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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<157>ジロ・デ・イタリア2016直前展望 4賞ジャージの行方やオランダ3ステージをチェック

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 いよいよ、2016年最初のグランツールであるジロ・デ・イタリアが開幕する。今年で99回目を迎える伝統の“イタリア一周”は、きっとわれわれに驚きと感動をもたらしてくれるだろう。今回は、5月6日に熱い戦いの火蓋が切られるレースを展望。注目選手のピックアップや、6年ぶりに開幕地に選ばれたオランダでの3ステージをチェックする。大会直前の予習にぜひ目を通しておいていただきたい。

オランダで開幕 アルプスが最終決戦地

 今年のジロ開幕は、オランダ中部の都市アペルドールン。3日間をオランダで過ごしたのち、イタリアへと移動する。

オランダで開幕し、第4ステージからイタリアへと舞台を移すジロ・デ・イタリア2016 ©RCS SPORTオランダで開幕し、第4ステージからイタリアへと舞台を移すジロ・デ・イタリア2016 ©RCS SPORT

 しばらくは平坦ステージが続くが、第6ステージ(157km)で山岳が本格的に登場。第8ステージ(186km)では、終盤に未舗装の急坂が登場する。続く第9ステージは、40.4kmの個人タイムトライアル。ここで有力選手たちのコンディションがはっきりしそうだ。

 第2週はイタリア北部の山岳地帯を行く。難関山岳の連続となるドロミテでの第14ステージ(210km)、平均勾配8.6%(最大勾配11%)の10.85km山岳個人TTで、マリアローザ争いのメンバーがある程度見えてくることだろう。

 第3週のアルプス山脈が今大会の最終決戦地。第19ステージ(162km)中盤に通過するコッレ・デランジェロ(標高2744m)が最高標高地点「チーマ・コッピ」に設定された。このステージからフランス領内に入り、ツール・ド・フランスでおなじみのリゾル峠の頂上にフィニッシュ。第20ステージ(134km)は、3つの1級山岳をクリアし、最後は3級山岳サンタンナ・ディ・ヴィナディオの頂上へ。ここで総合首位に立っている選手が、第99回ジロの王者を決定的にする。

 最後はトリノ市街地の周回コースをめぐって、大会の幕を閉じる。個人総合時間賞のマリアローザをはじめ、各賞受賞者が正式に決定する。

ジロ・デ・イタリア2016データ

総走行距離 3463.1km(ステージ平均164.9km)
個人タイムトライアル 3
平坦ステージ 7
中級山岳ステージ 7
上級山岳ステージ 4

4賞ジャージの行方は!? 注目選手をピックアップ

 ここからは、マリアローザを筆頭に4つのリーダージャージ着用者を占っていきたい。

ヴィンチェンツォ・ニバリが総合優勝した2013年以来3年ぶりにジロへ帰ってくる Photo: Yuzuru SUNADAヴィンチェンツォ・ニバリが総合優勝した2013年以来3年ぶりにジロへ帰ってくる =ジロ・デ・イタリア2013、2013年5月26日 Photo: Yuzuru SUNADA

 まずは、個人総合時間賞のマリアローザ争い。その中心に立つのは、ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ プロチーム)、リゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール プロサイクリングチーム)、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)、ミケル・ランダ(スペイン、チーム スカイ)、ラファウ・マイカ(ポーランド、ティンコフ)の5人。

 総合優勝を果たした2013年以来の出場となるニバリは、2月のツアー・オブ・オマーン(UCI2.HC)を制して以降ジロに向けた調整に集中。出場レースでの目立った活躍こそ少なめだが、本番に向けてどこまで調子を上げてくるか。

 2013年から2年連続で総合2位のウランは、精彩を欠いた前回を払拭する走りをしたい。直前のツール・ド・ロマンディ(スイス、4月26日~5月1日)では、無理せず最終ステージでの出走を取りやめたが、山岳ステージではまずまずの結果を残している。

アレハンドロ・バルベルデはジロ初出場初優勝なるか Photo : Yuzuru SUNADAアレハンドロ・バルベルデはジロ初出場初優勝なるか =ラ・フレーシュ・ワロンヌ2016、2016年4月20日 Photo : Yuzuru SUNADA

 順調な仕上がりを見せているのが、バルベルデとランダのスペイン勢。意外にもジロ初出場となるバルベルデは、4月15~17日のブエルタ・ア・カスティーリャ・イ・レオン(スペイン、UCI2.1)で圧勝。続いて出場した同20日のラ・フレーシュ・ワロンヌを制するなど、本人いわく「調整途上」でありながら強さを見せている。

 昨年総合3位、今年は移籍1年目ながらチームからジロの総合エース確約をつかんだランダは、体調不良でシーズンインこそ遅れたが、その分体力を使うことなくこの時期を迎えている。ジロ前哨戦として名高い、4月19~22日のジロ・デル・トレンティーノ(イタリア、UCI2.HC)で総合優勝。いま最も勢いのあるステージレーサーと言えるだろう。

 グランツール初の総合優勝を目指しジロに乗り込むマイカは、4月24日のリエージュ~バストーニュ~リエージュでの落車ダメージが気がかり。ツール・ド・ロマンディでは元気な姿を見せ、山岳ステージではまずまずの走りを見せたが、今シーズンここまでを見るとゆっくりと調整をしている印象。上りでの力強い走りがイタリアで発揮されるか。

 そのほか、総合争いを賑わせそうなのはドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール ラモンディアル)、ヨアンエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)、スティーフェン・クルイシュウィック(オランダ、チーム ロットNL・ユンボ)あたり。流れを引き寄せられれば、総合優勝のチャンスも大いにある。また、2012年王者のライダー・ヘシェダル(カナダ、トレック・セガフレード)も経験に裏打ちされた走りを見せることだろう。

ポイント賞のマリアロッソパッショーネ2連覇を目指すジャコモ・ニッツォーロ ジロ・デ・イタリア2015、2015年5月31日 Photo : Yuzuru SUNADAポイント賞のマリアロッソパッショーネ2連覇を目指すジャコモ・ニッツォーロ ジロ・デ・イタリア2015、2015年5月31日 Photo : Yuzuru SUNADA

 情熱の赤いジャージ「マリアロッソパッショーネ」。ポイント賞首位の選手が着用を許されるこのジャージは、スプリンターが覇権を争う。かつてはステージ難易度を問わず中間・フィニッシュと同数のポイント付与を行っていたが、現在は平坦ステージで多くポイントが与えられるよう設定がなされている。

 前回ポイント賞を獲得したジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、トレック・セガフレード)は、2連覇と合わせて初のステージ優勝を目指す。多くライバルが集まった今回。強敵はアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)とマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)のジャーマンスプリンターだ。

ジロに向けて調子を上げているアンドレ・グライペル =ツール・デ・フランドル2016、2016年4月3日 Photo : Yuzuru SUNADAジロに向けて調子を上げているアンドレ・グライペル =ツール・デ・フランドル2016、2016年4月3日 Photo : Yuzuru SUNADA

 グライペル、キッテルともに早くからジロ参戦を明言。グライペルは4月26日のツアー・オブ・ターキー第3ステージ(トルコ、UCI2.HC)を制し調子を上げている。一方のキッテルもツール・ド・ロマンディ第1ステージを勝利。ここまでシーズン最多勝となる8勝を挙げており、昨シーズンの苦しみは払拭されつつある。

 3月のミラノ~サンレモ制覇が記憶に新しいアルノー・デマール(フランス、エフデジ)は、ツール・デ・フランドルでの落車負傷が順調に癒えていればジロへと臨む。気鋭の21歳、カレブ・イーウェン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)もジロ初出場初勝利を狙う。8月のリオ五輪トラック・オムニアムで金メダルを目指すエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チーム スカイ)は、夏に向けジロから勢いに乗りたい。

 ソンニ・コルブレッリ(バルディアーニ・CSF)、クリスティアン・スバラーリ(ディメンションデータ)、サーシャ・モドロ(ランプレ・メリダ)、ヤクブ・マレチュコ(ウィリエール・サウスイースト)といったイタリアンスプリンターも虎視眈々とチャンスをうかがう。

 スプリンターに限らず、有力選手の中にはツールなど、その後のレースを見越して途中で大会を離脱する選手が現れることが考えられる。ポイント賞の観点においては、厳しい山岳を乗り越え、トリノまで到達するスプリンターが誰になるのかもチェック項目としておきたい。

 山岳賞のブルージャージ「マリアアッズーラ」は、総合争いから遅れたクライマーや、山岳ステージでの逃げを決めた選手に渡るだろう。また、新人賞のホワイトジャージ「マリアビアンカ」は、昨年までハイレベルな勝負を演じた1990年生まれのゴールデンエイジが“卒業”したこともあり、将来を嘱望される新鋭の登場が期待できそうだ。

現役最後のジロに臨むファビアン・カンチェッラーラ。第1ステージでは優勝候補筆頭に挙がる =ティレーノ~アドリアティコ2016、2016年3月15日 Photo : Yuzuru SUNADA現役最後のジロに臨むファビアン・カンチェッラーラ。第1ステージでは優勝候補筆頭に挙がる =ティレーノ~アドリアティコ2016、2016年3月15日 Photo : Yuzuru SUNADA

 その他出場選手では、2009年以来7年ぶりにジロのスタートラインに立つファビアン・カンチェッラーラ(スイス、トレック・セガフレード)、昨年のブエルタ・ア・エスパーニャで総合優勝まであと一歩に迫ったトム・デュムラン(オランダ、チーム ジャイアント・アルペシン)、このほど出場が発表された山本元喜(NIPPO・ヴィーニファンティーニ)など、タレントが豊富。今シーズン限りでの引退を表明しており、“ファイナル・ジロ”となるカンチェッラーラ、そして地元オランダ期待のデュムランは、第1ステージの優勝候補筆頭に挙げられている。

ジロ・デ・イタリア オランダステージ展望

●5月6日(金) 第1ステージ アペルドールン(オランダ)~アペルドールン 9.8km個人TT 難易度★★★

ジロ・デ・イタリア2016第1ステージ コースプロフィール  ©RCS SPORTジロ・デ・イタリア2016第1ステージ コースプロフィール  ©RCS SPORT

 アペルドールンのベロドロームをスタートし、市街地を進む9.8km。選手たちを悩ませるのは、鋭角コーナーよりも車両スピードを抑えるためのバンプやロータリーとなりそうだ。オールフラットといえるレイアウトは、TTスペシャリストの力の見せどころだ。

●5月7日(土) 第2ステージ アーネム(オランダ)~ナイメーヘン(オランダ) 190km ★★

 コース後半の4級山岳が最大勾配12%に上るが、レースに影響を与えることはなさそうだ。ほぼフラットなレイアウトで、スプリンターが勝利をつかむ可能性が高い。終盤のナイメーヘン市内周回コースは、要所でロータリーの通過がありテクニカル。ラスト350mで迎える最終コーナーは落車要注意。

●5月8日(日) 第3ステージ ナイメーヘン~アーネム(オランダ) 190km ★

 オランダ最終日もほぼフラットな1日。この国特有の強風が吹くようだと、集団分断など思わぬ波乱となるかもしれない。アーネム市街地の周回コースで迎えるフィニッシュは、ラスト500mから左へわずかにカーブする。位置取りがステージ優勝争いに関係するかもしれない。

今週の爆走ライダー-クリス・ブックマンス(ベルギー、ロット・ソウダル)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 「まるで僕は生まれ変わったようだよ」。その言葉にここまでの苦労と努力が凝縮する。

 昨年のブエルタ第8ステージ。メーン集団で起きた大規模落車に巻き込まれ、肋骨を3カ所骨折、鼻と顎の骨折、肺の損傷など、複数箇所を負傷。特に顔面のけがは、8時間もの修復手術を行うほど。医学的な昏睡状態に1週間置かれ、再起を危ぶむ声さえあった。

完全復活の日が近いクリス・ブックマンス =ブエルタ・ア・エスパーニャ2015、2015年8月25日 Photo : Yuzuru SUNADA完全復活の日が近いクリス・ブックマンス =ブエルタ・ア・エスパーニャ2015、2015年8月25日 Photo : Yuzuru SUNADA

 冬場にリハビリを開始すると、ブエルタでの悪夢を吹き飛ばすかのごとくスペインでトレーニング。実際にブエルタのコースを走行するなどし、徐々に元気を取り戻した。その甲斐あって、予定を大きく前倒しして3月にはレース復帰。最初はレースペースについていくのがやっとだったが、走るたびに感覚をつかんでいった。

 そして、歓喜のときを迎えた。ツアー・オブ・ターキーではグライペルのスプリントアシストとして機能。第3ステージでは自らも3位に入るなど、3度のステージ上位フィニッシュ。第3ステージで勝利したグライペルをして、「クリスこそこのステージの勝利にふさわしい走りだったんだ」と心から称えた。

 トルコでの8日間では、またしても落車に巻き込まれるなど、不安要素が完全になくなったわけではない。まだまだリハビリも続ける必要がある。

 それでも、「大けがをする前と同じくらいサイクリングを楽しんでいるし、ここまでの経緯を考えると大きな成果を残せている」と表情は明るい。着々と歩んできた完全復活のロードは、確実にフィニッシュラインに近いところまでやってきている。

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、 自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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