可能性と課題を認識して進化與那嶺恵理が語った、自身初の女子ワールドツアーでの走り 7月はジロローザ出場へ

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 ロードレース女子の個人タイムトライアル(ITT)全日本チャンピオン、與那嶺恵理は今季より、ロードレースの活動を北米中心に移した。アメリカのローカルチームを経て4月に同国のUCI(国際自転車競技連合)女子チーム、「ハーゲンスベルマン・スーパーミント プロサイクリングチーム」と半年間の契約を交わし、5月には女子UCIワールドツアー「ツアー・オブ・カリフォルニア」に初参戦した。海外で急速にステップアップする與那嶺の現在の心境を、パーソナルコーチ・トレーニングパートナーとして活動をともにする、武井亨介氏が身近な目線からインタビューした。

今季より北米で活動。自身初のUCI女子ワールドツアーにも出場した與那嶺恵理 Photo: Kyosuke TAKEI今季より北米で活動。自身初のUCI女子ワールドツアーにも出場した與那嶺恵理 Photo: Kyosuke TAKEI

◇      ◇

ワールドツアーは「密集度がきつい」

――初めてのUCIワールドツアーを走ってみて、先日のUCIアメリカツアーとの全体的なレース感の違いを教えてください

 「来ているチームの格が違い、集団内での密集度がとてもきつく、厳しく感じました。体感レベル的には世界選手権と一緒ぐらいの強度でしたが、ワールドツアーはチームプレイがとても多く、アシスト、エース、それぞれの役割がはっきりしていました。それぞれの選手が、チームオーダーに対して仕事を行っていました」

――集団内での位置取りにかなり苦労しているように見受けました

ツアー・オブ・カリフォルニア、UCI女子ワールドツアーの密集した集団で走る Photo: Edwin Kubotaツアー・オブ・カリフォルニア、UCI女子ワールドツアーの密集した集団で走る Photo: Edwin Kubota

 「集団での密集度がとても高く、かなり位置取りには苦労をしました。ハンドルと手が接触するギリギリを、ヨーロピアンのワールドツアーチームは、そこの位置を取りに来ます。第1ステージはゴール前、高速での上りの位置取りを失敗し20位でした。が、その後のステージはチームキャプテンのリザ(Liza Rachetto、42歳のベテラン選手)と一緒に動くことで、沢山のフォローをして頂き安全にレースを運ぶことができました」

――最終局面でのスピードはかなりの速さと感じましたが?

 「世界選手権レベルの強烈なスピードでした。アシスト、エースと、選手個人の仕事がはっきり決まっていて、スピードを最終局面で上げる選手や、エースを安全にゴールに連れていく選手もいます。それぞれ役割を全うして評価されているんだなぁと感じました」

人と人とがつながり、プロチームへ

――観客は大変な盛り上がりでしたね

 「UCIワールドツアーということで、とても多くの観客がいて、さらに自国の選手への応援は素晴らしいものがありました」

――前回のインタビューののち、恵理さんの走りが評価され、急きょアメリカのプロUCIチームに所属することになりました。チームが求めるその意味はどういったものですか?

チームの仲間と Photo: Kyosuke TAKEIチームの仲間と Photo: Kyosuke TAKEI

 「今年新設されたチームです。チーム自体が手探り状態であり、ミスをすることよりも、トライすることを重んじている空気があり、とても楽しめています。自由に動けることに感謝します。チームとしても、総合を狙えるライダーが私が入ることで2人になり、様々なカードを切れる。それに感謝されております」

――なぜUCIプロチームとの契約、それもサラリーをもらえる、持参金がない契約への入口に上れたのでしょうか?

 「人と人がつながった、ご縁ですね」

――どのようなご縁でしたか?

 「北米サーキットでの走りを見ていただき、オファーを頂けました。自分の価値を認められたということですし、強い忠誠心でレースに臨むことができます」

逃げを決め、殻を破る

――第3ステージ、殻を破れた走りをしたと感じたそうですが

 「第1ステージが31秒差の20位。しかし第2ステージのチームタイムトライアルが13位で、2分以上の遅れで大きく順位を落としてしまったので、第3ステージは“勝ち逃げ”には絶対に乗り、自分から積極的に展開しようと決めました」

――チームタイムトライアルで成績を落としたことで吹っ切れた?

 「ジョノ監督からレースはアグレッシブ(積極的)に行こうとのオーダーがありました。自分としては無駄なアタックではなく、勝ち逃げを作りたかった」

第2ステージのチームタイムトライアルはスピードに乗れず、総合成績を実質失うことに Photo: Edwin Kubota第2ステージのチームタイムトライアルはスピードに乗れず、総合成績を実質失うことに Photo: Edwin Kubota

――なぜそれまで消極的なレースが続いたのですか?

 「総合成績を落とすのが怖く、展開を待つ状態が続いてしまっていました」

――世界トップ選手と8人の逃げを作り、牽引した時の気持ちは?

 「その逃げを決めて、自分が勝ちたかった。まずは逃げを決めたいと思いました。積極的に対話をして、自分が逃げたい意思を引きで示しました。レース後、すごくたくさんの監督、GM、選手、ナショナルチャンピオン、ナショナルチームのコーチから、グッジョブ!エリ!と声を掛けられ、初めて自分がこのワールドツアーサーキットに認められたと感じました」

最高のトレーニング環境

走ったあとのビールは「外せない」。地ビールを味わう Photo: Kyosuke TAKEI走ったあとのビールは「外せない」。地ビールを味わう Photo: Kyosuke TAKEI

――北米でのトレーニング環境はどうですか?

 「練習環境は今までの中で最高です。固定の住居はありません。スーツケース1つと自転車1台でどこにでも!です」

――今のステイ先は?

 「ご縁がつながり、今はカリフォルニア州サンノゼのユキエさん、エリックさんのご自宅にステイさせてもらっています。カナディアンのエリックさんは、実はカナダのレジェンドで、個人タイムトライアルでは8回連続のナショナルチャンピオン。ツール・ド・北海道にも来ていて、1996年と2000年には総合優勝しています」

――北米につきものの移動は、凄い距離を移動していますよね

 「移動は想像を超えていました。UCIアメリカツアーのヒーラ(米国ニューメキシコ州)が終わった後、一日12時間ドライブが2日続き、さすがに身体は疲労しました。チームも新設で予算が少ないため、飛行機での移動は自費になってしまいます。しかしドライブを楽しみながら、旅を楽しんでいます」

ホームステイ先を出て20秒でこの走行環境 Photo: Kyosuke TAKEIホームステイ先を出て20秒でこの走行環境 Photo: Kyosuke TAKEI
移動は睡眠の時間 Photo: Kyosuke TAKEI移動は睡眠の時間 Photo: Kyosuke TAKEI

フィラデルフィア、そしてジロローザへ

食事は自分で用意。地元のスーパーでシリアルを購入 Photo: Kyosuke TAKEI食事は自分で用意。地元のスーパーでシリアルを購入 Photo: Kyosuke TAKEI

――今後の予定を教えてください

 「6月5日、フィラデルフィアでのワールドツアー(フィラデルフィア・インターナショナル・サイクリング・クラシックス)は、トップ10を目標にしています。現在武井コーチと乗り込みを行っていて、体重は2kg絞り、パワーウエイトレシオ値を高めます。あと大きな課題は下りですね。これは毎日峠を上り、下りのトレーニングを積み重ねています。エリックさん、ユキエさんにも教えていただいています。

――トップ10の可能性はどのくらいあると考えていますか?

 「位置取りが上手くいけば、必ず獲得できる順位だと思っております」

――そして、ジロローザ(女性版ジロ・デ・イタリア)に選考されましたね。これはすごいことですね!

 「すごい! びっくりしました! 本当にサプライズのセレクションでした。非常に楽しみにしています」

「五輪表彰台狙える。課題は下り」

 與那嶺のホームステイ先のホスト、ナカムラ・ユキエさんは、かつて北米でロード選手として活動。現在は仕事のかたわら、全米で活躍するプロ選手のモーターペースなど、トレーニングの手伝いも行う。パートナーのエリック・ウォルバーグ氏も元選手だ。ナカムラさんが與那嶺選手の可能性と課題について印象を語った。

與那嶺にパーソナルストレッチを行うナカムラさん Photo: Kyosuke TAKEI與那嶺にパーソナルストレッチを行うナカムラさん Photo: Kyosuke TAKEI

 リオオリンピックにセレクションされれば、表彰台を狙える可能性は高いと感じています。ブラジルのコースは上りがとてもきつく、恵理さんにはぴったりかなと。個人的には友人の米国のナショナルチャンピオン、メーガン・ガルニエとのバトルを観たいと思っています

 恵理さんの現地へ溶け込む能力は極めて高く、特殊能力だと感じます。ボーっとしていて、天然なのがいいのかな? 順応能力の高さと、マイペースぶりがこちらにとても合っていると感じました。

 課題はレースで言うと“下り”ですね。昨年の世界選手権で最後の2kmでの大きなクラッシュが影響していると感じます。

 あとは、自分の強さを信じること。自分を信じて、攻める姿勢を続けられれば、大きな栄光を獲得できると感じました。

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インタビュー 與那嶺恵理

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