title banner

栗村修の“輪”生相談<76>30歳男性「上半身の筋肉はロードバイクに乗る上で邪魔ですか?」

  • 一覧

 
力仕事を始めてから上半身の筋肉が大きくなり体重も増えました。

 しかしロードバイクにいざ乗ると以前ほどスタミナが続かなくなってしまい特に上りが辛いです。

 力仕事で付いた筋肉は、ロードバイクに乗る上ではデッドウエイトにしかならないのでしょうか?

(30歳男性)

 以前、僕が監督を務めていた宇都宮ブリッツェンに飯野智行という選手がいました。デビューイヤーの全日本選手権ロードレースでいきなり4位に入るなど才能を見せつけたのですが、いったん引退し、しかし今年、ある意味奇跡の復帰を果たしたあの飯野選手です。

 彼は競輪選手のお父さんとお祖父さんを持つサラブレッドなのですが、大学時代は不思議と成績が出ていなかったんですね。ずっと疑問だったんですが、その理由は、彼がブリッツェンに入ってからよくわかりました。

学生時代は上半身を鍛えすぎていたという飯野智行選手(2013年) Photo: Ikki YONEYAMA学生時代は上半身を鍛えすぎていたという飯野智行選手(2013年) Photo: Ikki YONEYAMA

 前置きが長くなりましたが、要するに彼は上半身に筋肉をつけすぎだったんです。夏には鍛え上げられたマッチョな上半身で海に行くことをポリシー(?)にしている男ですから、上半身を熱心に鍛える。結果、サーフ向きだけれどロードレースには向かない体になってしまっていたわけです。

 このエピソードからも分かるように、ロードレースの選手の上半身に関しては、いわゆる男らしい筋肉は役に立たない場合が多いんですよ。特にヒルクライマーなんて、アバラが浮いているんじゃないかというような胸に、今にも折れそうな腕で、しかし飛ぶように山岳を上っていますよね。

 というわけで、さっそく結論が出てしまいました。例外はありますが、上半身の一部の筋肉はおおむねデッドウェイトでしかないのです。

 ロードレースで重要になる上りでは、体重当たりのパワー(パワーウェイトレシオ)の大きさが勝負を決めますから、無駄な筋肉はそぎ落とさなければなりません。それに、筋肉は基礎代謝を上げますから、エネルギー消費量も増えてしまい、スタミナ切れにもつながると。スプリンターなど一部の選手を除いて、ムキムキの上半身はあまり役に立たないのです。

2013年のさいたまクリテリウム前日交流会でのクリストファー・フルーム選手。驚異的な細さだが、ツール・ド・フランス出場時にはさらに絞り込む Photo: Yuzuru SUNADA2013年のさいたまクリテリウム前日交流会でのクリストファー・フルーム選手。驚異的な細さだが、ツール・ド・フランス出場時にはさらに絞り込む Photo: Yuzuru SUNADA

 しかし質問者さんはお仕事が力仕事ということですから、こう言われてもお困りでしょう。そこでご提案したいのですが、「自転車につながる筋肉の使い方」をしてみてはいかがでしょうか。

 それは、ペダリングじゃありませんが、負荷を減らして回数を増やすということです。上半身に筋肉がつくような大負荷を、小負荷・複数回に変えるのです(周囲に怒鳴られない範囲で)。

 冗談じゃないですよ。強い選手というのは、日々の暮らしのすべてをトレーニングにしてしまうんです。たとえば、階段を上るときもいちいち一段飛ばしで、ペダリングの筋肉を意識して上る、という選手がかつていました。工夫次第で、日常動作もトレーニングになるかもしれません。

(編集 佐藤喬)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまでお寄せください。

この記事のコメント

利用規約順守の上ご投稿ください。

関連記事

この記事のタグ

栗村修の“輪”生相談

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載