軽さを選ぶか、快適性をとるか?「エモンダSL6」×「ドマーネ5.2」 トレックのロード2モデルを別府史之が徹底インプレ

by 橋本謙司 / Kenji HASHIMOTO
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 手に入れたいのは、風を切り裂くスピードか? それとも、羽が生えたかのような圧倒的な軽さか? はたまた、疲れ知らずの快適性か?

 まっさらなあなたの欲望を満たしてくれるバイクがある。マドン(MADONE)、ドマーネ(DOMANE)、エモンダ(EMONDA)。トレックが贈る3つのロードラインナップは、一人ひとりのライディングシーンにおいて、最高のパフォーマンスを引き出すことを約束する。

トレック「エモンダSL6」(左)と「ドマーネ5.2」 Photo: Shojiro NAKABAYASHIトレック「エモンダSL6」(左)と「ドマーネ5.2」 Photo: Shojiro NAKABAYASHI

 なかでも、多くの市民サイクリストたちに人気の「ヒルクライムレース」と「ロングライドイベント」にそれぞれフォーカスした性能を持ち合わせているのが、軽量化を追求した「エモンダ」と、比類なき快適さを誇る「ドマーネ」だ。長年にわたってトレックバイクに乗り続け、今シーズンはUCI(国際自転車競技連合)ワールドチーム「トレック・セガフレード」で活躍しているフミこと別府史之が、「エモンダSL6」と「ドマーネ5.2」を徹底的にインプレッションする。

別府史之(トレック・セガフレード)がトレックのミドルグレード2車種を徹底的にインプレッション Photo: Shojiro NAKABAYASHI別府史之(トレック・セガフレード)がトレックのミドルグレード2車種を徹底的にインプレッション Photo: Shojiro NAKABAYASHI

 両モデルとも、フミをはじめプロ選手が実戦で操るレースマシンのDNAを継承したハイパフォーマンスモデルだ。

エモンダSL6:上りで鋭い加速をみせるハイパフォーマンスバイク

 「今まで出したことのない上りでのスピードの体験を、エモンダは確実にサポートしてくれます」と評する別府。

 エモンダとは、フランス語で「無駄をそぎ落とす」を意味する。フレームの無駄を徹底的に削ぎ落とした軽量モデルだ。

 その洗練されたフォルムには、トレックが誇るテクノロジーが詰まっている。まず、圧倒的な軽量フレームを追求しながら、パワフルな登坂もこなす剛性を両立する「OCLVカーボン」が核心にある。

エモンダSL6をテストライドする別府史之エモンダSL6をテストライドする別府史之 Photo: Shojiro NAKABAYASHI
上下でベアリング径を変えて剛性を確保するE2テーパードヘッドチューブが、安定したステアリング性能を生む上下でベアリング径を変えて剛性を確保するE2テーパードヘッドチューブが、安定したステアリング性能を生む Photo: Shojiro NAKABAYASHI
登坂での鋭いレスポンスを生むストレート形状のフロントフォークは、ダイレクトマウントブレーキ仕様登坂での鋭いレスポンスを生むストレート形状のフロントフォークは、ダイレクトマウントブレーキ仕様 Photo: Shojiro NAKABAYASHI
トレックのカーボンフレームの代名詞「OCLV」。エモンダSLモデルには、剛性と強度を両立したOCLV500グレードのカーボンを採用トレックのカーボンフレームの代名詞「OCLV」。エモンダSLモデルには、剛性と強度を両立したOCLV500グレードのカーボンを採用 Photo: Shojiro NAKABAYASHI

 OCLVとはトレック独自のカーボン製造プロセスで、その工程において、カーボンの内部に気泡などを発生させない超空隙率を実現する高品質なフレームを生み出す。「エモンダSL6」のベースとなるOCLV500は、軽さと強度と剛性を高次元でバランスさせている。

一体型のカップレスのBB90ボトムブラケットが、ボリュームと軽さの両立を実現し、鋭い加速性を生み出す一体型のカップレスのBB90ボトムブラケットが、ボリュームと軽さの両立を実現し、鋭い加速性を生み出す Photo: Shojiro NAKABAYASHI

 またエモンダは、軽さだけでなく、バランスを追求することで、トータル性能を高める「ライドチューンドパフォーマンス」を採用。ヒルクライムには上りがあれば下りもある。エモンダは、高剛性で軽量なフレームに快適性もプラスした性能を特長としている。

 そして、トレックのキーテクノロジーでもある「e2ヘッドチューブ」が、安定したハンドルさばきを導き、さらに、「BB90」ボトムブラケットがいかなるペダリングもしっかり受け止める。これら上位フレームと同様のテクノロジーを搭載しながら、完成車パッケージで38万円のハイコストパフォーマンスを誇る。

 このミドルパフォーマンスモデル「エモンダSL6」を、フミはどのようにインプレッションしたのか。

エモンダSL6と別府史之エモンダSL6と別府史之 Photo: Shojiro NAKABAYASHI

Q:エモンダSL6の全体の印象は?
 フレーム形状は名前の通り、無駄がなく美しいです。オーソドックスですが、洗練されています。そして、そのフォルムからは想像しにくい登坂での攻撃力が印象的でした。

Q:具体的にヒルクライムでの強みはどこにありますか?
 回転重視のケイデンスで加速を感じられる一方で、ダンシングでもバイクが身体に吸い付いてきてくれる感覚があるので、急にギヤをかけても、鋭い加速を体感できます。

フルカーボン製のライドチューンドシートマスト。ミニマムな設計とすることで軽量化と快適性を両立フルカーボン製のライドチューンドシートマスト。ミニマムな設計とすることで軽量化と快適性を両立 Photo: Shojiro NAKABAYASHI

Q:フレームの快適性はどうですか?
 一見、硬くて快適性が低いフレームをイメージしがちですけれど、乗り心地も確保されています。フレーム剛性を最適化した「ライドチューンドパフォーマンス」によってバランスが取れているのだと思います。峠の下りのコーナーでも、スムーズに下れました。さらに、シンプルな構造の独自のシートマストが軽量化と快適性を両立している点も見逃せません。

Q:エモンダSL6は「H2」フィットを採用しています。
 エモンダシリーズには、低いポジションを取れるH1フィットと比較的ヘッドチューブを長めに設計したH2フィットがあります。ポジションの取りやすさから、僕はH2フィットを好んで選んでいます。ハンドルを一番下まで下げてポジションを出すことで、ハンドル周りの剛性も高まります。ヒルクライムのダウンヒルなど、余裕のあるポジションで安定して走れるH2フィットはオススメです。

Q:完成車としてトータルパッケージはどうですか?
 僕らは、長年ボントレガーのパーツを愛用しています。トレックとボントレガーは同じ開発コンセプトのもとで、より良いバイクを生み出すことができるのだと思います。普段のトレーニングではボントレガーのアルミのホイールを使用しますけれど、どれも強度が高く故障をしたことがありません。命を預ける乗り物だからこそ、信頼のおけるパーツを選びたいですね。

Q:どのようなサイクリストに乗ってほしい?
 上りで鋭い加速を楽しみたい人にオススメです。「もうこれ以上のスピードでは上れない」というシーンでも、エモンダなら体験したことのないスピードを感じられると思います。

ワイドリムで剛性を高めたボントレガーのレースチューブレスレディ(チューブレス対応)ホイール。タイヤは同じくボントレガーのR2ワイドリムで剛性を高めたボントレガーのレースチューブレスレディ(チューブレス対応)ホイール。タイヤは同じくボントレガーのR2 Photo: Shojiro NAKABAYASHI
チェーンステー一体型のDUOTRAP S対応センサー。BluetoothとANT+通信により、サイクルコンピュータやスマートフォンと連動チェーンステー一体型のDUOTRAP S対応センサー。BluetoothとANT+通信により、サイクルコンピュータやスマートフォンと連動 Photo: Shojiro NAKABAYASHI

TREK EMONDA SL6 スペック

価格:380,000円(税込)
サイズ:44, 47, 50, 52, 54, 56, 58, 60, 62, 64cm
フィット:H2
カラー:マットトレックブラック/グロストレックブラック、ゴールデンエイジ

フレーム:OCLV500カーボン
コンポーネント:シマノ アルテグラ6800
ホイール:ボントレガー レース チューブレスレディ
タイヤ:ボントレガー R2(23C)
ハンドル:ボントレガー レースライト
ステム:ボントレガー エリート
サドル:ボントレガー パラジウムR
ギヤ歯数:前50-34T×後11-28T
完成車重量:7.5kg(ペダルレス・56 cmサイズ)

ドマーネ5.2:高い安定性とパワー伝達性が魅力

 「穴の空いた路面にカーペットを敷いて、その上を走るような滑らかさが特長です。特に、ハンドリングのスムーズさと、下りコーナーでの安心感に優れ、走っていて楽しく感じるバイクです」とドマーネの特徴を語る別府。鋭い加速性能と登坂力に秀でたエモンダとは異なり、ドマーネ5.2については高い快適性を評価する。

ドマーネ5.2をテストライドする別府史之ドマーネ5.2をテストライドする別府史之 Photo: Shojiro NAKABAYASHI
独立式シートチューブ機構を採用するドマーネ独自のIsoSpeedテクノロジーは、縦方向の衝撃吸収性を2倍に高めている独立式シートチューブ機構を採用するドマーネ独自のIsoSpeedテクノロジーは、縦方向の衝撃吸収性を2倍に高めている Photo: Shojiro NAKABAYASHI

 ドマーネが追求してきた究極の快適性は、これまでツール・デ・フランドルやパリ~ルーベなど石畳のビッグレースで、厳しい悪路をものともせず勝利をつかみ取ってきたファビアン・カンチェッラーラの活躍によって実証済みだ。

 ドマーネの特性の中核を成す「IsoSpeed」(アイソスピード)テクノロジーは、ロードバイク史を書き換えたと言えるほどの快適性の向上をもたらした。シートチューブをトップチューブとシートステーから独立させる画期的なシステムによって、シートチューブ単独での可動域を確保。シートチューブの縦方向への柔軟性を2倍にまで高め、荒れた路面でも快適な走りを手に入れた。

 また、長距離ライドでも身体への負担を軽減する「エンデュランスフィット」を採用。レーシングジオメトリーながら、長めのヘッドチューブが腰や首への負担を抑える。

縦方向への柔軟性を高めて、路面からの衝撃をいなすIsoSpeedフロントフォーク。ベンドしたフォークは、ホイールベースを確保し直進安定性を高める縦方向への柔軟性を高めて、路面からの衝撃をいなすIsoSpeedフロントフォーク。ベンドしたフォークは、ホイールベースを確保し直進安定性を高める Photo: Shojiro NAKABAYASHI
フォーク先端の独特のドロップアウト形状が、スムーズかつ安心感を生むハンドリングへ導くフォーク先端の独特のドロップアウト形状が、スムーズかつ安心感を生むハンドリングへ導く Photo: Shojiro NAKABAYASHI
ヘッドチューブ長を長めに設計したE2ヘッドチューブは、長時間ライドでも背中や首などに負担を強いないポジションをキープしやすいヘッドチューブ長を長めに設計したE2ヘッドチューブは、長時間ライドでも背中や首などに負担を強いないポジションをキープしやすい Photo: Shojiro NAKABAYASHI

 その一方で、トッププロを勝利へと導く高いパワー伝達効率を確保。ヘッドチューブからダウンチューブ、そしてチェーンステーにかけてのいわゆるパワーラインを最適化する「パワートランスファーコンストラクション」テクノロジーを取り入れた。それらのテクノロジーを融合し、OCLV500カーボンで作り上げた「ドマーネ5.2」。完成車価格41万円のミドルグレードに乗ったフミが感じたその特長とは。

ドマーネ5.2と別府史之ドマーネ5.2と別府史之 Photo: Shojiro NAKABAYASHI

Q:ドマーネ5.2の全体的な印象は?
 路面の上を流れるようなスムーズなフィーリングが、走っていて楽しかったですね。下りのコーナーは安心して曲がれますし、不安を感じさせません。路面からの大きな突き上げを解消してくれるので、まるで平らなカーペットの上を走っている感覚です。

緩やかに湾曲したダウンチューブは、ヘッドチューブからBB、そしてリアホイールへとつながるパワー伝達性を高める緩やかに湾曲したダウンチューブは、ヘッドチューブからBB、そしてリアホイールへとつながるパワー伝達性を高める Photo: Shojiro NAKABAYASHI

Q:快適性はどのあたりから感じますか?
 シートチューブのしなりを生むIsoSpeedテクノロジーと、大きくベンドしたIsoSpeedフロントフォークが縦方向の柔軟性を高めているようです。また、先端のドロップアウトもホイールベースを長く確保でき、安定性を高めていますね。このエンデュランスジオメトリーは、悪路になればなるほど安定したバイクコントロールをもたらすと思います。

Q:どのようなライディングスタイルに向いている?
 シートチューブのアイソスピードを生かして、シッティングでリラックスしたポジションのまま、どんどんトルクをかけていくようなスタイルがドマーネの性能を引き出せると感じます。フレームのヘッドからBB、チェーンステーにかけてのパワー伝達性を高めた「パワートランスファーコンストラクション」の恩恵が感じられます。

Q:ミドルグレードでも不満はないですか?
 快適性は言うまでもなく高く、また踏んだ分だけスムーズに進む剛性も確保されています。ミドルグレードと言われますけど、ほんの数年前のハイエンドモデルと変わらぬ性能は、レースシーンでも十分に戦えるバイクですね。

Q:どのようなサイクリストに乗ってほしい?
 ドマーネのスムーズなフィーリングは、これまでにない快適なロングライドを約束してくれるはずです。そして、下りのコーナーリングなどが安心できるので、バイクコントロールに苦手意識を持っている人にもオススメしたいです。疲労をためずに長時間走り続けたいと思う人向けの、ロングライドに適したモデルです。

プロも安心して使用するパーツブランド「ボントレガー」。タイヤは、耐パンク機構を持つR3。タイヤ幅は25mmのエンデュランス仕様プロも安心して使用するパーツブランド「ボントレガー」。タイヤは、耐パンク機構を持つR3。タイヤ幅は25mmのエンデュランス仕様 Photo: Shojiro NAKABAYASHI
人間工学に基づいて開発されるボントレガーのサドル。強度と適度なクッション性を確保した「パラジウムR」を採用人間工学に基づいて開発されるボントレガーのサドル。強度と適度なクッション性を確保した「パラジウムR」を採用 Photo: Shojiro NAKABAYASHI

TREK DOMANE 5.2 スペック

価格:410,000円(税込)
サイズ:50, 52, 54, 56, 58, 60, 62cm
フィット:エンデュランス
カラー:ダークローストブラック/ウォーターローブルー、クリスタルホワイト/ブライトシルバー

フレーム:OCLV500カーボン
コンポーネント:シマノ アルテグラ6800
ホイール:ボントレガー レース チュブレースレディ
タイヤ:ボントレガー R3(25C)
ハンドル:ボントレガー レースライト
ステム:ボントレガー レースXライト
サドル:ボントレガー パラジウムR
ギヤ歯数:前50-34T×後11-28T
完成車重量:7.61kg(ペダルレス・56 cmサイズ)

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