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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<160>激戦のジロ・デ・イタリアは運命の最終週へ マリアローザをめぐる攻防のポイントに迫る

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 次世代のオールラウンダーとして将来を嘱望されてきた、スティーフェン・クルイシュウィック(オランダ、チーム ロットNL・ユンボ)に千載一遇のチャンスが訪れた。熱戦が続くジロ・デ・イタリア2016は、第2週目までが終了。個人総合時間賞のマリアローザ争いにおける最重要ポイントとなった、第13~15ステージの山岳3連戦は、総合上位陣の明暗がくっきりと分かれた。今回は第2週の戦いから、残るステージでのマリアローザをめぐる攻防のポイントをピックアップする。

第2週を終えて総合上位につけるヴィンチェンツォ・ニバリ(右から2人目)、左へアレハンドロ・バルベルデ、スティーフェン・クルイシュウィック =ジロ・デ・イタリア2016第14ステージ、2016年5月21日 Photo: Yuzuru SUNADA第2週を終えて総合上位につけるヴィンチェンツォ・ニバリ(右から2人目)、左へアレハンドロ・バルベルデ、スティーフェン・クルイシュウィック =ジロ・デ・イタリア2016第14ステージ、2016年5月21日 Photo : Yuzuru SUNADA

際立ったクルイシュウィックの走り

 イタリア北東部が舞台となったジロ第2週は、山岳あり、平坦ありのバリエーションに富んだコースが設定された。スプリント、逃げとあらゆる形でステージ勝者が生まれ、見ごたえのある1週間だった。

山岳TTの第15ステージであわやステージ優勝かと思わせる快走を見せたスティーフェン・クルイシュウィック =ジロ・デ・イタリア2016第15ステージ、2016年5月22日 Photo: Yuzuru SUNADA山岳TTの第15ステージであわやステージ優勝かと思わせる快走を見せたスティーフェン・クルイシュウィック =ジロ・デ・イタリア2016第15ステージ、2016年5月22日 Photo: Yuzuru SUNADA

 マリアローザ着用者も目まぐるしく代わった。前週から守っていたジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)に始まり、チームメートのボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)、アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター チーム)、そしてクルイシュウィックと、ほぼ日替わり状態。その流れの中でも、やはりクルイシュウィックの走りが際立ったといえよう。

 クイーンステージと目された、ドロミテの山々をめぐった第14ステージではマリアローザの行方を大きく動かすアタックを成功させ、続く山岳TTの第15ステージでもあわやステージ優勝かと思わせる激走。後続に2分以上のタイム差をつけ、最終週に向けて俄然有利な状況を作り出している。

 ここまでの戦いを終えて、首位のクルイシュウィックから総合12位までがタイム差10分以内にひしめいている。さすがに一気にタイム差を縮め、クルイシュウィックを脅かすとまではいかずとも、一瞬のアタックや逃げなど攻撃的な走りによって総合順位のジャンプアップはまだまだ可能な選手たちがそろっている。

第15ステージ終了時の総合上位15人

1 スティーフェン・クルイシュウィック(オランダ、チーム ロットNL・ユンボ) 60時間41分22秒
2 ヨアンエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) +2分12秒
3 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ プロチーム) +2分51秒
4 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) +3分29秒
5 ラファウ・マイカ(ポーランド、ティンコフ) +4分38秒
6 イルヌール・ザカリン(ロシア、チーム カチューシャ) +4分40秒
7 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター チーム) +5分27秒
8 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ) +7分14秒
9 カンスタンティン・シウツォウ(ベラルーシ、ディメンションデータ) +7分37秒
10 ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ プロチーム) +7分55秒
11 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール ラモンディアル) +8分12秒
12 リゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール プロサイクリングチーム) +8分19秒
13 ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター チーム) +16分31秒
14 ステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディアーニ・CSF) +17分3秒
15 ホンダルウィン・アタプマ(コロンビア、BMCレーシングチーム) +17分21秒

総合優勝を目指す選手たちはどう戦う?

 では、ここまで快調に戦いを進めるクルイシュウィックのマリアローザが濃厚だろうか。いや、優位な立場にいることは確かだが、勝負があったと見るのはもちろん早計だ。とはいえ、第2週までの戦いぶりやタイム差で、総合優勝争いが数名に絞られたと捉えることはできそうだ。

 前記した上位陣のタイム差から、総合優勝のチャンスがあるのは4位のバルベルデまでと筆者は見ている。総合5位、6位につけるマイカ、ザカリンも安定した走りを見せてはいるものの、上を行く4選手との差があり、3週間の戦い方を熟知する3位のニバリ、続くバルベルデが立ちはだかるのではないか。

総合1位と2位を占めるスティーフェン・クルイシュウィック(右)とヨアンエステバン・チャベス =ジロ・デ・イタリア2016第14ステージ、2016年5月21日 Photo: Yuzuru SUNADA総合1位と2位を占めるスティーフェン・クルイシュウィック(右)とヨアンエステバン・チャベス =ジロ・デ・イタリア2016第14ステージ、2016年5月21日 Photo: Yuzuru SUNADA

 今後の戦いで首位を確実なものにしたいクルイシュウィックは、残るステージでアシスト陣がどのような働きをするのかに注目したい。山岳ステージでは、クルイシュウィックが単騎に近い状況となっており、山岳アシストが手薄である点は否めない。とはいえ、クルイシュウィックの強みは、自らレースを組み立てられるところ。ジロでは過去2回総合トップ10フィニッシュを果たしており、昨年に至っては大会中盤から後半にかけて再三のアタックでレースを盛り上げた実績がある。

 爆発的なスピードやスプリント力があるわけではないが、高い出力で長時間急坂を上り続けられるところを第2週の山岳3連戦でも示した。残るステージでは、確実に攻撃に出るライバルたちの動きを見極め、要所を押さえる走りが求められる。いわば、“勘”が冴えるかだ。

 総合2位のチャベスも、逆転をかけての1週間となる。第14ステージでは勝利を収め、その走りに手ごたえをつかんでいる。第1週(第9ステージまで)を終えた時点では、クルイシュウィックとの差が1分40秒だったが、第2週でさらに32秒広げられた。山岳TT(第15ステージ)で両者に間についた40秒差が大きなウエイトを占めている格好だ。

 山岳アシストを務めるルーベン・プラサ(スペイン、オリカ・グリーンエッジ)とアメツ・チュルカ(スペイン、オリカ・グリーンエッジ)は、ともに逃げを得意とする選手。グランツールの山岳ステージで多く見られる、序盤に山岳アシストが逃げに入り、勝負どころでのエースの合流を待つ“前待ち”が計算できるところは心強い。

最終週もメーン集団をコントロールすることが予想されるアスタナ勢。左からスカルポーニ、ニバリ、フルサング =ジロ・デ・イタリア2016第14ステージ、2016年5月21日 Photo: Yuzuru SUNADA最終週もメーン集団をコントロールすることが予想されるアスタナ勢。左からスカルポーニ、ニバリ、フルサング =ジロ・デ・イタリア2016第14ステージ、2016年5月21日 Photo: Yuzuru SUNADA

 山岳TTでのメカトラブルで大きくタイムをロスしたニバリは、気持ちを切り替えてチャンスをうかがう。アシストの層が厚いこともあり、今後もメーン集団をコントロールすることだろう。あとはエース次第である。第14ステージでは、バルベルデらを置き去りにしながらも、結果的にクルイシュウィックとチャベスを発射する形になってしまい、苦しい戦いを強いられてしまった。再度アタックを試みることは必至で、クルイシュウィックも最も警戒すべき選手として名を挙げている。

アレハンドロ・バルベルデは最終週で攻撃的な走りを見せるか =ジロ・デ・イタリア2016第15ステージ、2016年5月22日 Photo: Yuzuru SUNADAアレハンドロ・バルベルデは最終週で攻撃的な走りを見せるか =ジロ・デ・イタリア2016第15ステージ、2016年5月22日 Photo: Yuzuru SUNADA

 バルベルデは上手くまとめている印象はあるが、ライバルを脅かすようなアグレッシブな走りはまだ見せていない。第14ステージでチャベス、クルイシュウィックらから3分の遅れを喫したことが致命傷となる可能性は高い。残りのステージをどのような狙いで走るのかは、ライバルたちも気になっているところだろう。マリアローザを狙うのか、総合表彰台狙いに絞るのか。百戦錬磨のベテランの動きは、他選手の走りに影響を与えることになるかもしれない。

 もちろん、勝負が決まるまでは“絶対”などなく、今後のステージで波乱やサプライズが起こることもあり得る。総合タイム差から上位4人の走りを占ったものの、その他上位陣にもチャンスはある。戦いはまだまだ予断を許さず、われわれを大いに楽しませてくれるはずだ。

ジロ・デ・イタリア 第16~21ステージ展望

●5月24日(火) 第16ステージ ブレッサノーネ~アンダロ 132km 難易度★★★
タイムトライアルを除くラインステージでは最短の132km。この日2つ目の2級山岳は、山岳ポイント手前が勾配15%。約2.5kmの下りをクリアすると、約4kmの緩やかな上りが待つ。ラスト2kmはほぼフラットで、逃げを得意とする数選手によるステージ優勝をかけたスプリント勝負が見られるかもしれない。

●5月25日(水) 第17ステージ モルヴェーノ~カッサーノ・ダッダ 196km ★
前半こそ4級山岳を含むアップダウンがあるが、後半はほぼフラット。スプリンターが主役になるステージとしては、最終ステージ以前では最後となる可能性が高く、大会に残っているスピードマンが黙ってはいない。ラスト600mで右に折れる鋭角コーナーでの位置取りが勝負を分けることになる。

●5月26日(木) 第18ステージ ムッジョ~ピネローロ 244km ★★★

ジロ・デ・イタリア2016第18ステージ コースプロフィール  ©RCS SPORTジロ・デ・イタリア2016第18ステージ コースプロフィール  ©RCS SPORT

 大会終盤に訪れた最長ステージ。ラスト20kmを切って迎える2級山岳プラマルティーノは、最大勾配17%。そして、フィニッシュ前2.5kmで現れるサン・マウリッツォの上りは最大勾配20%の激坂。500m上り、ラスト2kmはテクニカルな下り。総合上位陣に数秒単位のタイム差がつくことも考えられる。

●5月27日(金) 第19ステージ ピネローロ~リゾル 162km ★★★★★

ジロ・デ・イタリア2016第19ステージ コースプロフィール  ©RCS SPORTジロ・デ・イタリア2016第19ステージ コースプロフィール  ©RCS SPORT

 今大会の最終決戦地となるフレンチアルプスへと突入する。スタートから106.4km地点で最高標高点(チーマコッピ)のアニェル峠を越えると、フランスに入国。50km近い下りを経て、ツール・ド・フランスでもおなじみのリゾル峠を上る。登坂距離12.85km、平均勾配7%の1級山岳がマリアローザ争いを盛り上げる。

●5月28日(土) 第20ステージ ギレストル~サンタンナ・ディヴィナーディオ 134km ★★★★★

ジロ・デ・イタリア2016第20ステージ コースプロフィール  ©RCS SPORTジロ・デ・イタリア2016第20ステージ コースプロフィール  ©RCS SPORT

 事実上、総合争いにおける最終日となる1日は、134kmと短い距離の中に1級山岳3つ、3級山岳が1つで、そのいずれもが標高2000m級。マリアローザをかけて、はたまたステージ優勝をかけて捨て身のアタックを選手たちは見せる。どこで勝負が動いても不思議ではない。そして、フィニッシュ後マリアローザに袖を通した選手が、ジロ王者を濃厚とする。

●5月29日(日) 第21ステージ クーネオ~トリノ 163km ★
オランダで始まった3週間の戦いは、イタリア北西部の都市トリノで終わりを迎える。選手たちはしばし戦いの労をねぎらい合い、長き旅路の思い出に浸る。肝心の勝負はトリノ市街地に入ってから。8周回した後、今大会最後のステージ勝者が決まる。そして、99回目のジロ王者が確定。マリアローザを含む4賞受賞者が晴れてジャージを受け取る。

今週の爆走ライダー-ミケル・ニエベ(スペイン、チーム スカイ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 5月20日のジロ第13ステージ。彼が見せた40kmの独走劇は、プロトンの最強チームの一員であることをアピールするのに十分な熱い走りだった。「チームは勝利を必要としていたんだ」、レース後の一言が強い意志を物語る。

ジロ・デ・イタリア2016第13ステージで40kmに及ぶ独走劇で勝利を収めたミケル・ニエベ =2016年5月20日 Photo: Yuzuru SUNADAジロ・デ・イタリア2016第13ステージで40kmに及ぶ独走劇で勝利を収めたミケル・ニエベ =2016年5月20日 Photo: Yuzuru SUNADA

 同国の後輩であり、チームの絶対エースだったミケル・ランダが体調不良により、第10ステージでまさかのリタイア。エースの復調を信じ、スタートからしばらく付き添ったが、力なくバイクを降りた姿にショックを受けた。その後、ダビ・ロペス(スペイン)ともども集団に復帰ができず、このステージはトップから37分遅れのグルペットでフィニッシュ。総合上位進出も絶たれ、二重の悔しさに暮れた。

最終週でのステージ優勝を狙うミケル・ニエベ =ジロ・デ・イタリア2016第15ステージ、2016年5月22日 Photo: Yuzuru SUNADA最終週でのステージ優勝を狙うミケル・ニエベ =ジロ・デ・イタリア2016第15ステージ、2016年5月22日 Photo: Yuzuru SUNADA

 一方で、プロトン内での自由が与えられたとポジティブに捉えることもできた。だから、第13ステージに狙いを定め、その通りに勝ってみせた。グランツールで4度の総合トップ10フィニッシュを経験する31歳は、状況に応じた戦い方を熟知している。

 最終週では、もう1つステージ優勝を狙うつもりだ。第13ステージ勝利後には、「あまり勝った経験がないから、本当にハッピーだ」と喜んだが、その気になればきっとさらなる勲章をつかむことができるはずだ。

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、 自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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