「ツィーナー・バイクフェステバル」レポート欧州一のMTBイベント会場へ潜入 プロ選手とマンツーマンで乗り方イロハを体験

イタリア北部のガルダ湖畔のリゾート地リーバで、4月29日から5月1日にかけて、マウンテンバイク(MTB)に特化した欧州最大の展示会「Ziener BIKE Festival」(ツィーナー・バイクフェステバル)が開催された。イベント開催はことしで23回目。リーバの街のありとあらゆる場所がMTBに“占拠”され、166の出展社、300のブランドのブースがひしめき合う会場は4万人の来場者で賑わった。
レースや企画が目白押し

ツィーナー・バイクフェステバルの最大の特徴は、バイクブランド各社が用意する試乗車。最新モデルもラインナップされ、一般のマウンテンバイカーに貸し出される。会場となったリーバは無数のオフロードトレイルに囲まれ、晴天に恵まれた期間中は朝から夕方まで試乗車で山にこもりっきりのマウンテンバイカーも多く見かけた。


また期間中、MTBマラソン、エンデューロ、パンプバトル、ジュニアトロフィー(子供向けレース)など参加型の大小ライドイベントも併催。マウンテンバイカーおよそ2500人がライドを楽しんだ。
ライドイベント以外にも、マウンテンバイカーのための企画が目白押し。そのひとつが、「自転車乗りのためのヨガ」教室。開催時間は夕方4時半で、たっぷり1時間半の内容だ。試乗やイベントで使った体をじっくりとストレッチし、翌日もまた気持よく体を動かせるようにと無料で参加できた。筆者も体験をしてみたところ、全身のストレッチに加えて、肩・腕・脚を重点的にストレッチする動きが多く組まれていた。

有料なものの、メーン会場内の通路に設けられた青空マッサージも好評だった。マッサージを提供していたのは、オーストリアの企業「マッサージ・ディビジョン」。欧州を中心として各国に登録スタッフを配し、スポーツイベントやメッセなどに出展している。
ポーランド出身のベアタ・リピアックさん(Beata Lipiak)は、スポーツ理学療法士。リピアックさんは、「脚はもちろんだけれど、きょうみたいに座った姿勢の場合は、ライド時に進行方向を見据え続けるので首と、ハンドル操作などで酷使する肩から腕をしっかりマッサージします」とマッサージのポイントについて教えてくれた。


MTB初心者にプロ直伝の“乗り方講座”

MTB初心者の筆者も、オープンな雰囲気に誘われてバイクを借りてみることに。ところが、スモールサイズのバイクは希少な上に試乗で出払っているとあって、身長159cmの筆者に合うバイクはなかなか見つからなかった。そこで助けてくれたのが、プロMTB選手のユリア・ホフマンさん(32、Julia Hofmann)。ホフマンさんは、エンデューロ・ワールドシリーズなどのレースに参戦する数少ないドイツ出身の女性プロライダーだ。
訪ね歩いて「これなら乗れる」と選んでくれたのは、BHの「Lynx 4.8」。27.5インチのアルミフレームで、120mmサスペンションを備えたモデルだ。サドルを最大限下げ、またがって体重をあずけた状態でフロントサスペンションを調整してもらっていると、ホフマンさんがMTBの基礎を教えてくれるという。願ってもないチャンスと二つ返事で練習場所へ向かった。
練習場所となったグラウンドで乗る前に教えられたのは、ハンドルを握った腕を外へ向けるということ。「胸の前でひとつの大きな丸を作る感じ」で握ったら、腕の直線上にブレーキが来るように向きを調整しておく。「ブレーキにはいつも指をかけて、力加減とブレーキ感覚を覚えてね」

愛車のロードバイク以外にスポーツバイク経験がない筆者が最も驚かされたのも、そんなブレーキの比率だった。ダウンヒルの時は特に、フロント7割、リア3割という割合でブレーキングしていくという。その理由は、「ブレーキ状態ではうまくトレッド(タイヤの凹凸)が地面をグリップできない。後輪でしっかりグリップできないとスピードが上がり、さらに左右にスリッピーになってコントロールできなくなり危険」だからだ。



さらに、ペダルを回していない時には岩などの突起に引っかからないように両ペダルを同じ高さに上げておくことや、「体が一番のクッション」と思いながら乗るのは新鮮だった。そのほかにも、傾斜によって体の重心を前後に移動させられるようにバランスを保ち、あごを進行方向へ向けることなど、いくつかポイントを教えてもらいながら乗ること15分。何となくMTBが楽しくなってきたから不思議だ。
気持よく乗っているとホフマンさんから「とてもバランスがいい。すぐにでも始めるべきだわ」と褒められ、まんざらでもない気持ちを味わった。最後にホフマンさんは、「慎重に進まなければいけない場面に備えて、ゆっくり進む練習が大切。一度トレイルへ出れば、すぐに愉快な仲間と出会えるはず」と楽しそうにしめくくった。

1982年生まれ、ドイツ在住。東京を拠点に4年間記者生活を送った後、フリーランスへ。書くこと、レポートすることが生きがい。執筆ジャンルは自転車・アウトドアアクティビティ、スポーツ、旅、食、アート、ライフスタイルなど文化全般。幼少期の5年間をドイツ・ハンブルクで過ごしたことがアイデンティティのベースにある。ブログ「ドイツのにほんじん」ほか、多媒体にて執筆中。