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アツいパフォーマンス動画空自の精鋭「レッドインパルス」 航空機のない基地で生まれた自転車アクロバット

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 大空を舞台に華麗な曲技飛行を繰り広げる航空自衛隊のアクロバットチーム「ブルーインパルス」は有名だが、山陰地方の空自基地に“レッドインパルス”が配備されているのをご存じだろうか。一糸乱れぬパフォーマンスで見る者をくぎ付けにし、拍手喝采を浴びる隊員たち。ただ、ブルーインパルスとちょっと違うのは、操縦するのがマッハ0.9の「T-4」ではなく、変速ギア付きの折り畳み自転車であること。そう、レッドインパルスとは、隊員たちによる自転車アクロバットチーム。空自なのに航空機が配備されていない高尾山分屯基地(松江市)に所属する“精鋭部隊”だ。翼を持たない隊員たちだが、大地を縦横無尽に駆け回る魂はアツい。

訓練場に整列する高尾山レッドクラブの機体 (小林宏之撮影)訓練場に整列する高尾山レッドクラブの機体 (小林宏之撮影)

華麗なフォーメーション、自転車の曲技走行

 「もっと右!」「タイミングをそろえて」

 島根県北東部、日本海と中海をつなぐ境水道に面した航空自衛隊高尾山分屯基地の訓練場で、松本尚徳・3等空曹(35)の指示が響く。

 声の先には、飛行機をかたどったカウル(覆い)を装着した自転車の一群。地面を舞うように快走し、ヘルメットをかぶった隊員たちに無線を通じて指示が届く。

一糸乱れぬ曲技走行を披露する高尾山レッドクラブ (小林宏之撮影)一糸乱れぬ曲技走行を披露する高尾山レッドクラブ (小林宏之撮影)
コントローラーを務める松本尚徳・3等空曹(中央)の指示を聞くメンバーたち (小林宏之撮影)コントローラーを務める松本尚徳・3等空曹(中央)の指示を聞くメンバーたち (小林宏之撮影)

 「次は、『センタークロス』から『フラワー』!」

 チームのコントローラーを務める松本さんが、フォーメーションを告げる。中央で周回していた6台の自転車が、花のように1台ずつ小さな円を描く技。彼らは、こうした華麗なフォーメーションを15種類近く持っているという。

モチーフは空自主力戦闘機「F-15」!?

訓練場を縦横無尽に駆け回るメンバーたち (小林宏之撮影)訓練場を縦横無尽に駆け回るメンバーたち (小林宏之撮影)

 この自転車アクロバットチームの正式名称は「高尾山レッドクラブ」といい、いつしか“レッドインパルス”と呼ばれるようになった。正課の業務ではなく、有志隊員たちの部活動組織だが、レッドクラブの「クラブ」は、部活動のクラブではなく、カニ。つまり、山陰の海の味覚「ベニズワイガニ」からきているという。

 高尾山分屯基地は、航空機を持たないレーダーサイトの基地。約150人態勢で24時間、高尾山頂(標高328m)付近のレーダーサイトで警戒・監視に当たっている。韓国が不法占拠を続ける竹島を管内に持つ、重要な基地だ。

機材は手作り、参加条件は「やる気」

 クラブのメンバーは現在19~46歳の隊員20人。部活動扱いのため、基本的にはそれぞれが夜勤明けや休日などの勤務時間外に1~2時間、練習をこなす。経費はメンバーたちのポケットマネーや、他の隊員からのカンパで賄っているという。

「F-15」をイメージしたという手作りの機体。発泡スチロールや木材などを巧みに組み合わせている (小林宏之撮影)「F-15」をイメージしたという手作りの機体。発泡スチロールや木材などを巧みに組み合わせている (小林宏之撮影)

 自転車に装着されているカウルは、空自の主力戦闘機「F-15」がモチーフらしい。

 「発泡スチロールやプラスチック製段ボール、木材などをうまく組み合わせて手作りしているんですよ」

 クラブリーダーの津森利彦・准空尉(52)が、第一級の軍事機密をこっそり教えてくれた。参加条件は「やる気」のみ。目下、19~23歳の若手隊員を特訓中だそうだ。

基地祭や地元のイベントで大人気

 なぜ、こんなユニークなクラブがあるのか。疑問に答えてくれたのは高橋亮吉・基地司令(48)で、毎年6月頃に開催している基地開庁記念行事「高尾山分屯基地祭」の2004年のイベントで誕生したという。

 基地開設50周年を迎えたこの年は、ブルーインパルスが所属する空自松島基地(宮城県東松島市)の改造バイク部隊「ブルーインパルスジュニア」をメインゲストに呼ぶことにし、大々的にPRもした。

訓練場を疾走する機体 (小林宏之撮影)訓練場を疾走する機体 (小林宏之撮影)

 だが、開催直前に「派遣できない」とドタキャンの連絡が。あわてた当時の基地司令が、代替策として自転車による曲技披露を発案し、ポケットマネーをはたいて自転車を調達。隊員たちに「やってみろ」と急遽(きゅうきょ)編成されたのがレッドクラブだったそうだ。

 「結局は、ブルーインパルスジュニアも都合がつき来てくれたので、両チームの競演が実現した」(高橋基地司令)という。

 それ以降、レッドクラブは毎年の基地祭で華麗なパフォーマンスを披露するほか、隣の空自美保基地(鳥取県境港市)での基地開放行事や、地元のイベントなどにも出演するようになった。

“離着陸”に“燃料補給”、気分はパイロット

基地祭を前に、練習を重ねるメンバーたち (小林宏之撮影)基地祭を前に、練習を重ねるメンバーたち (小林宏之撮影)

 今年も基地祭(6月5日)が近づいてきた。普段は勤務時間外の活動だが、本番が近づくと勤務中にも練習時間を割き、最終調整に余念がない。

 練習風景を取材した。F-15型カウルの自転車が走る様子など、最初はほほえましく見えたが、さすが“素人”の動きとは違う。「8の字サークル」「デルタ」「ジャイロ」など、次々と芸術的な曲技が目の前で繰り広げられると、「やはり自衛隊!」とカッコよくみえて仕方がない。

 メンバーたちも、気分はパイロット。基地祭などで演技を公開するときは、自転車をこぎ始めるのを「離陸」、止まるのを「着陸」と呼び、離陸前に「燃料補給」といってペットボトルの水を飲むという鉄板の“ツカミ”もある。

 演技披露のあとは、会場を訪れた子供たちにアメを配ったり、記念撮影に応じたりと、それはもう熱い人気ぶりだそうだ。

デルタ形のフォーメーションを練習するメンバーたち (小林宏之撮影)デルタ形のフォーメーションを練習するメンバーたち (小林宏之撮影)

「自転車のお兄さんみたいになりたい」

 高橋基地司令が何よりうれしかったのは、以前に基地祭を訪れた5歳の女の子から礼状が届いたこと。

 その子は、自転車にうまく乗れず悩んでいたが、レッドクラブのショーを見て「自転車のお兄さんみたいになりたい」と一念発起。練習するたびにメンバーからもらったアメを1つずつなめ、すっかりうまく乗れるようになったという。

 「基地祭に来てもらうため、この基地に親しみを持ってもらうためのツールとして活躍してほしい」と高橋基地司令。“パイロット”たちも、そんな思いを胸に刻みつつ練習を重ね、基地祭本番の舞台に備えている。

産経WESTより)

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