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ジロ2016 チームNIPPOの挑戦<第8ステージ>チームカーの車内装備を大公開 あらゆる状況に対応するための“戦うための車”

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 ジロ・デ・イタリア参戦中の「NIPPO・ヴィーニファンティーニ」の若手メカニック、福井響さんによる現地レポートでは、前回に引き続きチームカーの装備について紹介します。屋根上のスペア自転車だけでなく、あらゆる状況に対応するための装備を満載。チームの移動基地になっているのです。

マツダのステーションワゴンがNIPPO・ヴィーニファンティーニの良き相棒 ©NIPPO Vini FantiniマツダのステーションワゴンがNIPPO・ヴィーニファンティーニの良き相棒 ©NIPPO Vini Fantini

主流はステーションワゴン

 ジロ・デ・イタリアは前半が終わり、休息日を挟んで後半戦を迎えようとしています。先日はチームカーの頭上の話をさせていただきましたが、今回も引き続きチームカーを見ていきましょう。

 NIPPO・ヴィーニファンティーニのチームカーは、我らが日本製のマツダ。私たちの他にランプレも日本車を使っていますね。昨年はまだ他にも日本車を使うチームが見受けられましたが今年は2チームのみ。せっかくの自動車大国、全世界が注目する大会でたった2チームでは少し寂しい気も…。

第8ステージの未舗装路区間でもチームカーは大活躍 ©NIPPO Vini Fantini第8ステージの未舗装路区間でもチームカーは大活躍 ©NIPPO Vini Fantini

 さて、連日熱いレースが繰り広げられていますが、後方のチームカー車列も毎日タイヤを鳴らしながらレースを追いかけています。たかが自転車レースでそんな大袈裟な、と思うべからず。峠の下りときたら選手たちはまるで放たれた銃弾の如くかっ飛んでいきます。

 その後ろでサポートする車は時に時速100kmでカーブに突っ込んでいくこともありますから、やはりチームカーの良し悪しがサポートにも影響します。最近は車高が少し高めのチームカーも出てきましたが、高速でのカーブや自転車の積み下ろしの面からみても、ステーションワゴンタイプが今も主流です。

3機の無線を使い分け

 では車内に目を向けてみましょう。NIPPO・ヴィーニファンティーニの車載装備は、他のチームと比べて非常にシンプルです。

 まずはお決まりの無線機。無線機は各車両に3機載っています。ひとつは選手との連絡用。2つ目はチームカー間の連絡用。3つ目はレースの情報がひっきりなしに流れてくる大会無線の聴取用です。

 選手間、チームカー間の無線の周波数は常に固定されていますが、大会無線は大会毎に指定された周波数に変えてレースに備えます。ちなみにジロ・デ・イタリアの大会無線は3カ国語で情報が入ってきます。はじめにイタリア語が流れ、追って英語、そして最後にフランス語で繰り返されます。はじめのイタリア語で聞き逃した情報は、他言語で繰り返される時に補うことができます。

チームカーの運転席周り。テレビや選手たちのゼッケン番号一覧表が配置される ©NIPPO Vini Fantiniチームカーの運転席周り。テレビや選手たちのゼッケン番号一覧表が配置される ©NIPPO Vini Fantini

 次にテレビ。私たちのチームは今シーズンから搭載されました。他チームではむしろ標準装備ですが、私たちはこれまで大会無線を頼りにレースをこなしていました。もちろん大会無線でも十分なのですが、やはりテレビ中継を見るとさらにレースの状況が明確に理解できます。

 またジロではまずないことですが、それまで散々話していた大会無線が、フィニッシュするなり静まり返ることがあります。そして誰が勝ったのかしばらくわからないという、イタリア人にとってはこの上ないストレスになることもしばしば。そのストレスを解消するためにもやはりテレビの存在は大きいですね。

ゼッケン番号がわかりやすく書かれた選手リスト。大会側から配布される ©NIPPO Vini Fantiniゼッケン番号がわかりやすく書かれた選手リスト。大会側から配布される ©NIPPO Vini Fantini
チームカー同士や選手とのコミュニケーションに使用する無線 ©NIPPO Vini Fantiniチームカー同士や選手とのコミュニケーションに使用する無線 ©NIPPO Vini Fantini

「パラリロ音」にも意味がある

 あとは特に変わった装備もなく、私たちのチームカーは非常にシンプルです。他チームに目をやると、後部座席にメカニック専用のテレビが設置されていたり、タブレット端末を設置して常に選手の心拍、パワー、ケイデンスが表示されているチームもあります。

 あと最近流行りの車内映像撮影のため、数個の小型カメラが車内に搭載されているチームもあります。

選手たちに続いて、大勢の観客たちのなかを走るチームカー。必要があれば限られたスペースを使って前へと上がる ©NIPPO Vini Fantini選手たちに続いて、大勢の観客たちのなかを走るチームカー。必要があれば限られたスペースを使って前へと上がる ©NIPPO Vini Fantini

 クラクションも追加で特殊なものを付けているチームが結構あります。ジロのテレビ中継でもよく聞こえてくると思いますが「パラリロパラリロ♪」と鳴っているのがそれです。あれはただ楽しいから付けているのではないんです。

 集団が落ち着いたタイミングで、選手は補給のためにチームカーを呼び始めます。そうなると後ろのチームカーは大混乱。われ先にと選手のもとに向かおうとしますが、大渋滞でそう簡単に前には上がれません。その時に活躍するのがパラリロ音。これを鳴らすことによって選手はすぐに、自分のチームカーがどこにいるかを耳で察することができます。

 それが付いてない私たちは無線を片手に、巧みな話術を使ってチームカーがどの位置でつっかえているかを伝えます。巧みな話術を持ち合わせている私たちの監督には必要がないかもしれませんが、パラリロ音はそんな役目も担っています。

後部座席はメカニックの戦場

 次にメカニックの戦場である後部座席から後ろの部分。

 まず万が一の時に備えて左後部座席に道具箱を設置しています。使用頻度はあまり高くありませんが、いざという時は変速機交換でもチェーン交換でも、何でも対応できる状態で備わっています。つまりスペアパーツも一式用意されています。

 そして道具箱の上には2ペアのホイールを積み上げます。チームカーは5時間以上右に左に走り回りますから、ホイールが暴れない積み方も大事になります。

後部座席のメカニックスペース。工具箱とスペアホイールが塩梅良く置かれる ©NIPPO Vini Fantini後部座席のメカニックスペース。工具箱とスペアホイールが塩梅良く置かれる ©NIPPO Vini Fantini
選手用の補給食。チームカーからの補給もしばし行われる ©NIPPO Vini Fantini選手用の補給食。チームカーからの補給もしばし行われる ©NIPPO Vini Fantini

 そして座席真ん中に補給食用バッグを備え、トランクルームにはボトルが詰まったクーラーボックスがあります。

 さらにクーラーボックスの後ろには“ボルサフレッド”(寒いバッグ)と呼ばれる、ウインドブレーカーや予備シューズ等が一式詰まった手提げバッグが、各選手分パンパンに積まれています。

いろいろな種類の飲み物がクーラーボックスに入っている。選手のリクエストに応じて渡す ©NIPPO Vini Fantiniいろいろな種類の飲み物がクーラーボックスに入っている。選手のリクエストに応じて渡す ©NIPPO Vini Fantini
レインウエアやスペアシューズなどが入ったボルサフレッド ©NIPPO Vini Fantiniレインウエアやスペアシューズなどが入ったボルサフレッド ©NIPPO Vini Fantini

 これでチームカーはひととおり完成。外から中までまさに戦うための車です。この車で今年のジロは、移動を合わせた総行程5000km以上の23日間を戦い抜きます。

 選手への熱い応援はもちろんですが、ぜひこの日々酷使されているチームカーにも熱い声援をよろしくお願いします!

 それでは、今日も一緒にぼちぼちいきまっせ〜!

福井響福井響(ふくい・ひびき)

1993年3月7日生まれ、大阪府出身。高校時代から自転車競技にめざめ、一般入試を受けて鹿屋体育大学に入学。自転車競技部に入部し、本格的に自転車競技に打ち込むが、そのなかでプロメカニックの存在を知り、大学2回生で選手からメカニックに転向。大学在学時からヨーロッパで活動するチームNIPPOでメカニック研修を積み、2015年、大学卒業と同時にNIPPO・ヴィーニファンティーニに加入。現在は、「本場の自転車競技を日本に普及させたい」という思いのもと、第一線の現場で働いている

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