カーボンバイクを守るトルク管理<1>「強く締めればいい」は大間違い! デジタル式トルクレンチが必要なワケをKTCに聞いた

by 平澤尚威 / Naoi HIRASAWA
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 自転車には日々のメンテナンスが欠かせないが、ネジを強く締め過ぎてしまうと、故障や大きな事故につながってしまう可能性がある。そうしたトラブルを防ぐデジタル式トルクレンチの必要性を、Cyclistで連載「工具はともだち」を執筆するKTC(京都機械工具)の重田和麻さんにインタビュー。KTCのデジタル式トルクレンチ「デジラチェ」の正しい使い方や、「ただ使えばいいのではなく、安全を確保するという『目的をもつこと』が大切」という心構えを聞いた。

デジラチェは強く締めすぎた場合、液晶横のLEDライトが点灯。ブザーとともに警告してくれますデジラチェは強く締めすぎた場合、液晶横のLEDライトが点灯。ブザーとともに警告してくれます

◇         ◇

すべては「安全」に尽きる

――トルクレンチを使うべき理由は?

 トルクレンチを使う一番の目的は、安全を確保することです。極端な話、安全が確保できるなら、トルクレンチを使わなくてもいい。手締めで正確に締め付けられるならそれでもいいけれど、残念ながら人間の感覚はそこまですごくはありません。毎日のように千回、何万回と締め付けをしていて、感覚が染みついている人ならトルクレンチを使わなくていいのかもしれないけれど、普通の人はそうではないので、トルクレンチを使っていただきたい。

 あくまでも、トルクレンチを使うことが目的ではありません。正しく使えていなかったら、使っていないのと同じ。なぜ使うのかを考え、安全を確保するという目的をもって、しっかり使うことです。これは整備のプロや、それ以外の方々、子供にお話しする時にも、同じようなことをお伝えします。

KTCのデジタル式トルクレンチ「デジラチェ」とビットソケット Photo: Naoi HIRASAWAKTCのデジタル式トルクレンチ「デジラチェ」とビットソケット Photo: Naoi HIRASAWA

 ねじを締め過ぎると壊れてしまいます。人間は、ついつい緩んでいるのが怖くて「強く締めとけばいいや」と思ってしまうけれど、そうではないということをわかって欲しい。

 「トルクに関する正しい知識を身に付ける」「トルクレンチを正しく使う」「トルクレンチのメンテナンスをきっちりする」が大事な3原則。これを守れば、安全に楽しく自転車ライフを送れると思います。自転車が好きな人が、自転車で事故にあうのは悲しいこと。好きな自転車で楽しく過ごすことが大事です。

素早く作業することの“落とし穴”

――正しい使い方とは?

 これは私の持論なのですが、工具には「正しい使い方」はないんです。ただ、「正しくない使い方」というのはあります。それは、安全でない使い方。けがをしてしまったり、道具が壊れてしまったりという、やってはいけない使い方を知ってもらうことが大事です。

デジラチェのグリップには、力点を示すラインが入っている Photo: Naoi HIRASAWAデジラチェのグリップには、力点を示すラインが入っている Photo: Naoi HIRASAWA

 ただし、トルクレンチには「正しい使い方」があります。それはトルクレンチが道具ではなく、測定具だからです。トルクレンチは、力を加える「力点」が決まっています。ものさしで基準の位置を間違えていたら正確に図れないように、適正なトルクを測定するには、ただ締めればいいのではなく、正しく使う必要がある。トルクレンチを使っていれば安全だ、と思うのは間違いです。

――やってはいけない使い方とは?

 「カクッ」という感触と音で適正トルクを知らせるプレセット型のトルクレンチの場合は、オーバートルクになりがちですが、問題はその値を目で見られない。

プレセット型のトルクレンチ ©KTCプレセット型のトルクレンチ ©KTC

 以前KTCのイベントに来てくれたサイクリストで、プレセット型を使っていて、素早く作業してしまうという方がいました。ですが、自転車メンテナンスに必要なトルクは大きくないので、素早くやるとオーバートルクになってしまうことが多い。

 低トルクなほど、少しずれるだけで、ブレが大きくなります。100ニュートン必要な場合に5ニュートン超えるのと、10ニュートンでの5ニュートンでは大きく違いますよね。だからデジラチェをオススメしています。数値を見ながら、ゆっくりと作業していただきたい。

――カーボンパーツが壊れてしまう理由は?

 昔と大きく変わったのは、アルミ、カーボンなどの素材が増えてきたこと。さらに、その素材が組み合わさっていることがメンテナンスを難しくしています。

 硬い素材、柔らかい素材の組み合わせだと硬い方が勝ってしまって、物を潰してしまいます。カーボンだと、強く締め込んでいくと変形して、次に締めようとすると、さらに強くしないと締まらない。そうすると最終的に破断してしまいます。

締め過ぎによるカーボンの変形 ©KTC締め過ぎによるカーボンの変形 ©KTC

 つまり、カーボンをどんどん変形させていくことが、壊れる原因なのです。すぐに症状が現れてこないので、トルクレンチを使わなくてもしばらくは乗っていられますが、例えるなら成人病のように、自転車を老朽化させてしまう。整備中に割れたら御の字で、走行中なら大変な事故につながってしまいます。物が壊れ、人に危害が加わるのが一番怖いことです。

カーボン自転車の“保険”

――サイクリストにはアーレンキーを使っている人が多いですが、デジラチェとどんな違いがありますか?

トルクは「力 × 長さ」で決まるため、長さが変わればトルクも変わる ©KTCトルクは「力 × 長さ」で決まるため、長さが変わればトルクも変わる ©KTC

 同じトルクを違うサイズのアーレンキーで出そうと思った場合、自分で力を調整しなければいけません。トルクは「長さ × 力」で決まるので、長くなった場合、同じ力をかけるとトルクは大きくなります。入力する力を自分で変える必要があるんです。その調整は難しいですが、デジラチェだと数値でわかります。

 ボルトを回すとき、本来はまっすぐ押し回さないといけないけれど、L字のアーレンキーはそれがやりづらい。斜めに差し込むと、ボルトをなめてしまうことがあります。ラチェットは押さえて回しやすいので、そうしたトラブルも比較的少なくなります。

――デジラチェは特にどんなサイクリストにオススメですか?

 トルク管理がシビアなカーボンの自転車を使う人にはデジラチェをオススメします。保険だと思って買いましょう。カーボンの自転車を壊す可能性を考えれば、デジタルトルクレンチを買ったほうが、明らかに安心して乗っていただけます。

 メンテナンスはある程度ショップに任せるという人でも、サドルまわりとかは、自分で調整することもあるでしょうし、そこにはトルク管理が必要になります。

「トルクへの関心を高めたデジラチェ」

――自転車界において、デジラチェはどんな役割を担っていますか?

工具のプロとして、デジラチェの必要性を語ったKTCの重田和麻さん Photo: Naoi HIRASAWA工具のプロとして、デジラチェの必要性を語ったKTCの重田和麻さん Photo: Naoi HIRASAWA

 デジラチェが発売されてから、自転車業界でのトルク管理への関心が高くなってきたと自負しています。以前は興味を持たれてなかったり、プレセットが一般的だったから数値で見ることができなかったりしました。デジラチェは比較的安価な価格帯で、トルクを正確に、目に見える数値にできたことが大きい。

 また、数値が見えることで、ゆっくり力をかけるという本来の使い方を実践しやすくなりましたし、カーボンが多くなってきた時代背景も含めて、デジラチェの存在価値が高くなっています。

 KTCは、デジラチェという測定具を通して安全を提供しています。KTCの開発コンセプトは「安全、快適、能率・効率」。安全が最初にきて、それより効率が優先されることはない。安全なくして、楽しいことはないんです。

Cyclistロゴ入りエプロン付き「デジラチェ工具セット」販売中

Cyclist × KTC オリジナルデジラチェ工具セット Photo: SANKEI netShopCyclist × KTC オリジナルデジラチェ工具セット Photo: SANKEI netShop

 CyclistとKTCとのコラボレーションによる自転車メンテナンス向け「オリジナルデジラチェ工具セット」が好評です!

 デジタル式トルクレンチに、収納用ブローケースや、自転車整備に活躍する5つの付替え用ビットソケット、ソケットホルダー、さらにCyclistとKTCのロゴが入ったオリジナルショートエプロンが付属しています。価格は4万3869円(税込)で、セット内容を別々に購入するよりもグッとお得な設定になっています。
(産経デジタル)

→「オリジナルデジラチェ工具セット」商品販売ページ(産経netShop)

重田和麻(しげた・かずま)

KTC(京都機械工具)入社後、同社の最高級ツール「nepros」(ネプロス)の立ち上げに携わった後、販売から企画、商品開発とさまざまな立場で同商品と歩みを共にしてきた。スポーツ自転車は初心者だが、工具についてはプロフェッショナル。これまでの経験を生かして、色々な角度からサイクリストに役立つ工具の情報を提供する。

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