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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<164>ツール・ド・フランス前哨戦でキンタナらが好調アピール 不安の残る有力選手も

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 6月に入って各地で開催されたレースが終了。国内選手権の時期に入るため、残すところ2週間を切ったツール・ド・フランスに向けた準備は一段落といったところだ。前回お届けしたクリテリウム・ドゥ・ドーフィネに続き、注目選手が顔をそろえた“ツール前哨戦”の様子を結果と合わせてチェックしてみよう。

ツール・ド・フランス前哨戦の1つ、ルート・ドゥ・スッドで総合優勝。走りに手ごたえ十分のナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム) © Route du Sud - Henri Jeanツール・ド・フランス前哨戦の1つ、ルート・ドゥ・スッドで総合優勝。走りに手ごたえ十分のナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム) © Route du Sud - Henri Jean

キンタナが総合優勝 ルート・ドゥ・スッド

 フランス南部、ピレネー山脈近くの丘陵地を舞台に行われたルート・ドゥ・スッド(UCI2.1)は、6月16~19日の日程で行われた。UCI(国際自転車競技連合)ワールドツアーよりはレースカテゴリーこそ下がるものの、40回の歴史を持ち、地元フランスチームやツールを見据える実力者が集まるレースとして人気がある。

個人TTでステージ優勝したナイロアレクサンデル・キンタナ。タイムトライアルの走りが大きく改善された =ルート・ドゥ・スッド2016第3ステージ、2016年6月17日 © RDS Maxime Lafage個人TTでステージ優勝したナイロアレクサンデル・キンタナ。タイムトライアルの走りが大きく改善された =ルート・ドゥ・スッド2016第3ステージ、2016年6月17日 © RDS Maxime Lafage

 今回の総合優勝はナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)。2012年に続く4年ぶりの大会制覇となった。

 5月以降はコロンビアの自宅を拠点にトレーニングに励み、今大会が久々のレースだったキンタナ。第1ステージではスタート直後に6人の逃げグループに加わり、150km先行する驚きの走り。この逃げで自らの脚を試すと、第3ステージでは13.4kmの個人タイムトライアルで優勝。ピレネーの山々をめぐった第4ステージでは、チームメートのマルク・ソレル(スペイン)にステージ優勝を譲る余裕を見せ、他の選手たちとの格の違いを見せ付けた。

第1ステージでは150km逃げ続けたナイロアレクサンデル・キンタナ(右) =ルート・ドゥ・スッド2016第1ステージ、2016年6月16日 © RDS - Henri Jean第1ステージでは150km逃げ続けたナイロアレクサンデル・キンタナ(右) =ルート・ドゥ・スッド2016第1ステージ、2016年6月16日 © RDS - Henri Jean

 総合優勝に際し、「コロンビアでの長期間のトレーニングを経て、コンディションが整っていることを実感している」と述べたキンタナ。何より、タイムトライアルでの勝利は、長距離個人TTや山岳個人TTが待ち受けるツールに向けて、好材料となることは間違いない。キンタナ自身も「タイムトライアルがかなり改善されたことは確かだ」と手ごたえを感じている様子。来たるツール本番に向け、準備は万端のようだ。

 なお、スプリンターにも活躍の場が与えられるこのレース。ブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)が第1、第2ステージを、アルノー・デマール(フランス、エフデジ)が第5ステージを制し、こちらもツールのポイント賞ジャージであるマイヨヴェール争いに名乗りを挙げている。

ツール・ド・スイスは新鋭ロペスが総合初優勝

 6月11日から19日の日程で、全9ステージによって争われたUCIワールドツアーのツール・ド・スイスは、22歳のコロンビア人ライダー、ミゲルアンヘル・ロペス(アスタナ プロチーム)が初の総合優勝を果たした。

ツール・ド・スイス2016の総合上位3人。左から2位のヨン・イサギレ、優勝のミゲルアンヘル・ロペス、3位のワレン・バルギル =ツール・ド・スイス2016第9ステージ、2016年6月19日 Photo: Yuzuru SUNADAツール・ド・スイス2016の総合上位3人。左から2位のヨン・イサギレ、優勝のミゲルアンヘル・ロペス、3位のワレン・バルギル =ツール・ド・スイス2016第9ステージ、2016年6月19日 Photo: Yuzuru SUNADA

 今大会は、ステージを終えるごとに総合リーダージャージの行方が目まぐるしく変わる激戦に。たびたび悪天候に見舞われ、季節はずれの寒さにも選手たちが苦しめられるなど、過酷な条件下でのレースになった。

 そんななか、ロペスは第8ステージの個人TT(16.6km)で快走。ステージ優勝のヨン・イサギレ(スペイン、モビスター チーム)から18秒差の2位に入り、この日の勝利を狙って飛ばしたファビアン・カンチェッラーラ(スイス、トレック・セガフレード)を1秒上回ってみせた。ここでリーダージャージを手にすると、急遽コース短縮になった最終の第9ステージも総合でのライバルたちと一緒にフィニッシュ。ビッグチャンスを見事につかんだ。

 総合2位にはイサギレ、同3位には第7ステージ終了時に一度はリーダージャージに袖を通したワレン・バルギル(フランス、チーム ジャイアント・アルペシン)が入った。

ティージェイ・ヴァンガーデレンは第7ステージで勝利を挙げた =ツール・ド・スイス2016第7ステージ、2016年6月17日 Photo: Yuzuru SUNADAティージェイ・ヴァンガーデレンは第7ステージで勝利を挙げた =ツール・ド・スイス2016第7ステージ、2016年6月17日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ドーフィネと並ぶツール前哨戦として名高いこのレースには、ゲラント・トーマス(イギリス、チーム スカイ)、ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)、ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)といった、ツールでの活躍が期待される選手たちが参戦した。しかし、スイスで弾みをつけ、ツール本番へと臨むことを目論んでいたであろう彼らだが、いずれも厳しい“試走”となってしまった。

 雨の山岳デーとなった第6ステージで、3人そろって崩れてしまった。逃げグループを容認したプロトンだったが、終盤に入ってそれぞれメイン集団から脱落。この日5位となり、リーダージャージを手にしたウィルコ・ケルデルマン(オランダ、チーム ロットNL・ユンボ)から1分以上遅れ、総合争いから姿を消した。

苦しい走りとなったゲラント・トーマス。第9ステージでは大きく遅れ、グルペットでフィニッシュ =ツール・ド・スイス2016第9ステージ、2016年6月19日Photo: Yuzuru SUNADA苦しい走りとなったゲラント・トーマス。第9ステージでは大きく遅れ、グルペットでフィニッシュ =ツール・ド・スイス2016第9ステージ、2016年6月19日Photo: Yuzuru SUNADA

 翌日の第7ステージで終盤にアタックを成功させ、勝利を挙げたヴァンガーデレンは何とか名誉挽回。コスタも残りのステージをまとめたが、心配なのはトーマス。アシストが勝負どころまで牽引するお膳立てがあったものの、いずれも不発。第9ステージに至ってはグルペットでのフィニッシュとなってしまった。最終日にバッドデイが訪れてしまったとはいえ、大会を通じて本調子には程遠いことは明白で、実力や実績的にメンバー入りが濃厚なツールに向けて、これからどのように仕上げていくのかがポイントになる。

 なお、日本人選手として唯一参戦していた新城幸也(ランプレ・メリダ)は、総合83位で完走している。

ヴァンマルクがステルZLMツール総合優勝

 スプリンターを中心にスピードマンがツール前に集まるレースとして、近年注目度が高まっているステルZLMツール。今年は6月15~19日に行われ、セップ・ヴァンマルク(ベルギー、チーム ロットNL・ユンボ)が総合優勝を挙げた。

ステルZLMツール第4ステージを制したセップ・ヴァンマルクが総合でも優勝した =2016年6月18日 © Wouter RoosenboomステルZLMツール第4ステージを制したセップ・ヴァンマルクが総合でも優勝した =2016年6月18日 © Wouter Roosenboom

 ヴァンマルクは、細かなアップダウンが特徴的な第4ステージの終盤にアタック。上りを利用した攻撃でライバルを振り切ると、最後は現・シクロクロス世界王者のワウト・ヴァンアールト(ベルギー)とのマッチスプリントを制してステージ優勝。集団の追い上げを3秒差でかわし、リーダージャージも獲得。最終の第5ステージでもスプリントで3位フィニッシュし、ボーナスタイムを合わせて総合首位の座を確実なものとした。

 石畳系のクラシックスペシャリストとして鳴らすヴァンマルクにとって、ステージレースでの総合優勝はキャリア初。4年連続のツール出場がかかるが、クラシックシーズンの疲れは問題なさそうだ。

 この大会には、アンドレ・グライペル(ロット・ソウダル)、マルセル・キッテル(エティックス・クイックステップ)と、ツールでの活躍が見込まれるドイツ人スプリンターも参戦。こちらは調整段階のようで、ステージ優勝争いには絡めずに大会を終えている。

今週の爆走ライダー-ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 現在のプロトン一大勢力、コロンビア。次々と新たな才能がトップシーンを席巻するなかで、また1人、スター候補が現れた。ミゲルアンヘル・ロペス、プロ2年目の22歳。

一大勢力であるコロンビアから新たな才能として現れたミゲルアンヘル・ロペス =ツール・ド・スイス2016、2016年6月19日 Photo: Yuzuru SUNADA一大勢力であるコロンビアから新たな才能として現れたミゲルアンヘル・ロペス =ツール・ド・スイス2016、2016年6月19日 Photo: Yuzuru SUNADA

 その素質は早くから認められていた。2014年にはヤングライダーの登竜門、ツール・ド・ラヴニールで総合優勝。すぐに現チームが獲得に動き、契約に至った。プロ1年目の昨年は、チームが育成の年と位置づけレース数を制限。ツール・ド・スイスでは見せ場を作り、総合でも7位となったが、首脳陣はあえてグランツールに出場させなかった。

ツール・ド・スイスでメジャーレース初制覇したミゲルアンヘル・ロペス。今年はリオ五輪とブエルタ・ア・エスパーニャをターゲットにする =ツール・ド・スイス2016第9ステージ、2016年6月19日 Photo: Yuzuru SUNADAツール・ド・スイスでメジャーレース初制覇したミゲルアンヘル・ロペス。今年はリオ五輪とブエルタ・ア・エスパーニャをターゲットにする =ツール・ド・スイス2016第9ステージ、2016年6月19日 Photo: Yuzuru SUNADA

 今シーズンは序盤こそ好調だったが、春は静かに過ごした。そして、ここへきてエンジン全開。ツールを見据える有力選手たちでさえ苦しんだツール・ド・スイスを見事に攻略した。悪天候をも苦としない強さは、まさにグランツール向きだ。

 だが、チームも、そして本人も焦りはない。実力だけならスタートラインに立っても不思議ではないはずのツールだが、今年は回避することを決めている。リオデジャネイロ五輪の同国代表に抜擢され、その後に控えるブエルタ・ア・エスパーニャでグランツールデビューとなる予定だ。

 そしてこのほど、チームと2年の契約延長に合意。よりレースに集中できる環境を手にした。「チームとの契約延長は、成長を続けていきたいからこその判断だ」、一切の迷いがなかった。

 究極の目標は、3つのグランツールすべてで総合優勝すること。野心は十分だ。ひと夏越えた先にある五輪とブエルタは、今後長く続くであろう快進撃の序章となるはずだ。

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、 自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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