけで女子っぽいアイテムになりますね Photo: Masami TATSUNO
まさみんの持ってきた六角棒レンチ。先端が丸い方と角ばっている方とでは、どんなふうに使いわければいいの? Photo: Masami TATSUNOまさみんの持ってきた六角棒レンチ。先端が丸い方と角ばっている方とでは、どんなふうに使いわければいいの? Photo: Masami TATSUNO

 自転車にゆがみが生じる、パーツが折れてしまったり外れてしまったりする・・・。こうした事故の原因は大半がトルク管理の問題だと重田さんはおっしゃいます。実際にポタガールでもこんな失敗をしていました。

ドライバーの使い方。初めて知ることもたくさんありました Photo: Masami TATSUNOドライバーの使い方。初めて知ることもたくさんありました Photo: Masami TATSUNO
大きなものを挟むときは広口に切り替えて使う「コンビネーションプライヤ」 Photo: Masami TATSUNO大きなものを挟むときは広口に切り替えて使う「コンビネーションプライヤ」 Photo: Masami TATSUNO

さおりんの失敗

「ペダルを取り替えるとき、最後の締めのときにレンチに金づちを当てて力を加えていた」
ダメな例が出されたときに「はっ!私これやってる!」と、さおりんは驚いた表情で自己申告してくれました(笑)。「なんで金づちを使ってレンチに力を加えちゃいけないの?」とたずねると、重田さんも苦笑しながらも優しく教えてくれました。

 金づちを使うのは衝撃を与えるのと同じことです。固い金属は力の伝え方については強いですが、衝撃に弱く割れやすいという一面を持っています。煎餅をイメージするとわかりやすいと思います。そのため、瞬間的に大きな力を与えると工具自体が壊れて、使っている人がケガをすることになりかねません。

まさみんの失敗
「キャリアに使っているボルトの角が丸くなって使い物にならなくなってしまいました」
「原因として、早回しや浅掛け、オーバートルク(締めすぎ)が考えられますね」と、重田さん。キャリアを購入した時に、荷物を載せて走るとキャリアがズレやすくなるのでしっかりボルトを締めてと言われたので、不安から必要以上に締めていました。

オーバートルク(締めすぎ)の結果、角が丸くなめてしまったキャリアのボルト… Photo: Masami TATSUNOオーバートルク(締めすぎ)の結果、角が丸くなめてしまったキャリアのボルト… Photo: Masami TATSUNO

 「最後のグッていうアレがよくなかったのね」旅友のさおりんと思わず顔を見合わせて反省。重田さんいわく、金属にも固いものと柔らかいものがあるそうです。また、工具によって柄の長さが違うと力の加わり方も違う。出先でトルク管理をするのは難しいので、使い慣れた工具を使ったり、事前のメンテナンスをしっかりしたりと工夫が必要です。

ポタガールからの質問

③そもそもトルクってなんですか?
→レンチなどでボルトを締めた際にかかる力の大きさのことです。少し難しい言葉と使うと「支点から力点までの距離と掛ける力によって得られる回転力」となるそうです。
④六角棒レンチ(アーレンキー)。先が丸いのと四角いのがあるけど、なにが違うの?
→丸い方は早回ししたいときに使いやすいように設計されています。角ばっている方は本締めしたいときに使うといいでしょう。ですが、なるべく角ばっている方を使うようにした方がいいと思います。

工具の疑問点が解決できました Photo: Masami TATSUNO工具の疑問点が解決できました Photo: Masami TATSUNO

⑤2016年2月に開催された埼玉サイクルエキスポで1つ5万円もするチタンボルトがありました。全く同じつくりの自転車2台があって、1台だけステムにそのボルトが4本使われている場合の乗り心地を比べたら確かに違って感じました。ほんとにそんなことってありますか?
→あると思います。金属はそれぞれ硬さや性質が違うので、その分力の吸収の仕方や伝わり方が変わると思います。

ユーザーとしての責任

 ユーザーから使い方がわからなくて電話がかかってくることもあるそうです。でもその原因の一つに、きちんと工具の目的や取り扱い方を理解できていないユーザー側の問題があるということを学びました。

 工具は表面の加工の仕方一つをとっても、それぞれにメリット・デメリットがあります。私たちも扱う以上、しっかり説明書を読むなどして理解することが大切なんだと学ぶことができました。

龍野雅美龍野雅美(たつの・まさみ)

1984年生まれ、埼玉県在住。平日はふつうの働き女子(アラサー女子)、休日は自転車、ときどきライター。2010年に初参加した四国一周サイクリングイベント「コグウェイ四国」がきっかけで自転車旅に夢中に。以来、日本各地へ自転車とともにでかけ、そろそろ海外での自転車旅も…と夢見ている。自転車の楽しみ方と埼玉の魅力を発信する「ポタガール」としても活動し、ポタガールらが登場するウェブサイト「ポタ日和」で情報発信をしている。ワールドサイクルブログ「ポタガール まさみんです!」でも執筆中。

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