スマートフォン版はこちら

Cyclist編集部員も参加再び走り始めた熊本のサイクリストたち ラファが支援の「ライド・フォー・熊本」<前編>

by 澤野健太 / Kenta SAWANO
  • 一覧

 サイクルウェアブランド「Rapha」(ラファ)が熊本地震の支援のために各地でサイクリストに募金を呼びかけながら、8日間のチャリティーライドを行う「Ride For Kumamoto」(ライド・フォー・熊本)がゴールデンウィークの10日間行われた。4月29日に岐阜を出発し義援金を集めながら各地でチャリティーライドを楽しむイベントは、5月7日に最終目的地の熊本県阿蘇郡小国町に到着。5月7、8日の2日間に渡って、熊本を走って支援するイベントに156人が参加した。熊本に縁のあるCyclist編集部員も阿蘇・小国のライドを堪能。前編は小国の大自然を走った5月7日をレポートする。

7日の110kmライドを終え記念撮影する「ライド・フォー・熊本」の参加者 ©Rapha Japan7日の110kmライドを終え記念撮影する「ライド・フォー・熊本」の参加者 ©Rapha Japan  


 大きな被害を出した地震からまだ3週間。筆者は阿蘇や小国の風景に魅了され、この1年で3回通った。イベント前日に、益城町や阿蘇市を回り、大きな被害を目の当たりにすると、正直自転車に乗っている場合なのか、翌日のイベントに自粛ムードでサイクリストが集まってくれないのではないか。否定的なイメージばかりが浮かんでしまった。

スタート地点の木魂館前に集まったサイクリストたち ©Rapha Japan/ Lee Basfordスタート地点の木魂館前に集まったサイクリストたち ©Rapha Japan/ Lee Basford

再会喜ぶ熊本のサイクリスト

 そんな心配は無用だった。7日の午前7時、小国町の宿泊施設「木魂館」の駐車場は自転車を乗せた車でいっぱいになり、募金箱の前には30人以上の列ができた。地震以来、久しぶりに走るという熊本のサイクリストも多く、あちこちで再会を喜ぶ握手が交わされた。今回のチャリティーライドの拠点となったラファの移動式カフェ「モバイルサイクルクラブ(MCC)」の前には、ラファ・ジャパンの衣本始司さんと合田光宏さんが淹れてくれたコーヒーと、チョコチップの入ったスコーンを食べながら笑顔で語らうサイクリストの輪ができた。

ライド前に参加者にはコーヒーとスコーンが配られた Photo: Kenta SAWANOライド前に参加者にはコーヒーとスコーンが配られた Photo: Kenta SAWANO
再会し笑顔で語り合う参加者たち Photo: Kenta SAWANO再会し笑顔で語り合う参加者たち Photo: Kenta SAWANO

サイクリストから手作り180個スコーン

熊本県山都町の「bread&cakeチポリーノ」で焼き上げたばかりのスコーンを手にする竹本有紀さん Photo: Kenta SAWANO熊本県山都町の「bread&cakeチポリーノ」で焼き上げたばかりのスコーンを手にする竹本有紀さん Photo: Kenta SAWANO

 スコーンを作ったのは熊本県山都町の竹本憲司・有紀夫妻。有名選手から地元のサイクリストまで集まる自転車に優しいベーカリー「Bread&Cake Cipollino」(チポリーノ)を経営している。まだ子供たちが地震を怖がるために、一家で店の床にマットを敷いて寝る生活を続けながら、180個のスコーンを焼き上げ、参加者に無償で提供した。

 「復興のために熊本に来てくれるサイクリストに自分は何ができるかと考えました。正直、迷惑かなとも思いましたが、当日みなさんがいろんな話をしながら笑顔で食べてくれたので、本当にうれしかったです。このイベントをきっかけに自転車に乗る地元の人もたくさんいてうれしかったです」。真心がこもったスコーンで集まったサイクリストをもてなした。

地面から温泉が吹き出す、わいた温泉の坂を上る ©Rapha Japan/ Lee Basford地面から温泉が吹き出す、わいた温泉の坂を上る ©Rapha Japan/ Lee Basford

110km 獲得標高2700mに挑戦

 小雨も降る中、午前7時30分頃から1日目のライドがスタート。脚力に合わせて選べる3つのコースの中から、小国や阿蘇の景色が一番楽しめるという110km、獲得標高2700mのロングコースを選択した。様々なレベルの参加者を考慮したため、ラファお得意のグラベル(未舗装路)はなかったが、幹線道路はほとんど使わず、地元特産の「小国杉」が左右にそびえる日陰の木立の中を走る。杉の枝や葉が落ち、滑りやすくなった路面に注意しながら一列になっていくつもの山を越えた。

小国の静まった杉木立の中を走るサイクリストたち ©Rapha Japan / Lee Basford小国の静まった杉木立の中を走るサイクリストたち ©Rapha Japan / Lee Basford

 木立の中は涼しく、ホイールが回転する音や、サイクリストの息遣いだけが森の中に響いた。昔話に出てくるような里山を縫うようにアップダウンを繰り返す。足もとから温泉の煙が出る、「わいた温泉」をはじめ、いくつもの温泉を抜ける。前半は日本らしい趣のある道が続いた。

大草原の間の一本道を1列になって走る Photo: Kenta SAWANO大草原の間の一本道を1列になって走る Photo: Kenta SAWANO
牧草を食べる牛の横を静かに走る Photo: Kenta SAWANO牧草を食べる牛の横を静かに走る Photo: Kenta SAWANO

 太陽が顔を見せた後半は、九重連山を目の前に見ながら、鳥のさえずりしか聞こえない瀬の本高原の一本道を進んだ。放牧された牛たちや、野生の鹿を横目に進みながら、参加者からは感嘆のため息が漏れた。阪神大震災も経験し、大阪府から参加した嵯峨公造さんも「こんな美しい景色の中を走ったことがない。また絶対来るわ」と印象に残る風景をたくさん動画に収めていた。

地元熊本県の阿蘇市から参加した森山夏子さん Photo: Mami HIROWATARI地元熊本県の阿蘇市から参加した森山夏子さん Photo: Mami HIROWATARI

 瀬の本高原阿蘇の外輪山の上を通り、乳牛がのんびり草を食べるミルクロードを経由して、小国まで一気に下って戻り1日目が終了。九州全域はもちろん、東京、大阪、四国など全国から初めて小国にやってきたサイクリストは、杉木立と、どこまでも広がる高原のコントラストを目に焼き付けて初日の110kmを走り終えた。

 阿蘇市で被災し熊本市に一時避難していた森山夏子さんは「実際に走った方にはきっと阿蘇や小国の美しさや力強さを感じていただけたと思います。阿蘇も交通や地場産業など深刻な影響を受けこれからが正念場です。このようなイベントをきっかけに、誰もがそれぞれの役割の中で復興につなげていけくれれば」と期待を込めた。

風評被害に矢野代表「地元にお金落として」

九州のサイクリストと談笑するラファ・ジャパンの矢野大介代表九州のサイクリストと談笑するラファ・ジャパンの矢野大介代表

 「最初に熊本で地震が起きた翌日の15日にチャリティーをやろうと決めた」と矢野大介代表は開催を即決。少数精鋭のラファ・ジャパンらしいフットワークの軽さでスタッフ全員とラインで熊本の支援活動について話し合った。当初はMCCに支援物資を集めて載せながら熊本に向かおうとしたが、日が経つにつれ、物資は足りているということが分かり、義援金を集めながらチャリティーライドを行うイベントにしたという。

重なりあう山々の間を縫うように上る ©Rapha Japan / Lee Basford重なりあう山々の間を縫うように上る ©Rapha Japan / Lee Basford
小国は写真に収めたくなる風景の連続だった Photo: Kenta SAWANO小国は写真に収めたくなる風景の連続だった Photo: Kenta SAWANO

 義援金の送り先は、ラファが2014年に「ジェントルメンズ・レース イン小国」(現ラファ・プレステージ)を行った小国町にしようと決めた。矢野代表は「小国は大きな被害はなかったが、観光が主な産業だけに、ゴールデンウィークに向け、旅館やレストランがお金を使って準備していたのに風評被害を受けていると聞き、たくさんのサイクリストが現地に少しでもお金を落としてほしかった」と説明した。

 ラファ・ジャパンのフェイスブックには小国町の宿泊施設や、飲食店が詳細に掲載され、初日のライドを終えた全国のサイクリストはそれぞれ予約した店や宿に向かった。

<後編>九州中の自転車有名人が集結「みんな明るくなった」

フォトギャラリー


関連記事

この記事のタグ

イベント ラファ

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

ショップナビ

スペシャル

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載