サイクリングをもっと気軽に “SAUVEUR”で「まえばし赤城山ヒルクライム」を完走

by 上野嘉之 / Yoshiyuki KOZUKE
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スタート前の筆者スタート前の筆者

 つづら折れのカーブの先に、最後の直線とゴールゲートが見えた。 残る力を振り絞ってダンシングし、グイグイと加速していく…フィニッシュ! 距離20.8km、標高差1313mの難コースをクリアしても、まだまだ走りたくなるような爽快な気分だ。9月30日に開催された「まえばし赤城山ヒルクライム」に、「Cyclist」編集長として参加し、無事に完走を果たした。ただし、今回は慣れ親しんだ愛車ではなく、わずか5万円で入手できるロードバイクでの挑戦だった。その経緯を含め、“赤城山への道”をレポートする。

「たくさんの人に乗ってもらいたい」

 スポーツサイクルをもっと多くの人に楽しんでもらいたい―。日ごろからそう考えている「Cyclist」編集部へ、9月上旬のある日、1本の電話がかかってきた。「うちの自転車を、たくさんの人に乗ってもらいたい。一緒に考えてくれませんか」。

 電話の主は、ホームセンター「カインズホーム」の企画担当者。聞けば、スポーツサイクルの普及を促そうと、全社を挙げて方策を検討しているそうだ。といっても、カインズホームと系列の自転車専門店「カインズサイクルパーク」で販売する商品なので、レース仕様の高級車は想定外。価格帯としては廉価モデルばかりだが、担当者は「オリジナルのロードバイクを展開していきたい」と熱っぽく語ってくれた。

 「一度、そのオリジナル自転車を見せてくれませんか?」。気軽に頼んでみたところ、なんと3日後には編集部へ配送されてきた。カインズのプライベートブランド「AVEC VENT」(アベック・ベント)のラインアップの1つ、「SAUVEUR」(ソヴェール、フランス語で“救世主”の意)と命名されたロードバイクだ。

「まえばし赤城山ヒルクライム」の会場で販売された「SAUVEUR」「まえばし赤城山ヒルクライム」の会場で販売された「SAUVEUR」

 筆者の第一印象は「ルイ・ガノのようなロゴと、サーヴェロのようなカラーリング、それにエアロタイプの扁平ダウンチューブ。ちょっとカッコいいんじゃない?」。添付書類に示されていた価格は、なんと49,800円!

 産経デジタルの近くで試乗してみたところ、踏み出しの軽さは欠くものの、なかなか気持ちよく走ってくれる。さっそくアーレンキーを持ち出してサドルやハンドルの高さを自分好みに調整してみた。「サイズも悪くないな…」。自転車好きなら、セッティングが合えば内心でニヤリと笑いがこみ上げるものだ。

いざ、赤城山ヒルクライムへ

 その後、カインズホームへ電話を入れた。「まずまず走りますね。でも、ホイールとフロントフォークは…」と、細かな注文を付けようとすると、こんどは「その自転車で、うちの社員と一緒にヒルクライム大会へ出ましょう!」と大胆な提案が聞こえてきた。ヒルクライム大会を完走することで、手ごろな価格のロードバイクでも本格的な走りを楽しめることを証明し、スポーツサイクルの普及を促したい、という狙いがあるそうだ。

 埼玉県本庄市に本部を置く「カインズ」は、「まえばし赤城山ヒルクライム」の協賛社であり、すでに出場枠は手配してあるという。自転車が筆者の手元に届けられ、出場枠も確保済みで、スポーツサイクルの普及という大義名分まである。ということは…これは出場するしかないぞ!

 自転車専門サイト「Cyclist」の編集長とはいえ、日ごろからレースや大会出場に向けて練習をしているわけではない。赤城山ヒルクライムは正直、きつそうだ。でも、出場が決まると「一緒に出るカインズホームの社員には負けたくないな…」という見栄や意地だけは沸いてくる。カインズホーム側で大会に出場するのは、サイクルパーク5店舗の統括店長を勤める下元宣弘さんと、店舗スタッフの堀川君、それに社内の自転車愛好者ら数人という。

 マシンは基本的にノーマルで臨むが、ハブがボルト留めのホイールは、車載やパンク修理の手間を勘案して、ほぼ同グレード・同重量のクイックハブ仕様に交換してもらった。スピードや距離を表示できる簡便なサイクルコンピュータも装着してもらった。ペダルは、さすがにビンディングタイプでないと完走が難しいと思い、自分で換装した。

 大会当日の未明、会場の近くでカインズ側の出場者と合流したが、下元店長は腰の調子が悪く出走を見送るという。本人はさすがに残念そうな表情で、われわれのサポートをしっかり務めると約束してくれた。

スタートを待つ選手たちスタートを待つ選手たち
スタートを待つ選手の列スタートを待つ選手の列

交流しながら完走を目指す

スタートに向かう筆者スタートに向かう筆者

 大会会場で目立ったのは、軽さを極めたヒルクライム用“決戦マシン”。多くの選手が、手間とお金をかけてグラム単位の軽量化を図っており、重さ6kg台のバイクも珍しくない。それに対して、われわれが乗る「SAUVEUR」は重さ10.9kg。登坂で分が悪いことは否めないが、ただ上位入賞を狙うのではなく完走が目標なので、十分に走りきれる仕様といえるだろう。

 レースでは、記録を狙う選手たちの邪魔をしないように、一般女子選手が中心の最終・第10グループの後ろの方からスタート。併走していたカインズサイクルパークの堀川君は、実は学生時代に自転車の選手だったといい、計測開始地点を過ぎると早々に先行してしまった。

 とはいえ、筆者のテーマは速く走ることではなく、いかに楽しんで完走するか。そこで「できるだけ多くの人と交流しながら走ろう」と心に決め、沿道の応援に手を振り返したり、バイクやウェアが素敵な選手に声をかけたりしながら20km先の頂上を目指した。

「まえばし赤城山ヒルクライム」がいよいよスタート!「まえばし赤城山ヒルクライム」がいよいよスタート!

 序盤は傾斜が緩く、時速20km超と比較的ハイペースで進んでいく。「SAUVEUR」が多少重いとはいえ、人間の感覚なんてすぐに順応するもので、まったく気にならなくなった。

スタート後、赤城山を目指す選手たち(写真:まえばし赤城山ヒルクライム大会実行委員会)スタート後、赤城山を目指す選手たち(写真:まえばし赤城山ヒルクライム大会実行委員会)

走る楽しさに遜色なし

 沿道では想像以上に多くの人々が応援してくれた。特に、手を振ってくれる子供たちやお年寄りには、必ずこちらからも手を振り返しながら進んでいった。楽しさのあまり、10km地点まではあっという間に到達した気がした。

 このあたりで、サイクルスポーツ誌の岩田淳雄編集長に遭遇。岩田さんは背中のポケットにカメラを忍ばせ、ときどき撮影しつつ、大勢の参加者と会話を楽しみながら山を上っている。余裕の走りっぷりは、さすがサイスポ編集長!

 10kmを過ぎると傾斜がきつくなり、辛さを実感するようになった。スピードも時速15kmを割り込んだせいか、時間は経てども思うように進まず、ゴールまでの距離がなかなか減らない。ここが踏ん張りどころだ…。

 ただ、「SAUVEUR」は完璧にセッティングされており、厳しい上り坂でもしっかり力を込めて足を回すことができた。サドルは少し柔らかめだが、それを踏まえて高さ、前後位置、角度を調節しておいたので、お尻や腰に過度の負担がかかることもない。駆動・変速系のパーツはシマノ2300。リア8段と変速段数こそ少ないが、駆動系にトルクがかかる登坂路でも問題なくシフトチェンジできた。絶対的なスピードを比べると、軽量で高価なレース用ロードバイクに劣るだろうが、走っている楽しさに遜色はないと思った。

ゴール前の直線。ラストスパートに力がこもる(写真:まえばし赤城山ヒルクライム大会実行委員会)ゴール前の直線。ラストスパートに力がこもる(写真:まえばし赤城山ヒルクライム大会実行委員会)

 15kmを過ぎる頃には、すでに標高が1000mを超えて空気の薄さを感じる。ただ、傾斜はいくぶん和らいだようで、淡々と進むことができた。この日は気温もそれほど高くなく、ボトルの水の消費も控えめ。終盤は、自分に似たペースの選手と抜きつ抜かれつの展開となり、お互いに励ましあいながら先を急いだ。

 そして感動のゴール! タイムは1時間34分25秒。一般男子C(40~49歳)では922人中435位と、何とか半分より上位につけることができた。

自転車をもっと手軽に、もっと自由に

厳しい山道を制覇し、続々とゴールゲートをくぐる選手たち(写真:まえばし赤城山ヒルクライム大会実行委員会)厳しい山道を制覇し、続々とゴールゲートをくぐる選手たち(写真:まえばし赤城山ヒルクライム大会実行委員会)

 今回、筆者を含め3人のライダーが「SAUVEUR」で完走を果たした。3000人ものサイクリストが集う全国屈指のヒルクライム大会に、わずか49,800円の自転車で挑んでわかったこと。それは、こうしたエントリーモデルも、自転車を楽しむ大きな選択肢になるということだ。

 スタート前には、見慣れない廉価な自転車に好奇の視線が向けられたのも事実だが、反対に完走後は、自転車の説明をするたびに「すごいですね」と称賛され、ちょっと誇らしい気分になれた。

 クルマに例えるなら、トヨタ・ヴィッツやスズキ・スイフトのようなコンパクトカーにもスポーツ仕様があり、その上にはスバルBRZやマツダ・ロードスターのような本格スポーツカーがある。さらに見上げると、ニッサンGTRやポルシェ、フェラーリといったスーパーカーの世界が広がっている。

 スーパーカーは憧れの存在だ。しかし普通の暮らしをしている人が、普通にスポーティーな走りを楽しむなら、コンパクトカーで十分に満足できるだろう。自転車にも、コンパクトカーのように気軽に楽しめるモデルがあっていいはず。もしかすると「SAUVEUR」はそんな存在になれるかも知れない、と思った。

 実際、自転車業界では、これまで市場を牽引した中上級グレードが一巡しつつあることを受け、2013年にはエントリーモデルの需要が増えるだろうという観測が支配的だ。

 もちろん、安かろう悪かろうでは意味がない。特に、安い自転車にみられる「錆びやすい、壊れやすい、精度が悪い」の三重苦は避けたいところだ。「SAUVEUR」の場合、主なコンポはシマノ、ブレーキはTEKTRO(テクトロ)、ホイールのリムはAlexLims(アレックスリム)と、名のあるブランドの部品を採用している。品質や耐久性は、もう少し乗り込んでから検証したいところだ。

「SAUVEUR」で完走を果たした3人「SAUVEUR」で完走を果たした3人
山本龍・前橋市長をかこんで記念撮影をする各クラスの優勝者たち(写真:まえばし赤城山ヒルクライム大会実行委員会)山本龍・前橋市長をかこんで記念撮影をする各クラスの優勝者たち(写真:まえばし赤城山ヒルクライム大会実行委員会)

5万円から始める自転車生活、連載します

 レース終了後、「SAUVEUR」で完走して晴れ晴れとした表情の筆者を見て、出走できなかったカインズサイクルパークの下元店長が悔しそうにこう言った。「来年は自分も完走したいです…」。店長自身が売っている商品だけに、思い入れが強いのだろう。

 そこで、カインズホームの皆さんと話し合った結果、下元店長自身が「SAUVEUR」でサイクリングやメンテナンス、チューンアップを楽しみつつ、来年の赤城山ヒルクライムを目指す様子を、タイアップ企画として「Cyclist」に連載することが決定! ロードバイク初心者の方にも役立つ情報を盛り込みつつ、エントリーグレードの自転車をどこまで楽しみつくせるかに挑むことになった。
「カインズサイクルパーク」ホームページ

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