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ツール・ド・フランス2016 コースプレビュー<後編>2つの個人TT、そしてアルプス最終決戦 バラエティ豊かな運命の後半ステージ

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 大会序盤から山岳ステージが登場するなど、選手たちに息つく暇を与えないツール・ド・フランス2016のルート。9日間のレースを終えた一行は、ピレネー山脈の小国・アンドラで1回目の休息日を迎える。英気を養った彼らは、第2週、第3週の戦いへと臨む。今回は後半ステージを解説。海あり、山ありのバラエティに富んだ構成は、勝負をより難しいものとするだろう。マイヨジョーヌを争う最後の決戦の舞台は、今年もアルプス。そして、パリ・シャンゼリゼへと選手たちが帰還したとき、第103回目のツール王者が決定する。

アルプスを越え、パリ・シャンゼリゼへの帰還を目指す =ツール・ド・フランス2015第21ステージ、2015年7月26日 Photo: Yuzuru SUNADAアルプスを越え、パリ・シャンゼリゼへの帰還を目指す =ツール・ド・フランス2015第21ステージ、2015年7月26日 Photo: Yuzuru SUNADA

第10ステージ(エスカルダス・アンゴルダニ~ルヴェル、197km) 7月12日

第10ステージ コースプロフィール ©A.S.O.第10ステージ コースプロフィール ©A.S.O.

 戦いのリスタート。アンドラで休息した選手たちはこの日、同国領内のアンバリラ峠を越えてフランスへと戻る。

 スタートからアンバリラ峠頂上まで24km上り、その後下ってからはほぼ平坦。スプリンターにチャンスがあると見られるが、ポイントとなるのは残り7kmで登場する3級山岳サン・フェレオル。リフレッシュした選手たちがアタックを決めるようだと、スプリントトレインが崩壊し、追撃を逃すことも考えられる。

第11ステージ(カルカッソンヌ~モンペリエ、162.5km) 7月13日

第11ステージ コースプロフィール ©A.S.O.第11ステージ コースプロフィール ©A.S.O.

 ここまで内陸部や山岳を走ることの多かったプロトンは、久々に海を見ながら走ることができる。地中海沿いを走る1日は、おおむね平坦でスプリンターに有利だ。レース距離も比較的短く、後半はハイスピードな展開となりそうだ。

 何より注意したいのは、地中海沿い特有の強い風。これまでスプリントステージと見られながら、横風を利用して総合系ライダーを擁するチームが仕掛けるケースが多く見られる。こうした動きがハマるようだと、大会全体の流れにも大きな影響を及ぼすだろう。

第12ステージ(モンペリエ~モン・ヴァントゥー、184km) 7月14日

第12ステージ コースプロフィール ©A.S.O.第12ステージ コースプロフィール ©A.S.O.

 この日はフランス独立記念日。お祭りムードの中でレースが行われるのはおなじみだが、今年は主催者がモン・ヴァントゥー登坂を組み込んできた。

 距離15.7km、平均勾配8.8%と、厳しい上りを得意とする選手が勝ちを狙って動くことだろう。一方で、この上りで遅れてしまうことは、マイヨジョーヌ争いからの後退を意味する。なんとしても生き残らなければならない。

 モン・ヴァントゥーの上り口に向けては、スプリントさながらのトレインがいくつも形成され、ハイスピードでの主導権争いから“魔の山”への登坂となりそうだ。

2013年のフランス独立記念日もモン・ヴァントゥーを上った。今年もお祭りムードの中を進むことになりそうだ =ツール・ド・フランス2013第15ステージ 2013年7月14日 Photo: Yuzuru SUNADA2013年のフランス独立記念日もモン・ヴァントゥーを上った。今年もお祭りムードの中を進むことになりそうだ =ツール・ド・フランス2013第15ステージ 2013年7月14日 Photo: Yuzuru SUNADA

第13ステージ(ブール・サン・タンデオル~ル・ポン・ダルク洞窟、37.5km個人TT) 7月15日

第13ステージ コースプロフィール ©A.S.O.第13ステージ コースプロフィール ©A.S.O.

 今大会最初の個人タイムトライアルステージ。前日のモン・ヴァントゥーでの結果を受けて、さらなる攻勢に出る選手とタイム差を取り戻そうと躍起になる選手とが入り混じる。

 37.5kmの長距離個人TTだが、生粋のタイムトライアルスペシャリストには少々厳しいコースかもしれない。スタートから7km上り、しばらくは平坦と下りが続くが、ラスト3kmからフィニッシュにかけて再びの上り。登坂力も必要とされるだけに、上りとTTとをそつなくこなせる選手が有利となりそうだ。

第14ステージ(モンテリマール~ヴィラール・レ・ドンブ パルク・デ・ゾワゾー、208.5km) 7月16日

第14ステージ コースプロフィール ©A.S.O.第14ステージ コースプロフィール ©A.S.O.

 平坦ステージにカテゴライズされるが、4級山岳が3つ含まれるなど細かなアップダウンがスプリンターを苦しめることになるかもしれない。そこは、スプリンターチームの腕の見せどころとなりそうだ。

 もっとも、このステージを含めて平坦ステージは3つしか残されておらず、ポイント賞のマイヨヴェール争いにおいても重要な1日となる。状況次第では、このステージを制した選手がマイヨヴェール戦線で大きく優位に立つことさえ考えられる。

第15ステージ(ブール・カン・ブレス~キュロズ、160km) 7月17日

第15ステージ コースプロフィール ©A.S.O.第15ステージ コースプロフィール ©A.S.O.

 160kmの中に6つのカテゴリー山岳が凝縮される難コース。超級山岳グラン・コロンビエを越え、一度フィニッシュ地のキュロズを通過してから、もう一度グラン・コロンビエを上る。

 特に終盤の上りはつづら折りになっていて、これが有力選手たちの集団を崩壊する要素ともなり得る。この先に控えるアルプスを考えると、まだまだ勝負が決するのは早いが、脱落者を生む可能性は大いにあるだろう。また、フィニッシュに向けての下りもテクニックが必要となりそうだ。

第16ステージ(モアラン・アン・モンターニュ~ベルン、209km) 7月18日

第16ステージ コースプロフィール ©A.S.O.第16ステージ コースプロフィール ©A.S.O.

 一行は再びフランスを離れ、今度はスイスへと入国。アルプスの空気を感じつつも、まずは上りを避けて首都ベルンへと急ぐ。

 スプリンターにとっては、このステージを終えるとチャンスは最終のパリ・シャンゼリゼしか残されていない。押さえておきたいのは、残り3kmを切ったところからの上り。勾配は緩く、集団を崩壊するほどのものではないが、スプリントポジションを左右することは考えられる。ラスト1kmからフィニッシュにかけてはフラットではあるが、一度ポジションを下げてしまうと勝負のうえでは不利になってしまうだろう。

 そして、このステージを終えると2回目の休息日を迎える。

キャリア最終シーズンのツールに臨むファビアン・カンチェッラーラ。第16ステージで地元ベルンに凱旋する =ツール・ド・フランス2015第3ステージ、2015年7月6日 Photo: Yuzuru SUNADAキャリア最終シーズンのツールに臨むファビアン・カンチェッラーラ。第16ステージで地元ベルンに凱旋する =ツール・ド・フランス2015第3ステージ、2015年7月6日 Photo: Yuzuru SUNADA

第17ステージ(ベルン~ファンオ・エモソン、184.5km) 7月20日

第17ステージ コースプロフィール ©A.S.O.第17ステージ コースプロフィール ©A.S.O.

 ベルンで2回目の休息日を過ごした選手たちは、この日もフランスへは戻らずにスイス国内を走ることになる。目指すはスイスアルプスのファンオ・エモソン。レース終盤に入り、1級山岳ラ・フォルクラ峠を越え、超級山岳であるファンオ・エモソンの頂上を目指す。

 2014年のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネで登場した際は、先頭集団の逃げ切りを許しつつも、その後方では総合系ライダーたちが熾烈な争いを繰り広げた。今回も、序盤から中盤にかけてはさほど難しくないこともあり、逃げ狙いの選手たちが大きく先行し、終盤は逃げグループとメイン集団と、2つのレースが展開することが考えられる。

第18ステージ(サランシュ~ムジェーヴ、17km山岳個人TT) 7月10日

第18ステージ コースプロフィール ©A.S.O.第18ステージ コースプロフィール ©A.S.O.

 12年ぶりにツールに山岳個人タイムトライアルが戻ってくる。スタートから4km過ぎまでは平坦に近いが、そこからは10km以上の上りが待ち受ける。特に第1計測ポイントにあたるドマンシまでは10%以上の勾配が続く。

 中盤以降は緩急織り交ぜた斜面を上ることになる。前半から飛ばしすぎると、緩斜面でリズムを崩し、結果的にフィニッシュタイムが伸び悩む可能性さえある。当然総合系ライダーに有利なコースではあるが、走り方次第で20~30秒差がついてしまうケースもありそうだ。そして、この日を終えた時点でのマイヨジョーヌ争いの形勢にも注目が集まる。

 一方で、総合争いとは関係のない選手たちにとっては、無難に上って終わらせる1日だ。タイムアウトにならない範囲で走りつつも、上り坂で熱い応援を繰り広げるファンたちに応えるべく、ユニークなパフォーマンスが見られるはずだ。

第19ステージ(アルベールヴィル~サン・ジェルヴェ・モンブラン、146km) 7月22日

第19ステージ コースプロフィール ©A.S.O.第19ステージ コースプロフィール ©A.S.O.

 短くもハードな1日。超級から2級まで、4つの山を越えるルートは、有力チームのアシストがこぞってエースを“前待ち”すべく、序盤から逃げを試みることになるかもしれない。

 また、中盤に登場する超級山岳ビザンヌを越える頃には、エースクラスしかメイン集団に残っていない可能性もある。そして、頂上のフィニッシュを目指す1級山岳サン・ジェルヴェ・モンブランは、登坂距離9.8km、平均勾配8%と、これまた難しい。総合ジャンプアップをかけたアタックが次々と見られることだろう。

第20ステージ(ムジェーヴ~モルジーヌ、146.5km) 7月23日

第20ステージ コースプロフィール ©A.S.O.第20ステージ コースプロフィール ©A.S.O.

 泣いても笑っても、この日でマイヨジョーヌの行方が事実上決する。アルプス4連戦の最後を飾るにふさわしい勝負の舞台には、2級、1級、1級、そして超級の順で山越えが待ち受ける。

 上りはもとより、マイヨジョーヌ争いにスパイスを加えるのがテクニカルなダウンヒルだ。今大会最後の超級山岳であるジュ・プラヌ峠をクリアすると、フィニッシュ地・モルジーヌへ9km下る。つまり、山を上った分と同じだけ下りをこなさなければならないのだ。

 そのいずれもが変化に富み、選手それぞれに攻撃・防御の思惑がひしめき合うことになるだろう。

 このステージを終えた時点で、マイヨジョーヌに袖を通した選手が、翌日に控えるパリ・シャンゼリゼでウイニングライドの資格を得ることになる。

第20ステージを終え、マイヨジョーヌに袖を通した選手がツール総合優勝をほぼ手中にする。2015年のクリストファー・フルームはポディウムで安どの表情を浮かべた =ツール・ド・フランス2015第20ステージ、2015年7月25日 Photo: Yuzuru SUNADA第20ステージを終え、マイヨジョーヌに袖を通した選手がツール総合優勝をほぼ手中にする。2015年のクリストファー・フルームはポディウムで安どの表情を浮かべた =ツール・ド・フランス2015第20ステージ、2015年7月25日 Photo: Yuzuru SUNADA

第21ステージ(シャンティイ~パリ・シャンゼリゼ、113km) 7月24日

第21ステージ コースプロフィール ©A.S.O.第21ステージ コースプロフィール ©A.S.O.

 初日に「西洋の脅威」モン・サン・ミシェルをスタートし、ピレネーを目指し南下した前半戦。さらに、地中海を見たのち、スイスへと寄り道し、満を持してアルプスへの最終関門に挑んだ3週間の旅。ついに、パリ・シャンゼリゼへの帰還をもって、完結のときを迎える。

 長きに渡る試練の日々を乗り越えた勇者たち。スタート後しばらくはパレード走行で進み、選手・チームスタッフ・関係者がその労をねぎらい合う。

 だからといって、戦いがすべて終わったわけではない。シャンゼリゼ通りを制することは、プロライダーすべての夢。それを叶えるべく、スプリンターを中心にもうひと勝負繰り広げることとなる。

 シャンゼリゼの周回ルートに入ると、ルーヴル美術館、コンコルド広場、エトワール凱旋門などをめぐり、9周回したのちフィニッシュ。

 そして、このステージを終えると、第103回ツール・ドフランスの総合チャンピオンが決定する。個人総合時間賞のマイヨジョーヌを筆頭に、ポイント賞のマイヨヴェール、山岳賞のマイヨアポア、新人賞のマイヨブランの着用者が決定し、さらにはチーム総合時間賞、ステージ優勝者の表彰がシャンゼリゼ通りに設けられるポディウムにて行われる。凱旋門をバックに祝福を受ける様は、まさに壮麗だ。

シャンゼリゼ通りでスプリンターたちによる最後の勝負が待ち受ける =ツール・ド・フランス2015第21ステージ、2015年7月26日 Photo: Yuzuru SUNADAシャンゼリゼ通りでスプリンターたちによる最後の勝負が待ち受ける =ツール・ド・フランス2015第21ステージ、2015年7月26日 Photo: Yuzuru SUNADA

女性版ツール「ラ・クルス・バイ・ル・ツール・ド・フランス」

3回目を迎えるラ・クルス・バイ・ル・ツール・ド・フランス。今回からエフデジがメインスポンサーを務める ©A.S.O.3回目を迎えるラ・クルス・バイ・ル・ツール・ド・フランス。今回からエフデジがメインスポンサーを務める ©A.S.O.

 ツール・最終ステージが行われる7月24日、男子と同じパリ・シャンゼリゼ通りの周回コースを使って、女子レース「ラ・クルス・バイ・ル・ツール・ド・フランス(La Course by Le Tour de France)」が開催される。

 3回目を迎える今回は、今シーズンから発足したUCI(国際自転車競技連合)ウイメンズ・ワールドツアーに組み込まれている。過去2回は、2014年がマリアンヌ・フォス、2015年はアンナ・ファンデルブレッヘン(ともにオランダ、ラボ・リヴ ウイメンズサイクリングチーム)が優勝している。

 レースは89kmで争われ、スプリント勝負が予想されるが、前回のファンデルブレッヘンのように逃げ切りが決まる可能性もある。天候などもレース展開を左右する条件となりそうだ。

 出場は21チーム。度重なるけがが癒え、戦線に戻ってきたフォスや前回覇者のファンデルブレッヘン擁するラボ・リヴ勢、昨年の世界女王で現在の女子プロトン最強の呼び声高いエリザベス・アーミステッド(イギリス、ボエルス・ドルマンス サイクリングチーム)、エマ・ヨハンソン(スウェーデン、ウイグル・ハイファイブ)らの走りに注目が集まる。

 今回から、男子プロトンでもおなじみのエフデジが大会のメインスポンサーに就き、将来的なイベントの拡大も見据える。そして、表彰式ではポディウムガールならぬ“ポディウムボーイ”による祝福という粋な演出も必見だ。

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ツール・ド・フランス2016 ツール2016・プレビュー

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