「イーバイク・フェス」現地レポート<上>電動アシスト自転車で世界一の“プレミア・シティ”へ 独ドルトムントで欧州最大の展示会開催

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人口58万のドイツ中西部の都市ドルトムントで、「イーバイク・フェスティバル」が開催された Photo: Aki KARASAWA人口58万のドイツ中西部の都市ドルトムントで、「イーバイク・フェスティバル」が開催された Photo: Aki KARASAWA

 「E(イー)バイク」と呼ばれる電動アシスト自転車の利用が進み、市場の盛り上がりが止まらないヨーロッパ。中でもドイツはイーバイクへの関心が急速に高まり、売上高は2位のオランダにおよそ2倍の差をつけるほどの勢いだ。ドイツ中西部の都市ドルトムントで4月15日から17日、欧州最大規模のイーバイクのイベント「イーバイク・フェスティバル ドルトムント 2016」が初開催され、約5万人が会場を訪れた。冠スポンサーはシマノ・ヨーロッパ。ほかに100を超える出展社が集まり、熱気に包まれた会場へ足を踏み入れた。

開かれた展示スタイル

 メーン会場となったのはドルトムントの中心街。教会の周囲にマーケット広場がある、欧州に古くからあるタイプの街並みに設営された“青空展示会”だ。入場はもちろん無料。筆者が訪れた土曜日、会場は朝から老若男女で賑わっていた。

イーバイク・フェスティバル ドルトムントは開放された空間で開催され、誰もが無料で楽しめた Photo: Aki KARASAWAイーバイク・フェスティバル ドルトムントは開放された空間で開催され、誰もが無料で楽しめた Photo: Aki KARASAWA

 各ブランドブースのスタッフ横には、真剣な様子で新製品の特徴・価格などを尋ねる来場者の列ができ、イーバイク大手ボッシュのスタッフは「想像以上の来場者で、少人数のスタッフではてんてこ舞い」と嬉しい悲鳴をあげていた。

 日本式の「電動アシスト自転車」は、欧州では「ペデレック」と呼ばれ、イーバイクの一種として普及している。一方、広義のイーバイクには全電動のバイクも含まれ、それらはオートバイと同様に運転免許証が必要となる。

メーン会場では様々なイベントも企画。固定式のトレーニングバイクを用いて音楽を流しながら“4時間耐久”でペダルを回すセッションが催されていた Photo: Aki KARASAWAメーン会場では様々なイベントも企画。固定式のトレーニングバイクを用いて音楽を流しながら“4時間耐久”でペダルを回すセッションが催されていた Photo: Aki KARASAWA
カーゴタイプのイーバイクを用いた荷物運び競争の様子 Photo: Marcus Locherカーゴタイプのイーバイクを用いた荷物運び競争の様子 Photo: Marcus Locher

 500台用意された試乗車は、身分証明カードを持つすべての希望者に無料で貸し出された。試乗が可能なテストエリアは3カ所。人工的に造られたMTBパークと、舗装された800mの平地コース、さらに4kmほど離れた丘に設置されたオフロードの本格的なトレイルが用意された。

メーン会場から4km離れた試乗コース。遠くに見えるのはメーン会場となった中心街の街並み Photo: Marcus Locherメーン会場から4km離れた試乗コース。遠くに見えるのはメーン会場となった中心街の街並み Photo: Marcus Locher
中心街に設置されたMTBパークでは、子どもたちが飛び回っていた Photo: Aki KARASAWA中心街に設置されたMTBパークでは、子どもたちが飛び回っていた Photo: Aki KARASAWA

 MTBパークはメーン会場と同じ中心街にあるというので、軽い気持ちで訪れると、筆者の想像をはるかに上回る立派なコースが設置され、子どもたちが楽しそうに飛んでいた。

都市政策のカギ

 「ドルトムント、そして人が行き交う場所で開催することに意味がある」と話すのは、主催者代表のクリスティアン・ステファン氏(Christian Stephan)。「広大だが人のいない工場エリアでは意味がない。マラソン大会の開催実績があり、周囲100km圏内に1200万の人口密集エリアを携えるドルトムント市はうってつけの立地だった」と胸を張る。

主催者代表のクリスティアン・ステファン氏(左)と同じく主催者のユリア・コンラットさん Photo: Aki KARASAWA主催者代表のクリスティアン・ステファン氏(左)と同じく主催者のユリア・コンラットさん Photo: Aki KARASAWA
メーン会場のステージでは州の交通大臣や市長を交えたパネルディスカッションが行われた Photo: Aki KARASAWAメーン会場のステージでは州の交通大臣や市長を交えたパネルディスカッションが行われた Photo: Aki KARASAWA

 一方で行政側においても、イーバイクを軸に都市環境を整備する「イーモビリティー」への関心が高まっていた。ドルトムントだけで人口は58万人。慢性的な交通渋滞の緩和はもちろん、健康増進の一手として市民の生活にイーバイクを取り込みたい考えだ。ウルリッヒ・ジーラウ市長(Ullrich Sierau)もサイクリンク好きとあって、イベントの開催を熱心にサポートしてきたという。

同市の名門サッカーチーム「ボルシア・ドルトムント」デザインのイーバイクを手にするミカエル・グロシェック交通大臣 Photo: Aki KARASAWA同市の名門サッカーチーム「ボルシア・ドルトムント」デザインのイーバイクを手にするミカエル・グロシェック交通大臣 Photo: Aki KARASAWA

 イベント当日は、同市が属するノルトライン=ヴェストファーレン州のミカエル・グロシェック交通大臣(Michael Groschek)が会場を視察。イベントへの思いを尋ねると、「ドルトムントが、世界を席巻するイーバイクの“プレミア・シティ”になることを目指している。来年、再来年とずっと続けていきたい」と笑顔で語った。

 さらに、メーン会場のステージで行われたパネルディスカッションでは、グロシェック交通大臣が「自転車道の整備に10億ユーロ(約1240億円)を支出するよう、アンゲラ・メルケル首相にできるだけ早く提言する」と発言し、聴衆から喝采を浴びた。

 グロシェック大臣はさらに、「駅や住宅地を中心に駐車場を駐輪場へ変える」「子どもが安全に自転車で通学できるようにしたい」「市の中心部にMTBを楽しめる“テストセンター”を設けたい」と、自転車に関する将来の事業構想を次々にアピールした。

「自転車道に整備に10億ユーロを提言する」と熱く語るミカエル・グロシェック交通大臣。同氏の左はドルトムントのウルリッヒ・ジーラウ市長 Photo: Marcus Locher「自転車道に整備に10億ユーロを提言する」と熱く語るミカエル・グロシェック交通大臣。同氏の左はドルトムントのウルリッヒ・ジーラウ市長 Photo: Marcus Locher

駆動モーターとDi2を連動

シマノ・ヨーロッパが展開するイーバイクのモーター「STEPS E6000」の内部 Photo: Aki KARASAWAシマノ・ヨーロッパが展開するイーバイクのモーター「STEPS E6000」の内部 Photo: Aki KARASAWA

 このイベントが企画されたのは、シマノ・ヨーロッパをはじめ自転車ブランド数社の要望がきっかけだった。ドイツ、オランダ、ベルギーなどでは、夏になると毎週末に500〜2万人規模の大小イーバイクイベントが開かれるようになっていたが、市場規模に見合う大規模なイベントには至っていなかったという。そこで「2016年はチャンス」とにらんだ業界側が、サイクリングシーズンがスタートする4月に合わせて開催できるよう開催地の選定を含めイベント運営会社に依頼した。

イベントの開催を要望したシマノ・ヨーロッパのマーケティング・ディレクター、リチャード・キースカンプ氏 Photo: Aki KARASAWAイベントの開催を要望したシマノ・ヨーロッパのマーケティング・ディレクター、リチャード・キースカンプ氏 Photo: Aki KARASAWA

 シマノ・ヨーロッパのマーケティング・ディレクターを務めるリチャード・キースカンプ氏(Richard Keeskamp)は、「フランスやイタリアでは通勤よりも趣味として自転車を楽しむ文化だが、ドイツやオランダでは実用車としてイーバイクに親しむ市場が成熟している」と説明。発売から3シーズン目を迎えるシマノの駆動モーター(エンジン部)「STEPS E6000」は、ドイツだけでおよそ60のイーバイクブランドが採用するなど、販売は好調だという。

 「ドイツには(自動車の電装部品大手)ボッシュがあるし、より軽量な自転車もあったのに、イーバイクは発売当初からよく受け入れられた。駆動モーターに連動させることができるDi2(シマノの電動コンポーネント)がすでに存在していたことがプラスとなった。スポーツバイクのように“セクシー”とはいかないけれど、自然な乗り心地を体感できて、信頼できる。僕の妻は、雨の日以外は片道15kmの通勤にイーバイクを使っているよ」

ロードレース会場にも登場するシマノのトラック。メーン会場の中心に大々的に構えた Photo: Aki KARASAWAロードレース会場にも登場するシマノのトラック。メーン会場の中心に大々的に構えた Photo: Aki KARASAWA
シマノ・ヨーロッパが展示するイーバイクのコンポーネントを手に取る来場者 Photo: Aki KARASAWAシマノ・ヨーロッパが展示するイーバイクのコンポーネントを手に取る来場者 Photo: Aki KARASAWA

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 <下>では、会場で注目を集めたイーバイクを紹介します。

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