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体脂肪のエネルギーをミカタにつけろ!<1>過酷なロードレースを支えるエネルギー戦略

by 松尾修作 / Shusaku MATSUO
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 サイクルロードレースでは、選手の体力はもちろん、知力やチームの総合力が試される。選手の思惑や意地、チームの戦略が複雑にからみ合い、ゴールへと突き進む。6月5日に閉幕した日本最大のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン(TOJ)」でも、数々の壮絶なドラマが繰り広げられた。8日間にわたる過酷なレースを戦ううえで、選手の運動効率を最大限に高めるエネルギー戦略は欠かせない。TOJに参戦した国内トッププロチーム「ブリヂストンアンカー サイクリングチーム」は今シーズンも明治とタッグを組み、運動時の体脂肪燃焼に着目した「VAAM」を武器に、厳しく長いレースを戦い抜いた。

17%を超える“激坂”をドロップハンドルにしがみついて上る内間康平(ブリヂストンアンカー サイクリングチーム) Photo: Shusaku MATSUO17%を超える“激坂”をドロップハンドルにしがみついて上る内間康平(ブリヂストンアンカー サイクリングチーム) Photo: Shusaku MATSUO

戦線に立ち続ける

TOJいなべステージで、集団前方へあがろうとするブリヂストンアンカー サイクリングチーム Photo: Shusaku MATSUOTOJいなべステージで、集団前方へあがろうとするブリヂストンアンカー サイクリングチーム Photo: Shusaku MATSUO

 5月末から8日間にわたって戦いが繰り広げられたTOJは、日本最大の国際的なステージレースだ。国内外の16チーム、総勢約100人に上る選手らは、第1ステージの大阪に集結。レースを戦いながら1日ごとに移動し、京都、岐阜、三重、長野、静岡、最終地東京と、1日の休みもなく全8ステージ計747.5kmを駆け抜けた。

 参戦チームはそれぞれ、6人の選手で構成される。6人はチームの戦略に沿って動き、上位を狙う。選手を待ち構えるのは、斜度23%を超える険しい坂“激坂”や、高度なブレーキングテクニックを要するコーナーなど厳しいコース。1日で最長139kmにも及ぶコースを走り抜け、ボロボロになってゴールに飛び込む。

 時には落車をし、骨折や激しい傷を負うことがある。だが、1日でもリタイアすれば、次の日以降スタートラインには立てない。そうなれば、チームは欠員を抱え、不利な集団戦を強いられる。

 そんな過酷なステージをこなす選手には、エネルギー面でのサポートも欠かせない。コースで十分なパフォーマンスを発揮し、ゴール後は翌日に備え、ただちにリカバーする必要がある。これを実現するため、トレーニングから実戦まで、明確なエネルギー戦略を貫くチームがあった。

走り出す前でも普段どおりの食事を

 「ここ数年間で『ハンガーノック』になった記憶はないですね」。TOJ開幕を間近に控えた5月下旬、ブリヂストンアンカーの井上和郎は、穏やかな口調で言い切った。

「美味しくて、つい手にとってしまう」とレース1時間前にドリンクタイプの「スーパーヴァーム」を飲む井上和郎 Photo: Shusaku MATSUO「美味しくて、つい手にとってしまう」とレース1時間前にドリンクタイプの「スーパーヴァーム」を飲む井上和郎 Photo: Shusaku MATSUO

 ハンガーノックとは、長時間の激しい運動でカラダのエネルギーが枯渇し、低血糖で力が入らなくなる状態。いわば“ガス欠”で、運動能力はもちろん、判断能力まで極端に低下してしまう。これを恐れ、食事を必要以上に摂る選手も少なくない。かつては井上もそうだったという。

「通常の量の食事で十分。腹持ちが良くなった」と感想を述べた  Photo: Seishiro TAKI「通常の量の食事で十分。腹持ちが良くなった」と感想を述べた  Photo: Seishiro TAKI

 「VAAMを飲むことでご飯を食べすぎなくなった。長時間の競技にも安心して打ち込めます」。数年前からチームのエネルギー戦略に加わった「体脂肪のエネルギー活用」。体内の膨大なエネルギー源である体脂肪を活用する考え方に、井上は特に積極的だ。

 VAAMは既に知っている方も多いが、スズメバチが長時間飛行できるスタミナに着目し、独自組成した17種類のアミノ酸混合物だ。運動時の体脂肪燃焼に着目したアミノ酸として20年以上も長くスポーツ界で愛されている。

 「レースやトレーニング前の食事は非常に重要ですが、一方でエネルギーのことを考え食べすぎると胃に負担がかかり、本来のパフォーマンスを発揮できなくなる。摂取する糖類からのエネルギーだけでなく、自らが持つ体脂肪のエネルギーを運動に活用することができると、大量に食べなくてもいいという安心感につながります」

 レース期間中であっても、朝食、夕食とも、特にたくさん食べるようなことはしない。それでも「腹持ちがいい感じがする」のだと井上はいう。

極めて優秀なエネルギー源

 私たちが運動で使うエネルギー源には、主に食べ物から摂取する糖質とカラダに蓄えた体脂肪がある。糖質は運動開始後すぐにエネルギーとして使われるが、体脂肪が積極的に使われるのには20分から30分かかるという。

TOJ開幕へ向け、山岳コースでトレーニングを積んだ  Photo: Seishiro TAKITOJ開幕へ向け、山岳コースでトレーニングを積んだ  Photo: Seishiro TAKI
トレーニング中の水分補給も重要となる Photo: Seishiro TAKIトレーニング中の水分補給も重要となる Photo: Seishiro TAKI

 糖質の熱量は1gあたり4kcalで、カラダに蓄えられる量は一般男性で約2000kcal(体重70kg、体脂肪率16%の場合)。これに対し、体脂肪は1gあたり7kcalで貯蓄量は8万kcal(同)と圧倒的だ。

 レース序盤から莫大なエネルギーを溜め込む体脂肪を活用できれば、食事などで得た糖質の浪費を抑え、終盤に温存することにもつながり、最後の最後で勝負をかけるチカラにつながると考えられるのだ。

風が戦況を左右する

TOJ初戦、堺ステージのTTを出走する井上 Photo: Shusaku MATSUOTOJ初戦、堺ステージのTTを出走する井上 Photo: Shusaku MATSUO

 TOJが開幕し、改めてチームを取材した。

 早朝、スタート準備を整えた選手らは、想像以上にリラックスした様子だ。チームの補給食の箱からそれぞれスーパーヴァーム1本を取り出し、ぐいっと飲みほした。チームの集団戦の成否は、選手一人ひとりにかかっている。全員が与えられた役割を果たすため、最高のパフォーマンスを求められる。

 サイクルロードレースのプロチームは、最も勝機がある選手を「エース」に立て、その他の選手が「アシスト」として動く。しかし、エースさえ強ければ勝てるわけではない。アシストが的確なサポートでエースを押し上げるチームの総合力抜きに、勝ち目はない。

 サッカーに例えると、エースストライカーにどれほど決定力があっても、ディフェンスやキーパーが頼りなければチームが勝てないのと似ている。

南信州ステージで、単独で逃げた内間康平 Photo: Kenta SAWANO南信州ステージで、単独で逃げた内間康平 Photo: Kenta SAWANO

 レースの展開を左右する大きな要素として“風”がある。平地では時速50km/hを超えて走ることもある。風や空気は壁のように立ちはだかり、選手の体力を削る。そこで、選手らは他の選手の後ろを走って風の抵抗を最小限にする。さらに、先頭で受ける風を交代して分担することで集団全体の体力消耗を抑え、平均速度を上げる。これが「ローテーション」だ。そうして大切に送り届けたエースに、最後の勝負を託す。

 ローテーションはチームメイトと行うだけではない。他チームと逃げきりたい際には協調し、一緒にゴールを目指す場合もある。全選手と争うより、少人数で逃げたほうが勝率が高くなるからだ。選手は常に勝率を考え、無駄を省き、効率を求めて走る。

サドルの上で補給する

 アシスト役の選手にとって、エースのために補給食を運ぶことも大事な仕事だ。コース上に設定された補給ポイントでは、他の選手や補給要員と接触し落車する恐れがある。後方を追いかけるチームカーから受け取るには、余計な体力を使う。そこで、アシストが代わりに補給食を受け取り、前方のエースへ渡す。

テーブルに並んだブリヂストンアンカー サイクリングチームがTOJで消費するスーパーヴァームや補給食  Photo: Seishiro TAKIテーブルに並んだブリヂストンアンカー サイクリングチームがTOJで消費するスーパーヴァームや補給食  Photo: Seishiro TAKI

 TOJ開幕に先立ち、ブリヂストンアンカーの6選手が全8日間のレース期間中に実際に使用するサプリメント(栄養補助食品)などを見せてもらった。5つの箱に詰められた製品を並べると、テーブルからあふれんばかりの分量と種類だ。井上も「こんなにたくさん…」と驚かされたようだ。

 豊富な種類には理由がある。サプリメントにはいずれも摂るべきタイミングや狙いがあり、例えばVAAMはレースの30分前に飲むことがポイント。レース中には高いエネルギーとミネラルが手軽に摂れる「ザバス ピットインエネルギージェル」や「ピットインゼリーバー」などを用意。レース後は酷使したカラダに必要な糖質とたんぱく質を補給できる「リカバリーメーカーゼリー」や、持久系種目のリカバリーに好まれる大豆たんぱくと糖質がミックスされた「ザバスタイプ3エンデュランス」、素早くリカバリースイッチを入れる「パワーアミノ2500」―といった具合だ。

 こうしたサプリメントなどを用意するのは、チームのマッサーの安見正行さん。選手の体調や味の好みにも気を配り、レース中は補給所を通過する選手に手渡しで補給を行う。

 毎年デザインを更新するというボトルを手に、「今年は滑り止めのザラザラを追加しました。選手が受け取った時に落とさないように」と、ちょっぴり得意げに微笑む。また、「補給ポイントでは大勢の補給要員の中から自分を見つけてもらえるよう、ボトルを頭上で振って選手へ合図します」と、工夫を教えてくれた。

チームのマッサー、安見正行さん(左)と“ご自慢の”ボトルを手に語る井上和郎 Photo: Seishiro TAKIチームのマッサー、安見正行さん(左)と“ご自慢の”ボトルを手に語る井上和郎 Photo: Seishiro TAKI

 選手が飲むドリンクを作ることも安見さんの役目。顆粒タイプのスーパーヴァーム1本をボトルに入れ、選手へ渡しているという。「選手はレース前は冷えたドリンクタイプのスーパーヴァームをよく飲みます。美味しいんですよ」と、くったくない。井上は「1時間に1本のボトルを消費するように心がけています。水分補給だけでなく、後半のスタミナにもつなげるイメージです」と、長丁場のサイクルロードレースで必要な戦略を語った。

レーススタート前にまとめられた補給食。選手は好みに合わせて自ら選ぶ Photo: Shusaku MATSUOレーススタート前にまとめられた補給食。選手は好みに合わせて自ら選ぶ Photo: Shusaku MATSUO

 また、「空になったボトルは沿道の観客へなるべく転がします。ファンの方が記念品として拾い、レース後にサインを求てきたりします」と、うれしそうに明かしてくれた。年号入りのボトルのコレクションを毎年楽しみにしているファンもいるという。

高度な頭脳戦が展開

 「レースに勝つ」と言っても、日々の「ステージ優勝」だけではない。TOJを例にとると、表彰対象となる賞は実に5つ。各ステージを合わせた累積時間の短さを争う「個人総合時間賞」、「チーム総合時間賞」、25歳以下が対象の「新人賞」、また、指定区間で与えられるポイントの累積数を争う「山岳賞」と「ポイント賞」が設定されている。

 選手らは刻一刻と変わる状況に応じ、すばやく作戦を切り替えてチームの狙いを達成する。

集団中ほどで上りをこなす井上 Photo: Shusaku MATSUO集団中ほどで上りをこなす井上 Photo: Shusaku MATSUO

 選手に指示を送る監督は、逃げている選手との直接的なタイム差だけでなく、レース全体の状況を把握しなければならない。例えば、総合成績で僅差の選手が遅れ始めた情報が入るとすぐさま選手へ無線で伝え、さらに集団のペースを上げてタイム差を引き離しにかかることもある。また、「5km先から横風が強い」、「山岳賞を狙う他チームと連携し、山でペースを上げ、スプリンターを脱落させろ」など、選手やコースにあわせ、相手チームの体力を削るよう指示を飛ばす。

 例えば、6月1日に開催されたTOJ第4ステージの終盤。逃げ切りを目論む選手に対し、逃げグループに選手を送り込んでいないブリヂストンアンカーと愛三工業レーシングチームがレース中に敵チームながらお互いの利害が一致し協調。逃げている選手を捕まえ、強力な少人数のグループを形成することで、その日のステージ上位を目指す作戦をとった。

 しかし、メイン集団内にいる逃げ選手のチームメイトや、他の思惑を持つチームとかみ合わず、集団のペースは上がらない。こうして「2チーム対14チーム」の図式になることもあれば、「2対2対12」になることもある。参加チームの考え、コースプロフィールや天候、その日までの成績、前を行く選手の力量など、さまざまな要素が複雑に組み合わさり、高度な頭脳戦が繰り広げられる。これこそが、ロードレースの醍醐味だ。

 井上は「監督の指示や、状況に合わせた判断でカラダを動かすためにも身体的な余裕は大事です」と、終盤までスタミナを持続させることの重要性を強調する。クリアな頭で勝負を続けるために、適切なエネルギー戦略は欠かせない。VAAMは、確実にその中枢を担っている。

「VAAM」の主な製品

ブリヂストンアンカー サイクリングチームは「スーパーヴァーム」をレース、トレーニング前に取り入れている。長い戦いが求められるTOJでも毎日使用した。

TOJ堺ステージのテーブルに並んだ「スーパーヴァーム」 Photo: Shusaku MATSUOTOJ堺ステージのテーブルに並んだ「スーパーヴァーム」 Photo: Shusaku MATSUO

●スーパーヴァーム(ボトル缶)
内容量: 200ml
エネルギー: 54kcal
税抜価格: 296円(1本)、1,776円(6本パック)
●スーパーヴァーム顆粒
内容量: 4g×10袋
エネルギー: 16kcal(1袋)
税抜価格: 2,300円
●スーパーヴァームパウダー
内容量: 10.5g×12袋
エネルギー: 42kcal(1袋)
税抜価格: 2,300円
●スーパーヴァームゼリー
内容量: 240g
エネルギー: 51kcal(1個)
税抜価格: 296円

VAAM

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