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山口和幸の「ツールに乾杯! 2016」<5>アンドラの集落で休息日に散歩 ツール・ド・フランスで訪れる幸せなひととき

by 山口和幸 / Kazuyuki YAMAGUCHI
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 ピレネー山中にあってフランスとスペインにはさまれたアンドラ公国は、東京23区よりもひとまわり小さい国土面積だが、そのほとんどは切り立った断崖絶壁で川沿いの一部に人口7万人が日々の営みを続けている。夏は乾燥して過ごしやすく、冬は一面の銀世界に。そのためマウンテンバイク、トレッキング、スキーなどのアウトドアスポーツが盛んだ。

スキーリゾート、アルカリスのふもとにあるオルディノはツール・ド・フランス歓迎ムード Photo: Kazuyuki YAMAGUCHIスキーリゾート、アルカリスのふもとにあるオルディノはツール・ド・フランス歓迎ムード Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI

ピレネー山地の小国、アンドラ

 英国が国民投票でEU(欧州連合)から離脱を決めたことが話題だが、アンドラはそもそもEUに加盟していない。消費税がない免税天国ながら独自通貨を持たないので、かつてはフランスフランやスペインペセタがそのまま使えた。大会ディレクターが先代のジャンマリー・ルブランの時代は休息日をアンドラで過ごすことがひんぱんにあった。選手や関係者が買い物をしたいというわけではないと思うが、ホテルやレストランが安くて落ち着ける。ちょっと首都を離れれば山小屋風の宿泊施設や旅情あふれるレストランなどが点在する。そのため激戦のつかの間に心身を休めたいという気持ちがそうさせるのだと推測していた。

アンドラで最初の休息日を過ごした新城幸也 Photo: Kazuyuki YAMAGUCHIアンドラで最初の休息日を過ごした新城幸也 Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI
最後の上りにあるトンネルもツール・ド・フランスカラーに塗装されていた Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI最後の上りにあるトンネルもツール・ド・フランスカラーに塗装されていた Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI

 2000m級の山岳に囲まれたすり鉢の底に首都アンドララビエイラがあり、腕時計やアウトドアグッズを販売する店舗がひしめく。MTBも盛んで、コメンサルなどのブランドが店舗に並び、道行くサイクリストはフラットバー派が多いことに気づく。経済的に裕福な層が多いフランス人は宝飾品などを免税で購入するために訪問することが多かった。ガソリン税もないので国境を越えたすぐのところにあるガソリンスタンドは、かつてフランスナンバーのクルマが給油のために列をなしていた。

アルカリスに続くつづら折り

 ユーロ通貨を導入してからはアンドラの物価もフランスに肩を並べるほどになってしまい、その影響なのか近年はツール・ド・フランスもわざわざ訪問しなくなった。それでも物価はまだフランスよりも安いので、ツール・ド・フランスで久しぶりの休息日になったアンドラでは、この日を見計らってアウトドアウエアを購入するカメラマンや、ビールの大樽を買い込む取材陣、ガソリンを満タンにする関係者が多かった。

アルカリスに向かうつづら折りに広告キャラバン隊がやって来た Photo: Kazuyuki YAMAGUCHIアルカリスに向かうつづら折りに広告キャラバン隊がやって来た Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI

 アンドラのスキーリゾートのひとつがアルカリスだ。ここがツール・ド・フランスのゴールとなるのは3回目で、ボク自身はすべて来ている。1997年にヤン・ウルリッヒがここで追走するマルコ・パンターニを振り切って独走勝利して、それと同時にマイヨジョーヌを獲得。このときに稼ぎ出した貯金を守りきってドイツ選手として初めて総合優勝を達成している。ゴール手前5kmほどのところにボクの仕事場となるサルドプレス(プレスセンター)が設営されるので、この日ばかりは道路脇でカメラを構えて撮影するチャンスがあった。

豪雨と雹の2016年

すさまじい雨と雹の中でゴールを目指すフルームら有力選手 ©ASO/B.Badeすさまじい雨と雹の中でゴールを目指すフルームら有力選手 ©ASO/B.Bade

 2009年には別府史之と新城幸也が初出場し、第7ステージでアルカリスを経験。新城は前日のバルセロナでのゴール前に落車し、この日はリタイアしても不思議ではないほどのケガを押してのレースだったが、道路脇の側溝でいい写真を撮ろうと待っていたボクを見つけてニコッとほほえんでくれた。そして今年も久しぶりに選手の写真を撮ろうと身構えていたのだが、集中豪雨と大ぶりの雹の襲来で撮影できず。

 翌日に休息日があることから連泊になるので、普段よりもちょっと居心地のいいホテルを予約した。残念ながら原稿を書いたり新城の記者会見に出かけたりして、普段よりも忙しくなってしまったが、夕食後に石造りの集落を散歩しているとここにいる幸せを感じた。ツール・ド・フランスの選手か取材記者じゃなければ、アンドラなんて来られないよなあとつくづく思う。

日本ではカサ差し運転はいけないんだよ ©ASO/B.Bade日本ではカサ差し運転はいけないんだよ ©ASO/B.Bade
山口和幸山口和幸(やまぐち・かずゆき)

ツール・ド・フランスをはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い続け、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、ナンバー、ターザン、YAHOO!などで執筆。国内で行われる自転車の国際大会では広報を担当。著書に「ツール・ド・フランス」(講談社現代新書)、「もっと知りたいツール・ド・フランス」(八重洲出版)など。

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