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栗村修の“輪”生相談<71>30代男性「なぜ自転車のプロチームは毎年頻繁に名前が変わるのでしょうか?」

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 こんにちは。いつも楽しく読まさせて頂いております

 私はちょうど2年前に30を機にクロスバイクに乗り、1年前にロードバイクに手を出した自転車初心者です。ロードバイクに手を出したと同時に、今まで興味がなかった自転車競技も見るようになったのですが、なぜプロのチームは、

・毎年頻繁に名前(スポンサー)が変わるのか
・毎年頻繁に選手の移籍があるのか

 これが今までの感覚からいくと理解ができません。

 スポンサーを集める大変さや、選手の獲得の大変さもあるのかもしれませんが、ずっと同じチーム名だからこそ贔屓のチームのジャージやグッズを買って応援したくなったり、大好きな選手を応援したくなったりするものなのではないでしょうか?

 日本では野球やサッカーなどはチームで応援することの方が多いとは思うのですが、自転車競技ではチーム度外視で選手で応援することの方が多いのでしょうか? 初歩的な質問かもしれませんが、よろしければお願いいたします。

(30代男性)

 自転車界にもいろいろな動きがあり、今回のご質問のような問題意識を持って動いている方もいます。お騒がせ、ロシアの富豪オレグ・ティンコフさんも、まあ、システムを変えようとしていた一人ですよね。

 ただ、スリップストリーム(キャノンデール・ガーミンのチーム運営会社)のジョナサン・ウォーターズなどは、自転車界には自転車界の特殊事情があり、他のスポーツのシステムをそのまま受け入れるのは難しいと言っています。それにも一理あるでしょう。ともかく、議論は盛んです。

 実は、これでもしっかりしてきたんです。昔はもっとひどくて、シーズン中にチームが消えたり、給料が未払いだったりということが当たり前にありました。でも、近年はUCI(世界自転車競技連合)を中心に改革が進んでいます。一方で、比較的保守的なのがASO(ツール・ド・フランスの運営会社)であり、両者には確執もあります。

 さて、「応援」という観点から取り上げたいのは、自分が監督をしていたからではないですが、宇都宮ブリッツェンです。地域密着型チームであるブリッツェンは、実は選手の入れ替わりは激しいんですが、固定ファンがついています。それは何よりも「宇都宮」という地域を前面に出しているからでしょう。

 地域密着というと、スペインはバスク地方のエウスカルテルを思い出します。熱狂的なファンがいましたよね。「バスク」という地域を掲げ、選手もほとんど全員がバスク人。バスクチームでした。

“オレンジのバスク軍団”として活躍したエウスカルテル Photo: Yuzuru SUNADA“オレンジのバスク軍団”として活躍したエウスカルテル Photo: Yuzuru SUNADA

 しかし、エウスカルテルはなくなってしまいました。それは、UCIが改革としてワールドワイド化を進めたからだという人もいます。あとは、スペイン経済危機の影響もあるでしょう。他の地域型チームは、元ヨーロッパカーのディレクトエネルジーでしょうか。あそこもフランスのバンデ地方に根付いたチームです。

 このように、地域を背負うのは、ファン獲得のひとつの方法ですが、自転車界では珍しい。僕は海外で「ブリッツェンってなんの企業?」と聞かれたことがあります。スポンサーだと思われたんですよ。企業名を背負うのが自転車界のビジネスモデルです。今のところ。

 しかし、たとえばメジャーリーグのチーム名やプロサッカーのチーム名に企業名が入っているでしょうか? 殆どありませんよね。彼らは、別のビジネスモデルを築いているわけです。

宇都宮ブリッツェンは、日本のロードレース界のなかで、独自の地域密着モデルを構築しながら成長している Photo: Shusaku MATSUO宇都宮ブリッツェンは、日本のロードレース界のなかで、独自の地域密着モデルを構築しながら成長している Photo: Shusaku MATSUO

 もちろん、ロードレースは入場者収入を得られないスポーツなので、上記スポーツのシステムをそのまま取り入れることはできませんが、それでも、統括組織(リーグ)がコントロールする形で、各チームの年間最低運営費を、放映権料や冠スポンサー料、更にはライツビジネスなどから捻出し、最悪、チームがメーンスポンサーを失ってしまっても活動できるシステムを、勇気をもって作るべきだと思います。

 現在、レースとチームがシステム全体の商品として組み込まれた新しいビジネスモデルの構築を、Velon(11のUCIワールドチームが出資し合って設立された企業)という組織が模索しはじめています。

 しかし、これらの改革を実行するのは決して簡単ではないでしょう。歴史あるスポーツですから、その分既得権益も多い。一度、全体をひっくり返さなければいけないかもしれません。

 でも、今こそそのときなのかもしれません。

(編集 佐藤喬)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまでお寄せください。

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