生涯サイクリストの秘訣82歳で「サイクリングとは1日30kmを週3回」ジャイアント劉会長インタビュー

by 澤野健太 / Kenta SAWANO
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 世界的バイクブランド「GIANT」(ジャイアント)創業者のキング・リュウこと劉金標会長(82歳)が、5月19日、琵琶湖サイクリングと日本台湾学会での講演のために来日した。2012年、2014年にしまなみ海道をサイクリングして以来、日本で2カ所目のサイクリングとなった。大阪のジャイアントストア大阪や3月にオープンした「ジャイアントストアびわ湖守山」を視察し、20日には滋賀県内で琵琶湖サイクリングを体験するなど忙しい日程の中、Cyclistのインタビューに応じ、日本語で自転車の楽しさをシンプルに伝えてくれた。

琵琶湖畔をしっかりした足取りでバイクを押して歩く劉金標会長 Photo: Kenta SAWANO琵琶湖畔をしっかりした足取りでバイクを押して歩く劉金標会長 Photo: Kenta SAWANO

 劉会長はこの日、台湾から大阪経由で琵琶湖に到着したばかりだった。82歳、世界的バイクブランドの創業者だが、偉ぶった雰囲気は全くない。経営者だが、現在は自転車を売ることより、サイクリングを通して人々の健康を祈っている。おだやかな琵琶湖のようにゆっくりと、懐かしい感じのする日本語で丁寧に話しはじめた。

自転車はものすごく面白い

 ――劉会長は73歳と80歳の時に、台湾一周の環島(ファンダオ・約930km)を走破していますが、82歳の今の自転車とのつきあい方はいかがですか

劉会長:ものすごく面白いです。有酸素運動で、体も心も軽くなって、自律神経も発達しています。

 ――ジャイアントは自転車を売るだけでなく、「ジャイアントストアびわ湖守山」のように店長が乗り方を教えてくれたり、自転車の楽しみ方も教えてくれているが

劉会長:うちはグローバル経営ですから、もちろん最初は台湾のマーケットから始めて時間がかかりました。20年以上続けてサイクリングの新文化を推進しながら経営してきたので、トレンドに関しては一番詳しい。

Cyclist編集部のインタビューに熱心に応じる劉金標会長 Photo: Rokuro INOUECyclist編集部のインタビューに熱心に応じる劉金標会長 Photo: Rokuro INOUE

 ――劉会長にとって、自転車の楽しいところは何ですか

劉会長:自転車の面白いところは、自分の足で踏み出して、車輪を動かしながら風景がどんどん変わってくるところ。向かい風で頑張って走って汗も流れるが、汗はすぐに乾いてしまう。それが一番気持ちいい。

昔はわかってもらえなかった

 ――劉会長が実際に熱心なサイクリストだからその楽しさが伝わってジャイアントの人気につながっている

劉会長:いや、そういうことは乗っていない人にいくら説明してもわからない。最初はいっときはものすごく寂しかった。最初のうちは自転車の楽しさ、サイクリングの楽しさをいくら説明してもわかってもらえなかった。「僕はあなたのような考え方を理解するのが難しい」と言われ、いっときは寂しかった。

「ジャイアントストアびわ湖守山」店内を視察する劉金標会長 Photo: Kenta SAWANO「ジャイアントストアびわ湖守山」店内を視察する劉金標会長 Photo: Kenta SAWANO

 ところが時間をかけて、私は伝道師のように、みんなに(自転車の楽しさを)伝えていきました。ある人に自転車乗っていますか?と聞いたら「ええ月に1回くらい」と返ってきました。それはサイクリングとはいえません。週に3回。1回30km。これが私の標準。こういうレベルまでくると、サイクリングの楽しさがよくわかる。今もそれくらい乗っています。

 ――現在82歳、若い時の自転車の付き合い方とはどんなところが違いますか

劉会長:年もとっているんだけど、体力もあるもんじゃない。しかしサイクリングは面白い。自分の足を自分のペースで動かすことで、自分の体力がどれくらいあるかがわかります。

5月20日、琵琶湖沿いにサイクリングする劉金標会長(右)。左は滋賀県の三日月大造知事 Photo: Kenta SAWANO5月20日、琵琶湖沿いにサイクリングする劉金標会長(右)。左は滋賀県の三日月大造知事 Photo: Kenta SAWANO

 無理もしない、競技もしない。向かい風では経営のこと、仕事のマネタイズ、複雑な問題について、あれやこれや(アイデアが)出てくる。面白いことです。

 ――乗りながら仕事のことを考えているのですか? 多くの人は仕事を忘れるためにもサイクリングしますが

劉会長:自転車に乗りながらビジネスのことはもちろん考える。乗っている間に自律神経、それから有酸素運動で、脳神経が発達するので、よくアイディアが出てくる。一般的に、自転車に乗りながらビジネスのことを考えるのは危険じゃないかという人もいます。でも、それは当たり前に注意したうえでのことです。

劉金標会長が琵琶湖サイクリングで乗ったジャイアントのロードバイク Photo: Kenta SAWANO劉金標会長が琵琶湖サイクリングで乗ったジャイアントのロードバイク Photo: Kenta SAWANO
琵琶湖サイクリングの前夜に行われたパーティーで話す劉金標会長 Photo: Kenta SAWANO琵琶湖サイクリングの前夜に行われたパーティーで話す劉金標会長 Photo: Kenta SAWANO

 最後に劉会長から逆に質問された。

劉会長:あなたは1週間にどれくらい自転車に乗っていますか。

 「週末に1~2回ロングライドを合計100~200kmです。レースはあまりやりません」と答えた。

劉会長:それくらいで十分です。ロングライドが人気なのは世界的なトレンドです。交通手段でなくサイクリング。スポーツとしてレジャーの一部として。これからますます広がっていきます。

◇      ◇

 自転車を世界中で販売してきた劉会長の頭の中は、自転車環境の整備でいっぱいなのかもしれない。最後に劉会長から「一緒にサイクリング文化を広めるのを手伝ってください」と、まっすぐに目を見て告げられ、筆者も改めてその責任を感じた。

 「KING」と呼ばれながら、パーティーで多くの人に囲まれている最中に筆者の所まで来て「昼間に渡すことできずにすみません」と名刺を改めて渡しに来てくれるなど、細かい気遣いを忘れない人だった。

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