ヨーロッパ“自転車王国”をゆく<1>縦横無尽のサイクリングコースを堪能 ベルギーの町並み、ビール、グラベルロード

by 山口和幸 / Kazuyuki YAMAGUCHI
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 ベルギーは自転車競技史上最強の選手と言われるエディ・メルクスを輩出した自転車大国だ。ツール・ド・フランスでベルギー出身選手が総合優勝した回数は、フランスの36勝に続く18勝(3位はスペインの12勝)。そんな国の自転車事情を知るためにベルギーを走っている。現地から生情報をレポートする。

ベルギー・フランダース地方の西部、ダムとブルージュを結ぶ運河沿いのサイクリングコースを気持ちよく走る Photo: Kazuyuki YAMAGUCHIベルギー・フランダース地方の西部、ダムとブルージュを結ぶ運河沿いのサイクリングコースを気持ちよく走る Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI

「花の町」から「芸術家の村」へ

KLMオランダ航空を利用してベルギーとオランダを楽しんだ (KLMオランダ航空提供)KLMオランダ航空を利用してベルギーとオランダを楽しんだ (KLMオランダ航空提供)

 今回はKLMオランダ航空を利用してベルギーとオランダの観光地を合計5日間サイクリングしようという旅だ。各地で乗る自転車は現地のレンタサイクルで、その町のサイクリストに案内してもらう。この原稿を書いているのは3日目の朝で、きょうは午前中にベルギー、午後にはオランダに移動して1日で2カ国を走っちゃおうという計画だ。

 サイクリング紀行初日。春には激坂上りが波状的に待ち構える過酷なワンデーレース「ヘント~ウェヴェルヘム」が開催されるヘントがこのサイクリング紀行の始まりとなった。現代と中世が美しく調和した通称「花の町」だ。

 ここから10kmほど行ったところに、ヨーロッパの美しい村30選に選ばれたシントマルテンスラーテムというところがある。20世紀初頭に多くの芸術家が移り住んだ村で、画家たちの住居がそのままギャラリーとして残っているエリアを自転車でめぐってみた。

芸術家たちが愛したシントマルテンスラーテム村を訪れる Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI芸術家たちが愛したシントマルテンスラーテム村を訪れる Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI
交通量の多い道路の脇には必ずサイクリングコースが設置されている Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI交通量の多い道路の脇には必ずサイクリングコースが設置されている Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI
シントマルテンスラーテムで。よく整備されたレンタル自転車は快適 Photo: Kazuyuki YAMAGUCHIシントマルテンスラーテムで。よく整備されたレンタル自転車は快適 Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI

 ヘント周辺をカバーするサイクリングマップを入手すると、縦横無尽にコースがはりめぐらされているのが分かる。コースに番号がふってあり、実際に走ってみると交差点などの脇に案内看板が設置されているので、地図を見ながら目的地を目指すのだ。

ゲント周辺のサイクリングマップはホテルなどで数ユーロで購入できる Photo: Kazuyuki YAMAGUCHIゲント周辺のサイクリングマップはホテルなどで数ユーロで購入できる Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI
途中にはサイクリングコースを案内する看板が設置されている Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI途中にはサイクリングコースを案内する看板が設置されている Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI

 曲がりくねったレイエ川沿いに目的を持たずにサイクリングするのもいいが、「レイエ川の真珠」と呼ばれるオーイドンク城などを目的地として地図を見ながら走るのも楽しい。

振動吸収する植物繊維

リネンがとれるフラックスという植物はカーボンバイクの原料にもなっている Photo: Kazuyuki YAMAGUCHIリネンがとれるフラックスという植物はカーボンバイクの原料にもなっている Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI

 この日はさらに40kmほど南西に移動し、フランス国境にも近いコルトレイクへ。チームユーラシアを結成し、日本の若手自転車選手の育成を担う橋川健が現役時代から拠点とする町だ。そのため自転車競技が盛んで、今回訪れたときも駅前の駐車場にベルギーのプロチームの関係車両が駐まっていたほど。

 このあたりはリネン(亜麻)の生産が盛んで、その博物館をちょっとのぞいてみたら、場違いにもベルギー製のカーボンロードバイク「ミュゼウ」が展示してあったのでちょっと驚いた。話を聞いてみると、振動吸収性能が求められるシートステーやチェーンステー、フロントフォークの一部にリネン原料となる植物繊維を使っているのだという。

ビールの原料となるホップ。9月に収穫を迎えるそうだ Photo: Kazuyuki YAMAGUCHIビールの原料となるホップ。9月に収穫を迎えるそうだ Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI

 こうしてサイクリングしたあとはベルギーの最も南西部にあるポッペリンゲという農村地帯でホップ作りを見にいった。いわゆるビールの原料で、9月に収穫してベルギーのいたるところで製造されるビールのうまみになるのである。そんなわけでサイクリングのあとはビールだ。北海でとれる小エビやホワイトアスパラガスなどをつまみにさまざまな味わいのあるベルギービールを飲む。これがベルギーサイクリングの醍醐味である。

レンタルサイクルで砂利道を楽しむ

ブルージュの市場の脇を通行する市民。自転車は移動手段として愛されている Photo: Kazuyuki YAMAGUCHIブルージュの市場の脇を通行する市民。自転車は移動手段として愛されている Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI

 ベルギー滞在2日目にはもう少し本格的な郊外型サイクリングへ。「屋根のない美術館」とも言われるブルージュでレンタルサイクルを借りて、運河沿いに7kmほど離れたダムという小さな村を目指した。運河沿いの舗装路はロードレーサーにも快適で、ベルギーのアマチュアレーサーたちは電車で30分ほどかかるヘントまで走っていくことも多いという。

 まずは大ぶりな石畳が敷き詰められた旧市街を抜けて、運河の跳ね橋が上がらないタイミングを見計らって郊外へ。しっかりと踏み固められたダート路を走る。いわゆるグラベルロードというもので、細身のロード用タイヤではちょっと安定走行できないが、太いタイヤをはいたアップライトなレンタルサイクルなので砂利道を走る楽しさが倍増する。もちろんルートを選べばロードバイクでも疾駆できる。

海が近いブルージュ近郊には風車が点在する Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI海が近いブルージュ近郊には風車が点在する Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI
ダムの中心にある古い尖塔に登って村の全容を俯瞰する Photo: Kazuyuki YAMAGUCHIダムの中心にある古い尖塔に登って村の全容を俯瞰する Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI

 ダムは函館の五稜郭のように星型の堀で囲まれた町の作りをしている。その中心部にある塔に登ってそんな町並みをながめるのも目的のひとつだった。帰路に着く前に、広場に面したカフェで炭酸入りのアイスティーを頼んでノドをうるおす。そして運河のはるか彼方に見えるブルージュの教会を目指して出発。並木が延々と続くので夏でも直射日光を受けないのがいい。

 次回は、もうひとつの自転車王国、オランダのサイクリング事情を紹介したい。

<2>自転車にやさしいオランダのまちづくり

山口和幸山口和幸(やまぐち・かずゆき)

ツール・ド・フランスをはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い続け、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、ナンバー、ターザン、YAHOO!などで執筆。国内で行われる自転車の国際大会では広報を担当。著書に「ツール・ド・フランス」(講談社現代新書)、「もっと知りたいツール・ド・フランス」(八重洲出版)など。

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