大会名物の坂「カウベルグ」でアタックガスパロットがアムステル ゴールドレースを制す 事故死した僚友に捧げる4年ぶり勝利

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 春のクラシックレース後半戦、アルデンヌクラシック3連戦の初戦にあたるアムステル ゴールドレース(UCIワールドツアー)が4月17日、オランダで行われ、エンリーコ・ガスパロット(イタリア、ワンティ・グループゴベール)が優勝した。2012年大会の覇者でもあるガスパロットは、終盤の勝負どころ「カウベルグ」でアタックを成功させると、最後はミケル・ヴァルグレンアナスン(デンマーク、ティンコフ)とのマッチスプリントを制し、4年ぶり2度目の頂点に立った。

エンリーコ・ガスパロット(ワンティ・グループゴベール)がミケル・ヴァルグレンアナスン(ティンコフ)とのマッチスプリントを制した Photo: Yuzuru SUNADAエンリーコ・ガスパロット(ワンティ・グループゴベール)がミケル・ヴァルグレンアナスン(ティンコフ)とのマッチスプリントを制した Photo: Yuzuru SUNADA

 3月下旬に始まった春のクラシックシーズンは、オランダやベルギー南部・ワロン地方の丘陵地帯を舞台とするアルデンヌクラシック3連戦で終わりを迎える。その初戦にあたるアムステル ゴールドレースは、スタートから連続する34カ所の急坂と、“1000のカーブ”と例えられる狭く曲がりくねった道が大きな特徴。オランダのビールメーカーであるアムステル社がメーンスポンサーを務め、今回で51回目の開催となった。

 今大会のレース距離は248.7km。オランダ南部リンブルフ州の都市・マーストリヒトをスタートし、東隣の街であるベルグ・エン・テルブレイトに設けられたフィニッシュまでには、大小4つの周回を重ねるが、なかでも勝負のカギを握るのは、大会名物の坂「カウベルグ」(登坂距離1.2km、平均勾配5.8%、最大勾配12%)。各周回の最後に登場し、とくに最終周回ではフィニッシュ直前のアタックポイントとして優勝争いに大きな影響を与える。

大会名物の坂「カウベルグ」を上るプロトン Photo: Yuzuru SUNADA大会名物の坂「カウベルグ」を上るプロトン Photo: Yuzuru SUNADA
エースのポジション確保に努めた別府史之(トレック・セガフレード) Photo: Yuzuru SUNADAエースのポジション確保に努めた別府史之(トレック・セガフレード) Photo: Yuzuru SUNADA

 レースでは序盤から11選手が先行し、メーン集団ではチーム スカイやオリカ・グリーンエッジが前方にアシストを送り込んでペースをコントロール。逃げグループとの差は最大で約5分にとどめ、少しずつタイム差を縮めていった。

 残り65kmでトッシュ・ヴァンデルザンド(ベルギー、ロット・ソウダル)がメーン集団から飛び出すと、レースが活性化。ビョルン・トゥーラウ(ドイツ、ワンティ・グループゴベール)、ジャンニ・メールスマン(ベルギー、エティックス・クイックステップ)、ニッコロ・ボニファジオ(イタリア、トレック・セガフレード)が続いた。4人は追走グループを形成し、メーン集団に1分以上のリードを得て、逃げグループへの合流を目指した。

 残り40kmを切ると、メーン集団では再びアタックが散発。ペースが一気に上がり、逃げグループへの合流を果たせなかった追走メンバー4人を吸収する。この頃には、10%を超える勾配をハイスピードでクリアできなくなった選手たちがメーン集団から次々と脱落し、人数を減らしていった。

勝負どころを前に後退したフィリップ・ジルベール(BMCレーシングチーム) Photo: Yuzuru SUNADA勝負どころを前に後退したフィリップ・ジルベール(BMCレーシングチーム) Photo: Yuzuru SUNADA

 残り28kmでは、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)、フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)といった有力選手が遅れ始める。その後ボアッソンハーゲンは集団に復帰したものの、ジルベールはそのまま優勝戦線から後退。残り20kmを切ったところでは、前回覇者のミハウ・クフィアトコフスキー(ポーランド、チーム スカイ)が失速。戦意を喪失し、やがてリタイアを決意した。

 残り14kmで逃げメンバーを全員キャッチすると、いよいよフィニッシュへのカウントダウン。前週のパリ~ルーベを制したマシュー・ヘイマン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)の強力牽引で、メーン集団はフィニッシュへと急ぐ。

 残り8kmとなったところで2013年大会覇者のロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ)がアタック。これは不発に終わるが、ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)のカウンターアタックが決まり、独走態勢に入る。残り3kmで約20秒のリードを得て、運命のカウベルグ4回目へと突入した。

最終周回の「カウベルグ」で飛び出したエンリーコ・ガスパロット Photo: Yuzuru SUNADA最終周回の「カウベルグ」で飛び出したエンリーコ・ガスパロット Photo: Yuzuru SUNADA

 逃げ切りを狙うウェレンスだが、上りでメーン集団が迫ってきた。そして残り2.5km、集団から猛然と飛び出したのはガスパロットだ。これをヤン・バークランツ(ベルギー、アージェードゥーゼール ラモンディアル)がチェックするが、ガスパロットを止められない。代わって追ったのはヴァルグレンアナスン。残り2kmのアーチ通過と同時にガスパロットに合流。後続が牽制状態になったことも幸いし、2人が逃げ切る可能性が高まった。

 ラスト1.8kmはほぼ平坦。ここでガスパロットが上手くヴァルグレンアナスンの後ろに入り、仕掛けどころを見極める。ヴァルグレンアナスンはガスパロットに先頭交代を要求するが、厳しいマークにあい先頭を引き続ける状態となってしまった。そのままラスト1kmのフラムルージュを通過。後続も追い上げを図るが、タイム差は縮まらず優勝争いの行方はガスパロットとヴァルグレンアナスンに絞られた。

 そしてラスト150m。ガスパロットがスプリントを開始すると、ヴァルグレンアナスンは太刀打ちできず、そのままフィニッシュへ。ガスパロットは両手の人差し指を高々と天に突き上げ、優勝の感慨に浸った。タイム差なしでヴァルグレンアナスンが続き、後続集団は4秒遅れでソンニ・コルブレッリ(イタリア、バルディアーニ・CSF)を先頭にフィニッシュラインを通過した。

(左から)2位のミケル・ヴァルグレンアナスン、優勝したエンリーコ・ガスパロット、ソンニ・コルブレッリ Photo: Yuzuru SUNADA(左から)2位のミケル・ヴァルグレンアナスン、優勝したエンリーコ・ガスパロット、ソンニ・コルブレッリ Photo: Yuzuru SUNADA

 34歳のガスパロットは今シーズン、3月のボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャで4度トップ10フィニッシュしたほか、アムステル ゴールドレースの前哨戦とも言われる4月13日のブラバンツ・ペイル(ベルギー、UCI1.HC)で2位に入るなど好調だった。4年前にこの大会で優勝して以来の勝利であると同時に、ワンティ・グループゴベールに初のUCIワールドツアー、そしてクラシックレースでの勝ち星をもたらした。

 そして、3月27日のヘント~ウェヴェルヘムでのレース中の事故により命を落とした、チームメートのアントワーヌ・ドゥモワティエに捧げる大きな勝利となった。レース後のインタビューでは、「僕たちには天使がついていた。そのおかげでみんなが素晴らしい働きを見せた。ヴァルグレンアナスンとの優勝争いにも勝つことができて、最高にうれしい」とコメント。ドゥモワティエを天使にたとえ、天から見守ってくれたことを感謝した。

 今大会には、日本人選手が3人出場。別府史之(トレック・セガフレード)は前半から中盤にかけてメーン集団の前方を走り、エースのポジション確保に努めた。NIPPO・ヴィーニファンティーニの小石祐馬は、補給食などが入ったサコッシュバッグを集団内で運ぶシーンがテレビカメラに映されていたほか、同じく窪木一茂も純白の日本チャンピオンジャージをまとった姿が映し出されていた。いずれもチーム内での役割を果たし、途中でバイクを降りている。

 UCIワールドツアー次戦は、4月20日のラ・フレーシュ・ワロンヌ(ベルギー)。激坂・ユイの壁での優勝争いが大きな見どころとなる。

■アムステル・ゴールドレース(248.7km)結果
1 エンリーコ・ガスパロット(イタリア、ワンティ・グループゴベール) 6時間18分2秒
2 ミケル・ヴァルグレンアナスン(デンマーク、ティンコフ)
3 ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バルディアーニ・CSF) +4秒
4 ブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)
5 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
6 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)
7 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)
8 ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター チーム)
9 ロイック・ヴリーヘン(ベルギー、BMCレーシングチーム)
10 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)
DNF 別府史之(トレック・セガフレード)
DNF 小石祐馬(NIPPO・ヴィーニファンティーニ)
DNF 窪木一茂(NIPPO・ヴィーニファンティーニ)

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