雨と泥しぶきで視界はほぼゼロ…泥だらけの84km、日本の4選手が全員完走 MTBマラソン世界選手権

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 フランス・オルナンで10月7日に開催されたUCI「MTBマラソン世界選手権」。日本からは門田基志(TEAM GIANT)、松本駿(TREK)、池田祐樹(TOPEAK・ERGON)、藤本弥之助の4人が出場し、全員が完走を果たした。池田選手からのレポートをお届けする。

レースへ備えて試走。眼下にはフランスの街並みが広がるレースへ備えて試走。眼下にはフランスの街並みが広がる

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 84kmのワンウェイ・マラソンコースは、降り続いた雨の影響で完全に泥コンディション。タイヤや機材は泥を考慮したセッティングが必須となった。もともとハードなコースな上に、泥で滑る危険なセクション、担ぐセクションが増え、試走の段階からかなり苦戦を強いられた。

世界ランキング順により最後列からスタート世界ランキング順により最後列からスタート

 レース当日も朝から雨だったが、万全の準備に不安はない。スタート順は、世界ランキングにより決まるため、最後列。いつかは日本でもポイントレースを作り、この順番を前へと上げていきたい。

 137人がスタートすると、上から降る雨と下から巻き上がる泥しぶきで視界はほぼゼロ状態だ。路面状況が見えず、落車もあり、非常に危険な状況だったが最初の平坦セクションで乗り遅れないためにも必死に着いて行った。

 次の長い登りは、後半戦を意識しながら自分のペースをキープしていく。泥セクションはたくさんのライダーで路面が掘り返され、試走時よりも難易度は格段にアップしていた。冷静かつ、攻め気を忘れずに下った。

 途中、気になったのが普段痛くならない腰の痛み。なかなかエンジンがかからないのがもどかしい。9月16日の「セルフディスカバリーアドベンチャー・イン・王滝」で、右ハムストリングス肉離れを起こし、練習不足だった影響だろうか…しかし、レース中に一切の言い訳はない。前を見るしかない。

 泥がバイクの駆動部に積もり始め、次第にギヤチェンジが上手くいかなくなる。ボトルのスポーツドリンクを吹きかけて泥を落とすが、フロントはビッグリングに固定されて動かない。何度か止まって、泥を掻き出すがすぐに同じ症状になってしまう。今回は、日本で泥レースの経験が豊富な門田選手、松本選手ですら驚くほどのコンディションだ。

 焦る気持ちを封じて、立ちこぎでとにかく踏む。気持ちが吹っ切れたためか、前のライダー達を徐々に追い抜き始めた。足の強いドイツの選手とスイスの選手に平坦と登りで後ろに着き、高速ペースにのっかることができた。まだまだこれからだ。

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試走場面。泥レースの経験者にアドバイスをもらいながら、入念に準備をした試走場面。泥レースの経験者にアドバイスをもらいながら、入念に準備をした

 距離が短い女子コースに合流。少しずつ追い抜き始めるも、上位の女性選手達の強さと追い込み具合には心底驚嘆した。下りでも上りでもほぼ同じスピードで走り、たとえ男子選手に抜かされても、抜き返すぐらいの勢いで必死の形相をして競い合ってくる。日本の女子選手にも、この素晴らしい走りをぜひ見てもらいと感じた。

 第4フィード手前、直滑降の泥の下りで前にいた女性選手が落車。かなりのスピードが出ていたので、避けきれずに彼女のバイクにクラッシュして派手に落車してしまった。顔を含め、身体のあちこちを擦りむき、強打したがなんとか動くようだ。

 バイクはステムとサドルが曲がったが、「TOPEAK(トピーク) Mini 20 Pro」で修復。アドレナリン効果で痛みもあまり感じずに、すぐにレースへ復帰できた。

 フィードゾーンでは、サポーターが日本人トップからのタイム差を教えてくれる。サポーターの人数が限られていたため、日本人トップから30分以上遅れたらボトルだけ置いて先行を優先することになっていた。門田選手、松本選手は、ほぼ同スピードで前にいるようだ。まずは2人に追いつきたいが、その数分差が埋まらない…。

 後半は、生乾きの泥セクションが多くなり、タイヤが進まない場面が増えてきた。降りるタイミング、泥の乗り方、歩き方、メカなどの対処方法に戸惑い、再び後れを取る。経験不足を実感した。

 どんどん遅れていくのは、涙が出るほど悔しくて仕方がないが、今はこの瞬間でできることを精一杯やるしかない。世界に挑戦するためにフランスまで来ているのだ。応援してくれるたくさんの人に応えるためにも心だけは絶対にあきらめてはいけない。泥で固まった重いギヤが足に堪えながらも、最後まで強く踏み抜いた。

誰だか判らないくらいに泥だらけでゴール誰だか判らないくらいに泥だらけでゴール

 誰なのかも判別できないほど泥だらけになり、身体も機材もこれ以上ないくらいボロボロでのフィニッシュ。46選手が棄権した中、日本人選手は全員が完走を遂げた。

 機材、精神、体力、技術のすべてを試された今回のレース。自身の未熟さが露呈し、世界との圧倒的な差を見せつけられた。トレーニング計画を見直し、世界のトップで通用するライダー…いや、世界のトップを目指すモチベーションとなった。

 MTBマラソン世界選手権は、年々規模が大きくなり、競技レベルが上がってきていることも見逃せない。“チームジャパン”一同、気を引き締め、来年、成長した姿を世界へ見せつけられるよう挑戦し続けたい。

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“チームジャパン”のメンバーと“チームジャパン”のメンバーと

 コース途中、山中にあるいくつかの小さな集落を駆け抜けた。フランスの古い建物が、海外レースに来ていることを改めて実感させてくれた。

 観客が、見どころをしっかり押さえていることも興味深い。過酷なセクションでは、必ずと言ってよいほど声援が聞こえてくる。アクセスが非常に難しい、断崖絶壁の上を走るセクションにも観客がいたことには驚かされた。

 また今回、現地ガイドを経験するスタッフが移動・言語面をサポートしてくれたことや、7つのフィード・テックゾーンでスタッフが全面的にバックアップしてくれたことを、心から感謝したい。

(レポート・写真提供 池田祐樹)

日本選手結果(84km)
1  ILIAS Periklis(ギリシャ、Protek) 4時間18分17秒
62 門田基志(TEAM GIANT)  +1時間07分34秒
68 松本駿(TREK)            +1時間10分53秒
79 池田祐樹(TOPEAK・ERGON)       +1時間32分34秒
84 藤本弥之助               +2時間15分27秒

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