ツール・ド・イジェン後半戦キナン、表彰後のどんでん返しでジャイ・クロフォードの個人総合優勝とチーム総合優勝

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 日本登録のUCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」が参戦したインドネシアのUCI国際ステージレース「INTERNATIONAL TOUR de BANYUWANGI IJEN2016」(ツール・ド・イジェン、5月11日から14日開催)。石田哲也監督のレースレポートの「後半」は、第3、第4ステージのもようです。

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キナンサイクリングチームの面々。(左から)石田哲也監督、伊丹健治、阿曽圭佑、ジャイ・クロフォード、ウェズリー・サルツバーガー、リカルド・ガルシア Photo: KINAN Cycling Teamキナンサイクリングチームの面々。(左から)石田哲也監督、伊丹健治、阿曽圭佑、ジャイ・クロフォード、ウェズリー・サルツバーガー、リカルド・ガルシア Photo: KINAN Cycling Team

第3ステージ:伊丹、渾身のアタックも捕まる

スタートサインをする阿曽とサルツバーガー。選手・チームだけでなくレース運営スタッフにも日本人が参加している Photo: KINAN Cycling Teamスタートサインをする阿曽とサルツバーガー。選手・チームだけでなくレース運営スタッフにも日本人が参加している Photo: KINAN Cycling Team

 今日はバニュワンギの街中で周回コース。海岸線を約25km走ってから1周約9kmのフラットな周回コースを10周回する127kmの平坦ステージだ。

 翌日の山岳ステージを考えると総合上位陣は動かず、ステージ狙いの選手が逃げるか、集団スプリントが濃厚と思われる。私たち「キナンサイクリングチーム」も危険な逃げには反応して明日に備える体制で挑む。

 レースはやはりスタートからアグレッシブな動きが見られ、集団のペースは落ち着かない。スピードが落ちないまま周回コースに突入し、まず7人が逃げ、そのすぐ後にまた7人抜け出し、最終的に17人の大きな逃げグループが形成された。

 キナンサイクリングチームからは伊丹健治がその逃げ集団に加わってタイム差は徐々に1分、2分と開いていく。先頭の逃げグループのメンバーの中には総合上位選手を抱えるチームのアシスト選手や、逃げ切りたい選手の色々な思惑が絡んで上手く協調しないようだが、それでも人数が多いため、メーン集団とのタイム差は開いていく。

スタート前に補給食を摂る阿曽 Photo: KINAN Cycling Teamスタート前に補給食を摂る阿曽 Photo: KINAN Cycling Team

 逃げるメンバーには総合上位に位置する選手は入っていない。最も個人総合成績の良い選手でも、2分半遅れの選手が1人と3分半遅れの選手が数人といったところ。伊丹に情報を伝え、伊丹はそのまま先頭集団で状況をうかがう。

 メーン集団とのタイム差は2分以内なら全く問題のない範囲。集団は個人総合1位を抱えるチームUKYOがコントロール。しかし距離をこなすにつれ3分、3分半と開いていく。雲行きが怪しくなってきたため次の手を考えていたところで、総合2位を抱えるセブンイレブンもメーン集団のコントロ―ルに加わりだした。

 捕まえることが厳しいタイム差だと判断すると、スプリンターを抱えるチームは追いかけなくなる。それは何かと厄介なので次の判断として、キナンサイクリングチームもアシスト選手の足を削ることも考えたが、そうこうしているうちにタイム差は2分半に縮まった。ここまでくれば、後は先頭グループはゴール前に牽制が入り逃げるペースが落ち、そしてメーン集団はゴールに向けてスピードが上がるので、タイム差はさらに縮まるだろう。

レース前にチームカーでくつろぐ選手たち Photo: KINAN Cycling Teamレース前にチームカーでくつろぐ選手たち Photo: KINAN Cycling Team

 逃げ集団とメーン集団とのタイム差が2分を切り、安全圏に入ることが予想できたので、キナンサイクリングチームの総合上位陣は集団待機のままで明日に備えることにした。後は伊丹のゴール勝負に賭ける!

 ラスト1周。ラジオツール(競技用無線)から“55番アタック”と飛び込んできた。伊丹だ。

 逃げ集団の後方で待機を続けていた伊丹の渾身のアタックだった。ゴール前まで単独で逃げを試みるも捕まり、その後のカウンターでアタックしたジェイソン・クリスティが逃げ切り優勝。昨年のツールド沖縄の優勝者にやられた。

第3ステージのスタート地点 Photo: KINAN Cycling Team第3ステージのスタート地点 Photo: KINAN Cycling Team

 レースに“惜”は無いが、やはり悔しい。ゴール後、伊丹は悔しそうな顔でチームカーに戻ってくる。その他4人は、明日に備えて安全にメーン集団でゴールした。

 そしていよいよ第4ステージは最終ステージ、イジェンの山頂ゴールだ。リカルドもジャイもいい位置につけている。最終日は個人総合優勝、チーム総合優勝を総攻撃で狙う。

第3ステージ結果
1 ジェイソン・クリスティ(ニュージーランド、KENYA RIDERS DOWNUNDER) 2時間55分57秒
2 マ・ガンドン(中国、WISDOM-HENGXIANG CYCLING TEAM) +33秒
3 IMAM Arifin Muh(インドネシア、KFC CYCLING TEAM)
8 伊丹健治(キナンサイクリングチーム)
26 リカルド ガルシア(スペイン、キナンサイクリングチーム) +1分52秒
27 ウェズリー・サルツバーガー(オーストラリア、キナンサイクリングチーム)
46 ジャイ・クロフォード(オーストラリア、キナンサイクリングチーム)
55 阿曽圭佑(キナンサイクリングチーム)

第3ステージ後の総合時間順位
1 ベンジャミン・プラデス(スペイン、チームUKYO) 10時間39分15秒
2 フィリップ・マルセロ(フィリピン、7-ELEVEN – SAVA RBP) +4秒
3 リカルド・ガルシア(スペイン、キナンサイクリングチーム) +6秒
7 ジャイ・クロフォード(オーストラリア、キナンサイクリングチーム) +10秒
25 阿曽圭佑(キナンサイクリングチーム) +3分36秒
73 ウェズリー・サルツバーガー(オーストラリア、キナンサイクリングチーム) +21分21秒
76 伊丹健治(キナンサイクリングチーム) +23分36秒

第4ステージ:ジャイがステージ優勝、個人総合優勝

スタートサインをするジャイ・クロフォード。最終ステージに逆転が懸かる Photo: KINAN Cycling Teamスタートサインをするジャイ・クロフォード。最終ステージに逆転が懸かる Photo: KINAN Cycling Team

 最終日、頂上ゴールでジャイ・クロフォードが2位でフィニッシュするも、ステージ優勝者の不正発覚により繰り上がりステージ優勝となり、ジャイが個人総合優勝! リカルド・ガルシアも個人総合2位に上がりチーム総合時間賞1位を獲得、ツールド熊野へ向けて好調ぶりをアピールした。

 この日のレースは、海岸の道を約100km走ってからイジェン山の頂上まで1800mを一気に駆け上がって山頂ゴールする。まさにクライマーのためのステージだ。ここに賭けた我々は、ジャイとリカルドを守り前半の100kmを集団前方でこなす。

 ゴールの上りまでに8分差まで開く逃げができるも、その後のコースを考えると吸収されるタイム差の範囲。

女性ファンとの記念撮影に応じるクロフォード Photo: KINAN Cycling Team女性ファンとの記念撮影に応じるクロフォード Photo: KINAN Cycling Team
第4ステージのスタート地点 Photo: KINAN Cycling Team第4ステージのスタート地点 Photo: KINAN Cycling Team

 上りに入るまで、伊丹がひたすらアシスト役をかって出てくれた。飲むためのボトル、頭にかける水、食事。30分おきにチームカーまで下がって5人分を1人で引き受け、集団の前方へ上がる。

 前半の100kmの間で5回以上は集団とチームカーの間を行き来している、それに加えてエースのトイレに立ち合い、用をたしたら集団へ引き上げる。こんな裏方の仕事をこなすアシストがいるおかげで、エースが集中してレースを走ることができるのだ。

最後の勝負どころ、イジェン山 Photo: KINAN Cycling Team最後の勝負どころ、イジェン山 Photo: KINAN Cycling Team

 伊丹の働きで4人は山に備えて着々準備を進めた。そして100km過ぎ、バニュワンギの街を通過して大きく右に曲がると最後の山場、そびえ立つイジェン山が目の前に現れ、最後の勝負どころが始まった。ワントラブルでタイムを失う状況に、チームカーも緊迫する。

 上り始めるとすぐにスプリンターやそれまで集団をコントロールしていたアシスト選手たちが遅れはじめ、その後もみるみるうちに次々と選手たちが遅れ出す厳しい状況。チームカーで遅れた選手たちをパスしながら勾配が増していく山道を進むが、今度は車が次々とオーバーヒートして立往生する。勾配がきつすぎて上れないのである。

猛烈な急勾配が続くイジェン山の上り Photo: KINAN Cycling Team猛烈な急勾配が続くイジェン山の上り Photo: KINAN Cycling Team

 一度停まると、クラッチをつなげる時に焦げた匂いと大きな煙で周りは真っ白になる。そのまま止まらないようにチームカーを進めたが、審判車も止まり、チーフコミッセールがバイクに乗り換えて審判を続けるほどだった。

 そして、それまでサポートに徹していた阿曽を山の中腹でパス、ウェズリー・サルツバーガーを残り5kmでパス、そしてリーダージャージを着るチームUKYOのベンジャミン・プラデスと一緒に走るリカルドをパスして、20kmの上りもあと3km。前にいるのはあと2人。次に見えてきたのが、ジャイ。1人だ…。

 昨年のディフェンディングチャンピオンのポーリー・ペーターに2分先に行かれている。頑張れジャイ! 後ろは来ない。が、前も遠い…。ホワイトボードで知らされるポーリーとの差は縮まらず。渾身の走りで2位フィニッシュした。

単独2番手を走るジャイ・クロフォード Photo: KINAN Cycling Team単独2番手を走るジャイ・クロフォード Photo: KINAN Cycling Team

 その後、リカルド、ウェズリー、阿曽とゴールしてくる。アシストに徹した伊丹も無事に上り切った。結果は上出来である。優勝は逃したものの、個人総合2位、3位とチーム総合優勝という大切なものを手に入れられた。

 …と思っていた。

チーム総合優勝に輝き、表彰台の中央に5人で上る Photo: KINAN Cycling Teamチーム総合優勝に輝き、表彰台の中央に5人で上る Photo: KINAN Cycling Team
個人総合2位にクロフォード、3位にガルシアが入り表彰。ところがこの後さらにどんでん返しが… Photo: KINAN Cycling Team個人総合2位にクロフォード、3位にガルシアが入り表彰。ところがこの後さらにどんでん返しが… Photo: KINAN Cycling Team
クロフォードは総合山岳賞でも表彰台に Photo: KINAN Cycling Teamクロフォードは総合山岳賞でも表彰台に Photo: KINAN Cycling Team

 ところが、なんと表彰後にクレームが。優勝したポーリー・ペーターは出走サイン後、スタート直前にそれまで乗っていた自転車から「フロントディレーラーなし、フロントギアはシングル」という、規則違反の可能性のある自転車に乗り換えて出走したという不正クレームがいくつかのチームから入った。

 その自転車は没収され、審判の審議の結果…ジャイのステージ優勝、個人総合優勝が決定! リカルドも個人総合2位となり、チームみんなの頑張りのおかげでチーム総合1位となった。

 今回も応援をしてくださった皆様、本当にありがとうございました。次戦もインドネシアで5月19日から23日の期間で開催される「tour de FLOLES」に同じメンバーで挑む。これからも応援よろしくお願いいたします。

閉会式で改めてイエローのリーダージャージがクロフォードに渡され、個人総合優勝の栄誉が称えられた Photo: KINAN Cycling Team閉会式で改めてイエローのリーダージャージがクロフォードに渡され、個人総合優勝の栄誉が称えられた Photo: KINAN Cycling Team

ジャイ・クロフォードからのメッセージ

日本にいるKINAN Cycling Teamファンのみなさんへ:

 わがチームへの最大限の応援、いつもありがとうございます。

 我々はみなさんからのサイクリングへの熱き情熱を感じており、それが最高の結果を残すための源となっています。

 ツアー・オブ・ジャパン、ツール・ド・熊野でぜひお会いしましょう。

第4ステージ結果
1 ジャイ・クロフォード(オーストラリア、キナンサイクリングチーム) 3時間53分02秒
2 SURYADI Bambang(インドネシア、BLACK INC CYCLING TEAM) +2分01秒
3 GRIFFIN Logan(ニュージーランド、BLACK INC CYCLING TEAM) +2分41秒
5 リカルド・ガルシア(スペイン、キナンサイクリングチーム) +2分50秒
19 ウェズリー・サルツバーガー(オーストラリア、キナンサイクリングチーム) +7分34秒
27 阿曽圭佑(キナンサイクリングチーム) +9分35秒
66 伊丹健治(キナンサイクリングチーム) +26分33秒

総合時間順位・最終
1 ジャイ・クロフォード(オーストラリア、キナンサイクリングチーム) 14時間32分17秒
2 リカルド・ガルシア(スペイン、キナンサイクリングチーム) +2分56秒
3 DADI Suryadi(インドネシア、TERENGGANU CYCLING TEAM) +3分05秒
22 阿曽圭佑(キナンサイクリングチーム) +13分11秒
47 ウェズリー・サルツバーガー(オーストラリア、キナンサイクリングチーム) +28分55秒
71 伊丹健治(キナンサイクリングチーム) +50分09秒

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