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栗村修の“輪”生相談<74>19歳男性「ロードで強くなるためにはトラックもしたほうが良いのでしょうか?」

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19歳の、大学で自転車競技をしている者です。

 自分は大学から自転車競技を始めました。頑張って練習をして昇格することができたので、今年度のインカレや個人ロードなどに出られるようになりました。

 ロードである程度実力がついてきたので、先輩やOBからトラックを始めないかと誘われています。しかし、自分としてはトラックに費やす時間やお金を、ロードに使いたいと考えています。そこで質問ですが、ロードで強くなるためにはトラックもしたほうが良いのでしょうか? また、プロのロードレーサーはみんなトラックを経験しているのでしょうか?

(19歳男性)

 これは、競技を行う方にはとても重要なご質問です。

 ロードレースって、非常に厳しい競技です。それは事実ですし、よく言われていますよね。しかしその一方でロードレースには、矛盾するようですが、時には競技者の能力を弱体化させてしまう恐れもあるんです。

 海外に武者修行に行った日本の選手が、たくさんレースに出たのにどんどん弱くなってしまう…というケースは、実は少なくありません。それはたとえば、力が足りなくて勝負所の前にちぎれてしまうレースが続いた場合などに起こります。

 すぐにちぎれるということは、本当の意味で追い込む前にレースを終えてしまうことになりますから、経験できる強度と時間が偏るんですね。すると当然、色々な場面に対応する力はつきません。しかも、精神的にはネガティブな状態が続きますし、フォームも崩れやすくなります。

 これでは強くなれませんよね。レースできっちり勝負に絡んでフィジカルもテクニックも鍛えて、合わせて日々の練習もこなせて、という正のサイクルに入れれば強くなるんですが、そういう選手ばかりではないのです。

 また、ロードバイクって、無茶なフォームやスキルがない人でも、一応走れてしまうという「弱点」があります。そういう人ががむしゃらに走るだけでは、スキル面も含め、弱体化してしまうかもしれません。

 長い目でみていくと、フィジカルはもちろん、バイクコントロールやペダリングスキルなどのテクニックも広く要求されるトラック競技はおすすめです。

2007年のトラック・ワールドカップのマディソンレースを走る、イギリスのマーク・カヴェンディッシュ(左)とブラッドリー・ウィギンス。最初にトラックレースで名を上げた2人は、その後ロードレースでも世界的な成功を収めた Photo: Yuzuru SUNADA2007年のトラック・ワールドカップのマディソンレースを走る、イギリスのマーク・カヴェンディッシュ(左)とブラッドリー・ウィギンス。最初にトラックレースで名を上げた2人は、その後ロードレースでも世界的な成功を収めた Photo: Yuzuru SUNADA

 トラック競技からは、自転車を進める上で大切なことをたくさん学べます。奇麗なペダリングじゃないと走れないですし、フィジカルがタイムという形でモロに出ますから、実力や課題も認識しやすいんです。

 特に、もし質問者さんが筋肉量の少ないクライマーなら、僕はトラックを強くお勧めしたいですね。筋肉量がない人がロードでダイエットをしても一向に馬力は上がりません。それよりも、トラックで筋力をつけてから絞る、という流れがよいと思います。とくに世界で戦おうとするなら、最低限の馬力がなくては勝負になりませんから。

 オフシーズンなどに、ロードと平行して行う形で全然OKだと思います。あと、シクロクロスやMTBのクロスカントリーもいいですよ。短時間・高強度のフィジカルを鍛えられるだけではなく、ペダリングスキルやバイクコントロールの力も上がります。

 実際に、現在ロードレースの世界で一流といわれている選手のなかにはトラック競技出身の選手は少なくありません。また、MTBやシクロクロス経験のあるロード選手が卓越したダウンヒルテクニックをみせることもしばしばあります。

 たしかに学生さんの場合、トラックなど他の競技に使うお金は、正直痛いかもしれませんね。それでも、やる価値はあると僕は思いますよ。

(編集 佐藤喬)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまでお寄せください。

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