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ツール・ド・フランス2016 第8ステージ王者フルームが峠頂上で奇襲攻撃 下りを独走で逃げ切り優勝、マイヨジョーヌも奪取

by 米山一輝 / Ikki YONEYAMA
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 ツール・ド・フランス第8ステージが7月9日、超級山岳トゥールマレー峠を含む4つの峠を越える184kmで行われ、3度目の総合優勝を狙う昨年王者のクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)が最後の峠からの下りでアタックする奇襲を決め、独走逃げ切りで区間優勝するとともに総合首位のマイヨジョーヌを奪取した。新城幸也(ランプレ・メリダ)は34分遅れの集団で140位でゴールしている。

ディフェンディングチャンピオンのクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)が、区間優勝とともに総合首位のマイヨジョーヌに袖を通した Photo: Yuzuru SUNADAディフェンディングチャンピオンのクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)が、区間優勝とともに総合首位のマイヨジョーヌに袖を通した Photo: Yuzuru SUNADA

今年最初の超級山岳

 ピレネー山岳3連戦の2日目となるこの日は、ポーからバニェール・ド・リュションに至るステージ。前半でまず今大会最初の超級山岳となるトゥールマレー峠を越え、その後は2級、1級、1級山岳と、ひたすら峠の上り下りを繰り返し、最後の峠を下ったところでゴールとなる。頂上ゴールではないため大きな差はつけ辛いが、総合優勝を争う上で遅れることは許されない一日だ。

トゥールマレー峠で先行するピノーとマイカ Photo: Yuzuru SUNADAトゥールマレー峠で先行するピノーとマイカ Photo: Yuzuru SUNADA

 レースはトゥールマレーの上り口までにメイン集団から数十秒先行するグループが作られたが、上りが本格化したところで先頭はティボ・ピノー(フランス、エフデジ)、ラファウ・マイカ(ポーランド、ティンコフ)、そしてここに追いついたトニー・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)の3人に絞られた。

 メイン集団先頭はチーム スカイが固めてペースを作り、マイヨジョーヌのフレッヒ・ヴァンアーヴルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)は早々に集団から脱落。今年のジロ・デ・イタリア王者で前日敢闘賞の、ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ プロチーム)もこの段階で後退した。

 トゥールマレー頂上ではピノーがアタックし、集団からは2分20秒ほど先行して先頭通過した。ピノーは続く2級山岳も先頭通過し、山岳賞争いで暫定トップに立った。スカイが牽引するメイン集団は50人ほどに絞られ、徐々に逃げの3人との差を詰めていった。

逃げ続ける先頭の3人 Photo: Shusaku MATSUO逃げ続ける先頭の3人 Photo: Shusaku MATSUO
前半の山岳で遅れたマイヨジョーヌのヴァンアーヴルマート(右) Photo: Shusaku MATSUO前半の山岳で遅れたマイヨジョーヌのヴァンアーヴルマート(右) Photo: Shusaku MATSUO

山岳賞ジャージはマイカの手に

 後半の1つ目の1級山岳コル・ド・ヴァル・ルーロン・アゼの上り中腹で、メイン集団は早くも逃げの3人を吸収した。ピノー、マルティンはそのまま脱落するが、マイカはメイン集団にとどまり、エースのアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)をアシストするとともに、続く1級山頂での山岳ポイント獲得を狙う。

 山岳ポイント手前、集団先頭に出ようとするマイカに待ったをかけたのはフルームだ。マイカの行く手をさえぎるように合わせながらペースを上げ、スカイが終始コントロールし続ける集団での“良いとこ取り”を許さない姿勢をみせた。マイカは山岳ポイントをフルームの後ろで3位通過となったが、合計ポイントでピノーを逆転して山岳賞トップに立った。

山岳賞ジャージを獲得したマイカ Photo: Yuzuru SUNADA山岳賞ジャージを獲得したマイカ Photo: Yuzuru SUNADA

 メイン集団は34人となり、スカイ勢がフルームを含め5人、モビスター、アスタナ、BMCレーシングといった有力チームがそれぞれ3人ずつ残る。最後に控える峠は1級山岳のコル・ド・ペイルスルドだ。集団先頭は変わらずスカイがハイペースで引き続け、マイカもここで力尽きて遅れていく。

 頂上まで3kmを切ってから、有力選手のアタック合戦が始まった。フルームをアシストするセルジオルイス・エナオ(コロンビア、チーム スカイ)がペースアップの口火を切ると、続いてフルーム自身がアタック。さらにカウンターでダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)、ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアル)も攻撃をみせた。

 集団から次々選手が脱落するなか、コンタドールが苦しい表情で先頭から若干の差をつけられてしまう。チームメイトのロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ)はメイン集団に残り、コンタドールのアシストには回らない。エース交代の瞬間だ。

意表をつく王者の攻撃

最後の上りで遅れたコンタドール Photo: Yuzuru SUNADA最後の上りで遅れたコンタドール Photo: Yuzuru SUNADA

 激しい攻防の末に山頂にたどり着いた先頭集団は14人ほど。フルームが山岳ポイントを取りに先頭で加速し、2番手のナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)はこれを静観しながら、コース脇のチームスタッフからボトルを受け取った。この一瞬の隙が勝負を分けた。山頂を先頭通過したフルームが、そのまま加速して下りでアタックを仕掛けたのだ。

 慌てたキンタナがボトルを捨てて追おうとするが、すぐ後ろにフルームのアシストのエナオが付いて追走の動きをマーク。フルームは早々に集団から10秒の差を奪うことに成功した。山頂からゴールまでは15km。単独での逃げ切りは難しい距離だが、フルームはハンドルに覆い被さる攻撃的な前傾姿勢で、空気抵抗を抑えつつさらにペダルを回して加速していく。

 追走集団はアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)、さらにBMCレーシングのダブルエース、リッチー・ポート(オーストラリア)とティージェイ・ヴァンガードレン(アメリカ)らが前に出てくるが、攻め続けるフルームとの差は逆に徐々に開いていく。

 さらに痛かったのはコンタドールだ。山頂でのタイム差は20秒ほどだったが、下りで前の集団がペースを上げたことや、同じ集団にスカイのアシスト選手が2人いたことで、思うように追走することができない。同じタイミングで遅れたピエール・ローラン(フランス、キャノンデール・ドラパック チーム)が協力していたが、途中のコーナーで壁と当たって負傷するなど、勢いは完全に削がれてしまった。

してやったりのフルーム

 フルームは最後まで攻撃的なフォームを崩さないまま、1秒でも差を広げようと全力のままゴールラインを切り、ゴールを過ぎてようやく両拳を突き上げ、さらにもう一度右拳を突き上げるガッツポーズをみせた。今大会初勝利とともに、総合でも首位に立った。

フルームはゴールラインを越えてから力強いガッツポーズを見せた Photo: Yuzuru SUNADAフルームはゴールラインを越えてから力強いガッツポーズを見せた Photo: Yuzuru SUNADA
新人賞ジャージのアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)が総合2位につける Photo: Shusaku MATSUO新人賞ジャージのアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)が総合2位につける Photo: Shusaku MATSUO

 追走集団は13秒遅れでマーティンを先頭にゴール。ステージ3位までにボーナスタイムが与えられるため、フルームは10秒のボーナスタイムと合わせ、キンタナ、ファビオ・アール(イタリア、アスタナ プロチーム)といった主要なライバルから23秒のタイムを奪うことに成功した。

 意表をついたアタックについてフルームは「計画していた訳ではなく、上りでのアタックが決まらなかったので、下りで行こうと思ったんだ」とレース後にコメントした。「自転車レースは実に面白いね。でもちょっとやりすぎだったかも。明日もハードなステージ。差も大きくないから頑張るよ」と翌日の超級山頂ゴールに向けて油断しない姿勢をみせた。

 コンタドールは最終的にフルームから1分41秒遅れてのゴールとなった。「ベストは尽くした」とインタビューに答えたが、総合優勝争いにおいては望みがほぼ絶たれつつある。

第8ステージ結果
1 クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ) 4時間57分33秒
2 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ) +13秒
3 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、チーム カチューシャ) +13秒
4 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアル) +13秒
5 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ) +13秒
6 ファビオ・アール(イタリア、アスタナ プロチーム) +13秒
7 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ) +13秒
8 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) +13秒
9 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +13秒
10 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシングチーム) +13秒
140 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ) +34分43秒

個人総合(マイヨジョーヌ)
1 クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ) 39時間13分4秒
2 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ) +16秒
3 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、チーム カチューシャ) +16秒
4 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ) +17秒
5 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) +19秒
6 ナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム) +23秒
7 ファビオ・アール(イタリア、アスタナ プロチーム) +23秒
8 ティージェイ・ヴァンガードレン(アメリカ、BMCレーシングチーム) +23秒
9 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアル) +23秒
10 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +23秒
125 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ) +1時間12分27秒

ポイント賞(マイヨヴェール)
1 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ) 204 pts
2 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) 182 pts
3 ペテル・サガン(スロバキア、ティンコフ) 177 pts

山岳賞(マイヨアポワ)
1 ラファウ・マイカ(ポーランド、ティンコフ) 31 pts
2 ティボ・ピノー(フランス、エフデジ) 30 pts
3 クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ) 22 pts

新人賞(マイヨブラン)
1 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ) 39時間13分20秒
2 ルイ・メインティス(南アフリカ、ランプレ・メリダ) +18秒
3 ワレン・バルギル(フランス、チーム ジャイアント・アルペシン) +1分35秒

チーム総合
1 BMCレーシングチーム 117時間40分16秒
2 チーム スカイ +1分34秒
3 モビスター チーム +4分54秒

敢闘賞
ティボ・ピノー(フランス、エフデジ)

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