はらぺこサイクルキッチン<60>身体の負担を減らしてパフォーマンスを上げる 池田家の食品添加物との付き合い方
今回は食品添加物とその付き合い方についてお話しします。我が家では、可能な範囲で避けているものの1つ。「食品添加物は全て悪い」とは一概には言えませんし、私もその恩恵にあやかっている1人です。食品添加物を摂ることを気にしない方、なるべく避けている方、必ず原材料を見て極力摂らない方、自給自足している方、それぞれの価値観や環境で、中には家庭内でも夫婦で捉え方が異なるなど、それぞれの付き合い方があると思います。
池田家の考え方
そもそも、食品添加物とは―。厚生労働省によると、「食品添加物は、保存料、甘味料、着色料、香料など食品の製造過程または食品の加工・保存の目的で使用されるものです。厚生労働省は、食品添加物の安全性について食品安全委員会による評価を受け、人の健康を損なうおそれのない場合に限って、成分の規格や、使用の基準を定めたうえで、使用を認めています」(厚生労働省 HPより引用)

食品添加物がもたらす危険性や安全性について知りたいと思えば、今ではインターネットや書籍で知ることができますし考え方も様々ですので、ここで全てを語ることは避けますが、私からお伝えできることは、これは「正しい」か「正しくない」か、といったことではなく「池田家の食品添加物の考え方と、付き合い方」です。
夫の池田祐樹(トピーク・エルゴンレーシングチームUSA)は、学生時代はもとより選手になってからの数年間も、いわゆる「ジャンクフード」が大好きでした。しかしここ2年以上は、食品添加物をなるべく摂らないように留意しています。それは、一言で言えば「パフォーマンスに影響するから」と判断したからです。
アスリートはカラダが資本ですから、食に気を使うのもプロとして仕事の一つ。食べ物がカラダを作る。体力と集中力を必要とする中で、1秒でも結果に繋がるのであればいいものを摂りたいし、同時にカラダ造りを阻害する要因は取り除きたいと思っています。
食中毒の危険性から守る役割
海外のトップ選手が既に実践していた、という影響もありました。消費した分を補う、単なる「カロリーで食べるものを判断していた食事」から、「質のいいカラダを作る食事」へと意識が変わったのです。ここでいう「質のいいカラダ」というのは「細胞レベルで健康である」ということです。

その一方で、シーズン中は世界中を旅していますので、必ずしも自分が理想とする食事が取れるとも限りません。そんなときは有難くいただきますし、事前に栄養を補助する食品を準備するなど、臨機応変に対応しています。
今現在も震災の影響で九州地方には、避難生活を余儀なくされ選り好みなんてとんでもない、という環境にいらっしゃる方も大勢いらっしゃいます。私の祖母の家も避難勧告が出た市に住んでいますので、他人事ではありません。私も同じ環境に身を置いたならば、食べるものがあるだけで有難いと思うでしょう。
震災などで交通網が乱れた際は、食料の発送から実際に人の手に渡るまでいつも以上に輸送時間がかかります。食品の質を保つための保存料は、食中毒の危険性から身を守ってくれるという大きな役割を担っています。
ホールフードで美肌
自分で食べるものを選択できる環境にあるとき、何を選ぶかということで極端なことを言えば、その後の人生も変わってくると思います。一般的には1日3食365日のことですから、逆を言えば変わらないわけがないのです。ご存知の通り自分のカラダを作る主たるものは、食事です。日本で認められて使用されている食品添加物の中には、海外では使用が禁止されているものや、発ガン性が疑われるものもあります。
病気になっても、他人が代わってくれるわけではありません。使用が認められているといっても、最終的には自己責任で選択をするということが重要になってきているのだと思います。グルテンフリーの生活を3カ月間継続したことをレポートしましたが、グルテンが使われている食品は加工された製品であることが多く(インスタントラーメン、パン、クッキーなど)、そこには食品添加物も使われていました。

このときは素材そのもの(ホールフード)を購入して調理することが増え、結果的にその間が「加工食品を摂らない」期間に直結しました。因果関係は定かではありませんが、肌のトーンが明るくなり、祐樹さんの肌が以前に比べて見るからに美肌になりました。
これがきっかけでホールフードが習慣になったのも、グルテンフリー生活で得た恩恵だと思っています。美肌になったというのは氷山の一角で、カラダの中ではもっといいことが起きていたのだと思います。
カラダの声を聴く
反対に「取らなすぎても外食したときにカラダが対応できなくなる。アレルギーでなければ、ある程度取った方がいい」というのが、私の父の持論です。「ワシは食べても平気」と何でも食べます。でも私は、何か反応がでるということはむしろ健康である証拠だと考えています。私が小学生だったある日、某イカの駄菓子を食べ過ぎた数分後に、激しい頭痛を感じました。ラベルの原材料を見て「なるほどね」と学んだことを、今でも鮮明に覚えています。
このことは、食事とカラダの関係性を意識し始めたきっかけでもありました。先日も送別会のため居酒屋で食事をした後、私は全身にじんましんが出ましたが、こういった反応は「貴重なカラダの声」として捉えています。「添加物を含むものを食べたでしょう。ほどほどにしておいてね」と。
じんましんほど分かりやすい反応ではなくとも、ちょっと頬がかゆい、便秘になる、肌のトーンが暗い、視界が鈍る、何だかだるい…といった症状で出ることもあります。食べても全く変わらなければ、そのまま食べ続けて、カラダに蓄積していくという可能性もあります。

解毒に費やすエネルギー
食品添加物は人類の長い歴史に比べれば突然生まれたもので、DNAには組み込まれていない新しいものです。腸や肝臓で解毒されますが、まだカラダが容易に対応できず、解毒にはかなりのエネルギーを費やすと言われています。異物が入ったというサインを出しているカラダには「分かったよ」と応えてあげることが大事だと思います。

このように「解毒に費やすエネルギーを、栄養の消化吸収や筋肉の修復、疲労回復に回したい」という観点からも、食品添加物を避けている理由の一つです。また、日本は海外に比べて認められている食品添加物の項目が多いことは前述しましたが、その摂取量は年間1人当たり4~7kgとも言われています。「キログラム」という単位にそもそも驚きました。肝臓はかなりの労働を強いられているかもしれませんね。
余談ですが、以前通っていた料理教室の先生から「食品添加物を多く取る人はホクロが多い」と聞いたことがあります。遺伝性要因もあると思いますが、海外に赴いて選手を観察していると、確かに海外の人は殆ど顔にホクロがありません。食品添加物との直接的な因果関係は分かりませんが、なぜだか日本人は海外の人に比べて圧倒的にホクロが多いのです。機会があればぜひ観察してみてください。
小さな変化を見逃さないで
現役生活を長く続けるということは、ひいては引退後も健康であるということにも繋がります。特にプロレベルのアスリートはお世辞にも健康とは言えないほど極端に激しい運動、血糖値の急上昇を促すドリンクやジェルの過剰摂取で、むしろ不健康に近い生活を送っています。池田祐樹がそうでした。しかし、これからの時代は「健康であるからこそ、長く現役生活を続けられる」と思うのです。
例えば有機栽培のものが手に入らなくても、食品添加物の摂取を控えるだけでも、人によっては変化が見られることでしょう。朝気持ちよく起きられるようになる、腸の調子がよくなる、思考がクリアになる、何をやっても減らなかった体重がストンと落ちた…など、自分にしかわからない小さな変化も見逃さないでください。
食品添加物だけが全てではないし、完全に避けることは難しいけれど、自分で選べるときには気をつけてみる、そしてその変化を観察してみる。頭で理解することも大事ですが、このような過程があってこそ習慣になるのだと思います。

時には加工食品に頼ってラクをさせてもらうこともありますが「安価で売られているものは、それでも利益がでる材料と仕組みがある」ということ、「ファーストフードは、時間もお金も節約しない」ということ、「丁寧に出汁を取ることは、決して時間の無駄ではない」ということを胸に秘めています。
健康を害したときの時間とお金は、数倍になって返って来る可能性があります。健康を害するリスクが高くなるなら、できるだけ避ける。そして、異物が入ったというサインを見逃さず「分かったよ」と応えてあげること。
競技人生を長くするのも、強くなるのも結局は健康あってこそ。世界でたった1人の自分自身のため、自分を愛する人のために、カラダを大事にしたいものです。誰も強制することではありません。どんなことでも選択は自分次第、ですね。

アスリートフード研究家。モデル事務所でのマネージャー経験を生かし2013年夏よりトピーク・エルゴンレーシングチームUSA所属ライダー、池田祐樹選手のマネージメントを開始、同秋結婚。平行して「アスリートフードマイスター」の資格を取得。アスリートのパフォーマンス向上や減量など、目的に合わせたメニューを日々研究している。ブログ「Sayako’s kitchen」にて情報配信中。