工具はともだち<89>鉄と鋼の違い 工具に使われる材料 <その1>

by 重田和麻 / Kazuma SHIGETA
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 前回まで工具の作り方をご紹介してきましたが、そもそも工具ってどんな材料で作られているかご存知ですか。

 「鉄じゃないの?」と思われる方も多いと思いますが、それは正確に言うと間違いです。何故かと言うと自然界において、「鉄」は純粋な鉄元素(Fe)だけでは存在しません。そして、私たちが普段「鉄」と思っている素材も純粋な「鉄」ではないのです。

 もともと鉄は酸化鉄という形で鉄鉱石の中に多く含まれています。その鉄を製鉄所で製錬すると炭素量の多い鉄が出来上がります。この炭素が鉄にとって重要な役割を果たすのですが、それは鉄に硬さを与える事なのです。

工具に使われる「機械構造用炭素鋼」(KTC提供)工具に使われる「機械構造用炭素鋼」(KTC提供)

 鉄に含まれる炭素量が多いほど鉄は硬くなりますが、あまり炭素量が多すぎると脆くなってしまいます。そこで、ある一定以下に炭素を減らした金属が「炭素鋼」、つまり「鋼(はがね)」と言われるものになります。ですから、工具に使われる材料の正解は「鋼」となるわけです。「鉄」というより「鋼」と言った方が強そうですよね。

求められる特性で選ばれる鋼材

ニッパには硬度の高い鋼材が使われる(KTC提供)ニッパには硬度の高い鋼材が使われる(KTC提供)

 ただ、この「鋼」にも分類があって、一般的に使用されている主な分類として「機械構造用炭素鋼」というものがあり、工具にもこの「機械構造用炭素鋼」が使われています。因みにこの「機械構造用炭素鋼」はS15CとかS45Cとか細かく分類されていて、この中の数字が炭素、つまりCarbon(カーボン)量を意味しています。

 例えばS45Cなら炭素(Carbon)を0.45%含んだSteel(鋼)という意味なんです。このSとCの間の数値が高いほど硬い鋼で、硬さが必要なニッパ等の刃物類は数値が高い材料が使われます。つまり、工具の鋼材はその工具に求められる特性や用途によって、選ばれる訳です。

硬さと粘り必要なアーレンキー

合金鋼で作られるアーレンキー(KTC提供)合金鋼で作られるアーレンキー(KTC提供)

 では、皆さんが良く使うアーレンキーはどうでしょうか。アーレンキーは工具の世界では「内回し工具」という分類をされます。「内回し工具」にはアーレンキーの他にドライバーやトルクス等があり、ボルトやビスの内側にレンチを差し込んで回すので「内回し工具」というのです。そして「内回し工具」には比較的硬さを求められます。そのため、カーボン量の多い鋼材が適するのですが、それだけではアーレンキーに求められる特性を満たせません。何故なら、アーレンキーには硬さだけでなく、粘りや耐摩耗性も求められるからです。

 そこで、登場するのが「合金鋼」と言われる素材。「鋼」に更に「合金」が付くとより強いイメージですよね。この「合金鋼」は「鋼」に求められる特性を補うために様々な元素を添加したもので、添加される代表的な元素には「Ni(ニッケル)」「Cr(クロム)」「V(バナジウム)」「Mo(モリブデン)」「Mn(マンガン)」が挙げられます。

 それぞれの元素の特性は次回ご紹介するとして、アーレンキーに求められる特性である、粘りと耐摩耗性を向上する元素としては「Cr(クロム)」と「Mo(モリブデン)」が挙げられます。この名前を聞いてピンときた方はやっぱり自転車乗りですね。

 次回は合金に使われる元素の主な特性と、その他の工具に使われている鋼材についてお話します。

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重田和麻(しげた・かずま)

KTC(京都機械工具)入社後、同社の最高級ツール「nepros」(ネプロス)の立ち上げに携わった後、販売から企画、商品開発とさまざまな立場で同商品と歩みを共にしてきた。スポーツ自転車は初心者だが、工具についてはプロフェッショナル。これまでの経験を生かして、色々な角度からサイクリストに役立つ工具の情報を提供する。

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