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ツール・ド・フランス2016 第9ステージ逃げから抜け出したデュムランがツール初勝利 コンタドールが途中リタイア

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ツール・ド・フランス第9ステージは7月10日、大人数の逃げグループから抜け出したトム・デュムラン(オランダ、チーム ジャイアント・アルペシン)がツール初勝利を挙げた。クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)がマイヨジョーヌを守った一方で、大会序盤から苦しい走りが続いたアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)が残り約100km地点でリタイア。新城幸也(ランプレ・メリダ)はアシストとしての働きをこなした後、31分48秒差のグルペットで111位でフィニッシュしている。

超級山岳アンドラ・アルカリスを独走しツール初勝利を挙げたトム・デュムラン Photo: Yuzuru SUNADA超級山岳アンドラ・アルカリスを独走しツール初勝利を挙げたトム・デュムラン Photo: Yuzuru SUNADA

最大42人の逃げグループが形成

 大会前半の山場となったピレネー3連戦は、このステージが最終日。スペイン領内のビエリャ アラン渓谷からアンドラ公国のアンドラ・アルカリスまでの184.5kmで争われる。スタートしてすぐに1級山岳の上りが始まるほか、中盤にも1級山岳が1つ、後半には2級、1級、そして頂上フィニッシュとなる超級アンドラ・アルカリスへと向かう。今大会のクイーンステージとの呼び声も高く、総合成績の行方を左右する可能性の高い1日でもある。

 前半から中盤はスペイン領内、後半はアンドラ領内を走り、フランスとはしばしの別れ。ツールでアンドラに入国するのは、2009年以来7年ぶりだ。そのときは、今大会も出場しているブリース・フェイユー(フランス、フォルテュネオ・ヴィタルコンセプト、当時アグリチュベル)が制している。

スタート直後は逃げを試みたアルベルト・コンタドールだったが… Photo: Yuzuru SUNADAスタート直後は逃げを試みたアルベルト・コンタドールだったが… Photo: Yuzuru SUNADA

 レースはスタート直後から逃げ狙いのアタックが頻発。出入りが激しくなるが、かなりの人数が前方を目指した時点でチーム スカイがメイン集団のコントロールを開始。結果的に42人と大人数の先頭集団が形成された。ただ、それも一時的なもので、先頭集団内でも上りを使っての絞り込みが行われ、半数の21人へと減らす。

 その間、メイン集団からコンタドールがアシストのロベルト・キセルロウスキー(クロアチア)とともにアタック。アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)とセルジオルイス・エナオ(コロンビア、チーム スカイ)のチェックを受けつつも、先頭集団へと合流。前日までに失ったタイム差を取り戻すべく攻撃的な走りにシフトしたかに見えたが、徐々に遅れ始め、結局メイン集団へと戻ってしまった。また、しばらく先頭集団で走ったバルベルデも、メイン集団が迫ってきていることから自発的に後方へと下がった。これにより、逃げを狙った選手たちの動きが完全に容認された。

 先頭集団では熾烈な山岳賞争いが展開され、この日1つ目の1級山岳はティボ・ピノー(フランス、エフデジ)が1位通過。トマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)が2位、ラファウ・マイカ(ポーランド、ティンコフ)が3位で続いた。

コンタドールが衝撃のリタイア

 先を急ぐ逃げメンバーに総合成績を脅かす選手がいないこともあり、メイン集団は急ぐことなく淡々と進む。しかし、序盤に逃げを試みたコンタドールが集団後方を走り続け、たびたびチームカーへと下がるシーンが目立つ。数回にわたりチームカーに乗るスタッフと話を重ねたコンタドールだったが、残り約100kmとなったところで衝撃のシーンが訪れた。

 チームカーとともにコース脇に止まり、バイクを降りたコンタドール。テレビカメラに手を振りながら、チームカーの助手席へと乗り込んだ。今大会は第1、第2ステージで2日続けて激しい落車に見舞われ、その影響からか走りに精彩を欠いていた。さらに、このステージの朝に発熱し、様子を見ながらの出走だったことが明らかになった。

 チームメートより先にホテルへと入ったコンタドールは、「朝から熱があり、走ってみたけど調子が上がらないままだった。原因は分からない。最終的にはチームと話し合ってリタイアを決めた」とインタビューに答えている。

デュムランが超級山岳を独走

 快調に飛ばす先頭集団は、メイン集団に対し10分前後のリードを確保。中盤に設けられた、この日2つ目の1級山岳はデヘントが1位通過。ピノーが2位で続いた。アンドラに入国してから迎えた、138km地点の中間スプリントポイントは、先頭集団で山岳をクリアしてきたペテル・サガン(スロバキア、ティンコフ)が狙い通り1位通過。20ポイントを加算し、マイヨヴェール争いでトップを行くマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)に7ポイント差と迫っている。

 直後に迎えた2級山岳では、ジェローム・コッペル(フランス、イアム サイクリング)がアタック。これにツガブ・ゲブレマリアム・グルマイ(エチオピア、ランプレ・メリダ)が反応し、しばし先行するが、頂上を目前に吸収。代わってデヘントが飛び出し、そのまま2級山岳も1位で通過した。

 約10kmにわたって独走したデヘントだったが、この日3つ目となる1級山岳の上りで捕まり、すぐに後退。先頭は8人に絞られた。ジョージ・ベネット(ニュージーランド、チーム ロットNL・ユンボ)が再三アタックを試みるが、いずれも失敗。この頂上もピノーが1位で通過し、山岳ポイントをさらに加算した。

 下りを経て迎えるは、超級山岳アンドラ・アルカリス。メイン集団とのタイム差は十分にあり、逃げる8人の中からステージ優勝者が出る可能性が高まった。

単独でゴールを目指すトム・デュムラン Photo: Yuzuru SUNADA単独でゴールを目指すトム・デュムラン Photo: Yuzuru SUNADA
ゴール地点近くでは2cm程の雹が降り注いだ Photo: Shusaku MATSUOゴール地点近くでは2cm程の雹が降り注いだ Photo: Shusaku MATSUO

 残り12kmでアタックしたのはデュムラン。本格的な上りが始まろうかというタイミングでの抜け出しに、他選手がついてくることができない。頂上に近づくにつれて天気が悪化し、雹と雨とが入り混じる中、デュムランは落ち着いてペースを刻む。後続を寄せ付けることなく上りきったデュムランは、フィニッシュを目前に勝利を確信してガッツポーズ。感慨に浸りながら、フィニッシュラインを通過した。

 昨年のブエルタ・ア・エスパーニャでの快進撃以来、グランツールでの活躍が目覚しいデュムラン。この1年で、ブエルタ、ジロ・デ・イタリア、そしてツールと、すべてのグランツールで勝利を挙げる快挙。今大会は8月に控えるリオデジャネイロ五輪に向けた調整の一環として出場していることもあり、総合争いには加わっていないが、狙ったステージでしっかりと結果を出してみせた。レース後のインタビューでは、「夢がかなった。クイーンステージで素晴らしい勝利を挙げることができた」と喜びを爆発させた。また、全グランツールでの勝利について問われ、「タイムトライアルを得意としているけれど、それ以外でも強さを見せられることを証明できてうれしい」と続けた。

 デュムランの歓喜のフィニッシュから38秒後、ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)が2位、マイカが3位で山頂へ。6位フィニッシュのピノーは、マイカに3ポイントのリードで山岳賞のマイヨアポワを獲得した。

山岳リーダーの座を失ったラファウ・マイカ Photo: Yuzuru SUNADA山岳リーダーの座を失ったラファウ・マイカ Photo: Yuzuru SUNADA
山岳リーダーとなったティボ・ピノー Photo: Yuzuru SUNADA山岳リーダーとなったティボ・ピノー Photo: Yuzuru SUNADA

総合上位陣がアタック合戦

 メイン集団でも、アンドラ・アルカリスへの上りで動きが発生した。

 強まる雨の中、エナオのアタックをきっかけに集団が活性化。マイヨジョーヌのフルームがアタックすると、これに食らいついたのはナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)とリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシングチーム)。その後、総合上位陣がフルームらに合流すると、今度はダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)、バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)が繰り返しアタック。これらすべてをフルームが真っ先にチェックに動き、他の選手が追随する形が続いた。

有力勢のグループの先頭でペースを上げるリッチー・ポート(イギリス、BMC レーシングチーム) Photo: Shusaku MATSUO有力勢のグループの先頭でペースを上げるリッチー・ポート(イギリス、BMC レーシングチーム) Photo: Shusaku MATSUO

 ポートの牽引によって人数が減っていき、フルーム、キンタナ、マーティン、アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)を含む5人に絞られた。最後はイェーツを先頭に、フルーム、キンタナが同時にフィニッシュ。ポートとマーティンが2秒差となった。

 この結果、フルームのマイヨジョーヌ、イェーツの総合2位と新人賞のマイヨブランは変わらず。マーティンが3位、キンタナが4位と順位を上げている。一方で、ファビオ・アール(イタリア、アスタナ プロチーム)が遅れ、総合でも1分23秒差の13位に後退している。

マイヨ・ジョーヌを守ったクリストファー・フルーム Photo: Yuzuru SUNADAマイヨ・ジョーヌを守ったクリストファー・フルーム Photo: Yuzuru SUNADA

 11日は今大会初の休息日。翌12日から第2週の戦いをスタートさせる。その皮切りとなる第10ステージは、アンドラ領内のエスカルダス・アンゴルダニをスタートし、フランスへと戻ってルヴェルにフィニッシュする197kmのレースだ。

第9ステージ結果
1 トム・デュムラン(オランダ、チーム ジャイアント・アルペシン) 5時間16分24秒
2 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ) +38秒
3 ラファウ・マイカ(ポーランド、ティンコフ) +38秒
4 ダニエル・ナバロ(スペイン、コフィディス ソリュシオンクレディ) +1分39秒
5 ウィネルアンドルー・アナコナ(コロンビア、モビスター チーム) +1分57秒
6 ティボ・ピノー(フランス、エフデジ) +2分30秒
7 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、チーム ロットNL・ユンボ) +2分48秒
8 ディエゴ・ローザ(イタリア、アスタナ プロチーム) +2分52秒
9 マティアス・フランク(スイス、イアム サイクリング) +3分44秒
10 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ) +6分35秒
111 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ) +31分48秒

個人総合(マイヨジョーヌ)
1 クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ) 44時間36分3秒
2 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ) +16秒
3 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ) +19秒
4 ナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム) +23秒
5 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、チーム カチューシャ) +37秒
6 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアル) +44秒
7 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +44秒
8 セルジオルイス・エナオ(コロンビア、チーム スカイ) +44秒
9 ルイ・メインティス(南アフリカ、ランプレ・メリダ) +55秒
10 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) +1分1秒
120 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ) +1時間37分40秒

ポイント賞(マイヨヴェール)
1 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ) 204pts
2 ペテル・サガン(スロバキア、ティンコフ) 197pts
3 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) 182pts

山岳賞(マイヨアポワ)
1 ティボ・ピノー(フランス、エフデジ) 80pts
2 ラファウ・マイカ(ポーランド、ティンコフ) 77pts
3 トム・デュムラン(オランダ、チーム ジャイアント・アルペシン) 50pts

新人賞(マイヨブラン)
1 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ) 44時間36分19秒
2 ルイ・メインティス(南アフリカ、ランプレ・メリダ) +39秒
3 ワレン・バルギル(フランス、チーム ジャイアント・アルペシン) +2分35秒

チーム総合
1 モビスター チーム 133時間49分31秒
2 チーム スカイ +2分26秒
3 BMCレーシングチーム +3分28秒

敢闘賞
トム・デュムラン(オランダ、チーム ジャイアント・アルペシン)

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