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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<162>ツール・ド・フランス前哨戦が“開幕” 本番に向けて押さえておくべきポイントは?

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 6月に入り、サイクルロードレースの2016年シーズンも中盤戦へ。ジロ・デ・イタリアが終わり、1カ月後にはツール・ド・フランスが始まります。この時期のレースシーンは、ツールに向けた有力選手たちの最終調整と、メンバー入り当落線上にいる選手たちが出場を賭けた熱い走りがクローズアップされる。そこで、今回は6月5日に開幕したクリテリウム・ドゥ・ドーフィネから本格化した“ツール前哨戦”の見方に触れてみる。きっと、ツール本番への予習が一段とはかどることだろう。

ツール・ド・フランス前哨戦、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネで好調な走りを見せるアルベルト・コンタドール =クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第1ステージ、2016年6月6日 Photo: Yuzuru SUNADAツール・ド・フランス前哨戦、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネで好調な走りを見せるアルベルト・コンタドール =クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第1ステージ、2016年6月6日 Photo: Yuzuru SUNADA

有力選手たちの“前哨戦”レース選び

 まず、ツールをターゲットとする有力選手たちがこの時期、どのレースをチョイスしているかいま一度押さえておきたい。

コンタドール同様、ドーフィネに参戦するクリストファー・フルーム =クリテリウム・ドゥ・ドーフィネプロローグ、2016年6月5日 Photo: Yuzuru SUNADAコンタドール同様、ドーフィネに参戦するクリストファー・フルーム =クリテリウム・ドゥ・ドーフィネプロローグ、2016年6月5日 Photo: Yuzuru SUNADA

 第2ステージまでを終えたクリテリウム・ドゥ・ドーフィネは、現在総合首位のマイヨジョーヌを着るアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)を筆頭に、2連覇がかかるクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)、ファビオ・アール(イタリア、アスタナ プロチーム)が参戦。先のジロを制したヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ プロチーム)に代わり、アールが加わり“新・ファンタスティック4”と呼ばれるオールラウンダーの頂点に君臨する4人のうち3人が“ミニ・ツール”を走っている。

7年ぶりのツール出場を視野に入れる別府史之もドーフィネに臨む =クリテリウム・ドゥ・ドーフィネプロローグ、2016年6月5日 Photo: Yuzuru SUNADA7年ぶりのツール出場を視野に入れる別府史之もドーフィネに臨む =クリテリウム・ドゥ・ドーフィネプロローグ、2016年6月5日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ツールではその4人の牙城を崩そうと意気込むリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシングチーム)、バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)、ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアル)、ティボ・ピノー(フランス、エフデジ)らも出場中。スプリンターでは、ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス ソリュシオンクレディ)が第1ステージを勝利したほか、アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、チーム カチューシャ)、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)も元気な姿を見せている。また、7年ぶりのツール出場を視野に入れる別府史之(トレック・セガフレード)も順調にステージを進行中だ。

 ドーフィネと並び、UCIワールドツアーのレースとしてツールへの確かな道筋となっているのが6月11~19日の日程で行われるツール・ド・スイス。5日に閉幕したツアー・オブ・ジャパンで、けがからの全快をアピールした新城幸也(ランプレ・メリダ)の出場が大きなトピック。ティージェイ・ヴァンガードレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)、ゲラント・トーマス(イギリス、チーム スカイ)、ロベルト・ヘーシンク(オランダ、チーム ロットNL・ユンボ)、ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)、ワレン・バルギル(フランス、チーム ジャイアント・アルペシン)といった総合系ライダーに加え、世界王者のペテル・サガン(スロバキア、ティンコフ)もスタートラインにつく見通しだ。

ファビアン・カンチェッラーラはツール・ド・スイスに参戦の見通し。キャリア最後の地元レースになる可能性が高い =ジロ・デ・イタリア2016第2ステージ、2016年5月7日 Photo: Yuzuru SUNADAファビアン・カンチェッラーラはツール・ド・スイスに参戦の見通し。キャリア最後の地元レースになる可能性が高い =ジロ・デ・イタリア2016第2ステージ、2016年5月7日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ファビアン・カンチェッラーラ(スイス、トレック・セガフレード)は、今シーズン限りでの引退を表明しており、ツール・ド・スイスが地元で走る最終レースになる可能性が高い。

 主な舞台となるスイスアルプスの急峻さは、ドーフィネ以上との呼び声が高く、例年総合優勝争いが激化する。今年はオーストリアへの入国もあり、よりバリエーションに富んだステージ構成となっている。

 スプリンターに人気なのが、オランダで開催されるステルZLMツール(UCI2.1)。6月15~19日に行われ、アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)、マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)が参戦予定。6月16~19日のルート・ドゥ・スッド(UCI2.1)は、ピレネー山脈やフランス南部がコースとなるステージレース。こちらには、“新・ファンタスティック4”の一角、ナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)が出場意思を示している。

ツールに向けて参考にしたいポイント

 ツール開幕まで1カ月を切ったこの時期ともなれば、出場するか否かも含め、有力選手たちの動向が大方見えてくる。それでも、ただただ誰が出場するのかだけを押さえておくのではなく、彼らがどのような戦い方を頭に描いているかを想定すると、さらに観戦の楽しみが増すはずだ。

ツール前哨戦における各チームの戦い方は、本番での走りに直結してくる =クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第1ステージ、2016年6月6日 Photo: Yuzuru SUNADAツール前哨戦における各チームの戦い方は、本番での走りに直結してくる =クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第1ステージ、2016年6月6日 Photo: Yuzuru SUNADA

 レースを見ていて、真っ先に分かるのが調子の良し悪し。ここ数年はドーフィネで総合優勝した選手がツールも制するなど、6月の段階で調整が進んでいないとツール本番でトップを狙うのは厳しいことが実証されている。今の時期に調子のピークが来てしまってはいけないが、ある程度戦える状態であることが求められる。ドーフィネやスイスでは、総合優勝までいかずとも、総合上位に入る選手たちはツールでの活躍も見込まれる。

 一方、スプリントはレース最終盤での主導権争いや流れが大きく左右するが、それでも勝負に絡んでいることが条件となってくる。

 有力選手が好結果を残すために重要なのが、アシストの存在。近年は、次のシーズンに向けてチームを構築する段階にある11月や12月の時点で、首脳陣やエースクラスの選手がアシスト数人を指名し、そのままターゲットレースに向かうことを前提にシーズンインしていることも多い。そこで、ツール前哨戦といわれるレースにおいては、エースを支えるアシストが誰なのか、そして信頼関係が強固なものになっているかもチェックしたい。

 例えば、現在ドーフィネ参戦中のフルームであれば、セルヒオルイス・エナオ(コロンビア)やヴァウテル・プールス(オランダ)は山岳アシストとして欠かせない存在。コンタドールも、ここ数年はロマン・クロイツィゲル(チェコ)が山岳を、ミケル・ヴァルグレンアナスン(デンマーク)が平坦や横風分断を狙う際のペース切り替え役を担っている。「この選手にはあの選手」といった具合に、選手間の関係性を見ておくことも重要なファクターとなる。

平坦ステージにおける終盤の主導権争いが激化。スプリンターチームと総合系チームが入り乱れるケースが増えている =ツアー・オブ・カタール2016第2ステージ、2016年2月9日 Photo: Yuzuru SUNADA平坦ステージにおける終盤の主導権争いが激化。スプリンターチームと総合系チームが入り乱れるケースが増えている =ツアー・オブ・カタール2016第2ステージ、2016年2月9日 Photo: Yuzuru SUNADA

 最近のステージレースでは、平坦ステージにおけるレース終盤の主導権争いが激しさを増し、「車上の格闘技」化している。数年前まではスプリント勝利を狙うチームがトレインを成して集団の前方キープを図っていたが、このところはスプリンターチームのみならず、総合系ライダーを擁するチームまでもが集団のポジション争いに参戦。レーススピードの上昇や、より戦略的な展開であることなどが相まって、集団内での大きな落車が増加。そうしたトラブルからエースを守るため、多少の消耗は覚悟のうえで理想的な位置取りを探る。

 ツール前哨戦の数レースでは、どのチームのトレインが強力であるかもチェックしておきたい。アクシデントを未然に防ぐ意味で、エースがどのような動きを望んでいるかや、チームの指示がいかなるものなのかといったスタンスが垣間見えるはず。同時に、誰が牽引役となり、誰がエースを守る役割を担っているのかなどは、ツールで同様のシチュエーションとなった際の参考になるだろう。

 以上はあくまでも一例であり、もっと“コア”なチェック方法があるかもしれない。みなさんなりの見方で、ツールまでの日々を過ごしていただきたい。

今週の爆走ライダー-マイケル・ヘップバーン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 オランダとイタリアを3週間かけてめぐったヘップバーンは疲れていた。3年連続のジロ・デ・イタリア完走。グランツールの走りは心得ているつもりだが、今回はこれまで以上に与えられた仕事が多かった。

ジロではアシストとしてチームに尽くしたマイケル・ヘップバーン =ジロ・デ・イタリア2016第15ステージ、2016年5月22日 Photo: Yuzuru SUNADAジロではアシストとしてチームに尽くしたマイケル・ヘップバーン =ジロ・デ・イタリア2016第15ステージ、2016年5月22日 Photo: Yuzuru SUNADA

 大会前半はカレブ・イーウェン(オーストラリア)のためにスプリントトレインを牽引、大会後半はヨアンエステバン・チャベス(コロンビア)のためにレースを組み立てる役割を果たした。特に、チャベスはマリアローザを着用するなど、総合優勝に近づいた。自身の走りについて昨年までとの違いを問われると、「集中して日々の仕事をこなす必要があったこと」と答えた。体はもとより、頭と心も疲労するほど神経をすり減らす毎日を送った。

リオ五輪ではトラック・チームパシュートの優勝候補筆頭としてリオ五輪に臨むヘップバーン(左)。ライバルはブラッドリー・ウィギンス(右)擁するイギリスだ =UCIトラック世界選手権、2016年3月3日 Photo: Yuzuru SUNADAリオ五輪ではトラック・チームパシュートの優勝候補筆頭としてリオ五輪に臨むヘップバーン(左)。ライバルはブラッドリー・ウィギンス(右)擁するイギリスだ =UCIトラック世界選手権、2016年3月3日 Photo: Yuzuru SUNADA

 だが、この経験が自信となったのも確か。ジロを終えて、視線の先にはリオデジャネイロ五輪がある。トラック・チームパシュートのオーストラリア代表として、金メダルを目指す。前回のロンドン五輪では銀メダル。今年のトラック世界選手権を制しており、優勝候補筆頭としてリオに乗り込む。

 「6時間前後走るロードレースと、4分足らずで終わるチームパシュートとでは大きな違いがある。必要とされるパワーがまったく違うんだ。ただ、ジロは五輪までの残された時間に大いに役立つはずだ」。しばしの休養を経て、アメリカ・アリゾナ州での代表チームのトレーニングキャンプでトラックに向けた体作りに着手する。

 トラック世界選手権で個人・チームそれぞれのパシュート種目で計6つのマイヨアルカンシエルを獲得してきた“パシューター”。ジロから五輪までの流れが完璧だったことを示すために必要なのは、金メダルだけ。苦しみぬいた3週間は、リオがフィニッシュとなるゴールデンロードの通過点にしか過ぎないことは、ヘップバーン自身が最も理解している。

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、 自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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