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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<159>総合優勝候補がほぼ横一線のジロ・デ・イタリア2016前半戦 難関山岳が待つ第2週へ

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ジロ・デ・イタリア2016は、前半戦が終了。向かうは山岳が本格化する第2週へ。まずは大会序盤のオランダステージを含む第1週の戦いを振り返り、今後の戦いの展望や主要トピックをまとめていくこととする。

ジロ・デ・イタリア2016第8ステージ、未舗装区間を進む(右から)イルヌール・ザカリン、ヴィンチェンツォ・ニバリ、ラファウ・マイカら =2016年5月14日 Photo: Yuzuru SUNADAジロ・デ・イタリア2016第8ステージ、未舗装区間を進む(右から)イルヌール・ザカリン、ヴィンチェンツォ・ニバリ、ラファウ・マイカら =2016年5月14日 Photo: Yuzuru SUNADA

個人TTでの雨で総合優勝候補が横一線に 各チーム“第2の男”にも注目

 大会第1週目のヤマ場となったのは、毎年3月に行われるストラーデ・ビアンケ(UCI1.HC)のコースにも使われる未舗装区間が登場した第8ステージ(186km)、続いて登場した個人タイムトライアルによる第9ステージ(40.5km)となった。

ジロ・デ・イタリア2016第8ステージの未舗装区間で攻撃的な走りを見せたアレハンドロ・バルベルデ(右)とヨアンエステバン・チャベス =2016年5月14日 Photo: Yuzuru SUNADAジロ・デ・イタリア2016第8ステージの未舗装区間で攻撃的な走りを見せたアレハンドロ・バルベルデ(右)とヨアンエステバン・チャベス =2016年5月14日 Photo: Yuzuru SUNADA

 特に第8ステージは、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)やヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ プロチーム)が実力の“一端”を現し、ここまで総合首位のマリアローザを着ていたトム・デュムラン(オランダ、チーム ジャイアント・アルペシン)をふるい落とすことに成功。2014年にはストラーデ・ビアンケで12位となり、未舗装区間での走りに自信を覗かせていたデュムランを寄せ付けなかった。

 第9ステージは、後半に出走した選手たちが軒並み雨に見舞われ、多くの選手がリスクを負わずイージーに走りきることに徹した。40kmを超える長距離個人TTとあり、天候次第では大差がつきかねないコースレイアウトでもあったが、結果的に有力選手たちは近いタイムでフィニッシュした。

 これが結果的に、今後のレースを楽しみなものとさせたといえよう。総合10位までがマリアローザのジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)から2分以内、総合15位まででも3分以内のタイム差にひしめく状況。誰が優位かといった見方は早計といったところ。もちろん、これまで山岳での逃げやアシストとしてチームに貢献する姿が目立ったブランビッラの大躍進だって起きても不思議ではあるまい。

第9ステージ終了時の総合上位15人

1 ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ) 34時33分04秒
2 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ) +1秒
3 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター チーム) +32秒
4 スティーフェン・クルイシュウィック(オランダ、チーム ロットNL・ユンボ) +51秒
5 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ プロチーム) +53秒
6 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) +55秒
7 トム・デュムラン(オランダ、チーム ジャイアント・アルペシン) +58秒
8 ミケル・ランダ(スペイン、チーム スカイ) +1分18秒
9 ラファウ・マイカ(ポーランド、ティンコフ) +1分45秒
10 ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ プロチーム) +1分51秒
11 イルヌール・ザカリン(ロシア、チーム カチューシャ) +2分9秒
12 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール ラモンディアル) +2分28秒
13 ヨアンエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) +2分31秒
14 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ) +2分54秒
15 リゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール プロサイクリングチーム) +2分56秒

 総合優勝候補の中でも、ランダが第9ステージを上手くまとめた印象だ。昨年のジロ第14ステージ(59.4km個人TT)では、総合優勝のアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)から4分以上の大差をつけられ、それが結果的に総合成績に反映されてしまった(最終的なタイム差は3分5秒)。TTの走りが課題だったが、ライバルとなるニバリからは7秒遅れ、同じくバルベルデには4秒上回っており、トップから2分20秒差のステージ20位は雨の悪コンディションを考慮すれば好走したといえそうだ。大会開幕当初は本調子ではないことを打ち明け、山岳でもライバルの動きに一瞬遅れるなど、その走りが心配されていたが、“本番”となる第2週から本領発揮となるか。

昨年のジロ総合4位のアンドレイ・アマドールは今回、バルベルデと共闘体制をとる =ジロ・デ・イタリア2016第8ステージ、2016年5月14日 Photo: Yuzuru SUNADA昨年のジロ総合4位のアンドレイ・アマドールは今回、バルベルデと共闘体制をとる =ジロ・デ・イタリア2016第8ステージ、2016年5月14日 Photo: Yuzuru SUNADA

 また、有力チームの“第2の男”の存在も押さえておきたい。総合優勝候補のうち、ニバリにはフルサング、バルベルデにはアマドール、ブランビッラにはユンゲルスと、腹心であると同時に、エースに何かあった際の「Bプラン」となり得る選手が控える。ブランビッラとユンゲルスに至っては総合ワン・ツーを占め、アマドールも総合3位につける。こうなるとどうしても互いの関係性が取り沙汰されてしまうが、そのあたりも含めチーム内での立場や序列は第2週での戦いで明らかになるだろう。

ジロ前半戦のトピックス

●キッテル、カンチェッラーラが大会を離脱

 今大会の目玉でもあったマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)、ファビアン・カンチェッラーラ(スイス、トレック・セガフレード)がジロを去った。

今大会はマリアローザを1日着用したマルセル・キッテルだが、第9ステージでリタイア =ジロ・デ・イタリア2016第4ステージ、2016年5月10日 Photo: Yuzuru SUNADA今大会はマリアローザを1日着用したマルセル・キッテルだが、第9ステージでリタイア =ジロ・デ・イタリア2016第4ステージ、2016年5月10日 Photo: Yuzuru SUNADA

 開幕直後のオランダステージ、第2・第3ステージを連勝し大会序盤の主役となったキッテル。1日だけではあったがマリアローザを着用し、今大会3勝目を目指して走ってきたが、第9ステージで未出走となった。

 2014年のジロでは、開幕地アイルランド(イギリス・北アイルランド含む)でステージ2勝を果たしたが、イタリアでのステージを出走できずリタイア。ジロにおけるイタリア本土未勝利が話題となっているが、実のところキャリアを通じてイタリアでのレースで勝利したのは1度きり。それも、アンダー23(23歳未満)カテゴリーで走っていた2010年に、当時得意としていた個人TTで勝ったもので、“本職”のスプリントでは1勝もしていない。

 「ジロから離れることは寂しい」と述べたキッテルだが、まずは今後のレースに向けて休養と調整を優先する構えだ。

ジロ・デ・イタリア2016第9ステージを走るファビアン・カンチェッラーラ。レース後、大会を去ることを表明した =2016年5月15日 Photo: Yuzuru SUNADAジロ・デ・イタリア2016第9ステージを走るファビアン・カンチェッラーラ。レース後、大会を去ることを表明した =2016年5月15日 Photo: Yuzuru SUNADA

 カンチェッラーラは第9ステージを終えた時点で、チームの公式サイトを通じて続くステージの未出走を発表。第1ステージ(9.8km)での優勝とマリアローザ獲得を目標に臨んだが、大会直前に患った胃の不調が原因で力を発揮できず。何とか体調を回復させ、再チャレンジとして第9ステージでの勝利を狙ったが、トップから28秒差の4位に終わった。

 今後の目標などは明らかにしていないが、当面は体調の回復に努める。今シーズン限りでの現役引退を表明しているカンチェッラーラにとって、最後のジロ・デ・イタリアが終わった。2007年、2009年、そして今回と計3回出場し、いずれも途中リタイアとなった。

●500台以上のバイクがいずれも“合格”に

 シクロクロスでのモーター搭載や、UCIアジアツアーでの規則違反バイクの使用など、「メカニカルドーピング」が大きな話題となっているレースシーンだが、ジロでも不正がないよう厳しいチェックが行われている。

 国際自転車競技連合(UCI)は、出場チームが大会に持ち込んでいる計500台以上のバイクを5日間にわたってチェック。結果はいずれも“合格”。

 UCIのテスト担当者は、クランク部分とボトムブラケット部分を中心に、フレーム全体を専用の機械を用いてスキャニング。いずれからもモーターは検出されず、レース使用に問題がないバイクと認められた。

 大会期間中を通じ、バイク検査は継続される。最終的には、延べ2000台分はジロの現場にてチェックされると見られている。

ジロ・デ・イタリア 第10~15ステージ展望

●5月17日(火) 第10ステージ カンピ・ビゼンツィオ~セストラ 219km 難易度★★★

 序盤・終盤と合わせて4つのカテゴリー山岳が登場。レース終盤に迎える1級山岳ピアン・デル・ファルコは頂上を目前に勾配が厳しくなることから、有力選手の仕掛けどころとしてもってこい。そしてラスト7.5kmは3級山岳セストラの頂上を目指す。総合争いのうえでは、まず遅れないことが大切となる。

●5月18日(水) 第11ステージ モデナ~アーゾロ 227km ★★★

 スタートから約200kmにわたって続く平坦路。しかし、ラスト20kmからはそれが一変。4級山岳モルセッラ・モスタッキンは最大勾配16%。その後も細かいアップダウンが続き、ラスト4kmでは500mにわたる石畳の上りが待ち受ける。ラスト3kmからは下り基調となり、猛然とフィニッシュへとなだれ込むことが予想される。

●5月19日(木) 第12ステージ ノアーレ~ビビオネ 168km ★

 本格的な山岳ステージ突入を前に、ひとときのボーナスともいえるオールフラットなコースレイアウト。強風や雨に見舞われると波乱が起きないとも限らないが、おおむねスプリンターのための1日となるはずだ。また、総合を狙う選手たちにとっても、リスクは避けたいところ。不用意な落車やトラブルには要注意。

●5月20日(金) 第13ステージ パルマノーヴァ~チヴィダーレ・デル・フリウーリ 170km ★★★★★

ジロ・デ・イタリア2016第13ステージ コースプロフィール  ©RCS SPORTジロ・デ・イタリア2016第13ステージ コースプロフィール  ©RCS SPORT

 第2週最大の注目となる山岳3連戦がこの日から始まる。登場する1級・2級それぞれ2つずつのカテゴリー山岳は、いずれも最大勾配15%前後。最後の上りをクリアすると、6.6kmのダウンヒルとフィニッシュまで7.3kmの平坦。総合を狙う選手数人が協調体制を組んでライバルを蹴落とす動きに出る可能性がある。

●5月21日(土) 第14ステージ アルパーゴ(ファッラ)~コルヴァーラ 210km ★★★★★

ジロ・デ・イタリア2016第14ステージ コースプロフィール  ©RCS SPORTジロ・デ・イタリア2016第14ステージ コースプロフィール  ©RCS SPORT

 1級から3級まで、占めて6つのカテゴリー山岳を通過。ドロミテ山脈の山々を行く1日は、距離が長いこともあって有力チームの山岳アシストたちが先行し、レース後半でのエースの合流を待つ形をとる様子が見られるかもしれない。フィニッシュ前約5kmのポイントには勾配19%の激坂が登場。あらゆる展開が考えられるステージだ。

●5月22日(日) 第15ステージ カステルロット~アルペ・ディ・シウージ 10.8km山岳個人TT ★★★★

ジロ・デ・イタリア2016第15ステージ コースプロフィール  ©RCS SPORTジロ・デ・イタリア2016第15ステージ コースプロフィール  ©RCS SPORT

 スキーリゾート地アルペ・ディ・シウージを目指す山岳個人TT。スタートから1.8km地点から上りが本格的に始まり、フィニッシュ手前約2.5km地点で最大勾配11%に達する。平均勾配は8%。歴戦のクライマーにとっても、ペース配分とリズムが重要となる。このステージでのタイム差が最終週へと反映されることも考えられる。

今週の爆走ライダー-プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、チーム ロットNL・ユンボ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 5年前までスキージャンプ選手だったという異色の経歴は、このジロで話題となるのに十分すぎるものだ。何より、2007年には世界ジュニア選手権・団体の優勝メンバーだったのだから、レースで活躍をすればするほど彼の過去はクローズアップされる。

キャリア最大の勝利にポディウムで喜びを爆発させるプリモシュ・ログリッチェ =ジロ・デ・イタリア2016第9ステージ、2016年5月15日 Photo: Yuzuru SUNADAキャリア最大の勝利にポディウムで喜びを爆発させるプリモシュ・ログリッチェ =ジロ・デ・イタリア2016第9ステージ、2016年5月15日 Photo: Yuzuru SUNADA

 もちろん、ジャンパーとして誰よりも遠くへ飛びたかった。でも、20歳を過ぎた頃に気が付いたのだという。「ジャンプでは世界の頂に立てない」ということを。

 瞬発力が必要とされるスキージャンプと自転車とでは、使う筋肉が異なるのだという。ただ、自転車を買い、実際に乗ってみると自らに適性があることを感じた。それを機にサイクルロードレースの世界へと飛び込んだ。

自身初の長距離個人TTで勝利を収めたログリッチェ =ジロ・デ・イタリア2016第9ステージ、2016年5月15日 Photo: Yuzuru SUNADA自身初の長距離個人TTで勝利を収めたログリッチェ =ジロ・デ・イタリア2016第9ステージ、2016年5月15日 Photo: Yuzuru SUNADA

 もう1つ、自らも驚く出来事に遭遇した。勝利したジロ第9ステージは、ログリッチェにとってキャリアで初めての長距離個人TTだったのだ。これまでは、今年3月のティレーノ~アドリアティコ第7ステージの10.1kmが最長距離。チームTTでは60km近い距離を走ったことがあったものの、40.5kmもの孤独な戦いは未知の領域だった。

 それも、スタート前にメカトラブルに見舞われバイクを交換。サイクルコンピュータとドリンクのボトルをバイクに装着し忘れたうえ、スタート台に立ったのが出走20秒前。慌しくコースに飛び出したが、それが逆に発奮材料となった。有力選手たちが雨に見舞われる幸運も手伝ったが、思いがけず舞い込んだ勝利に喜びもひとしおだ。

 プロデビュー前から総合力には定評があった。今後のステージでは、クルイシュウィックの山岳アシストとしても期待される。将来性を示す絶好のチャンスだ。

 自身のホームページで、借り物のバイクで初めてレースに出場したときの写真とともに、勝利の喜びをつづった。トップライダーとしてのキャリアは、まだ始まったばかり。サイクルロードレースシーンに彗星のごとく現れた東欧のタレントにとって、このジロはその先の大躍進を約束させるものになりそうだ。

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、 自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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