4回目は2日間開催ツール・ド・東北 新設「牡鹿半島チャレンジグループライド」厳しいアップダウンを堪能

by 松尾修作 / Shusaku MATSUO
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 東日本大震災の復興支援を目的としたサイクリング大会「ツール・ド・東北」が、9月17、18日に宮城県沿岸で行われる。前年までは1日間のイベントだったが、今年から牡鹿半島を一周する「牡鹿半島チャレンジグループライド」が新設され、全体で2日間の開催となる。イベント本番を前にCyclist編集部が、美しくチャレンジングな新コースにヤフーの自転車同好会の皆さんと共に挑んだ。ツール・ド・東北のエントリー期間は5月24日から6月8日まで。

石巻線と併走し、女川駅を目指す Photo: Shusaku MATSUO石巻線と併走し、女川駅を目指す Photo: Shusaku MATSUO

サイクルツーリズムを根付かせたい

牡鹿半島にある港では今でも多くの工事用車両が行きかい、復興作業を続けている Photo: Shusaku MATSUO牡鹿半島にある港では今でも多くの工事用車両が行きかい、復興作業を続けている Photo: Shusaku MATSUO

 イベントの舞台となる牡鹿半島はリアス式海岸に囲まれた自然豊かな土地だ。コースの距離は100kmで、石巻専修大学をスタートし、深刻な被害を受けた女川駅周辺や、金華山を望む御番所公園を通るルートが設定されている。

 「牡鹿半島チャレンジグループライド」はグループ形式でのライドとなり、参加者は事前に申告した自身のレベルに合わせて10人ほどのグループに分かれる。途中に設けられる休憩ポイントでは地元の食材を使用した軽食が振舞われるほか、被災地域の当時の様子や復興の過程を地元の“語り部”から聴き、牡鹿半島の「いま」を知る。

「自治体と連携してサイクルツーリズムを根付かせたい」と話すヤフー広報の小澤恵さん Photo: Shusaku MATSUO「自治体と連携してサイクルツーリズムを根付かせたい」と話すヤフー広報の小澤恵さん Photo: Shusaku MATSUO

 ヤフー広報の小澤恵さんは、2日間開催になった経緯について「より多くの方に『ツール・ド・東北』にご参加いただき、東北の現状を感じていただくため」と説明。牡鹿半島が選ばれた理由は「石巻市からの要望もあり、参加者の方々に訪れてもらい、復興の様子をより多くの方々に直接ご覧いただきたいと考えています」と続けた。(※エントリーは土日いずれか1日のみ可能)

 また、「イベント開催日だけでは、復興に与える影響は限定的です。牡鹿半島をはじめとする地域が、ツール・ド・東北をきっかけに、年間を通じて全国のライダーが訪れるような土地になるよう、自治体と協力し合いたい」と牡鹿半島チャレンジグループライドの趣旨を話した。

厳しい上りの後には絶景が

 5月末日、ヤフー自転車同好会のメンバーが石巻市に集まった。河北新報社と共にイベントを主催するヤフー社内には自転車好きが多く、同好会が結成され、日々イベントやライドを楽しんでいるという。今回、新コース設立に先駆け、牡鹿半島の新たな魅力を発見するために、同好会メンバーはスタート地点の石巻専修大学から走り出した。

「牡鹿半島チャレンジグループライド」のスタート、ゴール地点となる石巻専修大学 Photo: Shusaku MATSUO「牡鹿半島チャレンジグループライド」のスタート、ゴール地点となる石巻専修大学 Photo: Shusaku MATSUO

 走り始めて20kmほどで女川駅に到着。震災当時は壊滅的な被害を受けたが、昨年3月、新たな駅舎が建設され、周辺の土地は整備されている。駅前の商店街は新しくガラス張りが綺麗な商店が並び、カフェや交流会館、地元の食材が並ぶ物産展に観光客が訪れていた。メンバーは女川港にある「おかせい」で“名物”女川丼を食べ、山岳地帯を目指した。

地元で採れた毛がにを頬張る Photo: Shusaku MATSUO地元で採れた毛がにを頬張る Photo: Shusaku MATSUO
女川名物の「女川丼」には地元の海の幸が豊富に盛り付けられる Photo: Shusaku MATSUO女川名物の「女川丼」には地元の海の幸が豊富に盛り付けられる Photo: Shusaku MATSUO
商店が集まる「シーパルピア女川」では熊本地震の募金活動が行われていた Photo: Shusaku MATSUO商店が集まる「シーパルピア女川」では熊本地震の募金活動が行われていた Photo: Shusaku MATSUO
ミニスーパーや飲食店が軒を連ねる「シーパルピア女川」 Photo: Shusaku MATSUOミニスーパーや飲食店が軒を連ねる「シーパルピア女川」 Photo: Shusaku MATSUO
女川原発方面へ続くワインディングロード Photo: Shusaku MATSUO女川原発方面へ続くワインディングロード Photo: Shusaku MATSUO

 この日の牡鹿半島は朝から濃霧に覆われ、山中の景色は真っ白だった。左側に広がっているはずの海が全く見えないのは残念だが、リズミカルにアップダウンを繰り返すワインディングロードが楽しい。斜度が緩く、スピードをつけて坂を上れるため思わずペダルを踏んでしまった。

 一行はコース中最も標高が高い人石山へと近づいた。勾配はとたんに急になり、上り基調の山岳で平均速度は下がる。御番所公園まで来るころにはメンバーにも疲労の色が見えた。しかし、霧が晴れ、眼下に広がる景色に疲れも忘れ、一時の休憩時間を楽しんだ。

目下に金華山を一望できる Photo: Shusaku MATSUO目下に金華山を一望できる Photo: Shusaku MATSUO
展望台がある御番所公園 Photo: Shusaku MATSUO展望台がある御番所公園 Photo: Shusaku MATSUO
地元ライダーと共に記念撮影 Photo: Shusaku MATSUO地元ライダーと共に記念撮影 Photo: Shusaku MATSUO
地元サイクリングチーム「RSK  RACING」の左から千葉洸汰さん、千葉廉さん、瀬上凌紀さん Photo: Shusaku MATSUO地元サイクリングチーム「RSK RACING」の左から千葉洸汰さん、千葉廉さん、瀬上凌紀さん Photo: Shusaku MATSUO

 ここで出会った石巻を地元とする瀬上凌紀さん(18)はツール・ド・東北でルートに牡鹿半島が含まれることについて「自分たちの練習コースが選ばれて光栄です。サイクリストとすれ違うだけで嬉しいので、全国から多くのライダーの方々に走りに来てもらい、コースの良さを共有したいです。」と話してくれた。

 山場を越え、爽快なダウンヒルを満喫したのもつかの間で、再びアップダウンが始まった。霧が晴れ、美しい海辺の景色が堪能できるのが幸いだが、連続して出現する上りと下りに脚が削られていく。

 補給をこまめに取り、体力を取り戻しながら半島を抜けると、残りは平地でゴール地点の石巻専修大学を目指すのみ。疲れと同時に達成感を味わいながら、メンバーはこの日のライドを終えた。

山岳地帯に入ると勾配がきつくなる Photo: Shusaku MATSUO山岳地帯に入ると勾配がきつくなる Photo: Shusaku MATSUO
牡鹿半島にはその名の通り鹿が多く生息している Photo: Shusaku MATSUO牡鹿半島にはその名の通り鹿が多く生息している Photo: Shusaku MATSUO
アップダウンが続くコースは容赦なくライダーの脚を削った Photo: Shusaku MATSUOアップダウンが続くコースは容赦なくライダーの脚を削った Photo: Shusaku MATSUO

中~上級者が楽しめるコース

 「牡鹿半島チャレンジグループライド」のコースはまさにチャレンジングなコースだった。最大標高は250mほど、獲得標高も約1500mだが、上りと下りを頻繁に繰り返す海岸線では余裕を感じるライダーは少ないかもしれない。しかし、得られる達成感と景色には代えがたい。“濃い”100kmを楽しみたい中~上級者向けのコースだろう。脚試しをしたいライダーにおススメのコースだ。

 また、復興が進んでないとされる被災地の現状を実際に目の当たりにすることができた。建物があったと思われる平地には土が積まれ、頻繁に往来するトラックが撒く砂や泥がバイクを汚した。海に面している箇所の多くに白いコンクリートの防潮堤が築かれていたのも印象的だった。

津波により削られた山肌にはなぎ倒された木や、流れ着いた街灯が残されていた Photo: Shusaku MATSUO津波により削られた山肌にはなぎ倒された木や、流れ着いた街灯が残されていた Photo: Shusaku MATSUO
海に面する低地には防潮堤が多く築かれていた Photo: Shusaku MATSUO海に面する低地には防潮堤が多く築かれていた Photo: Shusaku MATSUO

 筆者は津波で流された街灯が処理されず高台に打ち上げられていたり、墓標が未だに散乱している光景にショックを受けた。しかし、ツール・ド・東北に参加することで復興の一端を担えるだろう実感した。地元の美味しい食材をいただき、自然を体感することで地元を応援できる素晴らしい機会だと感じる。ツール・ド・東北をきっかけに、イベントがなくても訪れてみたい魅力が石巻・女川にあった。本番は9月だが、その前に再び牡鹿半島を訪れて難コースに“チャレンジ”してみようと思う。(取材協力:ヤフー)

復興支援事業を現地で行う「ヤフー石巻復興ベース」に立ち寄った Photo: Shusaku MATSUO復興支援事業を現地で行う「ヤフー石巻復興ベース」に立ち寄った Photo: Shusaku MATSUO

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